蒼白コントラスト   作:猫パン

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もし一夏が家出してイギリスに行ったらどうなるんだ。

そう考えてたらなんか出来てました。


第一章 クラス対抗戦編
第一話


 

今から10年前、日本に居る『篠ノ之束』という人物により外宇宙進出用パワードスーツ『インフィニット・ストラトス』が発表された。

 

発表されたインフィニット・ストラトス、以下ISは、『白騎士事件』により、現行全ての既存兵器を圧倒的に凌駕する性能を示し飛行パワードスーツとして軍事転用され、従来兵器に変わり各国の軍部の要がISに変わっていった。

一つの欠点として女性にしか動かすことが出来ない。

 

そしてそこから2年後には、各国の裏部隊による戦争経済が始まった。

睨み合っていた国々が潰し合い、装備の需要と供給のバランスが保たれる。

 

表では競技用という名目でモンド・グロッソという大会で使われ、優勝者にはヴァルキリーという称号が与えられ、総合優勝者はブリュンヒルデと呼ばれる。

裏では各国の選ばれた特殊部隊がISを用いてテロ組織や、反政府ゲリラ、敵対国等との戦争に派遣される。

選ばれる人選は各国の国家代表候補、及び国家代表のごく一部が選ばれる。

 

そんな戦争も今は過去のもの。

暗躍していた戦争経済も7年経ち終息を迎え、各特殊部隊も役目を終え解体されていった。

 

 

 

 

 

 

 

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そして現在。

織斑一夏は自宅にて頭を抱えていた。

部隊所属中に渡され、篠ノ之束により世間に発表された事実。

 

世の中で唯一『ISが動かせる』男性という、世間を騒がすには十二分な情報による。

よって一夏は3ヶ月後にはIS学園に通うことが決定付けられている。

 

近場に相談できる相手が居ない状況にて、頭を抱えるのはしょうがない事。

モンド・グロッソ総合優勝者であり、姉である千冬は不在。

誰に相談するべきか悩んだ一夏はかつての仲間を頼ることにした。

 

「もしもし、セシルか?」

 

『あら、アイン。久しぶりですわね。』

 

電話に出たのはセシルと呼ばれた少女。

フルネームは セシリア・オルコット。

イギリスの主席代表候補生にして、一夏がかつて居た部隊の隊員である。

 

「ああ、久しぶりだな。まあ……今日は聞きたい事があってだな。」

 

『IS学園についてですわね、聞きたいのは。』

 

「そうだ、何をするべきか分からなくてな。」

 

速攻ぶっちゃけた一夏。

わからないところを聞き出し、次第に雑談へと会話が切り替わる。

何のために電話したのか。

 

『あ、ではそろそろ私はこれで。』

 

「おう、忙しいなか悪かったな。」

 

『いえいえ。あ、因みに私もIS学園に行きますのでよろしくお願いしますね?』

 

「ああ、了解だ。またな。」

 

そう言って電話を切る一夏。

心なしか、電話する前よりもいい顔になっていた。

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

そして3か月後、一夏はIS学園に居た。

 

 

「新入生の皆さん、入学おめでとうございます。私はこの1年1組の副担任の山田真耶と言います。」

 

教卓に立ち、淡々と自己紹介をする。

別段慌てて失敗するようなこともなく、姿勢を整え一礼する。

 

「では担任の先生が来るまで自己紹介をお願いします。まず最初は出席番号1番から。」

 

そうして1人1人自己紹介が始まっていく。

この学園は女子にしか動かせないISを教わる学園であり、学園内は女子しかいない。

去年までは。

今年からは例外が入学しており、99:1(女:男)の比率になっている。

 

「次は織斑君、お願いします。」

 

「あ、はい。」

 

今まであまり呼ばれなかった名前を呼ばれ、若干戸惑いながらも立ち上がり教卓へと歩く。

 

「織斑一夏だ。日本とイギリス両方の国籍を持っていて一年前までイギリスに居たのでな、あまりこの名前は呼ばれなれていない。数年前からISを動かせたが、年齢の関係上今年からの入学になった。至らぬとこもあると思うが以後よろしく。」

 

そう言って席へと戻る一夏。

そして自己紹介が終わるタイミングで教室のドアが開き、1人の女性が入ってくる。

 

「山田先生、遅くなってすまない。」

 

「いえ、大丈夫ですよ織斑先生。まだ自己紹介が終わっただけですから。」

 

入ってきた千冬は教卓へと立ち、自らの自己紹介をする。

 

「諸君、先ずは入学おめでとう。

私がここの担任、織斑千冬だ。君達新人を1年間で一定ラインの操縦者、及び整備課等の開発者に育て上げる。分からない者は理解するまで教えてやる。逆らってもいいが時と場合は理解しろ。」

 

刹那、教室全体から響き渡る少女達の歓声。音響爆弾宜しく耳を潰さんと響く声に、一夏は咄嗟に耳を塞いだ。

 

「はぁ……毎年毎年、私が来るだけでこれだ。全く、煩くて敵わん。」

 

ほとほと呆れ果てたというような声を出しながら肩を竦める千冬。

 

 

「キャーお姉様!!」

 

「もっと罵って! そして叱ってください!!」

 

わいわいと少女達の歓声が鳴りやまない。

彼女達の憧れ的存在である織斑千冬。

ブリュンヒルデの称号を得た彼女は『多く』のIS操縦者、ひいては女性達の憧れの的である。

 

「はぁ、話が進まん。少し黙れ馬鹿者共。」

 

千冬の一喝、ただそれだけで騒がしかった教室は静まり返る。

 

「ではHRを終了する。今日から早速授業があるので各自気を引き締めて望むように。」

 

 

 

 

       ーーーー△ーーーー

 

 

1時間目が終了し、現在は休み時間中。

一夏は自身の席に着き、本を読んでいた。

 

と言うのも一夏の周囲を少し離れて見てこそこそ話をしている少女達が居て、立つタイミングを逃しただけであるが。

 

そんな一夏に、金髪碧眼の如何にもなお嬢様が近付いてくる。

 

「会うのは一年ぶり位ですか? 久し振りですわね、アイン。」

 

「そうだな、随分と印象が変わったじゃないか。セシル。」

 

彼女はセシリア・オルコット。

イギリス代表候補生。

 

そしてこの2人の会話により、周りの女子達が騒ぎ始める。

愛称で呼び合って居るのだから当たり前であろう。

 

「当たり前ですわ、今はもう所属していないのですから。そう言う貴方こそ、幾分か変わってますわね。」

 

「そりゃあな、この国に帰ってきてもあまりやることがないんだし。」

 

そう言う通りに、一夏は6年間もの間イギリスに居たのだ。

日本ですること等無いに等しい程である。

 

「そうですわね、なら久々にやりましょう?

丁度良い感じにアリーナもあることですし。」

 

「そうだな。若干ブランクもあるし、錆び付いた腕を戻すのに丁度良いか。」

 

「ですわね、なら第一アリーナに放課後。

許可は取っておきますので。」

 

「おう、任せた。」

 

セシリアが席へと戻っていく、そのタイミングでチャイムがなった。

 

そしてチャイムが鳴り終わると同時に千冬が教室へと入ってくる、入ってきたと同時に立っていた生徒は全員座った。

 

「それでは次の授業に入ると言いたいとこだが、まず最初に再来週行われるクラス対抗戦にでる代表者を決めなければな。自薦他薦は問わん、但し自薦者はそれ相応の実力がある者だけだ。クラス代表はこのクラスの顔だからな。」

 

クラスが色めき立つ、何事もイベント好きな女子高生。

基本的にこういう場合は一番人気になりそうな奴が求められる。

この場合は

 

「はいはーい! 織斑君を推薦します!」

 

「あ、私も!」

 

このクラス唯一の男である一夏があがる。

 

 

「では候補者は織斑一夏だな。他には居るか?居ないようならこれで決めるぞ?それとも織斑、何か意見はあるか?」

 

「いや、特にはないが。推薦された以上勤めは果たすさ。だが……」

 

そこで言葉を切り立ち上がる一夏。

何をするのかという視線が集まりながら口を開く。

 

「やっぱここはイギリス代表候補生でもあるセシルも推薦しないとな。」

 

そう言いながら指を指した先に居たのはセシリアだった。

 

「本当、昔から悪戯好きで困りますわ……」

 

肩を竦めながら溜め息を吐くセシリア。

 

 

「すると織斑、候補者が2人だ。ここは公平にじゃんけんで決めるか?」

 

「「却下(ですわ)だ」」

 

一夏とセシリア、2人の声が重なり拒絶の意思を示す。

 

「ここはあれだろ、代表の座を掛けて戦うとかだろ。」

 

「そうですわ、何故そんな平和的に解決しなければならないのですか!」

 

そして提案されたのはISを用いて戦い、勝った方が代表になると言うもの。

その熱意かに負けたのか、千冬は両手をあげ。

 

「あー分かった分かった。期間は1週間後の月曜日だ。第三アリーナにて放課後に行う、両名準備しておくように。では授業を始める。」

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

2時間目が終わり、一夏はまたも本を読んでいた。

 

理由自体は大したことではない、やることがないからである。

 

そんな一夏に近付く人影。

 

「ちょっといいか?」

 

「んあ?」

 

一夏に話し掛けてきたのは、幼少のころ知り合いであった篠ノ之箒だった。

 

「廊下でいいか?」

主語が足りず訳がわかっていない一夏。

それでも一応着いていこうと席を立つ。

 

「早くしろ。」

 

「はいよ。」

 

 

すたすたと廊下へと歩いていく箒、入り口近くで話していた女子は左右に道を開ける。

その後ろを着いていく一夏。

そして廊下に出ても包囲網が続く。

 

「ひ、久しぶりだな……一夏。」

 

「そうだな、7年位か?お前は変わらないな。」

 

一夏が当たり障りなく答える。

正直な話、一夏にとって篠ノ之箒についてはあまり覚えていないのだ

 

「と、ところでさっきの……」

 

箒が何かを言い掛けたところでチャイムが鳴る。

惜しいところで何も言えなくなる。

 

「さて、戻るぞ。」

 

ぞろぞろと回りの女子も戻るなか、一夏も教室へと戻っていった。

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー 

 

 

時刻は放課後、一夏は第一アリーナへと来ていた。

女子を沢山引き連れて。

 

「アイン……流石にこれは多すぎではありませんの?」

 

「いやな、セシル。教室の、しかもあんな目立つ形で言ったんだぜ?これはしょうがないとおもうが。」

 

一夏の意見はもっともであった。

しかも初日に唯一の男性操縦者とイギリスの代表候補生がアリーナで何かをやる。

そう聞けば誰しも興味を抱くだろう。

 

「まあ、良いだろうさ。離れていてくれれば問題ないだろう?」

 

「そうですわね、ではアイン。」

 

ヒュンッ

一夏に向け何かが投げられる。

それはナイフであった。

それを見て回りの女子は少し悲鳴をあげる。

そんな悲鳴を他所に、一夏は刃を持ち……曲げた。

 

「おいおい、軟質かよ。」

 

「当たり前ですわ、今のご時世刃がないナイフで硬質なんて売ってませんでしたわ。」

 

セシリアの言葉を聞き、安心した面々。

だがこれから何をするのかがわからず首を傾げる。

 

「さてアイン、行きますわよ?」

 

「ああ、何時でも。」

 

そしてどちらからともなく動き出した。

 

「シッ!」

 

「やぁ!!」

 

繰り出されたナイフ、腕、足を。

かなりの速度で振るう2人。

腕が出されれば腕を出し、足が出されれば足を。

ナイフを振りかざせばナイフを出し、応戦していく。

途中投げ技もあったが、両者共空中で器用に体勢を変え着地する。

 

何が起きているのか状況が理解できない者が数名居る。

 

2人が行っているには寸止めのスパーリング。

あくまでもブランクを埋める為の軽い運動にすぎない。

 

ラリアットや回し蹴りなども使われ、白熱していく。

 

確実に当たる軌道で必ず止める、それほどの事をする2人の技量の高さが伺えた。

しかも寸止めの場合、お互い信頼していないと当たってしまう。

 

そして2人の動きが同時に切り替わり、互いの右腕……ナイフへと腕が動く。

 

「はぁ!!」

 

「やぁ!!」

 

完璧な同タイミングで吹き飛ばされるナイフ。

そしてどちらともなく終了する。

 

 

「腕が衰えてなくて安心したぜ、流石セシル。」

 

「アインこそ、良い腕のまま変わっていませんわね。」

 

その言葉によりドッと拍手が巻き起こった。

そのギャラリーの中には千冬や真耶の姿もあり、どれだけ注目されてたかが伺い知れる。

 

 

「さて、今日は終わりにしよう。

ギャラリーもいるし、なによりそろそろ時間だしな。」

 

「では次は代表決めのあれですわね。今日はもうこんなですし。」

 

そう言って辺りを指す。

人が集まりすぎて訓練すらも満足に出来ないようなアリーナを。

 

「そうだな。よし! 解散だ!」

 

楽しかった見せ物もいつか終わりが来るもの。

集まっていたギャラリーは蜘蛛の子を散らすように帰っていく。

 

「私達も帰りましょうか。」

 

「だな。」

 

 

 

 

       ーーーー△ーーーー

 

 

セシリアと別れた一夏は荷物を取りに教室へと歩いていた。

手ぶらでアリーナまで行った訳だから、鞄やらは全部教室に置いてあるのだ。

 

 

そこへ

 

「あ、織斑君。見つけました。」

 

「どうしました?山田先生。」

 

一夏に話し掛けてきたのは真耶だった。

片手に書類を持ち、大急ぎで来たのか若干息が上がってる。

 

「寮の部屋が決まったので、鍵を渡しに来ました。」

 

そう言って手渡したのは鍵と、部屋番号が書かれた紙。

全寮制のこの学園では、入学したその日から寮に入ることが義務付けられている。

故に大急ぎで探しに来たのだろう。

 

「態々ありがとうございます。」

 

「いえ、政府特命もありまして3ヶ月も前から準備してましたので。とにかく、渡しましたからね?無くした場合再発行の手間が掛かるので、気を付けくださいね?」

 

そう言うとまだ仕事があるのだろう、早歩きで元来た道を戻って行った。

 

 

「1030……ね。」

 

 

 

番号を確認し、確かな足取りで歩いていった。

 

 

 

 




また懲りずに新作だよ……



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