今回はオールオリジナル回。
問題児3人の話です。
あと、少し短い。
「ねえセシリア。」
「どうしたんですの?」
噂話について一段落。
一夏とセシリアが出張って噂を止めるため、どちらかが優勝するという事で片がついた。
そして一夏は、用事があるため先に行き、残ったのはシャルルとセシリアだった。
「放課後にね、第三アリーナで訓練を予定してるんだ。」
「はい…それで?」
突然の話題でついて行けず、曖昧な返事を返すセシリア。
何故自分にこの話題を振ったのか、未だに理解できなかった。
「それでね、僕と鈴、ラウラを入れてやるんだけど…教官役が誰も居なくて、セシリアなら強いから…お願い出来ないかなって。」
「はぁ…私に、ですか。」
そこでようやく理解したセシリア。
シャルル、鈴、ラウラの3名で行う訓練。
そこでシャルルはセシリアに対し、訓練を行う上での教官役をお願いしてきたのだ。
「まあ、良いですけど。私の指導は厳しいですわよ?」
特に断る理由もないセシリアは、この話を即決した。だがその前に予定していた用事があることを思い出す。
「ですが少々遅れます。それでもよろしいのであれば、引き受けますわ。」
「全然!むしろありがとう!これで僕達もうまくなれるはず。」
少々涙目ながらも、声を荒げて喜ぶシャルル。
泣く程嬉しかったらしい。
「では放課後に。ちょうどチャイムが鳴りましたし、戻りましょうか。」
「そうだね。次は織斑先生の授業だし。」
そう言うと、2人は歩き出した。
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時刻は放課後、第三アリーナにて。
件の3人は何やら口論していた。
喧嘩では無いらしいが、それは白熱していた。
アリーナのど真ん中でやっていたので、かなり目立っていた。
目立っていたのだが、3人共熱くなると周りが見えなくなるようだ。
「だぁかぁら!何度も言ってるじゃない!あたしはセシリアが来るまで自主練でもしようって!」
と、鈴は声を荒げながら言う。
だが、鈴の意見は他の2人には届いていないようだ。
「だから違うよ!セシリアが来るまで待機してるのが良いんだって!なんで僕の言うことわからないかなぁ!」
「2人共違うぞ、セシリアが来るまで無難に準備しておくのだ。」
シャルルはセシリアが来るまで何もせず、待機の意見を。
ラウラは訓練の準備をするという意見を。
3人の意見が一致する事無く、平行線を行く。
「ふーん…どうあっても譲る気は無いのね。なら!」
そう言って鈴は、自身のIS『甲龍』を展開する。
そしてこう口を開いた。
「模擬戦で決着を付けましょう?勝った人の意見になるの、簡単でしょ?」
「良いねぇ、その提案乗った!」
「面白そうだ、私も乗ってやろう。」
そう言い、シャルルもラウラも『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』と『シュヴァルツェア・レーゲン』をそれぞれ展開する。
「始めるわよ?」
「ああ。」
「何時でもいいよ。」
バシュッと、音を残し上へと飛翔した3人であった。
未だアリーナに人が居る状態で。
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「ほう。それで引き受けた訳か。」
「はい、特に断る理由も無かったですし。」
セシリアは用事を済ませ、一夏と合流して第三アリーナに向かっていた。
「あの3人ですから心配はありますけど…静かに待っていてくれると良いのですが。」
「さあどうだか。ま、その答えはもう目の前だ。」
そう言うと一夏は第三アリーナ、その入口を開ける。
そこには何人か震える生徒、それを介抱する生徒。そして、アリーナで戦っている3人の専用機持ちの姿だった。
「これはまた…別の意味で刺激的だなぁおい。如何にしてこんな状況に…」
そう呟く一夏。
そしてセシリアは、近場の生徒へと駆け寄った。
「何がありましたの?」
「えっと…あそこで戦っている3人、最初は口論していたの。だけど突然専用機を展開して、模擬戦を始めたみたいで。まだアリーナの中に居た人は、急いで逃げたの。」
ブチッ
鳴ってはいけないような音がして、セシリアがふらふらと立ち上がる。
彼女の代表候補生としての誇り、そして彼女が掲げる
そう、一夏は感じたのである。
「アイン…どうやらあそこの愚か者共に、
「まあ、程々にな。再起不能とかになったら洒落にならんからな。」
「善処します。では。」
そう言うとセシリアはピットへと向かって行った。そして残された一夏は…
「怪我人は保健室に、1人で歩けない人も同様だ。無理しないよう、付き添いながらで良い。あと手が空いてる人は織斑先生を呼んで来てくれ。」
的確な指示で混乱した客席内をまとめ始めた。
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「だいたいあんたはいつもそうなのよ!あたしに突っ掛かって来て、何?喧嘩売ってんの?なら買うわよ、っらぁ!」
そう言って双天牙月を振り下ろす。
重量を伴うそれの一撃、その軌道上にはシャルルが居た。
「別に僕は喧嘩したいわけじゃない!でも意見が食い違うのはしょうが無いじゃないか!」
その攻撃を受け流し、その勢いそのままにラウラへと投げる。
「生憎と私達は人間だ。なら、多少意見が違うくらい目を瞑るべきだろう?」
吹き飛んできながらも武器を振りかぶっていた鈴を、その手刀で受け止めるラウラ。
3人の主義主張は異なる意見だ。
故に争うのは必然であった。
いくら同じ目的で集っているとはいえ、他人同士なのだ。
だがそこに、一丁の蒼で塗られた
そのライフルの持ち主とは…
『随分と盛り上がっているじゃない、無断で模擬戦なんかして。ねぇ、私も混ぜてくれない?』
この学園に居れば必ず一度は耳にする人物。
イギリスの主席代表候補生、セシリア・オルコットだった。
「せ、セシリア…く、口調が。」
「ふーん、自分の事より私の口調が気になるんだぁ。それは随分とおめでたい頭だよねぇ。」
がらりと性格が変わっているセシリアに、驚愕する3人。
それはそうだろう。今までどんな戦いでも優雅な喋り方だったのだ。
それが突然変われば誰だって驚くだろう、だが原因は自分たちだと言うことを彼女達はまだ知らない。
そしてセシリアはBT兵器を展開する。だが問題なのはBT兵器の数であった。
「な!?12機同時操作だと!?」
そう、12機だ。
今までのセシリアの操作していた数は4機、3倍なのだ驚かない筈が無い。
この3人の中でいち早く、これから行われるであろう事に気付いたのはラウラだった。
何せ1度体験しているのだから。
「あのね?セシリア、なんでか知らないけどちょっと落ち着こう?」
「そうだよセシリア。」
鈴とシャルルの余計な一言により、セシリアの纏う雰囲気が益々変わった。
それにより、ラウラの顔色が青くなっていく。
「この期に及んでまだ知らないとほざくとは、呆れを通り越して尊敬するよ本当に。」
その言葉の直後、空中で待機していたBT兵器は3人へと射出された。
12機のBTが4機毎に別れ、1人に4機付く。
セシリアが予備のBTすらも動員した最強の布陣。1対3の状況を一方的に覆すことが出来るそれは、
3人同時に相手取る為の戦法。
「ふふ、避けられるものなら避けてみなさい。出来るものならね。」
そして12機から一斉に発射されるレーザー。
それを避けようとしたところで意味がない、何せ…
「偏向射撃!?しかもこれ全部!?」
何故なら全てのレーザーは自在軌道を描き、己の逃げ道を全て塞ぎながらもこちらに向かってくるのだから。
「己の行動を悔い改めなさい。」
その言葉、そして3人が落ちてくる、それは同じタイミングだった。
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「さて、何か申し開きはあるかしら?3人共。」
鈴、シャルル、ラウラの3人は、頭のたんこぶを揃って押さえている。
そして専用機を一時的に没収のうえ正座していた。
それもアリーナのど真ん中で。
そしてセシリア、千冬、一夏が3人の前に立っていた。一夏は3機の待機形態で遊んでいただけだが。
「別に私は模擬戦の事を咎めている訳でも、まして私を待っていなかった事を怒っている訳でも無いわよ?」
勘違いしていそうな3人を前に、早々に正すセシリア。
そのまま…
「いい?私は模擬戦を始める前に安全確認を怠った事を怒ってるの。貴女達、アリーナに他の生徒が居たの気付いてた?その様子だと気付いてないみたいね。そもそも貴女達は代表候補生でしょう?もう少し冷静に、周りを見る力を鍛えなさい。いい?反省した?」
ブンブンと首を縦に振る3人。
「しっかり反省したならよろしい。あと一時間は付き合って貰うわよ?」
上げて落とされる。
この程度で開放される訳が無いのだ。
「あ、あと専用機は明日まで没収です。異論反論受け付けないからね?自業自得だし。」
ガーンッと燃え尽きたように真っ白になる。
専用機の没収はそれほどに痛手なのだ。
だがそれ程の事をしでかす方が悪いのだ。
「なあ一夏…オルコットは何時もこうなのか?」
「いや、こうなるのはブチ切れた時だけだよ。そう何度も見られるもんじゃない。」
こう、とはこの人格が変わったとしか思えない喋り方と雰囲気だろう。
何時もなら『ですわ』等の如何にもなお嬢様(実際お嬢様なのだが)の言葉遣いを使っていた。だが、ブチ切れた時にはそう言うものが一切無かった。
「ま、この問題児共の処分はセシルが下したし…俺は戻るわ。」
「あ、ああ。わかった。」
余談だがセシリアが鈴達を帰したのは、一時間後…
では無く、三時間後に帰した。
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「全く、あの3人にも困ったものですわ。」
「1人1人の時は何ともないし、多分だが3人集まったときだけだろう。」
セシリアは一夏の部屋へと来ていた。
久方振りにブチ切れしたセシリアは、その心を癒やして貰おうと思ったのだ。
「あの調子じゃ、この先不安ですわ…」
「だがあいつらの間に誰かが居れば、案外どうにかなりそうだぞ?」
一夏の言う通りだった。
3人が同じ様な性格で馬が合わないとき、その間に調和が取れる別の人格者が割って入ればいいのだ。
「まあそれはいいのです、アイン!」
そのまま一夏へと抱き着くセシリア。
一夏はそんなセシリアの頭を優しく撫でる。
「お疲れさま、よく頑張ったな。」
幸せそうな表情を浮かべ、笑顔のセシリアは満足そうにそのまま寝てしまう。
他ならぬ一夏の手によって、寝かし付けられてしまった。
「今日は頑張っていたからな、これ位良いだろう。」
そう呟く一夏の顔もまた、幸せそうだった。
1人1人は全く問題は無い鈴、シャルル。そしてラウラ。
良い子何ですよ、1人1人なら。
周りの見えない人間が増えると厄介な事になるのですよ。
そしてセシリアがブチ切れると、まさに手が付けられない。