蒼白コントラスト   作:猫パン

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前回投稿からそんなに時間たってないよねw
前回は昨日の朝9時だし。


第二話

 

 

 

そして時刻は昼休み。

何かと付けてシャルルから逃げていた一夏はセシリアを連れ、人気のない屋上の隅の方に居た。

疚しいことをするわけではなく、今から話す事をを人に聞かれたくはない故にだ。

 

「呼び立てて悪いな、ちょっとあの転入生(シャルル・デュノア)について不審な点が2、3あったからな。」

 

「それで理由付けしてデュノアさんから逃げていたんですのね、不安そうな顔でしたわよ?」

 

授業が終わり次第、無駄に洗練された技量でシャルルの視界から消える。そんなことをしながら、一夏は結局昼休みになっても未だにシャルルと話していない。

 

「で、今日はデュノアさんの事ですわね?」

 

「ああ、お前なら確信しているだろうからな。

あいつが男装女子だと。」

 

一夏もセシリアも、シャルル・デュノアという人物を間近で見たときから違和感を感じていた。

故に一夏は気配を消し、シャルルを遠目から観察していた。そこで分かったことは、明らかに男を演じている感が滲み出ていた事だ。

 

「取り敢えずは泳がせて見ようかと思う、あいつが行動を起こしたら現行犯で取り押さえれば良いからな。今日からは一応普通に接してみるか。」

 

「ですわね、ではアイン?」

 

納得したのかしていないのか、そんなことはどうでも良いと言わんばかりのセシリア。

そのままの流れで一夏の腕へと抱き付く。

その事に若干戸惑う一夏だが、満足そうに笑みを浮かべる。

 

「では、戻りましょう?私達、お昼がまだですし。」

 

「そうだな、先ずは腹ごしらえといこうか。」

 

そう言うと歩き出した。

因みに後日新聞部副部長により、写真が撮られていたり。それを一夏が奪取したり等が起きたそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

その夜、一夏は自室に居た。

ベットが2つあり、現在までは一夏が1人部屋を謳歌していた場所だ。何故過去形なのかと言えば、一夏が部屋に戻ってくる道中まで遡る。

 

 

「あ、織斑君!見つけました!」

 

「ん?山田先生、どうしたんですか?」

 

真耶に呼び止められた一夏。

そしてその手に持つ書類をチラッと見る。それは……

 

「はい、えっとですね。今日転入生のデュノア君が来ましたが、部屋が足りないんですよ。

今日入ってきたデュノア君の為に1人部屋を用意するのは、時間も足りなくてですね。織斑君の部屋に相部屋という形になりますが、良いですかね?」

 

「まあそう言うことなら、良いですよ。俺もちょうど話し相手が欲しかったところですし。」

 

思っている事とは裏腹に、誰が聞いても納得するような事を言う。実際のところ、事実探しなのだが。

 

「ありがとうございます。では夕食後に連れていきますね。」

 

「はい、了解です。」

 

 

 

そんなこんなで現在は夕食後。

つまり指定された時間なのだ。

 

コンコンッ

 

ノックが響く。

つまりはちょうどやってきたのだろう。

ドアが開き、件の転入生、シャルル・デュノアが入ってくる。

そうして入ってくるなり、

 

「ようこそIS学園へ、シャルル・デュノア君。歓迎しよう、盛大にな!」

 

「あ、うん。」

 

両腕を広げとてもイイ笑顔の一夏を見て、物凄く反応に困ったシャルルだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

       ーーーー△ーーーー

 

 

「改めて、俺の名は織斑一夏だ。一夏と呼んでくれれば幸いだ。同居人として、よろしくな。」

 

「あ、えっと。僕はシャルル・デュノア。シャルルで良いよ。改めてよろしく、一夏。」

 

ぎこちない雰囲気から一転、一夏が自己紹介をした為にそれに合わせるシャルル。

一夏のなかでは先程の事は無かったことにしており、少々固くなるシャルルに対して苦笑いが浮かんでいた。

 

そんな緊張を解す為か、一夏は紅茶を入れる。

その仕草は洗練され、宮廷御抱えの執事だと言われても遜色はない位。

近くで見ていたシャルルも、若干顔を赤らめていた。

 

「お待たせ。若干緊張しているようだからな、ダージリンを淹れてみた。」

 

「ありがとう……あ、美味しい。」

 

リラックス効果のあるダージリンを飲んだ為か、徐々に緊張も解れていくシャルル。

だが同時に何故、という疑問が浮かんでくる。

シャルルから見て一夏は、どう見ても日本人。

そこまで紅茶文化が浸透していない国だ。

にも関わらず、一夏が紅茶を淹れるのに使った茶器は明らかに本場のもの。

それに仕草も日本では習わないような、本格的なものだった。

 

「ねぇ一夏、一夏って日本人だよね?どうしてこんなに紅茶を淹れるのが上手なの?」

 

「あー……6年位イギリスに居たからな、その時に習った。」

 

実際はセシリアの為と言っても過言ではない。

主席代表候補なんて呼ばれてはいるが、セシリアは貴族の令嬢なのだ。常に側に居た一夏は執事の真似事もしたことがある、その時に作法が出来なければ恥をかくと思い習得したのだ。

と言っても紅茶自体はセシリア直伝なのだが。

 

「そう言えば一夏。一夏って放課後に訓練しているって聞いたけど本当?」

 

「なんだ藪から棒に。まあ、毎日やらなきゃ鈍るからな。一応やってるが。」

 

訓練と銘を打っているが、実際のところはISを使わない組み手に近い。

ISは1種のパワードスーツであり、本人の技量に左右される。故に生身でもある程度戦えるようになれば、ISに乗ったときでも技術向上が見込めるのだ。生身で出来ないことがISに乗った途端に出来るかと言われても、出来る人は少ないだろう。

 

「僕も参加して良いかな?一応代表候補生だし、少し位は役に立てると思うんだ。」

 

「大歓迎だ。最近マンネリ化してきたからな、新たな風が吹けばそれも変わるだろう。」

 

一夏の言う通り、訓練とは名ばかりのセシリアと一夏の組み手である。だがそろそろネタ切れが近いのだ。スパーリング、CQC、剣術等など、出来そうなものは一通りやったが2度目以降は飽いて来るものだ。

 

「うん、任せてよ。」

 

「ああ、よろしく。」

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

「えっとね、少し整理させて? 一夏は初心者何だよね?」

 

「ああ、(書類上は)初心者だな。」

 

シャルルが転校してきてから5日が経ち、今日は土曜日。土曜日はアリーナが全開放されほとんどの生徒が実習に使う。一夏もそれは同じこと。

今日はシャルルと、ISを使った肩慣らし程度の軽い手合わせをしていた。

そんななかシャルルは一夏へと視線を向け……

 

「一夏がここまで強いなんて、僕聞いてないんだけど。ていうか何あの軌道!?何で瞬時加速(イグニッション・ブースト)中に曲がれるの!?普通は無理だよ!!あんな軌道したら内臓逝っちゃうからね!?」

 

叫ぶシャルル、無理もない。

戦闘中に一夏は、シャルルの射程圏外からスタートした。そこまでは普通なのだが、そこから一夏は瞬時加速をし、その最中に軌道を曲げたのだ。何て事はないと思うだろうが、本来瞬時加速は直線的にしか進めない。それは使用中の空気抵抗や圧力等が原因で、無理に曲がろうとすれば内臓や骨にダメージを負う。

 

「地面に剣でも刺せば、それを支点に回れると思うぞ?」

 

「そんな事してなかったよね!?それに一夏はずっと空中に居たじゃん!?何言ってるの!?」

 

実際のところ一夏は、瞬時加速中に別方向へと瞬時加速をする事で曲がっていた。二重瞬時加速の応用だ。これも判断を誤れば同じことになるのだが、割愛しよう。

判断力を欠いたシャルルに対し、最高速度を保った一夏が接近し即効落とされたのだ。

 

「デュノアさん……そんなに叫んで疲れませんの?私にその元気を分けてもらいたい程なのですが。」

 

「疲れるよ!?むしろ僕の方が元気を分けてほしいよ!というかもう疲れすぎて訓練できないよ!」

 

疲れきったシャルルに口撃するセシリア。

それに対して反撃するも、それ以上何もできずにへたり混むシャルル。

するとそこに……

 

「ねえ、ちょっとアレ……」

 

「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」

 

「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど……」

 

急にアリーナ内がざわつき始める。

そこにいたのは、ドイツ代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒだった。転校初日以来クラスに馴染み、以来マスコット的存在になりつつある。若干天然が入ったその性格に、心惹かれる人が多いとか。そんな件の彼女ラウラは、徐々に一夏達へと近付いていく。

 

「むっ……セシリアに用があったのだが、他にも居たのか……」

 

「あら、久し振りですわね。ボーデヴィッヒ少尉。」

 

ラウラの探し人はセシリアのようで、来て早々に他にも居て戸惑ったようだ。

だが物腰の柔らかさに近くに居た人全員、ほんわかしていた。

 

「ああ、久し振りだなオルコット中佐。だが私は今は少佐だ。」

 

「なら私も訂正を、今はもう中佐ではありませんわ。我が部隊(Strayed)は解体されましたし。」

 

「ならアインザックもか?」

 

「ええ、アインも既に軍属ではありません。」

 

そう聞くと少々落胆したかのような表情を浮かべるラウラ。彼女にとっても、Strayed部隊は思い入れがあったらしい。

 

「とても残念だ。また合同作戦でも、と思っていたのだが。」

 

「そう言ってくださるだけで、部下も喜ぶ筈ですわ。」

 

そう言ったセシリアの目には、悲壮感が込められていた。

それを感じ取ったのか、一夏も近付いてくる。

 

「大丈夫だセシル。悔いは無いと、あいつらは言っていただろう?」

 

「……はい」

 

そんな2人を見て、ラウラは悟った。

部下の死、そして己の失言を。

 

「すまない、軽率な発言だった。」

 

「いや、良いんだ。そう言ってくれる程、あいつらは優秀だったんだ。それを俺らは誇りに思う、それが手向けだ。」

 

先程とは打って変わって暗い雰囲気が流れる。

そして置いてかれてるシャルルは、何の事だかさっぱりな為首を傾げていた。

 

「さて、暗くなっててもしょうがない。ところでラウラ、何か用事でもあったんじゃないのか?」

 

「おお、そうだった。セシリアに1戦申し込もうと思ってな。」

 

「私に……ですか?」

 

その一言によりセシリアは首を傾げる。

戦いを挑まれる理由が見つからないからだ。

一夏程戦闘凶という訳では無いので、争わないならそれで良いと考えるセシリア。

だが……

 

「ああ、純粋に今の技量で何処まで通じるか試してみたくなってな。世界で有数の実力者で、尚且つ次期国家代表とも言われる程だ。挑みたくもなるだろう?」

 

「ふむ、わからなくはないな。」

 

「アイン!?」

 

予想外の切り返しに声をあげて驚くセシリア。

唯一の味方の裏切りに会い、仕方ないと言わんばかりに溜め息を吐く。

 

「わかりましたわ……1戦だけですからね?」

 

「感謝する。既に根回しは終わっているから、管制室に一声掛けるだけで良い。」

 

「拒否するだけ無駄と言う奴ですわね。知ってますか?ラウラさん。そういうのを事後承諾と言うのですよ?」

 

「そうなのか?」

 

ラウラの返答に落胆するセシリアを他所に、一夏は早速管制室へと連絡を入れる。

するとすぐに電光掲示板が切り替わり、セシリアとラウラの戦いが準備された。表示され、すぐに一夏はシャルルを引き摺る勢いでアリーナの隅に運ぶ。ここなら攻撃は届かないと思う場所へ。念のためISは纏ったままだが。

 

 

「それではラウラさん、行きますわよ。覚悟は宜しいですわね?」

 

「ああ。私が勝てるとは微塵も思ってないが、胸を借りるつもりで行かせてもらう。」

 

そう言う両者共に飛翔し、戦闘準備を開始する。

セシリアはライフルを構え、ラウラはプラズマ手刀を展開する。

 

『それでは両者、試合を開始してください。』

 

ブーッとブザーが鳴る。

 

その音と同時に両者は飛び出し、そして案の定……

 

「やぁっ!!!」

 

「はぁっ!!」

 

ギンッ!!

バチバチ

 

セシリアのライフルとラウラの手刀はぶつかり、激しいスパークを散らす。

一夏の刀とぶつかった時以上の激しさに、思わず顔をしかめるセシリア。

それもそのはず、ラウラの手刀は名前の通りプラズマを含む。放出される高出力のプラズマによって手刀は数万℃にも及ぶガスを噴出するのだ、如何に砲身が堅くとも金属である限り容易に溶断される。

それを瞬時に判断したセシリアは即座に距離を放し、切り札を切る。

 

「ッチ、そんな厄介なものを積んでいるなんて。でも、これで関係ないですわね。行きなさいティア!!」

 

「早速お出ましか、これで私の勝率は無くなったな。だが、最後まで足掻く!」

 

ラウラがそう言う。

それもその筈、セシリアが固有武装(ブルー・ティアーズ)を展開したときの勝率は99%である。一夏と戦った時以外は一切負けていないのだ、それに勝ち辛い戦法もある。

それは……

 

「4方向同時の偏向射撃。貴女に避けられますか?」

 

ラウラの四方を菱形状に陣取ったBTから、マシンガンのごとく放たれるレーザー。

その全てが自在軌道を描き、ラウラの周囲を守る(逃げ道を塞ぐ)様に展開される。

そこから飛び出るように、レーザーはラウラに向け飛んでいく。

セシリアが一夏以外に常勝無敗な訳。

接近戦が効かないと判断した途端に、BT4機をフル稼働した偏向射撃によって完封するからである。

それ以外にも、

 

「くっ!!」

 

「ほらほら、背中ががら空きですわよ?」

 

偏向射撃によって混乱している相手の周囲を旋回し、隙を見つけてはそこをピンポイント射撃もしてくるのである。

全方位から迫るレーザーを避けるのに必死になれば、セシリア自身のライフルから放たれるレーザーに撃たれる。

その他大勢の代表候補生の追従を許さない程の技量と実力、しかも試作機の専用機でそれを成しているのだ。これこそ、セシリアが主席代表候補生と呼ばれる由縁だ。

 

そうこうしているうちに、試合は終了する。

 

『シュヴァルツェア・レーゲンSEエンプティ、勝者セシリア・オルコット。』

 

 

完封勝利を果たしたセシリアは、優雅に降りてくる。反対にラウラは優雅さには欠けるが、その顔は負けたにも関わらず良い顔であった。

 

「やはり負けたか。いい線行っていると思ったのだが、悔しいな。」

 

「アイン以外に負けるつもりはありませんわよ?もしそんなことがあれば、私は主席代表候補生ではなくなりますし。」

 

4方向同時の偏向射撃、対象の周囲をレーザーが球体の様に多い尽くす技。

正式名称はBT四重奏(ブルー・ティアーズクァルテット)という。

これを唯一、一夏だけは攻略したのだ。

接近戦で拮抗する一夏に対しセシリアが使用したが、迫るレーザーを悉く切り裂き、無理矢理周囲のレーザー毎巻き込み瞬時加速二式で出てくるという荒業で。

因みにセシリアはイギリス政府から、一夏以外には負けるなと言われる程。

それほどに一夏とセシリアの実力は拮抗しているのだ。

 

 

「まあ、良い。後はもう少し喰らい付けるようにしなくては。では、邪魔をした。セシリア、付き合ってもらって悪かった。」

 

「いえいえ、こちらも良い経験になりましたわ。」

 

そう言うとラウラは元来た道を引き返していった。その顔は来たときよりも嬉しそうだった。

そして……

 

「ハッ!なんか今、物凄い光景を見ていた気が!」

 

「事実だから受け入れろシャルル、これから先やっていけないぞ?」

 

 

唖然として今の今まで呆けていたシャルルが目を覚ます。

夢であってほしいと願うシャルルに、無情にも現実を突き付けられる。

主席代表候補生は強いから挑んでも返り討ちだ。

そう呟かれる人物がいったいどれ程のものか、自分も挑んでみたいという気持ちがあったシャルル。だが目の前の光景を目の当たりにして思った、次元が違うと。

 

「まあいいか。ところでシャルル、俺は先に戻るがお前はどうする?」

 

「あ、うん。もう少ししてから行くよ。」

 

「了解だ。んじゃあセシルもまたあとでな(・・・・・)。」

 

「ええ、また。」

 

そう言って一夏はアリーナを後にし、自室へと戻っていった。

その足取りは軽く、そして……

 

「さぁて、出番だぜ。白式。」

 

 

 

 




追加設定のお時間です。

今回は、ブルー・ティアーズとユリについて。


2機ともに専用の改修が加わっており、瞬時加速等をするエネルギー用の外部バッテリーが付け加えられている。

そしてブルー・ティアーズにはそれとは別に拡張領域(バスロット)がかなり増築されている。後付け武装(イコライザ)としては予備のBT8機のみで、残りスペースは私物が満載である。




          ーーーー△ーーーー



ん?電話……紫眼(パープルアイ)からだと?


「もしもし?」

『隊長!俺を忘れないでくださいよぉ!!俺はまだ死んでまーー』
ブツ


「気のせいだ、良いな?」



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