蒼白コントラスト   作:猫パン

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前回投稿したのだと、展開が気に入らなっかった。

それとこれが一番の理由。
あのまま助けてたらシャルルにフラグが立つ…
それはいけない、この作品のヒロインはセシリアだけなんだよ。
一夏自らフラグを立てに行くなんて。


第三話 改投

 

「動くなよ?手前の頭がザクロになりたくなければな。」

 

「……っ!」

 

 IS学園の学生寮の一室、シャルルが入ってくるまでは1人用として謳歌していた一夏の部屋では物々しい空気が満ちていた。

部屋自体は他と何ら変わることはない。総じて、同じ設計での建築構成となっている。なればそこに満ちる空気、それに色を付けるのはそこに居る人間だ。つまり、この物々しい空気は今この部屋に居る者によって作り上げられているということに他ならない。

確かに部屋の空気は物々しい。だが、誰かが今の一夏の部屋を見れば、その空気を感じるよりも早くただならない事態を察するだろう。

やや青ざめた表情で微動だにせず、立ちつくすシャルル。

そしてその後頭部へとホルスターより抜き放た銃を、その砲身を突き付ける一夏。

誰がどう見ても通報もの、そんな光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

時は少し遡り。

部屋へと帰ってきた一夏は自身のベットに上に、わざとらしく白式を置いた。

そして近くに置いてあるPCと繋ぎやすいよう、これまたわざとらしくケーブルを置く。

念を押したこの6日間、シャルルが来る前から腕に白式を着けていたのだ。つまりシャルルは一夏の専用機を、白式だと思い込んでいる筈である。

 

この行動からわかる通り、一夏は実験をすることにした。何も無ければ御の字、もしあれば実験は成功する。

つまりはシャルルが男装した上で、一夏の専用機の情報、または機体を盗みに来たと確定してしまうのだ。

 

「じゃあ後は奴さん次第かねぇ。本当、こんなものにどんな価値があるんだか。」

 

 

そう言う一夏だが、IS関連。ひいては開発企業にとっては、世界で唯一の男性操縦者。

織斑一夏の専用機、そのデータを欲しがる人間はイギリスを除き世界中に居る。

イギリスはその保有する専用機、ブルー・ティアーズが一夏と戦闘行為をするだけでデータが集まるのだ。

 

 

イギリス、ドイツ、イタリアと言ったEU圏内における有力3ヵ国、それに加えアメリカや日本などの技術進歩した強国が第三世代機を試作機ながらも作り上げたという事実が世界中を震撼させたのだ。それに遅れながらも中国、ロシアも第三世代機を作り出したという。それによりその他の国々では躍起になって開発が始まった。

 

 

第三世代機、未だに開発が進んでいない国では机上の空論でそれが何たるかが一切実現していない。

 

 

そもそも第三世代型というのは操縦者の意志の力によって稼働する武器、及び装備を搭載した機体である。

操縦者の意志による操作装置(イメージ・インターフェイス)は燃費が悪いらしく、未だに実験の域をでないが……ISコアに眠る単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)、その力を誰でも自在に使用できるようにするという構想の元開発された。純粋な単一仕様能力ではない為に誰にでも使えるが、その稼働が操縦者の意志頼りな点が今後の課題として挙げられている。

 

 

そんな第三世代機の開発に躍起になっている時に世界で唯一の男性操縦者が現れたのだ。

しかも専用機が支給され、その機体は日本の第三世代と来た。

技術的にはほぼ最先端を行く日本の第三世代型のデータ、それも唯一の男性操縦者が乗った未知のフラグメントマップを回収出来れば、開発は飛躍的に進展する。そう考えるから、織斑一夏の機体データ及び機体自体は相当貴重なのだ。

何なら本人でも良いのだ。

モルモットにして使い潰せば、今よりも確実に技術改革が起きるのだから。

 

 

『アイン。対象はアリーナを出てそちらへ向かいました、準備はよろしいですね?』

 

「ああ、セシル。これより作戦を決行する。出来れば失敗してほしいがな。」

 

『それはデュノアさん次第でしょう。』

 

 

一夏へと通信が入り、件の実験が始まった。

シャルルがアリーナを出て部屋へと帰るまで、セシリアは背後を位置取り一切の気配無く尾行。

その行動を逐一、一夏へと報告していた。

 

その報告を聞きながら、一夏は行動を起こす。

箪笥の隙間へとその身を滑らせ、一切の気配を消して待機する。

 

「さて、藪をつついて何が出るかな。出来ることなら、こいつを撃ちたくはないんだよな。」

 

そう言って左側胸を叩く。

そこにはホルスターに入った、サイレンサ-一体型の銃。Maxim 9があった。

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

着々と準備が進む頃、件のシャルルはちょうどアリーナを出たところだった。

自分から言い出した事とは言え、イギリスの主席代表候補生のレベルの高さを間近で見てしまい、呆けてしまっていた自分。

そしてこの学園に居る以上、いずれは戦わなければいけないときが来る。そう思うと気分が沈んでいく。

その気持ちを振り払うかのように首を振り、シャワーでも浴びようとその足を急がせる。

 

そして、自身がここに来た経緯を思いだし気を落とす。

 

シャルル・デュノア……否、シャルロット・デュノアがこのIS学園に来たのは『データ』が目的である。

 

彼女の祖国であるフランス、そこに存在する企業『デュノア社』は、世界でも1,2を争う程に優秀な機体『ラファール・リヴァイヴ』を世に生み出した。

 

だが、そんな名機を生み出したという国家の威信を掛けた栄光を脅かしつつあったのが、自国も加盟するEU。欧州連合に加盟する内の3国、イギリス、ドイツ、イタリアが、次々に第三世代機の開発に成功し、『イグニッション・プラン』を発足したことだ。

 

フランスのラファール・リヴァイヴは確かに優秀だったが、第二世代型なのだ。

元々リヴァイヴ自体も最後継機なので、第三世代機開発に遅れを取ることとなる。

 

第三世代機開発が遅れれば遅れるほどに、欧州連合のイグニッション・プランからは除名。

そして開発資金援助も少なくなり、結果開発が遅れる。負のスパイラルが出来上がる。

援助が無くなり、IS開発が出来なくなれば会社は当然経営危機に陥る。

 

そんななか世界を揺るがせる一報が駆け巡った

世界初の男性操縦者の発覚である。

 

その情報にいの一番に食いついたのはフランス政府だった。

 

男性操縦者のフラグメントパターン、及び機体の入手。それと引き換えにデュノア社へと援助を申し立てたのである。

 

そこでデュノア社は体よく使えるであろうシャルロット・デュノアをIS学園へと送り込んだ。

広告塔となるよう男装させて。

 

 

それがシャルロット……シャルル・デュノアとしての役割だった。

 

「はぁ……」

 

 

若干重い足取りで部屋に戻ってきたシャルルは、自身のベットに腰掛ける。

これからしなければならない事を考えると乗り気はしなかった。

 

 

ふと、一夏のベットを見ると無防備に置かれた一夏の専用機があった。

あまりにも無防備なので思考が止まる、だがこれ幸いと早速行動することにした。

 

近場にあるPCに自分の端末を差し、一夏の専用機……『白式』をPCへと接続する。

そして……

 

「え、何で!?あれだけ動いてるのに!?何処にもデータが存在しない!?」

 

「当たり前だろう?白式(それ)には乗ったことすらないんだ、初期化(フォーマット)最適化(フェッティング)もしていないんだぜ。データなんて入ってる筈がないだろう?」

 

この学園において聞き間違える筈のない声が、シャルルの真後ろ、驚く程近くから聞こえる。

声の主は他でもない、この学園唯一の男子。

織斑一夏だ。

その声を聞いたとたんに、シャルルは反射的に逃げようとした。人間としての防衛本能が鳴らす、アラートにしたがったのだろう。

だが、

ガチャ!

 

「動くなよ?手前の頭がザクロになりたくなければな。」

 

突き付けられた銃により、動けなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

「なんで……何時からそこに……」

 

「最初から居たさ。もっとも、気配は消してたがな。」

 

「ど、どうして……」

 

「そのベット上のあからさまに広げられた物を見て気付かないか?どうして最初から置いてあったとかな。」

 

 

そう言われてシャルルは気付いたのだろう。

最初から疑われていた事を。

そうして一夏は罠を仕掛け、シャルルは見事に引っ掛かったのである。

 

「何時から疑ってたの?」

 

「最初から……いや、正確に言えばお前の転入届けを見たときからだな。」

 

そう言って一夏は懐から、畳まれた一枚の紙を取り出す。

そこには、シャルル・デュノアとしての全てが書かれていたが……

 

 

「かなり不自然だったからな。

ネットにも新聞にも世間で新たに、男性操縦者発見のニュースは発表されていない。

それに男性操縦者が代表候補生で、専用機持ちってのが可笑しいんだよ。

俺みたいなデータ取りならまだしも、最初から持って入ってくる時点で怪しさ満点だったさ。

 

それと後は、お前の骨格が明らかに女のそれだったしな。」

 

「バレバレだった……ってことか。」

 

シャルルは観念したのか両手を挙げる。

そうなれば一夏は銃を突き付ける理由もなくなる訳だが、用心の為一夏は突き付けたままだった。

 

 

「僕を突き出すの、少し待ってくれると嬉しいんだけど。良い?」

 

「何だ?何か言い残す事でもあるのか?」

 

「うん。

実はね…

 

僕の父の会社…デュノア社なんだけど……最近経営が上手くいって無いらしいんだ。

欧州連合で第三世代型IS開発を行う[イグニッションプラン]からも除名されているし、元々第三世代型の開発が遅れてしまっているからね。

そんなとき都合よく現れたのが君。

世界初の男性操縦者としてデュノア社も注目していたよ。

そこで選ばれたのが、引き取られてテストパイロットをやっていた僕。

そして下された命令が君のデータ取りと広告塔、あわよくば君の専用機の入手だったんだけどね。

それで2人目の男性操縦者としてここに来たんだ。

 

まあ失敗したし、僕は牢屋行きになるんだろうけど。ぶっちゃけどうでも良いんだよね。あっちに居ても僕は腫れ物扱い。まあ愛人の娘なんてそんなものだけどさ。ある日突然社長の使いがやって来て、来いだよ?やんなっちゃうよね。

元々お母さんが死んだ時点で日本に亡命しようと思ってたから、会社の為に動くのはこれで最後。動いた事実があればいいし。

手続きも、向こうでやってきたからね。」

 

そう満面の笑顔で言うシャルル。

まるで私には全く関係ないと言わんばかりに。

そんな彼女を見て、一夏は溜息を吐いた。

 

「はぁ……シャルル。お前、よく図々しいって言われないか?」

 

銃を突き付けられているこの状況。

そんななか己の言いたい放題のシャルルにそう言う、が…

 

「え?ごめん、もう一度言ってもらえない?よく聞こえなかったんだ。」

 

その切り返しは流石に予想していなかったのだろう、一夏は固まっていた。何とか持ち直し、もう一度言う訳だが…

 

「お前図々しいって言われるだろ、絶対。」

 

「え?ごめん、もう一度言ってもらえない?よく聞こえなかったんだ。」

 

2度目も同じような返答で返される。

流石にこれには返さなかった。

そして、若干投げやりになりながら…

 

「あーもういい。お前の返答で充分わかった。取り敢えず、そこに居ろ。」

 

 

一夏は米神を押さえながら無線機を取り、現状を報告した。

その相手とは……

 

「セシル、作戦を放棄。そのまま俺の部屋へ来てくれ。」

 

『了解ですわ。ですが、説明はしてもらいますわよ?』

 

「ああ、必ずな。では、なるべく急いでくれ。」

 

『はい、すぐに行きますわ。』

 

 

そう言うと無線をベットへと投げた。そしてシャルルに向き合うと、一夏は……

 

 

「さて、お前の状況を全部説明してもらおうか。」

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

 

「なるほど、何とも迷惑で頭の痛い話ですわね。」

 

「そうだろう?全くこの女は…」

 

一夏は新たに部屋へと入ってきたセシリアに、先程のシャルルとの会話、その全てを伝えた。

その時にチラッとシャルルを見たが…

 

「ん?どしたの、一夏。」

 

「…いや、何でもないぞ。」

 

すごくマイペース、尚且つ緊張感の欠片も無い態度だった。

つい先程まで、銃を突き付けられていた人間の反応とは思えないものだ。

 

「ところで、この後お前はどうするつもり何だ?日本に亡命するとして、こちら側でも色々手続きがあるはずだが。」

 

「ああその事。それなら大丈夫。」

 

そう言ってシャルルは、己の鞄から紙束を取り出した。

 

「申請書類も全部パス済み。だから問題なしだね!」

 

根回しの早さに一夏もセシリアも開いた口が塞がらなかった。

というのも申請書類全てをパス済みにする為には、1週間~3週間程前から申請する必要がある。その後、受理されるまでに最低1週間は掛かる。

それをもう既に全て終わっているとなると、かなり前から計画していた事がわかる。

 

 

「こいつがデータを盗もうとしていた事実は変わらない訳なんだが、如何せん調子狂うな。」

 

「ですわね…私も、このタイプの人間に出会ったのは初めてですわ。」

 

シャルルの性格を知り、もう既に関わりたく無くなってきた一夏。

己の専用機を狙っていたスパイの筈なのに、そんな事どうでも良いと言われた訳だ。

処遇を決めなければいけないのだが、決めかねているという状況になった。

 

「処分は面倒だし追々で良いか?スパイってのは事実なんだし。」

 

 

「まあ、そうですわね。このまま害が無いのならそうしましょうか。」

 

 

一夏もセシリアも、面倒になりながらもそう締め括った。

 

 

 

 

 

 

 




この作品でのシャルル…シャルロット・デュノア。
日本に来る前から亡命準備を既に終わらせて、デュノア社から退職金代わりにR・リヴァイヴ・カスタムⅡをぶんどった人。




まあ引き取られてテストパイロットを強要されて、男装されられてデータを取って来いなんて言われればね




ちょこっと手を加えた

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