キングハサンの素材集めが鬼畜過ぎて死にそうです。
今回はオリジナル要素が結構盛り込まれています。
ではどうぞ
「ご苦労だった、そいつはこちらで預かろう。」
セシリアが主任を連れてほぼ作戦会議室と化していた生徒会室へと入ると、一夏と千冬、楯無に加えてキャロルも居た。
そんななかセシリアは、絶賛引きずってきたそれをゴミのように部屋の中央へと投げた。
「また随分と派手にやったねぇ、これ。もう2度と歩けないんじゃ無い?」
「まあ、その辺はどうでも良いんじゃないの?別に。2人にも俺にも、関係ない事だし。」
楯無と主任が目の前に転がる『ゴミ』を見ながら、そう言う。
膝から下を両足共に切り落とされ、後ろ手に縛られ転がされている様はまさにゴミのようだった。まあ、正確には切り落とすではなく撃ち落とされているのだが。
「まあ、良いだろう。こいつのことは学園に任せてあるし、問題は他だ。」
そう言う一夏は主任とキャロルへと向き直り、その口を開く。
「2人がまだ残っている事が、俺にとっては今1番の疑問だ。」
「まあ、そうですわね。主任にはゴミ掃除を手伝って貰いましたけど…」
ハッキリとゴミと言い放ったセシリアに、千冬と楯無は苦い顔をしていたが、疑問は最もなので頷く。
「そうですね。私達は2人に重要事項を伝える為に、こうして残っているのです。主任。」
「ん?ああ、そうそう。アインとセシリンに上からの指令を伝えなきゃな。」
そう言うとふざけてる態度から一変、俗に言うマジモードとなった主任。
佇まいを直し、口を開いた。
「サー・アインザック・リステンバーグ、セシリア・オルコット。通達だ。2人には本日より、Strayed隊を再編し原隊復帰して貰う。」
「「了解!!」」
その時の2人の流れるような敬礼が、楯無と千冬は忘れることが出来ないでいる。
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翌日の朝。
HRにて。
「諸君、学園祭ご苦労だった。私は去年も1年の担任だったが、去年と比べてもかなり盛況であったのは確実だ。まあ、今年は唯一の男子生徒が居たのが主な理由だと思うがな。」
教卓へと立った千冬が朝の挨拶、並びに今日の予定などを言う。そして昨日の学園祭に出ていたクラス全員を労う。
そんななか…
「せんせぇ~そのおりむ~が居ませ~ん。」
「あ。よく見たらセシリアも居ないじゃん。」
1番前の席に座っている一夏と、割と後ろの方に座っているセシリア。
2人が居ないために、クラスも疑問に思いざわつき出す。
「あー…そうだな。織斑もオルコットも急に入った用事で3日程学園を離れる。昨日の時点で出立したから…明後日には帰ってくるだろう。だが、帰ってきても詰め寄らないように。」
「「「はーい!」」」
「よろしい、では授業を始める。」
そう言いながらも、千冬はその時のことを思い返していた。
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「具体的には本国イギリスで説明するから、荷物まとめてね。」
「……それは今すぐでないといけない事なのですか?」
疑問に思った楯無が、そう聞く。
楯無としては一夏とセシリアに聞きたい事があったため、どうしても今日でないといけないのかと。だが…
「当たり前です。この2人はかなり重要な立ち位置に居るのです、2人が居ないと何も始まらないのですから。」
「あ。話終わった?」
「主任。重要なとき以外もシャキッとしてくださいと、いつも言っている筈ですが。」
キャロルがそうツッコミを入れる。
呆れ顔では無いため、一種のお約束と化したやりとりである。
「んじゃ、そう言うわけで。出発は20時だ、準備しといてね?」
「了解ですわ、それでは失礼します。」
そう言うと、セシリアは生徒会室を後にした。
その去り行く背中を目で追いながら…
「じゃ、そう言う訳で会長さん。聞きたい事もあるだろうが、続きは帰ってからお願いします。」
楯無へそう告げた一夏は主任へと向き直り、敬礼をしてセシリアと同じように生徒会室を後にした。
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翌日。
一夏とセシリア。主任とキャロルは、イギリスへと到着していた。
4人が空港の専用口…所謂裏口から出ると、そこにはリムジンとそこに立つ1人の男性が居た。
「お疲れさまです、主任!指示通り回しておきました!」
「あー…ご苦労さん。」
男性が主任へ敬礼をして、主任は軽く流す。
普通の会社のような上下関係ならかなり失礼な事だが、主任はこう言う性格だと知れ渡っているため誰も気にしない。
「では2人共、これより本部へと参ります。まあ今更言う必要は無いかもしれませんが、主任と同じような立場の人間が多数居ますので失礼の無いよう。」
そのキャロルの言葉に頷き、2人はリムジンへと乗り込んでいく。
その様子を後ろから眺める主任とキャロルは…
「あの小さかった餓鬼共が、今じゃ軍部の中核とは……時が経つのも早いな。」
「ええ、そうですね。拾った時が懐かしいです。」
そうしみじみと呟きながらも、リムジンへと乗って行った。
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「サー・アインザック・リステンバーグ、出頭致しました!」
「セシリア・オルコット、出頭致しました!」
本部へとやって来た2人は、案内された作戦会議室に居た。
そして2人の視線の先には、イギリス軍部を統括する立場の人間……主任の上司がそこに居た。
「まずは急な呼び出しを謝ろう。
さて、主任から聞いていると思うが2人には復帰して貰う。新たな部隊ではなく、Strayed隊の再編。当然君達2人が隊長だ。それに伴い、凍結していた君達の階級も解凍する。サー・アインザック・リステンバーグ中佐、セシリア・オルコット中佐。君達の帰還を歓迎する。」
「「はっ!!ありがとうございます、アラン・ラングレー元帥!」」
一夏とセシリアが同時に口を開き、敬礼をする。一夏とセシリアの前に居る初老の男性。
齢60にして現役の軍人である。イギリス軍部全体の指揮管理及び、作戦立案を統括する実質的なトップに君臨する元帥の位を持った、一夏にもセシリアにとっても恩人である。
「良い、まだ正式な部隊員も決まってないんだからな。遅くても2~3ヶ月後には優秀な隊員を選抜しておく。そこから誰を引き抜くかは、お前達2人に任せる。今日は以上だ。新たなる階級証は後日送らせて貰う、後は旧宿舎にでも行ってこい。あそこを綺麗にして、再編したStrayed隊を置くからな。」
「了解しました。では、私達は失礼させて頂きます。」
そう言うとセシリアと一夏は再度元帥へと向き直りこう言った。
「「これからまた、お世話になります!!」」
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一夏とセシリアは、かつてStrayed隊が宿舎として使っていた第23区野営地へと来ていた。
野営地と言っても軍内部の施設である為当然建物はある。
2人はその建物の1階ロビーに立っていた。
「1年……いえ、もう2年前ですか。彼等が居たこの場所を、もう一度使う事になるなんて。」
「だがこれも巡り合わせだろうな。あいつらも喜ぶだろう、俺らが復帰してまた前線へと戻る。鍛えた部下達を見せて、俺らはもう餓鬼じゃない。1人前の…1人の兵士だと、あいつらに見せれば少しは安心して眠れるだろうさ。」
「そう…ですわね。死んでいった仲間達の為にも、私達は立ち止まる訳にはいきませんからね。」
しみじみと、この場所への思いを…想いを語る2人。
Strayed隊が解散して以来踏み入れていなかった
「俺達はこうして家に帰ってきた。そしてじきに
「ええ。第三次世界大戦とも言えるあの大規模な経済戦争は終わりましたが、未だISという戦争の火種は残っていますから……何時燃え上がるのか、分からないですからね。」
今でこそアラスカ条約によりISの軍事利用は禁止されている。
だがそれを律儀に守っている国など、日本以外には存在しない。
当時経済戦争に参加した国は、例外なくISを戦場に投入していた。
ISを数多く持っていない小国と強国。
ISを全く持っていない国も戦場には居た。
だがどちらにしろ、ISが戦場に出たのは事実。
イギリスも一夏とセシリアという2人の専用機持ちを戦場に出しているのだから。
故にまた戦争が始まらないという確証は無いのだ。
「さて、まずは片付けるかな。時間もないし。」
「そうですわね、明日には帰りますし…今日を逃すとまた2ヶ月以上は開いてしまいますからね。」
そう言って、各々に振り分けられるであろう部屋を掃除するところから始めた。
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一方その頃、IS学園では。
「失礼します。」
楯無は学園長室の、その重厚な扉を開けて中へと入る。
「ああ、楯無くん。待ってましたよ。」
厚いドアを開けそこに居たのは、穏やかな顔をした初老の男性であった。
女尊男卑であるため表向きはこの男性の妻が学園長をしているが、実際の学園長はこの男性である。
白髪で顔には相応のシワがあるが、柔軟さを感じさせるその人柄に『学園の良心』などと呼ばれている。
普段は用務員として働いているこの男性『
「では、報告お願いしますね。」
「はい。まず織斑一夏くんに関してですが…正直驚きました。私が想像していたものが軽くなる位、ビックネームな場所に所属していました。まさかイギリス軍だとは……」
楯無は何時もの調子を一切出さず、真面目な顔でそう言った。
「あの卓越した技術、技量、経験。どれをとっても凄いものでした。一緒に居るセシリアちゃんも……正直手玉に取られるとは思いませんでした。」
「ほう。楯無くんをして、そこまで言わせる程ですか。」
「ええ、気が付いたら縛られていました。織斑くんの実力も、恐らくセシリアちゃんと拮抗しているので……正直私では荷が重いかと。」
自身の意見を述べ、再度口を開く。
「次に亡国企業についてですが…少なくとも2機以上は機体を持っているでしょう。うち1機は……まあ、操縦者ごと捕まえているので問題は無いかと。ただ…両足共に膝から下がありませんが…」
「それは…織斑くんですか?」
「いえ、2人の上司にあたる方が引き起こしました。なんでも、高火力な対戦車ライフルを使ったみたいで……」
「それは…まあ。」
流石の学園長も、それには苦笑いを隠せない。
「以上で報告を終わります。」
「ありがとうございます。取り敢えずですが、もう少し警備を上げなければいけませんね。」
「そうですね、今回は簡単に侵入されてしまいましたから。」
その途端、張り詰めていた緊張が解ける。
「ではお茶にしましょうか、良いお菓子が先日手に入ったんですよ。君のお口に合えば良いのですが。」
「いえいえ。十蔵さんが選ぶお菓子に外れはありませんから、毎回楽しみにしてるんですよ。あ、そうでした。私だけというのもあれですし、今日はお茶を持ってきたんですよ。」
「おお、それはまさか虚くんの…彼女のお茶は美味しいですからね、これはいいお茶会になりそうですな。」
年甲斐も無くはしゃぐその姿は、70近い男性とは思えない。それに釣られるように楯無も笑う。もしこの場面を第三者が見ていても、祖父と笑う孫という風にしか見えないだろう。
まさかこの2人が学園のそれぞれの長だとは…
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「離して!離してちょうだいエム!オータムが、オータムがぁ!!」
「止めろスコール!!今行ってどうなる!主戦力が集結しているなか行ってもただの自殺行為だ!」
今にも飛び出しそうなスコールと呼ばれた女性を、必死に抑えるエム。
地に着いている足は少しずつ動いており、体格も相まってかなりの力を消費させる。
「それにあいつらは見る限り敵対者に容赦が無い、情報を引き出す為生かされているであろうオータムも…迂闊に浸入すれば殺されるぞ!」
「ック!!」
スコールは泣き腫らしグシャグシャになった顔でエムを睨むと、自身の部屋へと戻っていく。
本来ならこう言う場面では捕まった隊員は切り捨てるか、迅速に救出するかを選ぶのだろう。
だが敵対してどうなるか。実際オータムの身に起きた全てを目の前で見ていたエムにとって、再度学園へ行くなど恐怖しか無かった。
事前通告も無し。
ただ情報を聞き出す必要がある為に逃がすわけにはいかない。
そのためだけに両足を消し飛ばす場面を見ていたのだ、自身も捕まれば同じ目かそれ以上の目に遭う事となる。
エムにとってそんなものはご免だった。
「それにあれはティアーズ型プロトタイプ操縦者……イギリスの叡智の結晶が詰まった、謂わば
以前失敗した福音回収任務時に見たその機体を思い浮かべ、自身との技量差を痛感するエム。
「だが……この『サイレント・ゼフィルス』で、必ず……」
紫色に輝くそれを握り締め、エム はホテルから何百㎞と離れた場所にあるIS学園を睨み付けた。
スコールさんや、そのまま突っ込んだら死にますぜ