蒼白コントラスト   作:猫パン

27 / 33
お久しぶりでございます。

最近感想が欲しくてたまらない私です。




多分次回で良いとこまで進めるかな。


第三話

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

現在箒は、束に言われた言葉が頭の中を巡り思考が行ったり来たりしていた。

束の言葉だけではこうならない為に1番の原因はやはり、一夏に負けたことであろう。

素人目に見ても箒が一夏に負けるのは至極当然であるのだが、箒はそう思って無かったためかなり堪えたのだ。結果、束の言う『誰よりも弱い』と言うものを自覚してしまい落ち込んでいた。

そしてフラフラと、彷徨い歩いていた。

 

 

「……ん、あれは…一夏と…」

 

偶然箒は、第10アリーナへとやって来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

時は遡り、翌日の朝早く。

一夏はこの学園で唯一生身での活動を前提に作られた第10アリーナへ、セシリアを連れてやって来ていた。

 

何処から嗅ぎ付けたか分からないが、客席は満席。シャルロットや鈴、ラウラの姿も有り、早朝の癖に人気である事が窺える。

 

そんな人気の2人がここのアリーナへとやって来た目的は、長期休み明け最初のスパーリングである。最近まともにやっていないと言うのが主な理由ではあるが1番大きいのが、ここでなら周りに迷惑を掛けず全力で出来るためだ。

 

 

「さて、ではルールの確認をしますわよ?刃物は無し、銃弾はゴム弾であること。それ以外は何でも有り、宜しいですわね?アイン。」

 

「ああ、問題ない。」

 

ジャコンッと、一夏は自身の手に持つ2挺のM1911(コルト・ガバメント)にマガジンを入れつつ答える。

旧式ではあるもののかなりの安定性を保ち、人気のこの銃。一夏は音を立てても良い場合は大抵この銃を使う。それほどお気に入りの一品だ。

 

一方のセシリアが使うのはS&WM39。

目立った特徴が無い為扱いやすく、セシリアが時々使い捨てたりするため、1番数多く持っている銃でもある。

主にセシリアの手にフィットするため多用されている。

 

 

「さあ、行きますわよ。覚悟は宜しくて?」

 

「ハッ、そっちこそ。痣が出来る覚悟は良いか?」

 

そう言うと、どちらからともなく動き出した。

 

 

「はぁ!!」

 

「ッぜや!!」

 

セシリアが繰り出す右ストレート。

それと同時に弾丸が飛び出し、一夏の顔面を捉えようとする。それを一夏の左ストレートが弾き返し、セシリアの耳元で止まる。

 

片手だけだが…見る人が見れば分かるだろう。

『ガン=カタ』と。

 

そして一夏の空いている右足の回し蹴りが炸裂するが、セシリアは避けて距離を取る。

この間10秒。

 

その後も攻撃は止まず、セシリアが牽制に一発撃つが、一夏はその拳銃に向けて回し蹴りをぶちかます。その結果、セシリアの手から吹き飛んだ拳銃は明後日の方向へと落ちた。

だがそのまま呆けるセシリアではない。瞬時に把握し、一夏の拳銃を同様に蹴り飛ばした。

 

 

「ッチ、精密射撃を封じても結局これか…」

 

「ふふ。アインばかり有利だとは思わないでくださいな。」

 

セシリアが2発撃っただけで銃同士の戦いが終了した。案外呆気ないのだが、この2人が銃を飛ばされたからと言って終わる筈も無く。

 

 

「はぁ!!」

 

「ッらぁ!!」

 

セシリアの全体重が乗った拳を受け流し、隙が出来たその体に手刀を叩き込む。その手刀を凌いで、その手刀の腕に掴み掛かる。その刹那…

 

 

「ッ!!」

 

何かに気が付いたセシリアが突然に距離を取った。その何かは、一夏が左手に持っていたM1911(コルト・ガバメント)。それが放った銃弾が通り過ぎていた。

 

何てことは無い。

一夏は最初から2挺持っていただけである。

一夏のスタイルは常に2挺の銃を所持し、戦闘中に吹き飛ばされた場合時間差で取り出して相手の油断を誘うタイプだ。それ故いくらセシリアが一夏と戦い慣れていても、銃を飛ばしたら丸腰にしか見えない為、油断してしまう事が多いのだ。

 

 

「クッ…やはり厄介ですわね、そのスタイル。」

 

「でもまあ、これで今まで割と生き残ってきたから辞められないぞ?」

 

「そうですわね、その点には感謝ですわッ!」

 

銃があり一夏が優勢、そう素人目には見える。

だがこの2人の場合、たかが拳銃1挺如きでは有利にも不利にも傾かない。

その点は一夏も承知している為、自らの地の利を捨てた。

 

 

「はぁ!!」

 

「ぜあッ!!」

 

結局銃を捨て、両者ともに無手で掴み合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

「そうか……まともに訓練していない私が1番弱いのは当たり前なのだな。どうして…今まで気が付かなかったのだろうな。」

 

アリーナの外。

通用口から出てすぐの廊下に備え付けてある大型ディスプレイの前で、箒は物思いに耽っていた。

 

束が言った言葉、一夏が行っている訓練。

そして一夏が示した力の本質。

その全てを見たわけでは無い。だがその末端に触れた箒は、己の過去…今までの言動、行動を振り返っていた。

自身が起こした過去は消えることは無い。

故に箒の心に、後悔となって刻み込まれるのだ。

 

 

「これなら、愛想尽きても仕方ない…な。」

 

実際箒は、一夏がセシリアと付き合っていることに薄々気付いていた。

見せ付ける事はしていなくても、常に一緒に居るために推測は容易い。

 

だが…それでも、と諦めきれなかったのだ。

幼少の頃から今までずっと想い続けていたのだから、その想いはかなり強かった。

だがその想いの強さが裏目に出た。

 

自分だけを見て欲しい。

そう思い気を引くことは悪い事ではないが、箒の場合度が過ぎていた。

 

一緒に居たい一心で一夏を連れ回し、用事も都合も考えず自身の都合に無理矢理付き合わせた。子供だからと言えば聞こえは良いが、交友関係を広げて遊びたい盛りの少年にとってみればただひたすらに嫌なことだ。

 

自身の思いが空回りし、唯々一夏に嫌な思い出を刷り込んでしまったのだ。嫌われる要素はあれど、好きになる要素等何処にも無い。

 

そしてこの学園に入ってからも、度々一夏に突っかかっている。いくら想いが強くとも好きになる筈が無いのだ。

 

 

ふと自身の後ろを見る。

準備室も兼ねているその廊下には、鍵付きのロッカーに入った多数の武器が備え付けられている。そのロッカーは一定以上の技量の持ち主には申告無しでパスワードが教えられ、それ以外の生徒も真っ当な理由や所属の部活によっては教えられるのだ。

 

箒が所属する剣道部も、剣術に使用する真剣の都合上教えられていた。真剣を所有する箒も例外では無く、刃物を納めるロッカーのパスワードは知っていた。

 

故に箒は徐にそのロッカーのテンキーを打ち、開くと迷わず短刀を手に取った。

 

 

そして……自身の象徴とも言うべきポニーテール。かなり小さい頃…それこそ一夏と初めて出会った頃。まだ擦れていなかった頃に一夏に貰った思い出のリボンで結わえた髪。

 

自身の心に抱く一夏への感情。

 

今までの自分。

それを象徴するその髪を…箒は未練を断つかの如く…

 

 

 

 

 

 

躊躇無く切り落としたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

放課後。

一夏とセシリアは呼び出しを受け、生徒会室へと足を運んでいた。

昨日の今日で何をするのかと警戒していたが、楯無の顔が昨日より80%増しで真剣そのものだったために、その警戒を解く。

 

 

「さて、忙しいなか来て貰ってごめんね?」

 

「いえ、先輩の方が忙しいのではないですか?そちらの山を見れば…」

 

そうセシリアが言った先には、机の上にこれでもかと乗っている書類の山だ。

50㎝近くの山が見える範囲に4つある。

紙の薄さはかなり薄いため、何枚あるかなんて見当も付かないし数えたくも無い。

 

 

「ま、まあ仕方ないのよ。生徒会はかなり忙しいのに人員が足りないし。ま、良いわ。それより2人を呼んだ理由はね……学園祭で、生徒会が主催する演し物に出て欲しいのよ。」

 

「何故です?」

 

一夏が何故と即答する。

正直出る理由が無いのだ。

一夏もセシリアもクラスの催し物に出るため、そんな時間は無いと考える。だが…

 

 

亡国企業(ファントム・タスク)。」

 

「ッ!?」

 

「それが学園祭に現れると言ってもダメかしら?」

 

「詳しく聞かせて貰おうか。」

 

その名が出た途端に、一夏は掌を返した。

亡国企業と言えば、裏ではかなり有名な組織だ。実態は不明だが、世界のあらゆる国に支部を持っているらしい。

 

今のところ把握出来ているのは自称実働部隊の構成員の顔と名前くらいだ。

 

 

「当日は招待券で外部の人が沢山この学園に来るけど…十中八九亡国企業も紛れ込んでくると思うのよね。」

 

「その情報の信憑性は?」

 

「そうね。首を落としたら人が死ぬ位?」

 

「つまり100%なのですわね?」

 

その問いに楯無は首を縦に振って肯定した。

一夏はため息を吐きながらも口を開く。

 

「で?俺達に何をやらせようと言うんだ?」

 

「観客参加型の劇って所かしらね。一夏君は世界でただ1人の男性操縦者だし、ネームバリューはバッチリ。ならちょっとした隙を見せれば…」

 

「餌に食い付くと。用は囮か。」

 

そゆことっと、楯無は笑みを浮かべる。

一夏は文字通り世界でただ1人の男性操縦者。

専用機もそれ専用であり、機体やパーソナルデータ等も世界を探してもただ1つだけである。

 

 

「そう。どうせ入ってくるのだし、分かり易い所に誘き寄せた方が楽でしょ?それに一夏君割と強いんだし。」

 

「まあ、そうだが……なんか納得いかねぇ。」

 

一夏的には、囮と言うのが気に入らなかった。

囮というのは自ら隙を晒す必要があり、面倒だからだ。

 

 

「あれ、乗り気じゃない?じゃあお姉さんが1つ報酬をあげよう。今も半分そんな感じだけど…学園祭が終わったら同室にしてあげよう。どう?」

 

「やりますわ!絶対やりますわ!良いですわねアイン?」

 

「ああ。少々面倒だが、完遂するさ。」

 

かなり興奮したセシリアと、ため息を吐きながらも承諾する一夏。

ため息を吐いてはいるが、その顔は笑みが浮かんでいた。

っとそこに、突然ドアが開く。

 

 

「お姉ちゃん、色々と調べたの持ってきたよ…って、タイミング悪かった?」

 

「いやナイスタイミングだよ、簪ちゃん。」

 

簪と呼ばれた少女は、手に大きな箱を持ちながら入ってくる。

青髪で紅眼。楯無と共通する所が多々あり、唯一の違いは眼鏡型ディスプレイの有無だろう。

 

 

「まず紹介するわね。私の自慢の妹、簪ちゃんよ。」

 

そう言われた簪は、手に持った箱を近場の机に置いて一夏とセシリアの方へと向き直る。

 

 

「更識簪です。この残念な姉(シスコン)が何時も何時もお世話になっているようで。大変ご迷惑を。」

 

「セシリア・オルコットですわ。…お姉さんには大変楽しませて貰ってますので、あまり気にしなくてもよろしいですわよ?」

 

何処の挨拶なのか最早分からない自己紹介を終え、今度は一夏へと向き直る。

 

 

「知ってるかもしれないが、織斑一夏だ。」

 

「知ってる。2人共凄く有名で、教室でも噂になってる。」

 

そう簪が語り出した噂は、どれもこれも的を得ていた。

曰く織斑一夏は学園に来てから負け無しであるとか。

曰くセシリア・オルコットは他には誰にも出来ないことを平然とやってのけて主席まで上り詰めただとか。

どれも真実であるため、苦笑を隠せなかった。

 

 

「…じゃあ本題に入るわよ?取り敢えず今日は劇から誘き出すポイントについて教えておくわね。まずは…」

 

 

 

結局この作戦会議は2時間以上続いた。

 

 

 

 

 

 

        

 

 

 

 

 

 

 

 




おや、箒の様子が…




設定




更識簪



楯無の妹

原作とは違い関係は良好。むしろ楯無の後方支援を主にやっている。
日本代表候補生だが、何気にISに乗るよりPCを弄っている方が好きらしい。
割と情報戦に強い。


あとドが付くほどのアニメオタクである。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。