オリジナルってかなり難産なんですね。
すごい厳しいですw
次の日の朝、食堂にて。
一夏はセシリアと軽い雑談をしながら朝食を食べている。
いや、食べていた。
過去形なのは、もう既に2人共食べ終わっていたからである。
「でさ、セシル。」
「どうしましたの?」
雑談中に真剣な表情になった一夏に、セシリアは首を傾げる。
「いや、ぶっちゃけどうしようかなって。
ほら、俺ってISをまともに使ったことがない初心者(っていう設定)じゃん?」
「そうでしたわね……まだその件が残ってましたわ……」
そう言うことになっていると、世間を欺いているのだ。かなり法に触れそうなギリギリのラインの話し合いになる。
「(これから確実に、データ取りの為に専用機が送られてくると思うんだよ。俺としては。」
「(それは確実ですわね。動かせること自体は数年前に発表されましたが、既に専用機を持っていて実戦経験すらあるなど。軍事機密でしたからね。」
「(ああ、ただ動かせることが発覚しただけの一般人。っていう筋書きだからな。」
この2人は何て言うことを喋っているのか。
もう少し周囲に何もないところで話せば良いのに。
「(これからどうしよう、って事なんだが……」
そう言いながら、腰に差しているコンバットナイフ……『専用機の待機形態』を撫でる。
これが一夏が持つ専用機。タイプ56百合。
通称ユリである。
「(専用機が送られてくるのは確定。なら受け取ってしまいましょう?」
「(それだと2機持つことになるし、要らん厄介事とか絶対舞い込んでくる。」
「(なんとかしてくれますわよ、織斑先生が。」
なんとこのお嬢様、面倒事を全て教師に丸投げである。
そんな事されたら堪ったものではない。
「(それは流石に……姉さんが過労死するだろ。」
「(まあ、それもそうですわね。」
その言葉で会話が終了したらしい。
一夏とセシリアは各々の食器を持ち、立ち上がる。
「まあ、来たら来たで。
姉さんに言ってみるわ。」
「それが良いですわね。」
そして各々の食器を片付けに行った。
(何故だ一夏!何故私を誘わずそのような女を!)
その幼稚な殺気に振り向くのは誰もいなかった。
ーーーー△ーーーー
「というわけで、ISは宇宙での作業を前提に作られているので、操縦者の全身を特殊なバリアで包んでいます。これがシールドエネルギーです。
また、生体機能も補助する役割もあり、ISは常に操縦者の肉体を安定した状態に保ちます。
これは心拍数、脈拍、呼吸量、発汗量。脳内エンドルフィンなどがあげられます。」
「先生、それって大丈夫なんですか?なんか、体を弄られているみたいで怖いんですけど。」
疑問に思うのも無理はないだろう。
装着している間ずっと使用者の体を常に最高の状態で保つ、そう言っているのだから。
「そこまで難しく考える事はありませんよ。
皆さん、サポーターを一度くらいはしたことがあるでしょう。それで人体に悪影響が出るわけではありませんが、人それぞれ合ったもの着けないといけない事と同じです。
あっそれと、もう一つ大事なことは、ISにも意識に似たような物があり、お互いの対話ーーつまり長く一緒に過ごすことで分かり合う様になるので、搭乗時間が長ければ長いほど、IS側も操縦者の特性を理解しようとします。」
一夏はISを、かなり人間臭い機械だと判断する。
操縦者とわかり合うパワードスーツなどこれだけだろう。
「それによって相互的に理解し、より性能を引き出せることになるのです。ISは道具ではなくあくまでパートナーとして認識してください。」
パートナーと聞き、一夏の脳裏に浮かんだのはセシリアだった。
長年同じ部隊で戦ってきたから当たり前だろうが。
「では次の時間ではISの空中における基本制動をやります。皆さん、準備を忘れないでくださいね。」
チャイムが鳴り真耶が退出し、ここぞとばかりに一夏に群がる女子陣。
「ねえねえ織斑君さぁ」
「はいはーい、しつもーん」
「ズバリ、オルコットさんとの関係は!」
かなり捲し立てて聞いてくる女子たちに、一夏も苦笑いを浮かべる。
等の本人、セシリアも苦笑いであった。
「別の事なら答えるが、それでも良いか?」
「あ、じゃあじゃあ。織斑先生って家ではどんな感じなの?」
そう言われて暫し考え込む一夏。
一夏の記憶のなかで、千冬と暮らして居たのは家出する直前まで。
つまりそれ以前の記憶しかないわけで。
「案外だrッ!」
スパッ!
咄嗟に避けた一夏の頭があった場所を、
「余計なことは言わなくて良い。
それと休み時間は終わりだ。散れ。」
出席簿を投げてまで知られたくないことだったらしく、若干冷や汗が出ていた。
しかもそれが原因で一夏が家出をしたという過去を知られれば、かなり不味いことになるだろう。
「ところでだ、織斑。お前に政府から専用機が支給されるようだ。」
「え、専用機!?」
この話題が出た途端、一夏とセシリアの目が光った。
事前に予想していた通り専用機が送られてくる。
「一年のこの時期に!?」
「良いなぁ、専用機……」
一夏にとってはただの厄介事以外の何物でもなく、欲しいなら持っていけ位の気持ちであった。
「まあ、織斑の場合は状況が状況なのでな。
データ収集を目的としての専用機だ。」
完全な予想通りの答えが出てきて、一夏とセシリアは笑いたい気持ちであった。
「まあ、それは良いとして。織斑先生。」
「なんだ。」
一夏は早速この事を話すことにした。
「少し放課後に。報告と話したいことが。」
「? あ、ああ。わかった。
さて、山田先生。授業を始めるぞ。」
「はい。」
ーーーー△ーーーー
そして時刻は放課後。
一夏はセシリアを連れて生徒指導室へと来ていた。
「でだ、用件を聞こうか。一夏。」
「そう、だな。ならこれを見た方が早いな。」
そうして出したのは
千冬は目を細め、そして驚愕する。
「専用機……で? これを見せたこととオルコットがここに居ることと、何か関係でもあるのか?」
「そこで話したいことに繋がるわけだが。」
一夏は言葉を切り、朝セシリアと言っていた事を言う。
「朝、セシルと1つ予想をしたんだよ。確実に政府か企業のどちらか。両方でも良い、データ取りの為に専用機を送ってくるってな。」
「わかっていたのか……」
この返答は千冬にとって予想外だったらしく、少し驚いていた。
一夏が軍に居たことは秘匿されており、一介の人間。いくらブリュンヒルデだとしても、姉だとしても。その情報は掴むことが出来なかった事実だ。故に一夏の経験から基づく推測すらも、千冬の知らぬところである。
「そしてこれはセシルとの会話で出た案なんだが。送られてくるもう1機も貰ってやろうかと思ってな。」
「……な!?」
流石に千冬もこれには声をあげて驚いた。
個人が2機もISを、しかも専用機を所有する前例は過去1度もない。
それを実の弟がやろうとしているのだ。
「わかっているのか一夏、それがどういうことなのか……」
「ああ、百も承知だ。まあ、ぶっちゃけ貰ったところで使わないだろうが……貰えると言うんだから貰っておいて損はないだろう?」
一夏は、貰ったところで使う気は更々無かった。
何年も稼働していて愛着のある自らの専用機と、ぽっと出の新しい専用機。
どちらを使うかと言えば誰しもが前者を選ぶであろう。
「はぁ……面倒事を増やすな全く。」
「あら、生徒の解決出来ない問題は教師が解決するのでは無いのですか?」
ここまで口を閉ざしていたセシリアが口を開く。
朝言っていた通り丸投げするつもりらしい。
「グッ……あー分かった分かった。何とかしておく。」
正論を言われ論破された千冬は手を上げて肩を竦める。
「ところで、私も聞きたいのだが。お前たちの関係は何だ?愛称で呼び合って居る時点で、ただの知り合いって訳では無さそうだが。」
「あー……何て言うかなぁ。」
聞かれたことに答えようとした一夏だったが、軍事機密の塊である一夏の過去については早々喋れることではない。
しかもセシリアとの関係など、最重要機密事項であり言えない事であった。
「なあ、セシル。期限は何時までだっけか?」
「確か1年半。林間学校がある日までですわね。」
期限とはその日以降はその情報を一部の人間になら公開してもよい、というイギリスの意向だった。
「そう言うわけだ、姉さん。知りたいのならもう少し待ってくれ。」
「まあ、良いだろう。もしかして、その……付き合っていたりするのか?」
ボフンッ
その瞬間、セシリアは顔を真っ赤にして生徒指導室を走って出ていった。
「まあ、今の反応で分かる通り。付き合ってないさ。 今はまだ……な。」
「そうか……なに!?」
かなり意味深な事を言いながら一夏は生徒指導室のドアを開けた。
「んじゃあ、織斑先生。専用機の件、頼みましたよ?」
「ま、待て!一夏!」
「アデュー」
後ろで叫んでいる千冬を置いて、一夏は自室へと向かった。
「ア、アインと……つ、付き合ってるだなんて///そ、そんな風に見えるのかしら///」
セシリアは自室で顔を真っ赤にしながらぶつぶつと独り言を呟いていた。
ーーーー△ーーーー
そしてクラス代表決定戦の日となる。
「で、お前はどうするつもりだ?今から来る専用機を受領してから出るか、それとも出てから受けとるか?」
「待つのは面倒だ、俺は先に出る。
それに、セシルは既に待ってるしな。」
そう言いながらピットへと歩いていく一夏。
歩きながら専用機を展開する。
「起きろユリ、仕事の時間だぞ。」
『
一夏の専用機から響く声。
彼女は自律思考型AI ユリである。
「今日からまた毎日使うが……」
『
「とか言って、本当は嬉しいんだろう?」
そう言って茶化す一夏。
いくらか自律思考のAIでもこれに対する返答は……
『
持っていた……
完全な自己進化型のAIであった。
「ま、いい。相手はセシルだ、久々にな。」
『
「ああ、1年ぶりだしな。派手に暴れるぞユリ!」
『
ーーーー△ーーーー
「あら、本当にそちらで来たのですね。」
「当たり前だろ?俺の専用機は後にも先にも、こいつだけだしな。」
開口一番にそう言うセシリア。
事情を知らない人間からすれば何の事を言っているのかさっぱりであった。
「ユリ、今回は口出し無用だ。」
『
向かい合う一夏とセシリア。
機体面では完全に真逆。
完全近距離型と完全遠距離型。
潜り込むか引き離すのかの勝負、と予想できる。
「では、行きますわよ?アイン。」
「ああ、今度こそ黒星を付けてやるよ。セシル。」
そう言って武器を構える2人は最高速度で激突する。
ガキンッ!
周囲の予想を裏切り、一夏の刀とセシリアのライフル、『スターライトmarkⅢ』が鍔迫り合いの形になる。
一夏の袈裟斬り、横凪ぎ、上段切り。
全てに対応し、セシリアのライフルの砲身、若しくはストックの部分に当たり拮抗する。
「ああ、やっぱお前とやると楽しい。なぁセシル!」
「私もですわ! アインとやると、心が踊りますわ!」
剣撃と砲身のぶつかり合いにより、火花を散らしながら飛び回る2人。
試合はまだ、始まったばかりだ。
ーーーー△ーーーー
それから約30分後。
観戦しているギャラリー全員は驚愕を露にし続けていた。。
あのブリュンヒルデである千冬でさえも、唖然とした表情で画面を見ていた。
何故なら、
「オラァ!!」
「やぁ!」
接近格闘型と遠距離狙撃型が近接戦闘をしているのだから。
射撃攻撃が全く飛び交わないアリーナ内で、幾度となくぶつかり合う刀と砲身。
正直そんなことをすれば砲身が折れてしまう筈、なのだが。
シュンッ!
ギンッ!
折れる事なく撃ち合えている。
と、ここで場面が動いた。
「さて、時間も差し迫っていることだし。そろそろ決めるぞ!」
一夏はもう1振りの刀をだし二刀流で構え、
「そうですわね、名残惜しいですが。そろそろフィナーレと参りましょう!」
セシリアは全BT兵器を射出する。
「行きなさいティア!」
「行くぞユリ!」
2人同時に加速した。
今度は先程よりも更に速く。
ーーーー△ーーーー
「お、織斑先生。私は幻覚でも見てるんでしょうか……オルコットさんがライフルで殴っているように見えるんですが。」
「安心しろ山田先生。私にも同じものが見えているので、それは幻覚ではない。」
ピットのリアルタイムモニターで見ていた教師2人は、あまりの驚きに驚愕を隠せないでいた。
まあ、当たり前の事だろう。
ライフルは殴るための物じゃない、撃つための物だ。
その常識を目の前で壊されたのだから動揺しても普通である。
「っていうか何ですかあの機動は! 織斑君、とても初心者には見えませんよ!」
「そうだな、今の時点であのような機動などまず無理だろう。それに見てみろ……」
そう言って指を指した画面では、一夏とセシリアが丁度瞬時加速の発展系を使うところだった。
「
「だから驚いているんだ。
まあ……そろそろ終わりだな。」
ーーーー△ーーーー
「やっぱ楽しい時には終わりが来るもんだな。」
「そうですわね……あっという間でしたわ。」
そう言う両者の
恐らく一発当たれば勝負が決まるだろう。
「んじゃあ、次が最後の一撃だ。」
「ええ、終わりですわ。」
一夏が刀を構え、セシリアもライフルを構える。
そして……
「やぁ!!!」
「イヤァ!!!」
一瞬、交差して2人の立ち位置が入れ替わる。
その刹那、バチンッという音と共に機体が下がっていく。
それは……
『勝者、織斑一夏!』
セシリアであった。
あ、因みに追記の設定を。
タイプ56百合について
コア人格であり高度なサポートAIであるユリ。
マスター至上主義のお嬢さん。
因みに白を基調とした機体である。
セシリアのスターライトmarkⅢ
銃全体が一夏の持つ刀と同等以上の堅さで作られており早々壊れることはない。
あとセシリア可愛いよね。