リアルが忙し過ぎて辛いでございます。
今回で夏休み編…つまり第四巻は終了。
少しやっつけ感がありますが、次回から第五巻です。
ご馳走を食べ終えた5人は、片付けられたリビングにてキューブを囲んで座っていた。
キューブからはケーブルが伸び、それぞれの専用機を繋いでいる。
待機形態を体に付けたままでは厄介なことに接続できない為、全員手に持った状態である。
「じゃ、準備は良いか?」
「ああ、バッチリだ。不備は無い。」
「何時でも来いって感じね。」
それぞれが全員準備完了の旨を伝え、一夏は満足げに頷く。
そして、キューブのとある場所へと手を掛けた。
「じゃあ行くぞ?」
そう言いながら、起動スイッチが押される。
そして意識が薄れていくなか、全員が形式美的にこう呟いたのだ。
『リンクスタート!!』
ーーーー△ーーーー
幾重にも広がる真っ白い空間、そしてそこに鎮座する5機のIS。
5人が放り出されたのは、そんな空間だった。
そして何時の間にやら手に資料を持ち、何処からか取り出した眼鏡を掛けた一夏が口を開いた。
「さて、全員意識の混濁は無いな?無いことを前提に話すぞ。ここはVR空間内で、見ての通り何も無い。だが設定次第では何でもありに出来る。」
そう言いながら、一夏は手元を少しスライドする。
すると半透明状のキーボードが出現する。
それを一夏は軽快に叩く、すると周囲の景色が一変した。
この装置、この空間、内部外部問わずマスター権限を持つ一夏は空間内の造形を自由に変更できる。
「こんな感じに、洋上、市街地、密林、洞窟等々、色々なシチュエーションを体験出来る。そしてIS乗りなら誰でも憧れる専用機…他人のだろうが自分のだろうが、この空間内でなら乗りこなすこともできるだろう。」
一夏のその言葉に、セシリア以外の3人は驚愕を露わにする。
それもその筈専用機とは、一個人専用にチューンアップされた特別仕様の機体である。
乗り手は1人しか考えられておらず、設定から何から所有者独自の物となる。
それをいくらVRとは言え他人の機体を乗りこなすことも出来る等と言われれば驚くのも無理は無いのだ。
だがここはあくまでもVR空間である、謂わば仮想現実と言ったところだ。
専用機の外装から内装、設定から何から全てをコピーしてこの空間内に投影しており、誰が乗ったところで大元は変更されない。
故に他人の専用機を、この空間では自分が操れるのだ。
「さて、以下のことを踏まえて…乗ってみたい機体はあるか?」
「はいはーい、あたしは一夏の機体に乗ってみたい!」
さっそく鈴がいの一番と言った感じで手を上げる、そして希望したのは一夏の専用機『ユリ』だ。
この空間はVRであるため、一夏専用のサポートAIユリは居ない。
あくまでも外装と内装と設定などをコピーしただけなのだ、システムに潜む電子生命体であるAIは対象外なのだ。
とは言え設定は一夏が普段使っているものとなんら変わらない為、いくら代表候補生といえど厳しいものがあるはずである。
「まあ、乗るのは構わないが…甲龍とはだいぶ違うぞ?」
「大丈夫よ、あたしこれでも耐G訓練はかなりやってるのよ。」
そう言いながら、鈴はそそくさとユリに乗り込んで初期設定を始める。
そして、あろう事かフルスロットルで急上昇を試みる。
しかし…
「え?ちょっと待って!?速すぎ!!イヤァー!!」
そのあまりにも速い加速性能にバランスを崩し、数メートルも浮かないまま1回転して地面へと激突した。
「はぁ…全く言わんこっちゃ無い。」
「あはは…あれだよ、嬉しすぎて舞い上がってたんだと思うよ?」
「舞い上がって地面と抱擁していては、意味が無いと思いますけどね。」
シャルロットの弁護を、バッサリと両断するセシリア。自分の技量を弁えず、初めて乗る機体で急加速等やったのだから当然だろう。
「ところで…私も乗って良いのか?」
「あ、僕も良いかな?」
ラウラとシャルロットも乗ることを希望した。
2人共に純粋な興味が大きいようだ。
その足取りは確固たるものがあり、ラウラは『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』へ、シャルロットは『ブルー・ティアーズ』へそれぞれ向かった。
普段自身が乗る機体とはほぼ完全に真逆である、故にこんな機会でも無ければ2度と乗ることは無いだろう。
「ほう、面白い組み合わせだな。」
「そうですわね。特にデュノアさん、我がティアーズをどういう風に扱うか楽しみですわ。」
そう言う一夏とセシリアの視線の先では、機体に慣れようと四苦八苦している2人が写っている。
ラウラはその積まれた多種多様な武器の多さに慌て、シャルロットはブルー・ティアーズの扱い辛さに翻弄されている。
だが、流石と言うべきか代表候補生。
自身の機体とはコンセプトが真逆とはいえ、ものの数分で自由に動かせるまでになった。だが特殊兵装と多彩な武器までは使いこなせていない、そのため…
「行くよラウラ!」
「ああ、来いシャルロット!」
模擬戦をして、習うより慣れろを実践していた。
ラウラがオレンジ色、シャルロットが蒼色と普段と違うため少しシュールだ。
そんなシュールな光景も、本人達は必死である。ラウラはその多彩な武器の扱いには慣れないため取りこぼしたり、
一方のシャルロットも飛びながらのブルー・ティアーズの扱いに四苦八苦している。
普段から多彩な武器を取っかえ引っかえ使うシャルロットにとって、
その2機もスピードはかなり遅く、攻撃する時は自身が止まらなければ集中出来なかった。
そのために如何にセシリアが規格外の分割思考をしているのか実感できたのだ。
「クッ!まさか武器が多いとこれ程に面倒だとはな!」
「こっちもだよ!
そう言いながらも、2人は直接的な攻撃はしていない。否、機体操縦に手一杯で出来ないと言った方が正しいだろう。
その光景を尻目に一夏とセシリアはというと…
「さて、俺らもやるか。残ってるのは甲龍とレーゲンか…」
「あ、じゃあ私は甲龍に乗らせて貰いますわ。」
「ああ、じゃあ俺はレーゲンか…」
そう言いながら機体の元へ向かう2人。
そして乗り込み最初に行うのは武装の確認、セシリアは青龍刀を取り出し振り回す。
そして一夏は、重苦しいレールカノンを外すと身軽になり、プラズマ手刀とワイヤーブレードを展開する。
「ちょっと重いですが、まあ問題はありませんわね。」
「微妙にあれだな、俺には大型砲撃は合いそうに無い。」
そう言いながら、2人は構える。
セシリアは普段慣れない大型二刀流、そして一夏は滅多に使わない素手の構え。
そして、限界速度ギリギリで衝突し2本共に鍔迫り合いに持ち込む。
「クッ!やはり重いですわね、それに2本等性に合いませんわ!」
「全くだ。手刀等ほぼ使わないからな、重さが攻撃に乗らん!」
初めて乗る機体、そして自身とは全く違うコンセプトな為四苦八苦する一夏とセシリア。
そんな状態にもかかわらず剣擊が衰えていないところを見るに、2人の技量の高さが窺える。
大型の青龍刀2振りと手刀が火花を散らし、その刀身を削る。
「しかし、慣れない機体ってのも楽しいな!」
「そうですわね、慣れないからこそ楽しめますわ!」
そう言うセシリアは、威力を絞った龍砲を発射する。だがその数は多く、チャージ時間を減らした結果かなりの連射速度を誇っている。
鈴が所属する国家…中国の技術者が見たら驚愕ものだろう、一撃の威力を求めた龍砲を手数の為に使っているのだから。
「さて、時間いっぱいやろうじゃないか!他人の機体でやれる、こんな機会滅多に無いからな!」
「ええ、こんなに楽しいことは楽しまなきゃ損ですわね!」
そう言って2人は更に激突した。
戦闘狂にも程がある。
この後更に5人でローテーションしながら模擬戦を楽しんだ一夏達であった。
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「さて、楽しめたか?」
「うん!今までに無いくらい貴重な体験だったわ。」
VR空間から帰ってきて、鈴は興奮冷めやらぬ感じでかなりテンションが上がっている。
ラウラもシャルロットも、普段出来ない経験をしてテンションは上がっているようだが鈴みたくあからさまでは無い。
「楽しかったね?ラウラ。」
「ああ、こんな経験2度と出来ないだろう。良い経験だった。」
「喜んで貰えたなら何よりだ、使わなきゃ壊れてしまうし意味が無いからな。」
そう締めくくる一夏。
「あと数時間は時間があるな…何かするか?」
「ならドンチャン騒ぎでもしましょうよ!あたしはまだまだ騒ぎ足りないわ!」
そう鈴が切り出す。
散々騒いだのにも関わらず、未だ物足りないようだ。
「はぁ、仕方ないか。」
「全く、まあ今日は宴にでもしましょうか。」
「「賛成!!」」
結局解散したのは10時過ぎだった。
それ程までに充実した、夏休みとなった。
第四章 追加設定
機体別キャラ紹介。
シャルロット・デュノア(ブルー・ティアーズ)
養った技術と裏付けされた経験を持ってしてもBTを2機動かすのがやっとの状況。
自身の最大の特技である
ラウラ・ボーデヴィッヒ(ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ)
20を超える武器の数々を
凰鈴音(タイプ56百合)
何時も乗っている甲龍よりも速度が桁違いな為、地面に突っ込むほど。
残念。
織斑一夏/アインザック(シュバルツェア・レーゲン)
基本的に砲撃をしない為、大型レールカノンを外した状態。少々身軽になったため通常時より速度が出る。
セシリア・オルコット(甲龍)
普段使わない大型の二刀流な為、型通り振り回している。
繋げて投げることはしない。
龍砲の威力を絞り、精密射撃と連射用にしている。