一夏が別館一番奥の更衣室に向かう途中、中からはきゃいきゃいとした黄色い声が漏れ、一夏は気まずさを感じながら男子更衣室へ向かった。
「わ、ミカてっば胸おっきー。また育ったんじゃないの〜?」
「きゃあっ!も、揉まないでよ!」
「ティナって水着だいた―ん。すっごいね〜」
「そう?アメリカでは普通の事だと思うけど。」
男子更衣室と隣り合うように女子更衣室があるため、一夏はその漏れ出る会話を聴くまいと早々に着替えた。
そして早足気味で更衣室を後にする。
コンバットナイフを太股に装着した状態で。
「あ、織斑君だ!」
「う、うそっ!わ、私の水着変じゃないよね!?大丈夫だよね!?」
「わ、わ〜。体かっこい〜。見てよ、腹筋凄い、鍛えてるね〜」
「織斑くーん、後でビーチバレーしようよ〜」
「ああ、時間があればな。」
一夏が更衣室から浜辺に出てすぐ、ちょうど隣の更衣室から出てきた女子数人と会う。
簡単に会釈した一夏は、そのまま浜辺へと出る。
「よっ、と……」
そして柔軟運動を始める。何事にも準備というのは大切だ。柔軟運動をしながら一夏はいやな予感を感じ、咄嗟にしゃがんだ。そして
「い、ち、か〜〜〜ーーぐほっ!」
しゃがんだ一夏の上を、ル○ンダイブのごとく通り過ぎる鈴。そしてそのまま砂に落ちる。
飛び掛かってきた鈴のその手には、水風船が握られていた。どうやら飛び掛かると同時に投げ付けるつもりだったらしい。
だが悲しきかな鈴。鈴の持っていた水風船は砂浜へと落下した衝撃で破裂し、顔面から水がかかる。
だがよく思い出して欲しい、ここは『砂浜』だと言うことを。
濡れた肌には砂が張り付く、つまり…
鈴の顔は砂だらけ、と言うことだ。
「何で!避けるのよ!?」
「いや、避けるだろ普通。」
ガバッと起き上がり一夏に詰め寄る鈴。誰であろうと飛び掛かってくると分かっていれば、必ず避けるものである。因みに鈴の水着はスポーティーなタンキニタイプ、ロリコン歓喜不可避である。
「何をしていますの?凰さんは。」
そこに一部始終を見ていたセシリアが、苦笑しながら近付いてくる。
手にビーチパラソルとシート、それに小さめの小箱を手に持っている。
「凰さん…色々と言いたいことはありますが、飛び付くのは止めた方が良いですわよ?はしたないですし。」
「何よ!あたしは一夏に水風船をぶつけようとしただけよ!」
そう言って鈴は、手に持っていた水風船だったものを突き出す。割れて水が無くなっているそれは、ただのゴミにしか見えない。
そして若干濡れて砂が着いている鈴を見て、セシリアはこう言った。
「だからそんな格好なのですね、納得しました。」
割れた水風船、そして顔面から砂に突っ込んだ事実。水をかぶった顔が砂で汚れているのをみて、容易に想像出来た。
だがセシリアには関係ない事。
「それよりアイン。これは如何です?」
そう言って荷物をその場に置き、1回転するセシリア。
セシリアの着ている水着は鮮やかなブルーのビキニ。腰に巻かれたパレオが優雅さを醸し出している。モデルをしたら人気に火が着きそうな程である。
そしてパレオからチラッと覗くホルスター、それが印象的だ。
「ああ、似合ってるよ。やはり蒼を選んで正解だったな。」
「ふふ、ありがとうございますわ。」
そのまま2人は見つめ合い…なんてことは起きなかった、何故なら。
「はぁ暑い暑い、イチャイチャするなら余所でどうぞって感じよね。」
近くに鈴が居るからである。
顔を仰ぐような仕草をする鈴だが、生憎と2人には見えていなかった。
それを察した鈴は、そのまま海へ入って行った。
そして…
「あ、一夏。ここに居たんだ。」
「ん?ああ、シャルルか。」
声を掛けられた方向へと、一夏が視線を向けると、黄色いビキニを着たシャルロットが軽く手を振りながら歩いて来ていた。
未だに一夏はシャルルと呼んでいるが、本人曰く慣れたそうだ。
シャルロット自身は不満らしいが、それでも良いかと楽観的に考えている。
「ところで2人共、ラウラ見てない?先行ってるって言ってたから、そんなに遠くへは行ってない筈なんだけど…」
「ん?ラウラなら…」
そう言って一夏は、シャルロットが来た方向と反対側を指差す。そこには…
「もっとだ!もっと掘るのだ!そんなんじゃ何も捕まえることなど出来ないぞ!」
「あいあいさ~」
ラウラと本音が砂浜に、大穴と言っても差し支えない程のものを掘っていた。
その穴の大きさからして、人1人は余裕で入ることが出来る。縦の長さはラウラの身長を優に超えていた。そんな穴を掘る理由とは…
「速くシャルロットが来るまでに完成させなければ…」
「ふーん、僕が来たらそんなに不味いんだ。」
「当たり前だ。シャルロットを落とすための落とし穴なのだからな、来てしまっては意味が…」
無いとは言えなかった。
ラウラは今、自身が誰と会話をしているのか察してしまったからである。
「ラウラ…覚悟は良い?」
「ま、待てシャルロット!これはその…誤解なんだ!」
必死に弁明するラウラ。
だが無常にも、シャルロットは近付いて行く。
その手を動かしながら。
それが意味する行動、それは…
「…言い残すことはそれでいい?」
「くすぐりはいやだ!」
「ラウラー!」
そう言ってラウラは走り去った。
ラウラはくすぐりにめっぽう弱いのだ、シャルロットはそれを心得ている。
林間学校が始まる前、月初めには部屋替えが完了して、シャルロットはラウラと同室になったのだから。
「ほへ? らうらうどこ~」
無常にも取り残された本音が、穴の中で慌てていた。
後ほどやって来た紅い瞳の眼鏡っ娘に救出された模様。
ーーーー△ーーーー
時間は過ぎ、現在七時半。大広間三つを繋げた大宴会場で、一夏達は夕食を取っていた。
「…美味い。昼も夜も刺身が出るなんてな、豪勢な旅館だ。」
「そうですわね。特にこのトロ、最高ですわ。」
「ん…くっ、山葵が鼻に!」
一夏の隣にはセシリアが、そして少々間を開けてシャルロットが座っている。右にセシリア、左にシャルロットといった感じだ。その膝の上にはラウラが居て、たんこぶを押さえていた。
シャルロットの膝の上で大人しくなっているところを見るに、完全に上下関係が構築されている。
そして今は、全員が浴衣姿である。この旅館の決まりらしく、『お食事は浴衣着用』だそうだ。
因みにチャレンジャーなシャルロットは別にして、セシリアが普通に生魚を食べていること。
一夏が日本人という事に起因する。
セシリアは一夏と6年もの間食を共にしていたのだ、互いの好きな物は大抵食べれる。
「ところで、アイン。どうしますの?」
セシリアは手に持っていた小箱を置きながら、そう口にする。
どう、とは一夏やセシリアの身の上を語ることだ。今日は林間学校、つまりちょうど1年半なのだから。
「さっき姉さんが召集してたろ?専用機持ち全員を。俺とセシル、後はシャルルと鈴、ラウラな。それとあと箒もだが。」
「なるほど、場所は織斑先生の部屋ですわね?」
「ああ、そうだ。」
そう言いながらも、一夏もセシリアも箸が止まらなかった。
ーー△ーー
「………」
「………」
「ん?」
部屋の前、その入り口のドアに張り付いている女子が二名。
「凰?それに篠ノ之まで。一体何を―」
「シッ!!」
鈴がそう言うなりラウラの口を塞ぐ。状況がわからずにもがくラウラだが、ふとドアの向こうから声が聞こえた。
『アイン、くぅっ。――んっ!もう少し優しく……』
『優しくしたら意味ないだろう。んじゃあ、ここはっと』
『くあっ!そ、そこは……つぅっ!!』
『すぐ良くなるぞ。だいぶ溜まっていたみたいだが、一夏のは効くからな。』
『くっぁぁぁ!』
ドアの向こう側から、喘ぎ声にも似た声が響いてくる。その声の主は一夏とセシリアであった
そして千冬の声も聞こえてくる。
「一体、何が?」
ドアからの声に首を傾げるラウラ。
「…………」
「…………」
鈴と箒は、ズーンと沈んだ表情をしている。その様子はまるでお通夜さながらだった。
鈴は、何故こんな所にまで来て。というような顔だった。
「ボーデヴィッヒです。入ってもよろしいですか?」
ラウラは二人を気にせずに、ドアをノックして向こうの千冬達に声を掛ける。
「来たな、ボーデヴィッヒ………何だ、コイツらは?」
「さあ?私にはわかりません。」
ドアを開けて千冬が出迎えたが、向こうで沈んでいる箒と鈴に首を傾げた。
「まあ、いい。お前達も入ってこい、っとその前にデュノアを呼んでこい」
「は、はいっ!」
「わ、分かりました!」
鈴と箒は駆け足で二人を呼びに行った。
「ラウラ、来たか。いらっしゃい。」
「一夏…それにセシリアまで?」
ラウラは部屋の中に一夏達がいた事が気になったらしい。
「ああ、俺の部屋はここだ。それにセシルがいる理由は、これから言う大事な話に関係する。」
「大事な話?」
「ああ。」
そう言って頷く一夏を見て、ラウラは何かあるのだろうと考えた。
それから暫くして3人がやってきて、千冬に言われた通りにそれぞれ好きな場所にと座った。
『……………』
新たに入ってきたラウラ達4人は、座ったまま止まってしまっている。一夏の隣にはセシリア。向かい合うようにに箒、鈴、シャルロット、ラウラが。そしてその間に千冬が座る形になった。
「おいおい、葬式か通夜か?いつもなら話くらいは出るだろ?」
「い、いえ、その……」
「緊張してしまいまして……」
「まったく、しょうがない。私が飲み物を奢ってやろう。篠ノ之、何がいい?」
千冬からいきなり呼ばれ、箒はビクッと肩をすくませた。何を言っていいかわからないようだ。
「ほれ。レモンスカッシュラムネとイチゴオレンジ。それに抹茶サイダーにイチゴおでん、あとはコーヒー、紅茶だ。それぞれ他のがいいやつは各々で交換しろ」
そう言い、一夏達各員は、それぞれ飲み物を手に取る。
「い、いただきます」
一夏とセシリア以外全員が、同じ言葉を言い、飲み物を口にした。飲んだ者全員の喉がごくりと動いたのを見て、千冬はニヤリと笑った。
「飲んだな?」
「は、はい?」
「そ、そりゃ、飲みましたけど……」
その顔によって、少々疑心暗鬼になる面々。
だが次の千冬の行動に唖然とする。
「バカ者共め、そんなに不安になるな。何、ちょっとした口封じだ。」
そう言って千冬が新たに冷蔵庫から取り出したのは、星のマークがキラリと光る缶ビールだった。クリーーサヒが家で冷えてる、でお馴染みのアレである。プシュッ!と景気のいい音を立てて飛沫と泡が飛び出す。それを唇で受けとって、そのまま千冬はビールを飲んでいく。
「織斑先生、仕事中ですわよ……」
一夏は非難気味の視線をぶつけながら、セシリアは苦笑いしながらも一応注意した。これから大事な話をするというにに酒を飲まれては…
「堅い事を言うな。それに今日の分は終わったから大丈夫だ。」
「山田先生に怒られても、私は知りませんわよ?」
「だからこその口封じだろう。」
そう言いながら、渡したジュース類を指差す千冬。既に飲んでしまっている以上、千冬を咎める事が出来ないのだ。一夏とセシリア以外。
「さて、そろそろ本題に入るとしようか。」
千冬は一夏とセシリアに向き直る。
そして…
「話して貰うとしよう、期限は過ぎただろう?」
そう口を開いたのである。
ーーーー△ーーーー
『これからお世話になる、織斑一夏だ。』
『お前みたいな餓鬼が、本当に使えるのか?』
『それはこれから証明するさ。』
『オルコット家当主、セシリア・オルコットですわ。』
『我が隊はどんな奴でも歓迎しよう。』
『隊長!今日の夕飯、楽しみにしてます。』
『まあまてお前ら、急がなくても飯は逃げないぞ。』
『そうですわね、もう少し慎みをですね。』
『こちら
『生存者はどうだ?』
『生体反応はない、作戦終了だ。』
『今日から俺は織斑一夏ではない!サー・アインザック・リステンバーグと名乗る!』
『一生着いていきます、隊長!』
『にゃはは、やっと見つけたよーいっくん。』
『束さん!何故ここに』
『いっくん専用のIS、ユリちゃんを届けに来ちゃった。』
『セシりんのも見てあげるね。』
『えっ、篠ノ之博士!』
『のんのん、そんなに堅苦しく無くて良いよ。』
『今日より合同作戦に参加するドイツ軍
『ああ、よろしく。Strayed隊隊長の一角、アインザック・リステンバーグだ。』
『同じく隊長の一角、セシリア・オルコットですわ。』
『特殊作戦を開始する!』
『
『了解!』
『待て!死ぬなお前ら!』
『隊長達は生きて!これは俺らの責務だ!』
『部下が全員居なくなったら、俺達はどうする!』
『イギリス政府より通達ですわ…極秘部隊Strayedは本日を持って解散だそうです。』
『だろうな…今や全盛期のような活躍も無いし、戦力も無い。』
『仕方が無い事ですわね…』
『何時の日か、また会おう。』
『ええ、必ず。』
ーーーー△ーーーー
「と言うのが、俺とセシルが経験した全てだが…」
「「「……」」」
真相を話し終わった一夏、ふと見渡すと千冬も、箒も、鈴も、ポカーンと口を開けていた。
「ああ、理解した。お前が居なかった6年間、そんなことがあったのだな。」
いち早く復活した千冬が、そう口にする。
だが、その言葉に引っかかりを覚えるのが約2名居た。
「ちょっと待ってください、6年間って…」
「今までずっとってこと?」
鈴と箒だ。
6年前、それぞれ転校して一夏から離れた2人は、その後に一夏がそんなことをしていたなどとうてい信じられなかった。
「お前達2人はちょうど入れ違いか…
6年前、一夏は家出をした。そしてそのまま帰ってこなかったんだが、まさか軍属になってるとはな。」
そう言う千冬に2人は絶句する。
今でこそ千冬も笑い話みたいに語れるが、当時は荒れに荒れた。
それでも壊れなかったのは、親友である束の存在が大きい。
一夏が家出した数年後には、場所を掴んだ束が話す機会を作ったのだ。一夏の身の上や所在、現状等を秘匿して。
「さて、暗い話しは終わりだ。ほら部屋に戻
れ、教員の数少ない自由時間を満喫させろ。」
その場に居る面々を追い出すように、千冬は手を振る。
それに応じるまま、一夏とセシリア以外全員が部屋を後にした。
ーー△ーー
月明かりの見える砂浜、箒は1人佇んでいた。
「はぁ…」
衝撃の事実により、箒は頭を抱える。
剣道を、一緒に切磋琢磨した幼馴染みが、まさか自身が居ない間に軍属になっている等夢にも思わなかったからだ。
自分が居ない間も剣道を続けてあれ程強くなった。そう思っていたから、自身は一夏に構おうとしていたのかもしれない。
そう思考が巡る。
「ほう。悩め悩め、悩むのは10代の特権だ。」
「誰だ!?」
突如響いた声に、箒は瞬時に顔を後ろへと向ける。そこに居たのは…
「おっと失礼、名乗りがまだだったな。
俺の名は篠ノ之龍之介、よろしく頼むぜ
篠ノ之、そう名乗る男性が居た。
だがその名乗りに眉をひそめる箒。
「あ、まだ早かった。悪いな、改めて
そういう彼は、詫び入れる様子も無く堂々とそう言ったのだった。
ちょっと思いついたネタを投下。
あくまでネタです。
真名 織斑 一夏
クラス バーサーカー
クラススキル
剣術EX+
チェイン発動時、攻撃力極大上昇。
凶化S+
与ダメージ大幅増加、被ダメージ大幅減少。
自己回復A
毎ターン終了時、HP回復、NP増加、スター獲得。
自由意志S
他クラスからのダメージを大幅に軽減する。
スキル
魔力放出EX+
自身の攻撃力、宝具威力、バスターカード性能が極大上昇。
嫌悪S+
3ターンの間自身にターゲット集中、無敵、ダメージカット付与。
自己改造A
自身のNP増加、HP回復、状態異常無効付与。
宝具 「全ては所詮、儚き夢と散る。」
敵全体に超強力ダメージ+防御力大幅減少+チャージ大幅減少+高確率で即死付与、自身のNPを100%リチャージ。
ボイス
召喚時
「サーヴァント、バーサーカー。召喚に応じ参上した。…貴様が俺を殺してくれるのか?」
スキル発動時
「…決めよう」
「…死ね」
exアタック
「受け入れろ、それが定めだ。」
宝具カード選択時
「貴様に絶望を。」
宝具発動
「…貴様には分かるまい、失った事への悲しみなんぞな。」
勝利ボイス
「ふん、俺の前に立ったこと…それが貴様の敗因だ。」
「ここも違った…誰だ、俺を殺してくれるのは…」
消滅時
「俺が消える…そうか漸く会いに行ける…セシル。」
「…俺に相応しい末路か、案外…悪くは無いな。」
カード
バスター3枚
アーツ2枚
クイック1枚
宝具 バスター。
オルタに転身したバサ一夏。
セシリアを失った事が原因。
凶化S+にもかかわらず理性がハッキリしている。
相応しい死に場所を求め、それと同時に絶対的な力を求めた結果。
チートや