そして以外な新事実!?
試合が終わり、一夏はピットへと戻ってきた。
出迎えたのは、何とも複雑な表情をした千冬だった。
「よくやったな織斑。色々と聞きたいことはあるが、まあ良い。着いて来い。」
そして搬入口前で止まる。
ここに、一夏に対し支給された専用機が置いてあるらしい。
ガコンッ
鈍い音と共にハッチが開いていき、ゆっくりとその駆体を晒す。
それは白だった。
「いやいや、ねぇよ。なんだこれは。」
機体を目にした途端、一夏は嫌悪感を露にした。
自身の機体の象徴でもある白色。
それを模倣したかのように同じ白。
「これは識別番号xx-01と呼ばれている。
名前は白式だ。」
「ふーん……で装備は……ブレード一本だけ!? ふざけてんのか?この機体。」
なんとこの機体、接近ブレード一本のみという。何ともトチ狂った機体だった。
基本ブレオンで戦う一夏の機体ですら、銃器の1つや2つ入っているというのに。
「しかも
「いや、開発元によれば
「いやいや。こんなもん初心者のデータ取りに使うには、ちょっとぶっ飛びすぎだわ。これは確実に熟練者の、それも
一夏は苦笑いを浮かべながらも指摘する。
設定上は初心者という事になっている一夏にとって、こんな色物を初心者に渡すことが信じられなかった。
「そう、初心者だ。本来ならこれを受け取ってから戦う筈だった、しかも初心者にしてはあり得ない機動で動いていた。この辺の事は説明が付かないのだがそれは……」
「それは機密事項ですので、教えるわけにはいきませんわ。織斑先生。」
千冬が疑問に思っていた事を聞こうとしたタイミングで、"丁度"よくセシリアがピットに入ってきて遮った。
「セシル、もういいのか?」
「はい。それほど修理が必要な箇所はありませんでしたので、エネルギー補給だけで済みましたわ。」
補給を終えたセシリアが一夏と合流する。
本来なら、千冬は無断で入ってきたセシリアを追い出さねばいけない所なのだが。
全ての事情を、それも千冬ですら知り得ない事を知っているセシリアを追い出せなかった。
「それで織斑先生。先生の疑問に思っていることはもっともなのですが、やはり最重要機密事項ですので、そう簡単には話せませんわ。」
「……だが」
「ですので先日、アインが言った筈です。1年半後……つまり林間学校の日まで待ってほしいと。」
その事を指摘され、押し黙る千冬。
いくら教師でも、そこまで言われたら素直に引くしかなく。
「分かった。今後一夏がどんな状況を作り出そうとも、根掘り葉掘り聞くなと。そう言うことだな?」
「ええ、分かってくれたようで何よりですわ。」
清々しいほど論破された千冬は素直に引き下がり、論破したセシリアは目線を白式に移し小さな舌打ちをした。
「では、アイン。さっさと受領して行きますわよ。」
「了解。では、織斑先生。言った通りこいつは貰っていきますよ。」
「ああ、分かった。処理は此方でやっておく。」
そそくさと立ち去ったセシリアの後ろを、一夏は無造作に引っ付かんだ白式を持って追いかけていった。
残された千冬は……
「はぁ……仕事が増えた。帰りたい、ビール飲みたい……」
かなり項垂れて、タレ千冬状態であった。
ーーーー△ーーーー
翌日の朝、SHRの時間。
「では、1年1組のクラス代表は織斑一夏君に決定です。あ、一繋がりで縁起が良いですね。」
副担任である真耶が嬉々として報告していた。
クラス代表を賭けて戦ったセシリアとの熱いバトルは見事一夏が制し、クラス代表の座を勝ち取ったのだ。
「織斑、就任の挨拶でもしてやれ。」
「派手に?」
「ああ、派手にだ。」
そう言うと一夏は立ち上がり、教卓へと上がった。
そして周囲を見渡しながら口を開く。
「クラス代表になった織斑一夏だ。個人的私情により、セシルと戦った訳だが。それで俺の実力は把握できたと思う。故にだ、クラス対抗戦は俺が出る限り優勝は確実だ!必ず、フリーパスを取ることを約束しよう!」
「ワァーーーー!!」
「あの実力なら優勝確実だよね!」
「やった! これでデザート食べ放題だ!!」
ただの挨拶、それだけでクラス全員からの支持を得た一夏。
満足そうに席へと戻る。
「異存が無いようなので、クラス代表は織斑一夏に決定する。では決まった事だ、授業を始める。」
ーーーー△ーーーー
「では、これよりISの基本的な飛行実演をしてもらう。織斑、オルコット。試しだ、飛んで見せろ。」
クラス代表決めの騒動から早数週間。
クラスに順応した一夏は現在、第一アリーナにて授業中である。
「はい!」
「了解。」
千冬に呼ばれた一夏とセシリアは、早急にISを展開する。
その間僅か0.5秒未満。
「よし。では2パターンの実演をしてもらう。
オルコットは普通に、織斑は出来うる高等技術だ。何がある。」
「むしろ何やれって……
「ああ、それで良い。」
言われた2人はそれぞれ準備する。
そして2人の周りが空いたのを確認した千冬は。
「よし、飛べ!」
ビュンッ
合図と同時に飛び出した。
そして一夏は、瞬時加速中に瞬時加速をする。
これが
かなりの速度を出し、セシリアを抜き去り止まる。
『オルコットが実演したのは瞬時加速だ、諸君にはこれを半年で物にしてもらう。そしてそれを昇華させれば、織斑のやった派生系も出来るようになるだろう。』
『はーい』
『良い返事だ。さて織斑、オルコット。急降下からの完全停止をやって見せろ。地上100㎜だ。』
「「了解(ですわ)。」」
言われて即実行。
しかも同タイミングで動き出すあたり、一夏とセシリアの相性が良いことが分かる。
2人同時にスラスターを吹かし、同じ様なタイミングで停止する。
「上手いものだ。諸君、急降下は出来なくても完全停止は物にしてもらうのでそのつもりでな。さて、次は武装の展開だ。織斑、やってみせろ。」
「了解。」
そう言って一夏は腰に手を当て、そして振り抜いた。
一切のタイムラグ無しに刀を展開、ご丁寧に鞘まで展開して。
「ふむ、指摘点無し。合格だ。次はオルコット、"接近用"装備を展開しろ」
「はい!」
次の瞬間には右腕が一瞬光り、戦闘準備モードのライフルが展開された。
「馬鹿者、接近用装備だ。お前がこれで接近戦をしているのは分かっているが、あくまでこれは遠距離用だ。」
「冗談ですわ。」
そう言いながら右手で掴んでいるグリップを放す、ただそれだけのことだけで右腕にナイフが展開された。
「インターセプター♪」
ナイフを展開した途端、セシリアの目が猫科の動物のようになりだす。
その様子を見た一夏は……
「セシル!」
「ハッ。あ、危ない所でしたわ……」
そう言ってセシリアはナイフの鞘を展開、刃に被せた。
「お前がライフルで接近戦をしてる理由が分かった。我を見失うのか。」
「お恥ずかしながら、その通りです。このナイフだけはどうしても……治す努力はしているのですが……」
セシリアは接近装備。特にインターセプターだけは、装備すると我を見失ってしまう。
むしろ刀身を見て惚けてしまうのだ。
「ま、良いだろう。時間だ、今日はここまで。各自体を休めておくよう。解散!」
ーーーー△ーーーー
時刻は夜、IS学園の正面ゲートにて。
「やっと着いたわね……IS学園。」
かなり体格に不釣り合いなボストンバックを持った小柄な少女が綺麗に結わえられたツインテールをなびかせ、右手に紙を持ち立っていた。
「本校舎一階事務受け付け……って!だからそれ何処にあるのよ! 案内板位立てなさいよ!」
どうやら迷子で癇癪持ちらしい彼女は、グチグチ文句を言いながら手に持っていた紙を強引にポケットへと突っ込んだ。
それが彼女の性格を表していた。
「はぁ……自分で探すしかないのね。」
若干気落ちした少女は足取り重く、トボトボと歩き出す。かなりの広さを誇るIS学園内を、初めて来た人間が案内無しに歩くのは至難の技。
「もうこんな時間ではありませんか。アインのせいですわよ?」
ふと声が聞こえ、1人の女生徒が訓練施設から出てくる。
少女は閃いたのか、場所を聞こうと考える。
「だからな?訓練に熱中し過ぎるセシルが悪いんだって。」
「いえ、そんなことありませんわ。アインだって、相当に楽しんでいたじゃありませんか。」
「だからと言ってだな……」
女生徒の後ろから続いて出てきた人物に戦慄を覚える少女。
「(だ、誰あの女の子!?」
幼い頃別れたっきりの人物が、今目の前で見知らぬ女の子を引き連れている。
それに愛称で呼び合っているという事実が、少女の心をキリキリ締め付ける。
そして程なく、事務受け付けは見つかった。
「それでは、手続きは以上で終了です。IS学園へようこそ、
手続きが完了した少女ーー鈴音は不機嫌ですと言わんばかりに顔に出ていた。
「織斑一夏って何組ですか?」
「ああ、彼? 彼は1組よ。凰さんは2組だからお隣ね。あ、そうそう。彼、クラス代表になったんですって。やっぱり織斑先生の弟なだけあるわね。」
一夏が聞けば憤慨しそうな台詞を吐く用務員を尻目に、鈴音は続ける。
「2組のクラス代表って決まってます?」
「えっと決まってるけど……聞いてどうするの?」
「お願いしようかと思って……クラス代表変わってって。」
その時の良い笑顔を、用務員は忘れられないという。
ーーーー△ーーーー
「と言うわけで。 織斑君、クラス代表おめでとう!!」
「おめでとー」
時刻は夕食後の自由時間。
一組全員が、寮の食堂に集合していた。
壁には『織斑一夏クラス代表就任パーティー』と書かれた紙が掛けられていた。
「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるね!」
「それに、これなら優勝間違いなし。ラッキーだったよね、同じクラスになれて。」
「ほんとほんと。」
何時のまにか、一組以外の生徒もチラホラ混じっている。
明らかにクラスの集まりを越えてしまっている。
「はいはーい、新聞部でーす。今話題の新入生、織斑一夏君に特別インタビューに来ました。」
そう言って入ってきたのは1人の女子生徒。
だがリボンの色からして2年生らしい。
「私は黛薫子、2年生。新聞部副部長をやってまーす、よろしくね。あ、はいこれ名刺。」
自己紹介をした薫子は一夏へと近付いていき、ズイっとマイクを押し付ける。
「では織斑君。ズバリクラス代表になった感想をどうぞ。」
ボイスレコーダーをグイグイ一夏に向け、無邪気な子供のような瞳で迫る。
「そうだな……俺が出る限りは優勝確実、フリーパスは俺がかっさらう。何か意見があるやつや、気に入らない事があるやつは何時でも掛かってこい。返り討ちにしてやる。」
「おー良いねぇその強気な発言。じゃあじゃあ次はセシリアちゃん言ってみよう。」
一夏の一言で満足したのか、セシリアへと矛先が移る。
「そうですわね……アインが代表なら優勝は確実ですし、何を言えば良いのです?」
「なら、皆が一番聞きたがってる事にしよう!」
そう言いながらメモ帳を取りだし、数ページ捲る薫子。
あるページで止まり、口を開く。
「えぇーっと……ズバリ織斑君とセシリアちゃんの関係について!」
ババンッと効果音が着きそうな言い方で詰め寄る。
2人にとって機密事項なため、どう言おうか迷う。下手に誤魔化しても、造語されたらそれはそれで終わりである。
「えーっと……そうですわね。昔からの知り合いと言えば良いでしょうか。アインとは本当に色々ありましたわ……」
そう言って思い出に浸るセシリア。
実際は単なる知り合いではなく、軍隊での同期であるのだが知るところではない。
「じゃあ最後に写真を撮ろうか。折角の専用機持ちだし、目立たせないとね。はいはい、2人とも並んで並んで。」
言われるままに横並びになる一夏とセシリア。
かなり慣れているのか、2人共堂々とした態度で臨む。
「じゃ、撮るよー。 はいチーズ!」
パシャッとデジカメのシャッターが切られた。
そして気が付く。
「皆さん……どうして入っている何て野暮なことは聞きませんが……どうやって入ったんですの?」
シャッターが切られる寸前で全員入ったらしく、セシリアはその行動に驚愕していた。
「ま、良いじゃないか。折角の思い出だしな。
さあ、残りの時間も少ない、派手に盛り上がるぜ!」
「おー」
さらに盛り上げる一夏が居たり、千冬が来て叱られたり。
そうして夜が更けていった。
鈴音登場。
実際はクラス対抗戦のイベントの引き立て役だったりw
そして主人公に嫌われる原作専用機。
やったね白式、登場することはあってももう二度と乗られる事はないよ。