蒼白コントラスト   作:猫パン

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「やあやあ。みんなのアイドル、篠ノ之束だよ♪みんな、なんで遅れたか、聞きたいよね?」

Yes, I am also want to hear the master.(はい、私も聞きたいですマスター。)

「おお、レイーーグハートもそう思う?じゃあ聞いてみよう。ねぇ答えてくれる?」

弁明させてください。私はこれでも高3でして、受験生なのです。
2日に受験がありましてですね、その為に遅れました。

「終わってから何日か経ってるけど…その間は?」

ゲームしてました。
外殻大地の降下作戦を始めるところです。
飛行譜石をディストに盗られてムカつきながらも攻略片手に奔走中です。

まあ、3週目なんですけどね。

「天誅!いくよ!レイジーーーート!」

『Starlight Breaker!』


待って!本当にそれは洒落にならないから。
あと中の人が同じだけだからね?管理局の白い悪魔とは何も関係が…うわ、何をする!やめーー





第六話

 

「あ、そうでした。アイン、今度の学年別トーナメントですがタッグマッチに変更になったそうですわ。」

 

唐突に、思い出したかのように言うセシリア。

 

「ふむ。理由としては、クラス対抗戦で無人機が乱入してきたからか?あれだけの数が来たんだ、集団戦を学ぶため。その名目なら変更されても不思議では無いな。」

 

そう一夏は考える。

クラス対抗戦では無人機が乱入した。

1機なら2,3人で纏まれば倒せる。だが乱入してきたのは6機なのだ。

今後は同数かそれ以上で来る可能性がある。

だからこそタッグマッチにしたのだろう。

タッグであれば乱入してきても、計4人で戦えるのだ。例え倒せなくとも、増援が来るまでの時間稼ぎ位は出来る。

 

 

「それでですね、こんなプリントを貰ってきたのですが…」

 

「どれ…」

 

一夏はセシリアの持っていた用紙を見る。

そこにはこう書かれていた。

 

『今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行う為、2人組での参加を必須とする。なお、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。』

 

そしてそのまま下へと目を移す、そこには2人分の名前を書く欄が存在していた。その内の片方は埋まっていた、他ならぬセシリアの名前で。

 

そう、それは申込用紙というものだ。

 

 

「アインと…ペアを組んで頂きたいと思いまして。」

 

「…全く。素直じゃないなぁ。」

 

セシリアの頭を撫で、顔を綻ばせながらも、一夏は空いている欄へと自身の名前を書いていく。

これでトーナメントのペア、最初の一組目が決まった。

 

 

「もう//。分かってて言ってますわね?」

 

「まあ…な。」

 

 

一夏の部屋では、甘々な雰囲気が漂っていた。

その一方で、部屋の外では…

 

「ねえこれ、僕は何時になったら部屋に入れるのかな。」

 

ドアの前では、項垂れるシャルルの姿がそこにはあった。

一夏と同室という弊害。

一夏が自室でセシリアとイチャラブしているということは、シャルルは部屋へと帰れないのだ。

 

 

「はぁ、まだかなぁ…」

 

ついにシャルルはドアの前に座り込み、床にのの字を書き始めたのだった。

 

その際誰も通らなかったのが救いだろう。

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

 

 

6月も半ばに入り、IS学園は学年別トーナメント一色に染まっていた。

各国の首脳、企業の社長等。

様々なトップが見に来る。

 

3年にはスカウトするか否かの話しが。2年には今までの成果の確認など、注目されている。

今のところは大半の1年生には関係ないところだが、今年は世界唯一の男性操縦者である『織斑一夏』が居るのだ。

他にも主席代表候補生と呼ばれている『セシリア・オルコット』も居る。

世界唯一の男性操縦者と世界有数の実力者である主席代表候補生。

この2人は特に注目されていた。

 

 

そんな中でも件の2人は、対戦表の発表をピットで待っていた。

 

「いよいよ初戦ですけれども…誰になるんでしょう。楽しみですわね、アイン。」

 

「まあそうだな。誰が相手になるのか、楽しみで仕方が無い。」

 

 

純粋に楽しみなセシリアと、早く戦いたくてうずうずしている一夏。

戦闘狂である。

今にも飛び出していきそうな程、気持ちが高ぶっている。

目を見れば分かる通り、ギラついているため知らない人が見れば恐怖を覚えるだろう。

 

「あ、対戦表が決まったみたいですわよ。」

 

広告が表示されていたモニターが切り替わり、トーナメント表が表示される。

そしてそこに出てきたのは、シャルル・デュノア&ラウラ・ボーデヴィッヒペアVS織斑一夏&セシリア・オルコットペアの文字。

 

万能型&汎用型VS試作型&接近特化型。

面白い組み合わせの第1回戦のシードだ。

 

その対戦表を見た一夏は

 

「おいセシル、ラウラの相手は俺に任せろ。ここに来てから、あいつとは1度も殺り合って無いからな。」

 

「まあ良いですけど…手加減してあげてくださいね?」

 

一夏の目を見たセシリアは、苦笑いを浮かべながらそう言う。

件の一夏はというと…

 

「まあ、相手さん次第だな。」

 

確実に手加減しない顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

         ーー△ーー

 

 

 

 

 

 

一方その頃。

一夏達とは別のピットにて。

 

件のラウラとシャルルは、対戦表を見て顔を青くしていた。

それもその筈、第一回戦の相手は一夏とセシリアなのだ。

一夏はこのIS学園に来てから今まで、誰1人として負けたことは無い。名実共に1年最強と呼べる。

セシリアは一夏以外には負けたことが無い。

そして世界有数の実力者であり、ラウラも勝てなかった相手だ。シャルルも、3対1の数の差(ラウラ&鈴&シャルルVSセシリア)で挑んだがあっさりと敗北している。それも一方的に。

唯一この学園でセシリアに勝てる一夏が敵に回っている、それもセシリアとペアを組んで。

 

本気を出したセシリアの前では、生半可な策略は撃ち抜かれる。

そして気を張り詰めすぎていても、一夏に斬られる。

この2人のコンビネーションは抜群なのだ。

 

 

「ねぇラウラ。最初からこの組み合わせは、僕達を全力で殺しに来てるよね。」

 

「ああ。嘘だと言いたいし、幻だと信じたいが。真実だ。明らかに全力だな、全力で潰しに来ている。」

 

シャルルもラウラも、1度も勝てたことが無い相手。それが2人ペアになり更に勝率が下がったのだ。

2人共、遠い目をして燃え尽きていた。

 

 

「そうだよラウラ。いくら試合とは言え、あの2人も本気で潰しに来るわけじゃ無いと思うんだ。だからほら、強大な壁だと思えばね?」

 

「セシリアの場合はそれで良いだろう。問題は…」

 

そう言ってラウラは、対戦表にある一夏の名前を見る。

一夏は1度も戦った事が無い相手と試合が組まれた場合に限るが、ある程度の実力者を前にすると闘志を露わにする程の戦闘狂なのだ。

そして専用機持ちの中では唯一、ラウラとは戦っていない。

故にラウラは、いやな予感がしていた。

一夏は自身を、確実に狙って来ると。

 

 

「まあうじうじしてても仕方が無いね。頑張るよ、ラウラ?」

 

「ああ、そうだな。後ろは任せたぞ?」

 

 

そう意気込んだ事が無駄になるとは、この時の2人はまだ知らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

「まさか第一回戦目で当たるとはな、正直気乗りしないがな。」

 

「そうか?俺は楽しみで仕方なかったぜ?」

 

 

試合開始の合図、それが鳴る直前。

ギラついた目をした一夏は、若干溜息を吐いているラウラと相対していた。

ラウラの脇にはシャルルが、そして同じようにセシリアと相対している。

 

「では、精々胸を貸して貰うぞ!」

 

「ハッ!良いぜ、来な!」

 

試合開始のブザー、それが鳴ったとたんに一夏とラウラは衝突した。

 

 

 

 

 

        ーー△ーー

 

「さてシャルル・デュノアさん。やりましょうか。」

 

その頃、シャルルとセシリアは互いのペアの援護に行かず向かい合っていた。

正確に言えば援護に”行けず”が正しい。

 

試合開始直後、シャルルは真っ先にラウラの援護に向かおうとした。

その場で反転し離脱しようとしたところで、自身を取り囲んでいるBTが見えたのだ。

 

白熱する一夏とラウラ。

その援護に行こうとするシャルルの周囲には、セシリアのBTがある。

その数は8機。

その名は BT八重奏(ブルー・ティアーズオクテット)

牢獄は完成していたのだ。

 

 

「アインはラウラさんとの1対1(ワンオンワン)をご所望ですわ。なら、一番の障害である貴女は私がお相手になりますわ。」

 

シャルルとセシリアを取り囲むように展開されたBTは、レーザーを放ち鳥籠を作り出した。

それにより、完全に一夏とラウラから隔離されてしまう。

 

「ッ!これは相当に不味い状況だね!」

 

自身の技量は確かな物だと認識しているシャルルだが、自身が勝てるかどうか位は見分けが付く。

それに加えて3対1の状況で1度負けている相手なのだ、シャルル自身勝てると思っていない。

故にこの状況を抜け出すことは、まさに不可能であった。

 

「ああ、そうでしたデュノアさん。抜け出そうとしなければ我がBT兵器(ティア)は牙を剥きませんので、安心してくださいな。」

 

「全然安心出来ないよ!」

 

そう言いながらも自身のライフル、その砲身をシャルルへと向けるセシリア。

そして若干涙目になりながらも、シャルルはセシリアと激突した。

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

「ハハハッ うらぁ!どうしたどうした!腰が退けてるぞおい!」

 

「クッ!速い。」

 

ラウラは一夏に翻弄されていた。

ラウラが繰り出す攻撃は悉くに躱され、斬られ、そして鞘で殴られていた。

 

それに加えて常時二重瞬時加速(ダブルイグニッション・ブースト)をしていて、ハイパーセンサーで追えてもラウラの動体視力が追い付かなかった。

唯一の救いは速さ故に攻撃が軽く、ダメージが少量しか入らないことだろう。

 

唯一攻撃が通るであろうプラズマ手刀、だが一夏の速度が速すぎて空振りしていた。

シュバルツェアレーゲンに積んでいるレールカノンは速すぎて当たらない。

特殊兵装『AIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)』は、そもそも一夏を捉える事が出来無い故に使えない。

多大な集中力を必要とする上に、高速で飛行する物体を捉えるなど不可能に近い。

 

故にラウラが切れる手札は、必然的にプラズマ手刀とワイヤーブレードの2つのみだ。

 

だが一夏は違った。

持ち前の速度を最大限使い、ラウラを翻弄、そして離れる。

ヒット&アウェイの戦法だった。

だがラウラも攻撃自体は捌ききれる程に慣れてくる。

そのタイミングで一夏は、自身の切り札。その1つを切る。

 

「絶技『疾走居合』」

 

持ち前の身体能力を使った技、それをブースターを使い更に加速させている。

 

そしてそのままラウラの後方へと瞬間的に移動し、時間差でラウラの機体表面を10の斬擊が襲った。

 

「なっ!?何だ!?何が起きた!?」

 

ラウラは何が起きたか、全く理解できなかった。一夏が目の前で消え、その数秒後に自身の機体が衝撃を受けたのだ。

なんてことはない、一夏は急接近し斬擊をラウラへと置いて後方へと移動したのだ。

だがラウラにとっては見失って、気が付いたら斬られていた。そういう認識だ。

 

それに先程の速さだけの斬擊よりも強力で、1撃でラウラの専用機『シュバルツェアレーゲン』のSEは4割りを切った。

 

そしてそのタイミングで…

 

 

Detect the hacking.

System overload.

Valkyrie trace system, forcing triggered.

 

 

 

「ぐぁぁぁぁ!?」

 

「ラウラ!?」

 

ラウラのISから…シュバルツェアレーゲンから紫色の電撃が走った。

そして徐々にISが溶けていき、ラウラを包み込もうとする。

だが…

 

「何でも貴様らの思い通りになると思うなよ!!」

 

ラウラは最後の抵抗としてコンソールを呼び出し、とあるボタンを押した。

それにより…

 

『命令ーー認。何かーーーまで待機ーーす。』

 

無差別攻撃を行わないよう、下された命令。

不完全ながらも、干渉されるまで動かないようにするものだ。

そして…

 

「ッチ、もはーーこまでーー。後は頼んーー、アイーーック。」

 

 

その言葉を最後に、ラウラは完全に『それ』の素体として呑み込まれた。

 

そしてできあがった物は黒い全身装甲。

誰もが1度は必ず見たことのあるそれは…

 

 

「暮桜…」

 

世界最強にのし上がった織斑千冬の愛機、今は無き『暮桜』がそこに君臨していた。

 

 

       ーーーー△ーーーー

 

Side??

 

 

 

 

ラウラ・ボーデヴィッヒ、それが私の名前だ。識別上の記号…一番最初につけられた記号は――遺伝子強化試験体C―〇〇三七。人口合成された遺伝子から作られ、鉄の子宮から生まれたクローン人間。

 

ただ戦いの為だけに作られ、生まれ、育てられ、鍛えられた。知っているのはいかにして人体を攻撃するかという知識。わかっているのはどうすれば敵軍に打撃を与えられるかという戦略。格闘を覚え、銃を習い、各種兵器の操縦方法を体得した。私は優秀であった。性能面において、最高レベルの記録を出し続けた。

 

しかし、ISが現れその適合性向上の為に行われた『越界の瞳』の処置に失敗し、『出来損ない』の烙印を押されるまでに転げ落ちていった。あの時までは…

 

「貴様のような奴が出来損ないなぞと呼ばれるとはな、何心配するな。一ヶ月で部隊内最強の地位へのし上げてやろう。俺と共に来い。」

 

その言葉に偽りはなかった。しばしば私を部隊から連れ出し、色々な事を教えてくれた。

人の殺し方、人の脆さ、人の温かみ。人との関わり方、その全てを1から教えてくれた。

日常生活に必要な知恵や、息抜きの為のサブカルチャーまで。

 

男の癖にISについての指導までも…

その時から遺伝子強化試験体C―〇〇三七()ラウラボーデヴィッヒ()になった。

 

彼の教えを忠実に実行するだけで、私はIS専門へと変わった部隊の中で再び最強の座に君臨し、信頼できる仲間や別部隊に友達という者も出来た。

そして私は彼の強さに。自身の確固たる道を歩くその堂々とした様に。自らを信じる姿に、憧れた。

 

――ああ、こうなりたい。この人の様に、皆を引っ張れる様になりたい。

 

そう思って私はある日訊いてみた。

 

「どうしてそこまで強いのですか?その確固たる意思は…どうしたら強くなれますか?」

 

その答えは今でも心に残っている。

その言葉を信じて、今日まで生きて行けたのだから。

 

 

「守るためだ。

俺は彼女を守るために力を手に入れた。いいか?ラウラ。強いから誰にも負けない訳では無い。自身が持つ意思の大きさで勝ち負けが決まると言ってもいい。意思無き力なぞ、単なるケダモノだ。

だからこそ…強くなりたいなら守るべき人と、強い意志の力が大切だ。」

 

 

 

そう。だからこそ…ラウラはこの状況が許せ無かった。

自身の専用機をハッキングし、あまつさえ無差別攻撃をするようにプログラムされたVTSを発動させられたのだから。

 

それ故に、ラウラの心の炎(憎悪)は大きくなっていく。

 

かの組織…

 

 

 

 

亡国機業(ファントムタスク)』に対しての。

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

 

『非常事態発令!トーナメントの全試合は中止!状況をレベルDと認定、鎮圧の為教師部隊を送り込む!来賓、生徒はすぐに避難すること!繰り返す!』

 

ラウラのISが異変を起こし、姿を変え、黒い全身装甲を身に纏った状態に手には雪片を握っている事態を危険と判断したのかアナウンスで避難指示とアラームが鳴り響いていた。

 

 

 

 

「セシル!試合は中止だ。不味いことになった、シャルルを連れてーー」

 

 

「もう来てますわ。」

 

 

一夏が言おうした言葉は続かない。

それは意思が、正確に伝わっているからだ。

 

 

 

『織斑、何があった。』

 

突然、一夏のプライベートチャンネルに通信が入る。発信者は織斑千冬。

 

 

「ラウラのISがハッキングを受けた。それによりVTSが送り込まれ、強制的に発動させられたらしい。最後のラウラの行動であそこから動く事は無いが、同時にラウラを助け出せないな。」

 

『そうか…』

 

 

千冬は、待機させてある教師部隊に命令を飛ばそうとした。

だが1つの事実により、それは困難になる。

 

アリーナへと続く通路、その全ての隔壁が下りているのだ。

故に…

 

 

『頼めるか?一夏。』

 

「当然。姉さんが言わなかったとしても、俺が言ったさ。」

 

『そうか…頼んだ。』

 

 

千冬の頼みを聞き入れた一夏は、通信を終了しシャルル、そしてセシリアへと向き直る。

 

「セシルはあれを使ってくれ、あの装甲を削

りとる。シャルルはちょいと時間稼ぎを、あれを使う。」

 

「了解ですわ。」

 

「わかったよ、任せて。」

 

 

そう言うと2人は『(偽)暮桜』に向かい走り出す。

 

そして…

 

「ラウラさんを返して貰いますわ!」

 

セシリアが唯一持っている実体弾兵装。

ミサイル型のBTから4発のミサイルが発射される。

 

そしてそれは、120発の子機を分裂し、着弾。

範囲爆撃を引き起こす。

 

対インフィニットストラトス用面制圧クラスターミサイル。

 

AIS特殊弾を搭載したそれは、容易に装甲を削り取る。

だが纏わり付く泥のような物により、容易く復元されてしまう。

 

 

「そうはさせないよ!」

 

 

その復元を妨げるかのように、シャルルが放ったグレネードが着弾。

泥を一部分引き剥がした。

だが…

 

 

「これでも再生するんですの!?」

 

「さすがにこうなると打つ手なしだよ…」

 

 

引き剥がされた側から再生していく装甲に、最早何も出来なくなる。

それは強力な武器を1度に使いすぎると、泥を貫通しラウラに届いてしまう事を危惧していたからだ。

そこに、

 

 

『2人とも離れろ!』

 

一夏の声が響き渡り、全てが終わる。

 

 

 

 

 

        ーー△ーー 

 

 

 

「2人とも離れろ!」

 

そう言った一夏は限界を超えてスラスターを吹かす。

稼働限界等優に超え、所々に火花が上がりながら。

それでも一夏は、技を出すための『四重瞬時(クアッドイグニッション)二式』を繰り出す。

 

「頼む!持ってくれ!」

 

『Forced to anyone. For you.』

同時翻訳機能といった、ユリの補助機能が全てダウンするなか…一夏は全エネルギーをスラスターへと集中させる。

 

 

そしてその場で膨大な上昇気流が生み出され…

 

 

「秘技『絶刀』!」

 

ハイパーセンサーですらも認識出来ない加速。

それ程までに暴力的な速度により一夏の姿がブレ、まるで分身しているかのように見える。

その全てが『暮桜』を切り刻む。

そして空間は死に、ラウラに纏わり付いていた泥を文字通り消し飛ばした。

 

 

そしてそのまま外へ放り出されるラウラを、一夏は咄嗟に抱き抱える。

 

そこにあったのは停止したシュバルツェアレーゲン。そして全身血だらけでラウラを抱える一夏の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

「うっ…ぐっ…」

 

体に走る激痛を感じ、意識を取り戻すラウラ。

そして動かすのすらも辛い首ではなく、目だけで状況把握を試みる。

 

「ここは…そうだ!私はーーくッ!」

 

「無理に動かない方が良い。医者が言うには全治2週間だったらしいが…体内のナノマシンが治すだろう。」

 

その声の方向へとラウラが振り向くと、ベットに横になり全身包帯と言ってもいいほど痛々しい一夏が居た。

 

「俺の方が酷い物か。笑える事に右腕の骨折と筋肉剥離、それに内蔵損傷と肋骨骨折等々。

全治2ヶ月らしい。まあ、ユリのお陰でもう少し速く治るが。」

 

「だが、私のせいで…」

 

ラウラの言葉を、一夏は手で制した。

その先は言うなと言わんばかりに。

 

「それ以上は無しだ。確かに俺は大怪我を負ったが、別にお前のせいじゃない。お前はVTSに乗っ取られたんだからな。」

 

「だが私は、お前との真剣勝負に水を差してしまった形になる。」

 

その返答に、一夏は溜息を吐きながら口を開く。

 

「俺との勝負は何時でも出来る。だから気にする必要は無い。ではな、俺は食堂に行って来る。」

 

そのまま一夏は保健室を出て行った。

そして残されたラウラは…

 

「全く、自由なやつだ。」

 

そう呟いて目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

       ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

『トーナメントは事故により中止となりました。ただし、今後の個人データ指標と関係する為、全ての一回戦は行います。場所と日時の変更は各自個人端末で確認の上――』

 

ピ、と誰かが学食のテレビを消す。一夏はそもそもあまり聞いていなかったので、気に止めていなかった。

 

「ふむ。中止になったな」

 

「ですわね。」

 

「そうだねぇ。あ、七味切れてる。」

 

 

当事者なのにのんびりとしたものだと何処かから批判が来そうだが、ついさっきまで一夏以外は教師陣から事情聴取されていたのだ。やっと開放された時には時刻は食堂終了ギリギリの時間。一夏は待たせていたセシリア、シャルルと一緒に食堂へ行くと、話を聞きたかったのかかなりの女子が食堂で待っていた。

とりあえず晩飯を食べてからと言う事で、一夏達は夕食優先でテーブルに着いたのだが、何やら重大な告知があると言う事でテレビに帯が入り、そしてさっきの内容となる訳である。

 

「ごちそうさま。学食、寮食。この学園は本当に料理が美味い。……ん?」

 

一夏達の食事が終わるのを今か今かと心待ちにしていた女子一同がひどく落胆していた。

 

「……優勝……チャンス……消え……」

 

「交際……無効……」

 

「……うわあああんっ!」

 

バタバタバターっと数十名が泣きながら走り去っていった。

 

「…どうしたんだろうね?」

 

「さあな……」

 

「よく分かりませんわね……」

 

3人共に理由を知っていた為、言葉を濁す事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、シャルルの姿がなかった。一夏は大体の理由はわかっているし、そんなに気にする必要もなくボーッとしていた。教室を見回すとラウラも同様に一夏と同じ包帯等をしていた。昨日の今日では流石に無理であろう。負傷しているし、事実聴取もある。

 

「み、皆さん、おはようございます……」

 

教室に入ってきた真耶はフラフラしている。おそらくだがその理由、大体お察しだ。

 

「今日は、ですね……皆さんに転校生を紹介します。転校生と言いますか、すでに紹介は済んでいるといいますか、ええと……」

 

真耶の説明はよくわからない。正直どう説明すればいいかわからないのだろう。

クラスは転校生に反応したらしく一斉に騒がしくなった。

 

「じゃあ、入ってください」

 

「失礼します。――シャルロット・デュノアです。この度日本に帰化することになりました。皆さん、改めてよろしくお願いします」

 

ペコリと、スカート姿のシャルル…否、シャルロットが礼をする。一夏とセシリアを除いたクラス全員がポカンとしたままだ。

 

「ええと、デュノア君はデュノアさんでした。と言う事です。はぁぁ……」

 

疲労感たっぷりのため息を吐く真耶。男子生徒の為に頑張ってたら実は女子生徒でしたというオチだ、ショックも一塩だろう。

 

「え?デュノア君って女……?」

 

「おかしいと思った!美少年じゃなくて美少女だったわね」

 

「って、織斑君、同室だから知らないって事は――」

 

「ちょっと待って!昨日って確か、男子が大浴場を使う日だったわよね!?」

 

ザワザワザワッ!

教室が一斉に喧噪に包まれ、それはあっという間に溢れかえる。

情報に敏感な女子達は既に掴んでいた。

だが…

 

「いや、そう言うのは無いぞ?俺はこんな傷だし、昨日はシャワーで済ませたよ。」

 

その一言で静まり返る。

女子達の気を引くネタは挙がらなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

「…むーん」

 

そこは奇妙な部屋だった。

部屋の中央、そこに立つ塔のようにそびえ立つそれは、『篠ノ之束』のラボ。そこにあるメインサーバーであった。

 

「んー。暇だなぁ…」

 

と、そこに着信音が鳴り響く。

ゆっくりと携帯を耳に当てる。

 

「やあやあ、そろそろ掛けてく頃だと思ったよ。ところで何のようかな?」

 

『姉さん… 実はーーーーーーーー。』

 

 

 

その返答を聞いた束は、顔を歪ませたのだった

 

 

 

 

 

 

 




設定



四重瞬時(クアッドイグニッション)二式

瞬時加速をその場で4回繰り返し、そのエネルギーを使いもう一度瞬時加速を4回繰り出す技。
一夏の専用機、ユリでしか出来ない。

ユリでさえ、一時的な機能不全に陥るほど。
機体と操縦者に対する負荷が凄まじく、1度しか使えない切り札である。



絶刀


出典はDMC3のバージルの絶技より。


分身が出来る程の速さで動き、対象を切り刻む技。

一夏は四重瞬時加速中にのみ、この技を使う事が出来る。


疾走居合

出典はDMC3or4のバージルより

目にも止まらぬ速さで対象に接近し、斬擊を対象に設置…時間差で刻まれる技。

速度は劣るが、一夏が生身で出来る数少ない技。




因みに前書きはネタです。
本編とは関係ありません。

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