蒼白コントラスト   作:猫パン

33 / 33


いやぁ、お久しぶりです。
高校を卒業し、無事就職しまして、たたでさえ亀更新なのに書く時間すら取れないですわ。


第三話

 

 

 

 

 

 

「…痛ッ!?」

 

全身を強打した痛みで目を覚ましたセシリア。

爆弾で吹き飛び背中から叩き付けられた為、その痛みは半端では無かった。

だが、頬を伝うその水滴に意識が向く。

自身に覆い被さるように倒れている一夏が、セシリアの目に入った。

 

 

「ゴフッ……気が…付いた、か…セシル。」

 

「アイン!?そ、その怪我!」

 

その紅い水滴は、一夏が口から垂らしている血だった。

そしてセシリアは、妙に腹部が濡れている事に気付く。

徐に視線を動かすと、一夏の腹部を貫いている鉄筋から血が滴り落ちて水溜まりを作っていた。

 

 

「アイン!今すぐに手当てをーーー」

 

「セシル…はぁ…はぁ…傷を焼き塞ぐ……その金庫から……バーナーと鉄棒を…ッ!」

 

「ですが!」

 

「早く!迷ってる…暇は無いッ。」

 

その鬼気迫る状況に、セシリアは一夏の下から慎重に退き金庫を開ける。爆発するまえから金庫内に物を仕舞っていたため、鍵は掛かっていない。

故に早急にそれを出す。

 

バーナーで加熱し始めたそれを見て、一夏も無理矢理動き始める。

未だ血が出るその体を仰向けにし、自身の腹部を貫いているその鉄筋を握り締める。

 

「ユリ。こいつを…抜いたら…生体再生……ッ機能を、フル稼働…させろ。」

 

OK, but ... in this wound it's time ...(了解しました、ですが…この傷では時間が…)

 

「焼いて…ッ塞ぐ!セシルッ!」

 

「はい!アイン、何時でも。」

 

その言葉を聞いた一夏は、持てる力の全てを使ってその棒を引き抜いた。

形容し難い激痛が襲い、その身から温もりが流れ出す。

 

「やれッ!」

 

刹那、そこから肉の焼けた匂いと血が蒸発する音が響く。

200度を超えた鉄棒を、無理矢理体に…しかも傷口に押し当てるのだ。

当然計り知れない激痛が駆け巡る。

 

 

「ッ!?ぐっぅううぅッ!!」

 

傷口とその周辺を焼きながら、それは塞がる。

だがそれは、かなり血を失っている一夏の体には途轍もないダメージになる。

 

 

「アイン!終わりました、これで止血は何とかできました。」

 

「はぁ…はぁ…ああ…ッありがとうセシル。」

 

腹部を押さえて、一夏はそう答える。

あくまで塞いだだけのため、痛みは消えていない。

 

 

「くッ、セシル。多分だが…アリーナの方で騒ぎが起こっている筈だ…」

 

「それって……亡国企業(ファントムタスク)!?」

 

「ああ、この…爆発も恐らくはな。」

 

こんな大規模な爆発を起こせる爆弾を調達できる組織など限られてくる、まして軍部だとしても爆発物を取り扱うのには相当な決まりがあるのだ。

こう安々と使えるとなれば、テロ組織位しか無い。

 

 

「俺も後から追い着く、セシルはあいつらの援護に向かってくれ。恐らく、林間学校の時に見たあいつが居るはずだ。」

 

「…!?サイレント・ゼフィルス!」

 

「あの機体は、あんな奴が使って良いモノじゃない。だから、頼む。」

 

「ええ。ですが、アイン?」

 

セシリアはちょうど良い感じに吹き抜けとなったその壁に向かって立ち、『ブルー・ティアーズ』を展開する。

 

 

「絶対安静ですからね?」

 

「ああ、今は(・・・)治すさ。」

 

その返答を聞き、セシリアはアリーナへと飛び去った。

 

 

『|Master. Please be at rest for at least 15 minutes.《マスター。最低でも15分は安静にしていて下さい。》』

 

「ああ。流石に分かってるよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

「流石はエムね。あれだけの人数を相手取って、陽動すら完璧に熟すなんて。」

 

サングラス越しにエムを眺めながら、金髪の女性は楽しそうに目を細めた。

 

 

「しかし、本当にたいしたことないわね。これなら簡単にーーーー」

 

「簡単にオータムを探せる?」

 

「っ!?」

 

突然の声に、女性は咄嗟に振り向く。

そこに居たのは…

 

 

「更識…楯無!」

 

「はぁあい。亡国企業(ファントム・タスク)土砂降り(スコール)さん。」

 

IS学園生徒会長。

ロシア代表更識楯無。

学園のトップ、生徒全員を統括する立場にある。

 

「さっきの言葉はどういう意味かしら?」

 

「あら、わからないのね。まあ良いわ、どっちにしろオータムは地下の特別監察室に居るのだし。」

 

「…どういうつもり?私に教えるなんて。」

 

楯無の意図を図る事が出来ず、スコールは聞き返す。

その言葉に楯無は、苦笑いを浮かべながら口を開いた。

 

 

「別に深い意図はないわ。そこにオータムが居るのは事実だし。だけどーーーー」

 

スコールはそのまま、楯無の言葉を聞かずに走りだした。

その続く言葉を、あと1秒待てば聞けたと言うのに。

 

 

「オータムが生きている保証も、貴女が無事辿り着ける保証も無いのだけれどね。何せあそこには………」

 

 

 

狂人が居るのだから。

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

「くっ!凰!援護してくれ!」

 

「おけぇ!任せて。」

 

たった1つの依り代を砕かれ、戦意も自我も何もかも崩壊したシャルロット。

そのシャルロットを守るように展開された盾に力を入れながら、全力でAICを展開するラウラ。

囈言のように呟くシャルロットと、エネルギーを全振りした簪。

戦えない2人を庇いながらの戦闘により、ラウラも鈴も余裕が無い。

 

訓練機である箒も、打鉄に搭載された盾をラウラの周囲に展開している。

 

だが2人の盾は実弾防御用の物であり、現在受けている攻撃はレーザー。つまりエネルギー防御が高くなければいけない。

 

そのため、段々と盾を削られていっている。

 

 

「ハッ!その盾ももう保つまい。役立たず等捨て置けば良いものを、何時までも庇っているからそうなるのだ。」

 

「黙れ!例えこの身が朽ちようとも、友を…戦友を見捨てる選択肢等、この私にありはしないっ!!」

 

「…フン。その言葉を、貴様の遺言にしてやろう。」

 

エムの持つ狙撃銃『スターブレイカー』から、収束されたレーザーが発射される。

先程まで受けていたものより強力な光線は、盾に当たれば容易に溶解させてしまうだろう。

だが…

 

 

『よく言いましたわ、それでこそラウラさんですわね。』

 

「っ!?この声は!」

 

次の瞬間、ラウラへと迫るレーザーを呑み込みながら強力な光線がエムへと向かった。

 

 

「ッチ!貴様、何故生きている!」

 

「セシリア!!」

 

アリーナのシールドに空いた大きな穴から、現在もチャージを続ける砲身を構えるセシリアがそこに居た。

 

 

『さあ舞い踊れブルーティアーズ。この学園に攻め入った事、骨の髄まで後悔させてあげましょう。』

 

 

セシリアの掛け声と共に、全12機のBITが一斉にサイレント・ゼフィルスを取り囲む。

そして、途切れる事の無い偏向射撃がエムを襲う。

 

何処へ逃げようとも必ず全方位から来るレーザーに、エムは攻撃を止め回避に専念せざるを得ない。

 

そんななかセシリアは…

 

 

『シャルロット・デュノア!!』

 

「っ!!」

 

『私はこの通り生きてここに居ます。ですが、貴女は何をしているのです?』

 

かなり低めの声で、シャルロットへと呼び掛けた。

見つめるその目は期待を含んでおり、絶対出来るという意思を訴えていた。

 

 

『立ちなさい!シャルロット・デュノア、貴女はそんなことでへこたれる人では無い筈です。目の前に敵が居るのに、貴女はそうやって塞ぎ込むつもりですか!?』

 

「………違う!!僕は……こんなところで立ち止まったりしない!こんなところで…負けるもんか!!!」

 

再び燃え上がった炎をその眼に宿し、シャルロットは力強く立ち上がった。

 

 

「援護するよラウラ!」

 

「ああ、待っていたぞシャルロット!」

 

ラウラと並んだシャルロットは、新たに盾を展開して地面に突き刺す。

そしてその盾から砲身だけを出し、ラウラは

対空砲火を開始する。

 

セシリアの無限に続く偏向射撃、そしてラウラの地上からの対空砲火。

レーザーと実弾が入り乱れながら、エムに襲い掛かる。

 

 

「ッチ!厄介な。こちらエム、スコール応答しろ。」

 

『ーーーーーーーー』

 

「スコール?」

 

避けることに専念している為攻撃は出来ないが、通話する余裕はあった。

だが、回線に入ってくるのは雑音だけだった。

 

その事に疑問に思い、少しだけ耳を澄ませる。

そして聞こえてきたものに、エムは驚愕した。

 

 

『ーーーーーーーー…ギャハハハハ、どうした!その程度か?亡国企業(ファントム・タスク)ぅ!!』

 

『ーーーーーーーーくっ!クソ、なんて力…』

 

何せ、スコールが向かったところでからは聞こえるはずのない戦闘音が、微かに聞こえてきたのだから。

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

楯無の前から去ったスコールは、大急ぎで地下5階特別監察室へと向かっていた。

 

電子警備の類は多々あったのだが、警備員は誰一人として居なかった。

 

それ故スコールが止まるのは、電子ロックが掛かったドアの前だけであった。

 

スコールに掛かれば電子ロック等、1分少々で解錠出来る。

故に然したる障害では無く、スコールが進む速度は変わらなかった。

 

 

そして1つの扉の前へと辿り着く。

特別監察室と名が入った、重厚な扉。

電子ロック、そして2つの鍵穴が付いている。

スコールにとってみれば、簡単すぎる程の鍵である。

ものの数分で解錠すると、その分厚い扉を開ける。

 

すると長い廊下が目に入る。

目標までもう間もなく、スコールは息が切れるのもお構いなしに走った。

 

 

そして……

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

「主任、こちらを。篠ノ之束監修、完全オリジナルのIS『ハングドマン(吊された男)』です。バトルライフルとショットガンを装備、背中にはお望み通りマスブレードを搭載しています。ジェネレーターには熱反射式水素プラズマ電池を使用、各部に取り付けてあるブースターも、既存の物とは大幅に性能アップを図りました。」

 

「良いねぇ、最高だよキャロリン!」

 

 

IS学園地下に設けられた特別監察室。

その部屋の前のただただ広い空間にて、キャロルと主任は居た。

特別監察室と名は付いているが要は牢屋であるその部屋を、2人は守護するように立っていた。

 

 

「それにしても、あの兎も良い仕事するね。俺の注文通りの物を作れるとは。」

 

「そこは賞賛に値するかと。ですがあまり褒めすぎないよう、ああいうタイプは褒めると付け上がりますから。」

 

「ま、人格破綻者だし仕方ないよねギャハハハハ。」

 

お前がそれを言うか、と言わんばかりの台詞を言う主任。

その主任の隣には、ISが置かれている。

 

種別としては重量二脚。

現在世にあるISとは一線を期す、全身装甲であった。

 

そもそもとして、ISには2種類ある。

一部を守る部分装甲と、名の通り全身装甲。

 

その明確な違いはコストという面もあるが、一番の理由は守る必要が無い為である。

ISには必ずSEと絶対防御と言う物が存在する。

装甲の部分が破損するが生身の部分は、当たればSEを消費するだけである。

そしてSEが尽きれば、絶対防御が発動する。

 

つまりこの2つがあるため、生身に損傷などあり得ないのだ。

故に全身装甲等どの機体でも採用されていない。

 

そんな機体が、この部屋にはあった。

 

 

そんな中、そこに息を切らしながら入ってきた1人の金髪の女性。

中央に立っていた2人を見て、ただただ驚愕を露わにする。

 

 

「な!?お前達はっ!」

 

その女性を見て主任は狂ったように笑みを浮かべ、手を広げながらISを展開するとこう言い放った。

 

 

「さあ亡国企業、見せてみなーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

お前達の力をさ。

 

 

 

 




設定




ハングドマン





束がコアから全て作り上げた主任専用機。

鬼カスタムされ、主任の要望を忠実に叶えている。
そのため、主任以外には乗りこなすことは疎かただ乗ることすらも不可能になった。


何故ISに乗れるのか

ネットワークに繋がっていない新規のコアだから。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。