蒼白コントラスト   作:猫パン

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少々短めですが問題は無いです。


あ、そうそう一昨日あたり第7特異点バビロニアをクリアしました。
石を7個程割りましたが最終的に120個あるので問題は無いですね。


第二話

 

 

 

 

 

 

「やあ。」

 

一夏が担任の千冬にクラス会議の報告を終え、職員室を出たところに1人の女子が壁に身を預けて待っていた。

 

 

「何か用ですか?更識楯無生徒会長サマ?」

 

「あれれ、何か警戒してる?言葉に棘があるよ。」

 

「本人の了承も得ずにあんなことをすれば、誰だって警戒すると思いますがねぇ。」

 

 

そう言いながら一夏はアリーナに向けて歩き出す。そこに極々自然な流れで楯無が横に並ぶ。

 

 

「で、本当に何の用です?俺も常に暇って訳でも無いのですがね。」

 

「んー…そうねぇ。昨日言ったじゃない?正式な挨拶はまた後日って、だからーーーー」

 

楯無が話を続けようと一夏の顔を見た途端、前方から竹刀を振り上げ粉塵を撒き散らしながら走ってくる女子生徒が目に入った。

 

 

「覚悟ぉぉ!!!」

 

位置的に楯無と女生徒の間に立つ一夏は、走ってくる女生徒の勢いを利用して投げ飛ばした。

 

 

「あら、お見事。」

 

「どう…も!」

 

そして倒れた女子生徒の首筋に一撃を入れ、気絶させるとそのまま寝かせる。

寝かせた直後窓ガラスが割れ、明らかに一夏と楯無の顔面を狙うように矢が飛んでくる。文字通り矢であり、先端は潰されていない危険なものだ。

それを一夏は首を傾げて避け、楯無は扇子で叩き落とした。

 

 

「少し借りるわよ。」

 

そして楯無は一夏が気絶させた女子生徒の竹刀を取り投擲、窓の外に居た射手の眉間を射抜くように当たりその意識を奪った。

 

 

「もらったぁ!!」

 

バンッと、掃除用具入れに潜んでいた3人目の女子生徒が両手に付けたボクシンググローブで楯無に襲いかかる。

 

 

「はい残念♪」

 

飛び出してきた女子生徒は首に打撃を受けて気絶し、そのまま楯無によって入っていた掃除用具入れにゴールした。

 

 

「で、これはどう言う状況?」

 

「えー、何も分からず迎撃したの?一夏君って案外酷い?」

 

クスクスと笑うその口元を扇子で隠す。そしてパサッと開いた扇子には、『冷酷無比』と書かれている。

 

 

「まあ簡単に説明するとだね、この学園は最強たるものが生徒会長なのさ。そしてそれを打倒すればその者が生徒会長になる。謂わば実力主義だね。君もどう?」

 

「遠慮しておく。」

 

「あら残念。」

 

話は終わったかのように一夏は歩き出す。

そしてさも当然のように楯無も着いてくる。

 

 

「では本来の目的を果たそうかな。今日の放課後、生徒会室に来てちょうだい。そこで改めて挨拶しましょう。織斑一夏君♪」

 

「はぁ…了解。」

 

今度こそ別れ、一夏はアリーナに向けて歩き出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

そして時刻は放課後。

一夏は生徒会室にて楯無と向かい合って座っていた。

 

 

「さて、じゃあ改めて自己紹介をしましょう。私の名前は更識楯無、この学園の生徒会長をしています。あ、こっちは秘書の布仏虚(のほとけうつほ)。君のクラスに居る布仏本音ちゃんの実姉ね。」

 

「布仏虚です。お嬢様にお仕えする…所謂メイドみたいなものですね。」

 

そう答えたのは虚。

眼鏡を付け、三つ編みを引っ提げた如何にもな人。

 

 

「ダメよ、虚ちゃん。ここでお嬢様はやめてよ。」

 

「すいません、つい癖で。」

 

そんな名家特有のやり取りを、一夏は敢えて見ていないことにした。

 

 

「で?本題は何です?まさか自己紹介をするためだけに呼び付けた訳では無いでしょう?」

 

「あら、少し気が早いわよ?。まあ、その方が好感は持てるけど。」

 

楯無は口元に扇子を当てながら笑う。

そして咳払いをすると、要点だけを話し始める。

 

 

「正直言って回りくどいのは好きじゃないから単刀直入に言うわね?織斑君が部活動に入ってくれないから苦情が殺到してるのよ。だから生徒会としては君を何処かの部に入部させないと色々とまずいのよ。」

 

「それで学園祭で俺が商品ですか…あまりそう言うのは好きじゃないんだがな…」

 

はぁっと溜息を付く一夏。

明らかに面倒事なうえに回避不可能だからだ。

 

 

「じゃあ交換条件はどう?これから私が後ろ盾になってあげる。だからーー」

 

「お断りします。」

 

楯無の提案を最後まで聞くこと無く、バッサリと斬り捨てる一夏。

そうして人差し指を立てながら続ける。

 

 

「そう言う勧誘は俺の経歴を全て調べ上げる事が出来てからお願いしようか。対暗部用暗部、更識家当主『17代目楯無』サマ?」

 

「ッ!?」

 

突然の一夏の発言によりバタッと席を立つ楯無。そして従者である虚も動揺を隠せない。

とある名家であるという情報は出回っているが、裏の情報までは深く調べなければ出てこないのだ。

 

 

「ど、何処でそれを…」

 

「あぁ、割と簡単だったぜ?ま、詳しいことは答えになるから省くがな。」

 

そう言うと一夏は席を立ち、扉に手を掛けた。

 

 

「じゃあな、会長さん。」

 

残ったのは唖然としながら一夏を見送る楯無と虚だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

ガチャ。

一夏が1日を終え、自室へと帰ってくる。

一夏にとって今日は面倒事が重なった激動の1日だった為、ドアを開ける手にも力が入り勢いをつけて開ける。

すると…

 

「お帰りなさいアイン。お風呂もご飯も準備が出来ていますわ、どちらになさいますか?」

 

一夏を出迎えたのは制服の上から蒼のエプロンを着けたセシリアだった。

だがそれよりも一夏は気になる事があった。

 

 

「それよりだな、セシル。あの…後ろの蓑虫はなんだ?」

 

そう、部屋の中央に天井から吊され藻掻いているものがあった。だが僅かにピクピクと震えているところを見るに、失神しているのだろうか。

 

 

「ああ、あの人ですか。アインの部屋に勝手に入った挙げ句、水着の上からエプロンなんていうマニアックな事をしていましたので少々。」

 

「何をされたのか非常に気になるが…取り敢えず降ろしてやれ。あの状況は、流石に見ていられない。」

 

「わかりましたわ。」

 

そう言うとセシリアはナイフを取り出し、天井へと続いているロープを強引に切った。

となれば吊っているものが落ちるのは必然、それは音を立てて落下した。

 

 

「グヘッ!」

 

潰れた蛙のような悲鳴を挙げ、床に叩き付けられて目を覚ました。

そして自身の状況を把握しようと体を動かすが、それが出来ないと知り慌て始めた。

 

 

「え?ちょっ待って、何これ!?なんで私縛られてる訳!?」

 

青髪を乱し、その紅い眼を驚愕で見開いている女生徒。その威厳は欠片も無く、唯々慌てふためく1人の少女…

 

 

「はぁ…何をしているんだか…会長さん?」

 

「あ、一夏君!この子可笑しいのよ!目が合った途端私を気絶させて、あまつさえ縛り上げたのよ!挙げ句の果てに専用機まで強奪したのよ!」

 

そう。

蓑虫となっていたのは楯無であった。

一夏の部屋でセシリアとバッタリ会ったのだろう。だが今やこの部屋に一夏の先導無しで入れるのは、合鍵を持つセシリアとマスターキーを持つ寮監の千冬だけだ。千冬は滅多なことでは部屋に来ない為、実質セシリアだけ。

故に楯無は不法侵入したとみなされるのだ。

 

 

「そりゃあ裸にも近しいそんな格好で人の部屋に入ってればな、誰だって通報か捕縛かのどちらかを選ぶと思うぞ。」

 

「それに鍵穴に傷が付いてましたので、ピッキングしたのはバレバレです。捕縛されて当然だと思いませんか?」

 

「うっ…」

 

セシリアと一夏、2人に論破され押し黙る楯無。言われた事が事実なだけに何も言えないのだ。

 

 

「あ、そうですわアイン。これ面白いですわよ。」 

 

そう言って取り出したのは扇子だった。

それをセシリアが開くと、また違った文字が書かれている。『意味不明』と書かれていた。

 

 

「ほらアイン、考えた事が簡略化されて文字になりますわ。」

 

「本当だな。どうなってんだ?これ。」

 

そう言って2人して楯無の私物である扇子を弄くりだす。

生徒会長の私物を、その本人を縛り上げて玩ぶ。そんな愚行は正直舐めているにも程があるのだが、その生徒会長が不法侵入をしていた為にそんな注意すらも出来ずに居た。

 

 

「も、もう私が悪かったから!謝るから許してぇ!」

 

一夏とセシリアの態度に耐えきれず決壊し、涙を流しながらそう叫んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

         ーー△ーー

 

 

 

「はぁ……落ち着きましたか?」

 

「エグっ!グスッ…うん。」

 

楯無が落ち着き、涙を止めるまで30分も既に掛かっていた。だが現在も扇子を抱きしめるかのように握りしめている、泣き止んだ直後の子供のように。それほどまで強烈に楯無の心を抉ったのだろう、今もなお涙目であった。

生徒会長は学園最強と謳っていたが、既に形無しである。

 

 

「それで?何故俺の部屋にそんな格好で居たのか教えて貰えます?」

 

「グスッ…うん。」

 

明らかに幼児退行しているようにしか見えないが、本人が大丈夫なら良いのだろう。

楯無は一夏に言われるがまま口を開いた。

 

 

「えっとね…一夏君に後ろ盾の件を断られたから、まずは仲良くなろうと思ったの…」

 

「それとその格好…何の関係が?」

 

「男の子はこうやると喜ぶって雑誌に書いてあったから…」

 

その言葉に、一夏もセシリアも同時にため息を吐いた。上級生…しかも生徒会長ともあろう人が雑誌の情報に躍らされていたのだから。

 

 

「はぁ……見ず知らずの人間に対しては逆効果ですわよ?特にアインなら尚更ですわ。」

 

「そうだな。まずハニートラップを疑うわな。」

 

2人の毒舌染みた正論に、再び目を潤ませる楯無。一度決壊しているため、かなり涙腺が緩い。その為かなり涙目状態であり、何時号泣してもおかしくなかった。

 

 

「まああれですわね、次は普通に来てください。忍び込んだりしなければ、普通に持て成しますので。」

 

「セシル…一応、家主は俺…な?」

 

「あら?鍵を渡したのはアインですわよ?だから問題無いですわ。」

 

楯無が眼前に居るにも関わらずいちゃつきだす2人。

実際セシリアは一夏の部屋の鍵を持っている、そして部屋の私物…その大体の場所も把握している。一応セシリアの部屋も別にあり一夏同様個室なのだが…実際ほぼ全ての時間を一夏の部屋で過ごしており、大半の私物もここにある。

半ば同室状態である。

 

だがそれを悟る人間は疎か、注意する人も居ない。稀に千冬が来るが、程々にしろよとしか言わない為黙認されている。

そもそも付き合っている者同士のため問題は起こらず、まず文句は出ない。そして必ず気配を殺してから来るため、誰もその存在を知覚出来ないのだ。

 

そうとは知らずに入った楯無にしてみれば災難を通り越す事件にも等しい程心に刻まれている、その当事者がいちゃついているのを見れば当然…

 

 

「……もう帰る!」

 

頬を膨らませ、顔を紅くした楯無は逃げるように去って行った。

見かけによらずこの生徒会長、以外と初心なのである。

明らかに痴女にしか見えない格好をしていたにも関わらずだ。

 

それが滑稽に映り、一夏もセシリアも同時に笑い出したのであった。

 

 

 

 

 

 

 




楯無…形無し…プッ




設定

一夏の部屋。

文字通り一夏の1人部屋ではあるが、セシリアが住み着いているため有名無実化している。
実質2人部屋である。


セシリアの部屋。

主席代表候補生であるため色々と機密資料も多い為に1人部屋が割り当てられている。
だが一夏の部屋に住み着いている為あまり意味は無い。


更識楯無。

学園の伝統通りに生徒内最強の為生徒会長を受け持っている。
セシリアに気絶させられて後から生徒会長としてどうかと相談に行ったが軽く帰された。
曰く面倒事は要らないらしい。

そして案外初心。
攻めは強い為裸エプロン等も出来るが、それを指摘されると途端に羞恥心が表に出て来て紅くなる。

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