蒼白コントラスト   作:猫パン

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取り敢えず完成。

なんとか原作二巻に入れたね。


第二章 話題の転校生編
第一話


 

 

無人機の件から1ヶ月経ち、学園もいくらか平穏が訪れた今日この頃。

クラス対抗戦については無人機の乱入によって中止となり、フリーパスを楽しみにしていたであろうクラス全員意気消沈していた。

その為一夏は学園長へ掛け合い、商品となる筈だったフリーパスを買い取った。

 

 

ーー△ーー

 

 

 

「みんな、すまない。優勝すると豪語しておきながらこの様だ。いくら俺でも中止になってしまった以上、この決定に従うしかないんだ。」

 

一夏は教卓へと上がり頭を下げ、腰を見事に90度曲げていた。

一夏が頭を下げている状況のなか、クラスはポツポツと一夏を弁護するような言葉が出てくる。

 

「いやぁ、流石にあれはしょうがないよ。」

 

「だね。あ、それはそうと織斑君、格好よかったよねぇ」

 

等々、この反応からして誰も一夏を責めていない事がわかる。だが、まだ一夏のターンは終わらない。更なる手札を切る。

 

「こんな不甲斐ない俺にそんな言葉を掛けてくれるとは。ありがたい限りだ。そこで、皆にお礼と言うかお詫びというか。用意したものがある。」

 

そう言うと一夏はポケットに手を入れ、あるものを取り出した。

そのあるものを見た途端、クラス中が騒ぎ出す。

 

「静かに。

これはクラス対抗戦の優勝商品だった物だ、故に本来なら俺が持っている筈がない物だ。それをなぜ持っているのか、疑問に思うだろう?」

 

うんうんと目を輝かせながらも、興味津々の一同。

何故?どうして?が飛び交うなか一夏は口を開く。

その一言でクラスが沸いた。

 

「学園長と交渉してな、適正価格で俺が買い取った。」

 

 

きゃー、と嬉しそうな顔をしながらも悲鳴が飛ぶ。当たり前であろう。悲願のフリーパスが今目の前にあり、手にしているのは自らのクラス代表。優勝は出来なかったものの、必ず勝ち取ると言った通りにそれを握り締めているのだから。

 

 

「これの有効期限は明日まで。流石に1人じゃこの枚数は消費しきれんからな、最初の宣言通りにしようと思う。」

 

ごくりっと誰かが唾を飲む音がした。

その音を皮切りに、各々が全力で悲鳴をあげる。

 

「きゃー、織斑君男前!!!!」

 

「同じクラスになれて良かった!!!!」

 

等々。

一夏にしてみれば嬉しい悲鳴というやつだった。

そうして一夏はフリーパスを教卓に置きながら……

 

「クラス全員分のフリーパス。

優勝は出来なかったが、これをもってクラス代表としての期待に答えられたと思う。」

 

 

そう締め括った。

この一件以降、一夏の株価は右肩上がりだそうな。

 

 

 

 

 

 

ーー△ーー

 

 

 

そんなこと等があり、現在は6月初頭の日曜日。

一夏は自室にて、とある書類とにらめっこしていた。

 

そこにはこう書いてある。

 

[(この書類は承認後、コピーされました。)

転入届け。

シャルル・デュノア

性別 男

フランス代表候補生

専用IS Rーリヴァイヴ・カスタムⅡ]

 

 

何故こんなものを持っているのか、疑問が浮かぶところだが。

一夏が気になったのが、添付されている顔写真。

そこに写っている金髪の美男子、それこそ一夏がわざわざこの書類を貰った理由である。

 

「男の操縦者……ねぇ」

 

一夏がISを起動したのが4年程前。

そこから世界中で男性の起動実験等が始まったが、全て失敗。

男性操縦者は一夏のみだった。

それが今更出てくる、そこが不明な点。

そして顔写真、一夏がどこをどうみても女なのである。

それに一番怪しいのが代表候補生という地位に、専用機持ちという事実。最近見つかったとしても、明らかに可笑しいのだ。

ずぶの素人だったとしても、数ヵ月で国が制定する代表候補生の基準に達するとは到底ありえない。

 

「まあ、これもまた面白い。」

 

もし一夏の推測通りだとすれば、転入してくるのは女。そしてこの格好からして男子としての転入だ。

だとすれば解は1つ、一夏に近付くため。

そしてあわよくば専用機のデータ、もしくは機体毎強奪する為だろう。

 

「なら対策は1つだろうな。」

 

そう言って一夏が手に取ったのは、初期化(フィッティング)最適化(パーソナライズ)も何1つとして行われていない一夏のもう1つの専用機。白式だった。

一夏の専用機……ユリの待機形態を見たことがあるのは千冬とセシリアのみ。

つまり、白式を腕にしていれば待機形態の隠蔽ができる。盗られても全く問題ない白式を表に出すことで、自身の専用機を隠す魂胆だ。

盗ったところで所有者のデータはおろか、稼働率のデータすらない。そんな機体を大事にする人間がいるだろうか。

 

「ま、これからよろしく頼むよ?白式。」

 

そう言って白式を撫でる一夏。

言葉とは裏腹に、とても黒い笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

 

「え?そう?ハヅキのってデザインだけって感じしない?」

 

「そのデザインがいいの!」

 

「私は性能的に見て如月のがいいかなぁ。特にスムーズモデル」

 

「あれモノはいいんだけど……ちょっと手が出せないよね。」

 

月曜日の朝、クラスではカタログを手にわいわいと雑談をする女子たちでいっぱいであった。

カタログはISスーツについての物であり、何処の会社が良い等の会話であった。

 

「そういえば織斑君のISスーツって何処のやつなの?見たこともない型だけど……」

 

「あー、これは特注品だ。確か……そう、確かムラクモのアームモデルが元になっているそうだ。」

 

ムラクモ。正式名称はムラクモ・ミレニアム。

女尊男卑が激しいこの世の中、世界で唯一と言っていい男女平等を唱っている企業。

 

ロボットに対するロマンを捨てきれず、何時かは男でもISに乗れると信じすぎるあまり、男性用ISスーツを作り出した。世界で唯一の会社だ。

 

 

「ISスーツは体表面の微弱な電位差を感知、増幅させてISの各部位にダイレクトに送っています。また、このスーツは一般的な小口径の拳銃程度の弾丸なら容易に防ぐことができます。あ、でも衝撃は逃がせませんので直接人体に伝わります。」

 

説明をしながら入ってきた真耶。

クラス中から数々の愛称で呼ばれる、その数8。

 

当の真耶は、先生と呼ばれない事に若干顔をしかめる。が、慕われているとわかると途端に笑顔となる。渾名で呼ばれても、悪い気はしないらしい。

 

 

「諸君、おはよう。」

 

「おはようございます!」

 

それまでざわついていたクラスが、千冬が入って来た途端に静かになり元気よく挨拶をする。

 

「今日からは本格的な実践訓練を開始する。訓練機を使用しての授業となるが、各人気を引き締めて怪我の無いよう。

各々のISスーツが届くまでは学校指定の物を使うので忘れないように、忘れた者は変わりに学校指定の水着で受けてもらう。

それも忘れた者は……まあ、後はわかるな?」

 

ギラッとした眼光で見渡す千冬。

この場合ISスーツも水着も無ければ、確実に下着でやることとなるだろう。

そうなれば唯一の男子である一夏に晒す事になる。

 

 

「では山田先生、ホームルームをお願いする。」

 

「はい。」

 

連絡事項を言い終えた千冬が真耶に交代する。

 

「嬉しいお知らせが1つ、今日はなんと転校生を紹介します!しかも2人ですよ!」

 

「え……」

 

『えええええっ!?』

 

いきなりの転校生紹介にクラス中が一気にざわつく。鈴の時は事前情報を仕入れられたのに、今回は全く無かった。故に情報網を掻い潜った事実に、驚愕を隠せない。

 

だが、入学してから半年足らずで転入生が3人。

その内2人は同じクラスという、普通なら分散させるものではないのか。

 

「失礼します」

 

「……………」

 

クラスに入ってきた二人の転校生を見て、ざわめきがピタリと止まる。その理由は見ればわかるだろう。

片方が男子なのだから。

 

「フランスから来ました、シャルル・デュノアです。この国では不慣れな事も多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします。」

 

転校生の1人、シャルルはにこやかな顔でそう告げて一礼した。

 

「お、男……?」

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入を――」

 

人なつっこそうな顔。礼儀の正しい立ち振舞いと中性的に整った顔立ち。髪は濃い金髪で首の後ろに丁寧に束ねている。印象は、『貴公子』という感じだ。

 

1人セシリアが怪訝な表情を浮かべ、シャルルを注視する。だが…

 

 

「きゃ……」

 

「はい?」

 

「きゃああああ――――っ!」

 

教室中に響き渡る歓喜の叫びに、咄嗟に耳を塞いで顔を青くしていた。

一夏も塞いでいたが、直で喰らったらしい。

顔が若干震えていた。

 

「男子!二人目の男子!」

 

「しかもうちのクラス!」

 

「美形!守ってあげたくなる系の!」

 

「地球に生まれて良かった〜〜〜〜!」

 

ときゃいきゃいはしゃぐクラス。

もう既に、一夏はダウンしていた。

音響爆弾よろしくな悲鳴が自身の後ろから、最前列の一夏は限界であった。

 

 

「あー、あまり騒ぐな。」

 

一言、たった一言言っただけで静まり返るクラス。この結果には一夏も、千冬自身も驚愕した。

千冬の、この調教結果に脱帽のセシリアも居た。

 

「ではもう1人にも自己紹介をしてもらいましょう。」

 

その声にバッと視線が向く。

もう1人の転校生はかなり異端だ。

輝くような銀髪を腰近くまで長くおろしてあり、綺麗に整えられている。そして左目にされた眼帯は医療用ではなく、黒い兎のエンブレムが入っていた。そんな彼女は腕組をして目を閉じていた。

 

「では、お願いします。」

 

真耶のその声が掛かった途端、閉じていた目を開いた。そして今の今まで結んでいた口を開く。

 

「ドイツ軍黒兎隊(シュヴァルツェ・ハーゼ)隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。軍の意向により、本日付けでこの学園に通うこととなった。今まで軍部の外に出たことがなく世間知らずだが、これからクラスメイトとして色々教えてもらえると助かる。」

 

掴みは上々と言った感じのラウラ。

満足そうに頷き、満面の笑みを浮かべる。

不意に一夏と目が合う。

 

「むっ」

 

確かな足取りで一夏の席へと近付いていく、周りは何をするのか怪訝な表情を浮かべる。

そんななかラウラは全く気にしない態度で口を開いた。

 

Nach einer langen Zeit Bücherregal, Ain Zach.(久し振りだな、アインザック。)

 

Es scheint, schwarzes Kaninchen zu tun.(そうだな、黒兎。)

 

突然の他国の言語に驚愕し、一夏がそれを使ったことにも驚愕するクラス。

理解していたのは、ため息を吐いていたセシリアだけだろう。

 

Hier nennt er sich einen Käfig Chika Murai.(ここでは織斑一夏と名乗っている。)

Zur gleichen bin ich nicht gut Deutsch,(それと俺はドイツ語が苦手なんだ、)Sprich, wenn die Japaner oder zu mir Englisch.(話すなら日本語か英語にしてくれ。)

 

「ああ、わかった。」

 

そう言うと、ラウラは教卓のところまで戻った。

終始頭に?が浮かんでいたクラスだが、そこはそこだ。瞬時に切り替わった。

 

「ではこれから1年間、よろしく頼む。」

 

「よろしくー!!」

 

このクラスの順応性は高く評価できる点だろう。

もう既に転入生と打ち解けている当たり、相当なものだ。

 

「よろしい。では自己紹介も終わった事だ、HRを終了する。早速授業だが、今日は2組と合同で模擬戦闘を行う。各々準備をし、第2グラウンドに集合だ。では解散!」

 

一夏は早速外へと出ていった、伝言を残して。

そもそもこの学園は元々女子高だったのだ、故に女子更衣室なんて存在しない。

つまり女子は全員教室で着替えるのだ。

 

「おい織斑……織斑はどうした。」

 

「あ、えっと。面倒事はパスなって言って、えっと……先に外へ行きました。」

 

その言葉に、千冬は持っていた鉛筆をへし折った。

額に青筋を浮かべていた為、周りの生徒は若干怯えていた。

 

「ッチ、あいつめ。逃げたか。まあ、良い。デュノア。」

 

「は、はい!」

 

「そんなに固くならなくても良い。男子更衣室まで案内してやる、着いて来い。」

 

そう言って千冬は歩き出した。

その後ろを少し遅れながらも着いていくシャルル。その顔は、若干の不安が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

       ーーーー△ーーーー

 

 

 

「では本日より、格闘及び射撃を含む実践的な訓練を開始する。」

 

「はい!」

 

合同授業では生徒数は何時もの倍。

故に何時もよりも気合いが入った返事だった。

 

 

「今日は戦闘の実演をしてもらおう。ちょうど専用機持ちが居ることだしな。凰!それと……オルコット!前へ出ろ。」

 

「「はい!」」

 

千冬に指名された2人は、人波を掻き分け前へと躍り出た。

 

「それでお相手はどちらに?この流れからして凰さんという事は無いでしょうけど。」

 

「ふふん、あたしとしてはそれでも良いけど?」

 

「慌てるな、時期に来る。」

 

そう千冬が言った途端、センサーが何かを拾う。

それは人形(ひとがた)で、何やら高速落下しているようだった。

 

Master, you have fallen something.(マスター、何か落ちてきます。)It falls with it as it is to master.(このままだとマスターにぶつかりますね。)

 

「ははっ、面白いジョークだユリ。」

 

そう言いながら一夏は1歩後ろに下がる。

ドカァン!!

その刹那、一夏が立っていた場所にその人形がぶつかる。

 

「ほら、ぶつからないだろ?」

 

It is a devil, master.(鬼畜ですね、マスター。)

 

落ちてきたのはISを装着し、目を回している真耶だった。

これが分かっていたからこそ、一夏は避けたのだろう。

 

「さあ、山田先生呆けてる暇はないぞ。」

 

「は、はい!」

 

千冬にそう言われ、慌ただしく佇まいを直す真耶。そのキリッとした表情は、先程まで目を回していた人と同一人物とは思えない。

 

 

「では始めるぞ。」

 

「え、2対1でですか。流石にそれは……」

 

鈴が反論をしようとするが、それを遮るように千冬が口を開く。

 

「安心しろ、今のお前ならすぐ負ける。」

 

「(ですわね」

 

千冬に便乗するように、だがかなり小声で呟くセシリア。

だが鈴は、負けると言われ癪に触ったらしい。

闘志をたぎらせて、今にも飛び出さんばかりの気迫だ。

 

「手加減はしない。全力で叩き潰すわよ!!」

 

「まあ、それは良いですけど……はぁ。」

 

「行きますよ2人共!」

 

闘志が溢れる鈴、対称的に気落ちしているセシリア。そして何時も以上に冷静な真耶。

反応は様々だった。

 

「では、始め!!」

 

号令と同時にセシリアと鈴が飛翔する。それを目視確認してから、真耶も空中へと躍り出た。

そしてそのまま鈴は真耶へと突っ込んでいった。

 

「はぁ……やはりこうなりましたか。まあ、負けたくは無いのでお覚悟を。」

 

そう言うとセシリアはライフルを構え、狙撃モードへ移行した。

 

 

「さて今のうちに……そうだな、デュノア。山田先生の使っているISの解説をしてみせろ」

 

「は、はい。山田先生が乗っている機体はデュノア社製『ラファール・リヴァイヴ』で、第二世代開発最後期の機体でありながら、その汎用性の高さから第三世代にも劣らないスペックを持っています。

現在配備されてる量産型ISの中でも世界第三位で、使い手を選ばす、各種戦闘スタイルに合わせて装備の換装が可能です。また……」

 

「ああ、その辺で良い。そろそろ終わるぞ。」

 

シャルルの解説を他所に、空中での試合は決着がついた。真耶の投擲したグレネードに落とされた鈴によって。

 

「はぁ……降参ですわ。」

 

そして上空では、鈴が落ちていくのを見たセシリアが両手を上げていた。

 

「良いんですか?オルコットさん。まだ戦える筈ですが。」

 

「いえ、山田先生。これはあくまでもペアの模擬戦闘です。凰さんが落ちた時点で、私の敗けですわ。」

 

落ちた鈴とは違う、流石主席代表候補生。

降参したとはいえ、まだ8割もSEを残していた。

鈴も決して弱いわけではないのだが、セシリアと比べてしまうと見劣りしてしまう。

 

「さて、これでIS学園の教員……そしてイギリスの主席代表候補生の実力はわかっただろう。以降は敬意持って接するように。」

 

鈴の傷口に泥と塩を混ぜて塗る行為を平然と行う千冬。流石に弁明の余地もない以上、鈴の弁護は2人共に出来なかったが。

 

 

「専用機持ちは……織斑、オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィッヒの5人だな。

よし、では8人グループになって実習を行う。織斑から各々出席番号順に別れて並べ!」

 

その後は専用機持ち達が指導を行い、基本的な歩行をした。

途中立たせたまま降りてしまった事案が発生した。一夏がよじ登り稼働させ、屈ませたうえで乗らせていた。

流石にふざけようものなら出席簿が飛んでくる為、真面目にやることとなる。

 

 

 




問題なのはシャルルとどう絡ませるかなんだが……


まあ書きながら考えよう。

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