ブレス オブ セブンスドラゴン   作:マチカネ

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 セブンスドラゴン2020しかプレイしておりませんので、セブンスドラゴン2020がベースになっております。


第一章 HIT

「引き裂かれた 大地の痕(こえ)

啼り響いた 瓦礫の戦慄に

 

還らない日常に向かって何を叫ぶのか?

目覚めた現実は刻を朱く朱く染めて

壊れかけた四肢抱え何を喚くのか?

 

愛しいひとよ どうか

 

―何ヲ祈ル?何ヲ還ス?何ヲウタウ?―

世界の解を 想い描いた未来を 響かせて」

 歌声に引き寄せられたのか、海面の浮子が沈む。

「リュウ、掛かった」

 緑のツインテールの悲しい胸の少女、初音ミクは小柄な青い髪の少年、リュウに告げた。

 獲物が掛かったのは海面に沈んだ浮子と感触で気が付いている。でも慌ててリールを巻いたら、獲物に逃げられてしまう。かといって遅くても逃げられてしまう。

 早すぎず遅すぎず、魚のタイミングに合わせてリールを巻く。

 この引きは大物に違いない、逃がしてなるものかと、リュウはリールを回していると、近くで悲鳴が聞こえてきた。男女2人の悲鳴、それも切羽詰まった悲鳴。

「ミク、頼む」

 ミクに竿を託すと、置いていた剣を掴み、走り出す。

 

 

 

 こげ茶色の硬い鱗に覆われた巨躯。鉄杭のような頑丈な牙の並ぶ口、黄色く輝く目。

 凶暴を全身から解き放っている怪物、ドラゴン。神話の世界の生物が、現在の東京に立つ。

 

 恐怖で動けない女性、その女性の前に仁王立ちしている男性。本人も膝が笑っていて怖いのに、そこから動こうとはしない。

 ドラゴンがカップルに襲い掛かろうと、大きな前足を振り上げる。

 潰される、恐怖心から男も女も思わず目を閉じてしまう。

 強い風が吹き抜けたような気がした。恐る恐るカップルが目を開くと、首が斬り落とされたドラゴンの巨体が揺らぎ、倒れた。

 一瞬、思考が追いつかない。

 やっと、剣を鞘に納めるリュウに気が付いた時には、何も言わず立ち去るところ。

 追う気持ちどころか声を掛けることさえ、カップルには湧き上がっては来なかった。

 

 

 

 波止場に戻ったリュウ。ミクは大物の獲物を連れあげ、喜んでいた。

 嬉しい反面、自分が釣り上げたかったという気持ちも。

 

 

 

 

 文明を喰らう存在、ドラゴン。

 文明のある星を見つけると、星ごと喰い尽くし、また新たな文明のある星を探して、宇宙を廻る。

 ドラゴンを統括しているのは『グレイトフルセブンス』と呼ばれる、7体の真竜。

 今、地球はそのドラゴンに狙われていた。

 

 

 

 首を落とされて死んでいるドラゴンを調べている眼鏡の青年、

「下級のドラゴンとはいえ、一撃で葬るとは……」

 少し興奮の色合いで分析中。彼は桐野礼文(きりの あやふみ)。

「キリノ」

 彼は仲間にはキリノと呼ばれている。名前を呼んだのは黒い長髪の、凛とした少女。彼女の手には一振りの日本刀。

「やぁ、刀子くん」

 キリノはやっと、黒い長髪の少女、御堂刀子(ミドウ トウコ)に気が付いたかのような素振り。

「この切断面、君はどう思う?」

 意見を求める。

「うむ、見事なものだ。相当な腕前でなければこんな斬り方はできない」

 キリノも同じ分析をしていた。主にキリノは研究関係の仕事をしているので、戦闘のプロ、それも剣術の達人の意見を聞きたかった。

「周囲にはドラゴンどころか、モンスターの気配すらないわ。どうやら、逃げちゃったみたいね~」

 ヒョウ柄のガウンを着たグラマーな女性がやってくる。その隣にはゴーグルを掛けたごつい男。

「ピンクハーレーくん、リキオくん」

 2人の名前を呼ぶキリノ。

 グラマーな女性、ユイ・ピンクハーレー、ごつい男、草壁力男(クサカベ リキオ)。

 一時的とはいえ、周辺のモンスターが逃げた理由は、ドラゴンを切った人物を恐れたからだろう。

 再びドラゴンの遺骸を見上げるキリノ。

「だとしたら、ムラクモ機関は、とんだ逸材を見逃していたことになる」

 

 

 

 黙ったまま人類だって喰われたりはしない。ドラゴンと対抗するという星の意思によって、力を与えられた《狩る者》たちを集めて、鍛錬しする。対ドラゴン組織、ムラクモ機関。

 中でも刀子、ピンクハーレー、力男たち13班は精鋭中の精鋭と呼ばれている。

 

 

 

 ドラゴンから逃げ延びた者たちの避難場所にして、コミュニティ、東京都庁に、昨日、男女のカップルが避難してきた。

 2人の話によると、ドラゴンに襲われたところを青い髪の少年に助けられたと。

 ムラクモ機関でもないのに、ドラゴンを退治した者がいる。にわかには信じられない話だったが、カップルが嘘を言っているようにも見えず、調査に来たという次第。

 

 

 

「ちょっと、来て」

 波止場に佇む女性が声を掛ける。彼女は日暈棗(ヒカサ ナツメ)、ムラクモ機関、現総長である。

 呼ばれた刀子たちは波止場に行くと、ナツメはコンクリートの地面を指さす。

「これ、何だと思う?」

 力男が拾ってみる。

「……」

 それは鱗、ドラゴンのものではない、魚の鱗。それも古いものではなく、質感からして、落ちて、そう時間もたっていないはず。

 他にも真新しい丸い跡があり、大きさからして、そこにはバケツが置いてあった形跡と知れる。

「……釣り」

 鱗の落ちてた場所やバケツの跡からして、何者かがここで釣りをしていたよう。

「ならば、ここで釣りをしていた酔狂な何者が、ドラゴンを斬ったいうのか」

 刀子はドラゴンが倒れていた方を向く。

 位置的に、ここから駆けつけてもおかしくない。カップルの話とも一致が見られる。

「まぁ、ドラゴンやモンスターがうろつく世界で、のんびり釣りなんかしてるんだったら、ドラゴンの一匹や二匹、へっちゃらなんだろうね」

 さも面白そうにピンクハーレーは笑う。

 確かに、そんな人物がいたならドラゴンの一匹など、平気で倒せそうだし、モンスターが逃げ出してもおかしくはないかも。

 少し考えてから、ナツメは任務を下す。

「13班、この人物を見つけだしなさい」

 

 

 

 ドラゴンが飛来する前は都内の一流のホテル。気軽に市民には泊まれない宿泊料。

 今はがらんとしていて、客どころか従業員もいない。

 それでも、一流品をそろえた高級ホテルのいでたちは残っているし、電気、水道、ガスなとのライフラインも、まだ通っている。

 

 そんなホテルの一室で、リュウと初音ミクは釣った魚で食事中。調理したのは初音ミク。したがって、ネギの付け合わせは忘れていない。

「うん?」

 うなじを摩るリュウ。

「どうしたの?」

「今、うなじがざわっとしたような」

 もう何の気配もない。

「気のせいかな……」

 

 

 




 13班は、サムライ 女 御堂刀子(ミドウ トウコ) デストロイヤー 男 草壁力也(クサカベ リキヤ) サイキック 女 ユイ・ピンクハーレー。
 刀子は開発中画面の名前「カタナコ」から刀子(トウコ)、ピンクハーレーはフィギュアの名前を付けました。ただ、ピンクハーレーだけではしまりが悪い気がしたので、ユイと名前も付けました。

 当初、リュウくんの登場の仕方を悩みましたが、リュウくんなら、釣りをさせるべきだと思い、釣りをさせました。
 リュウくんが釣りなら、初音ミクは歌だと、歌わせることに。

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