蒼白コントラスト   作:猫パン

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何時もサブタイトルは付けないんですが、付けるとすればブチ切れセシリアですかね。


今回はオールオリジナル回。
問題児3人の話です。


あと、少し短い。


第五話

 

 

 

 

 

 

 

「ねえセシリア。」

 

「どうしたんですの?」

 

噂話について一段落。

一夏とセシリアが出張って噂を止めるため、どちらかが優勝するという事で片がついた。

そして一夏は、用事があるため先に行き、残ったのはシャルルとセシリアだった。

 

「放課後にね、第三アリーナで訓練を予定してるんだ。」

 

「はい…それで?」

 

突然の話題でついて行けず、曖昧な返事を返すセシリア。

何故自分にこの話題を振ったのか、未だに理解できなかった。

 

「それでね、僕と鈴、ラウラを入れてやるんだけど…教官役が誰も居なくて、セシリアなら強いから…お願い出来ないかなって。」

 

「はぁ…私に、ですか。」

 

 

そこでようやく理解したセシリア。

シャルル、鈴、ラウラの3名で行う訓練。

そこでシャルルはセシリアに対し、訓練を行う上での教官役をお願いしてきたのだ。

 

「まあ、良いですけど。私の指導は厳しいですわよ?」

 

特に断る理由もないセシリアは、この話を即決した。だがその前に予定していた用事があることを思い出す。

 

「ですが少々遅れます。それでもよろしいのであれば、引き受けますわ。」

 

「全然!むしろありがとう!これで僕達もうまくなれるはず。」

 

 

少々涙目ながらも、声を荒げて喜ぶシャルル。

泣く程嬉しかったらしい。

 

「では放課後に。ちょうどチャイムが鳴りましたし、戻りましょうか。」

 

「そうだね。次は織斑先生の授業だし。」

 

そう言うと、2人は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

時刻は放課後、第三アリーナにて。

件の3人は何やら口論していた。

喧嘩では無いらしいが、それは白熱していた。

アリーナのど真ん中でやっていたので、かなり目立っていた。

目立っていたのだが、3人共熱くなると周りが見えなくなるようだ。

 

「だぁかぁら!何度も言ってるじゃない!あたしはセシリアが来るまで自主練でもしようって!」

 

と、鈴は声を荒げながら言う。

だが、鈴の意見は他の2人には届いていないようだ。

 

「だから違うよ!セシリアが来るまで待機してるのが良いんだって!なんで僕の言うことわからないかなぁ!」

 

「2人共違うぞ、セシリアが来るまで無難に準備しておくのだ。」

 

 

シャルルはセシリアが来るまで何もせず、待機の意見を。

ラウラは訓練の準備をするという意見を。

 

3人の意見が一致する事無く、平行線を行く。

 

「ふーん…どうあっても譲る気は無いのね。なら!」

 

そう言って鈴は、自身のIS『甲龍』を展開する。

そしてこう口を開いた。

 

「模擬戦で決着を付けましょう?勝った人の意見になるの、簡単でしょ?」

 

「良いねぇ、その提案乗った!」

 

「面白そうだ、私も乗ってやろう。」

 

そう言い、シャルルもラウラも『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』と『シュヴァルツェア・レーゲン』をそれぞれ展開する。

 

「始めるわよ?」

 

「ああ。」

 

「何時でもいいよ。」

 

バシュッと、音を残し上へと飛翔した3人であった。

 

 

未だアリーナに人が居る状態で。

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

「ほう。それで引き受けた訳か。」

 

「はい、特に断る理由も無かったですし。」

 

セシリアは用事を済ませ、一夏と合流して第三アリーナに向かっていた。

 

「あの3人ですから心配はありますけど…静かに待っていてくれると良いのですが。」

 

「さあどうだか。ま、その答えはもう目の前だ。」

 

そう言うと一夏は第三アリーナ、その入口を開ける。

そこには何人か震える生徒、それを介抱する生徒。そして、アリーナで戦っている3人の専用機持ちの姿だった。

 

「これはまた…別の意味で刺激的だなぁおい。如何にしてこんな状況に…」

 

そう呟く一夏。

そしてセシリアは、近場の生徒へと駆け寄った。

 

「何がありましたの?」

 

「えっと…あそこで戦っている3人、最初は口論していたの。だけど突然専用機を展開して、模擬戦を始めたみたいで。まだアリーナの中に居た人は、急いで逃げたの。」

 

ブチッ

 

鳴ってはいけないような音がして、セシリアがふらふらと立ち上がる。

彼女の代表候補生としての誇り、そして彼女が掲げる高貴なる貴族の努め(ノブレス・オブリージュ)の琴線に触れた気がした。

そう、一夏は感じたのである。

 

「アイン…どうやらあそこの愚か者共に、物理的調教(説教と教育)が必要なようです。叩き潰す許可、頂けますね?」

 

「まあ、程々にな。再起不能とかになったら洒落にならんからな。」

 

「善処します。では。」

 

そう言うとセシリアはピットへと向かって行った。そして残された一夏は…

 

「怪我人は保健室に、1人で歩けない人も同様だ。無理しないよう、付き添いながらで良い。あと手が空いてる人は織斑先生を呼んで来てくれ。」

 

 

的確な指示で混乱した客席内をまとめ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

「だいたいあんたはいつもそうなのよ!あたしに突っ掛かって来て、何?喧嘩売ってんの?なら買うわよ、っらぁ!」

 

そう言って双天牙月を振り下ろす。

重量を伴うそれの一撃、その軌道上にはシャルルが居た。

 

「別に僕は喧嘩したいわけじゃない!でも意見が食い違うのはしょうが無いじゃないか!」

 

その攻撃を受け流し、その勢いそのままにラウラへと投げる。

 

「生憎と私達は人間だ。なら、多少意見が違うくらい目を瞑るべきだろう?」

 

吹き飛んできながらも武器を振りかぶっていた鈴を、その手刀で受け止めるラウラ。

 

 

 

3人の主義主張は異なる意見だ。

故に争うのは必然であった。

いくら同じ目的で集っているとはいえ、他人同士なのだ。

 

だがそこに、一丁の蒼で塗られたライフルが飛んできて(・・・・・・・・・・)3人共一斉に動作が止まる。

そのライフルの持ち主とは…

 

『随分と盛り上がっているじゃない、無断で模擬戦なんかして。ねぇ、私も混ぜてくれない?』

 

この学園に居れば必ず一度は耳にする人物。

イギリスの主席代表候補生、セシリア・オルコットだった。

 

「せ、セシリア…く、口調が。」

 

「ふーん、自分の事より私の口調が気になるんだぁ。それは随分とおめでたい頭だよねぇ。」

 

 

がらりと性格が変わっているセシリアに、驚愕する3人。

それはそうだろう。今までどんな戦いでも優雅な喋り方だったのだ。

それが突然変われば誰だって驚くだろう、だが原因は自分たちだと言うことを彼女達はまだ知らない。

 

そしてセシリアはBT兵器を展開する。だが問題なのはBT兵器の数であった。

 

「な!?12機同時操作だと!?」

 

そう、12機だ。

今までのセシリアの操作していた数は4機、3倍なのだ驚かない筈が無い。

 

この3人の中でいち早く、これから行われるであろう事に気付いたのはラウラだった。

何せ1度体験しているのだから。

 

「あのね?セシリア、なんでか知らないけどちょっと落ち着こう?」

 

「そうだよセシリア。」

 

鈴とシャルルの余計な一言により、セシリアの纏う雰囲気が益々変わった。

それにより、ラウラの顔色が青くなっていく。

 

「この期に及んでまだ知らないとほざくとは、呆れを通り越して尊敬するよ本当に。」

 

 

その言葉の直後、空中で待機していたBT兵器は3人へと射出された。

 

BT四重奏(ブルー・ティアーズクァルテット)だがこの場合は厳密には違う。

12機のBTが4機毎に別れ、1人に4機付く。

セシリアが予備のBTすらも動員した最強の布陣。1対3の状況を一方的に覆すことが出来るそれは、BT十二重奏(ブルー・ティアーズクワイア)

3人同時に相手取る為の戦法。

 

 

 

「ふふ、避けられるものなら避けてみなさい。出来るものならね。」

 

そして12機から一斉に発射されるレーザー。

それを避けようとしたところで意味がない、何せ…

 

「偏向射撃!?しかもこれ全部!?」

 

何故なら全てのレーザーは自在軌道を描き、己の逃げ道を全て塞ぎながらもこちらに向かってくるのだから。

 

「己の行動を悔い改めなさい。」

 

 

その言葉、そして3人が落ちてくる、それは同じタイミングだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

「さて、何か申し開きはあるかしら?3人共。」

 

鈴、シャルル、ラウラの3人は、頭のたんこぶを揃って押さえている。

そして専用機を一時的に没収のうえ正座していた。

それもアリーナのど真ん中で。

 

そしてセシリア、千冬、一夏が3人の前に立っていた。一夏は3機の待機形態で遊んでいただけだが。

 

「別に私は模擬戦の事を咎めている訳でも、まして私を待っていなかった事を怒っている訳でも無いわよ?」

 

勘違いしていそうな3人を前に、早々に正すセシリア。

そのまま…

 

「いい?私は模擬戦を始める前に安全確認を怠った事を怒ってるの。貴女達、アリーナに他の生徒が居たの気付いてた?その様子だと気付いてないみたいね。そもそも貴女達は代表候補生でしょう?もう少し冷静に、周りを見る力を鍛えなさい。いい?反省した?」

 

ブンブンと首を縦に振る3人。

 

「しっかり反省したならよろしい。あと一時間は付き合って貰うわよ?」

 

上げて落とされる。

この程度で開放される訳が無いのだ。

 

「あ、あと専用機は明日まで没収です。異論反論受け付けないからね?自業自得だし。」

 

 

ガーンッと燃え尽きたように真っ白になる。

専用機の没収はそれほどに痛手なのだ。

だがそれ程の事をしでかす方が悪いのだ。

 

「なあ一夏…オルコットは何時もこうなのか?」

 

「いや、こうなるのはブチ切れた時だけだよ。そう何度も見られるもんじゃない。」

 

こう、とはこの人格が変わったとしか思えない喋り方と雰囲気だろう。

何時もなら『ですわ』等の如何にもなお嬢様(実際お嬢様なのだが)の言葉遣いを使っていた。だが、ブチ切れた時にはそう言うものが一切無かった。

 

 

「ま、この問題児共の処分はセシルが下したし…俺は戻るわ。」

 

「あ、ああ。わかった。」

 

余談だがセシリアが鈴達を帰したのは、一時間後…

 

 

 

では無く、三時間後に帰した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       ーーーー△ーーーー

 

 

 

「全く、あの3人にも困ったものですわ。」

 

「1人1人の時は何ともないし、多分だが3人集まったときだけだろう。」

 

セシリアは一夏の部屋へと来ていた。

久方振りにブチ切れしたセシリアは、その心を癒やして貰おうと思ったのだ。

 

「あの調子じゃ、この先不安ですわ…」

 

「だがあいつらの間に誰かが居れば、案外どうにかなりそうだぞ?」

 

一夏の言う通りだった。

3人が同じ様な性格で馬が合わないとき、その間に調和が取れる別の人格者が割って入ればいいのだ。

 

「まあそれはいいのです、アイン!」

 

そのまま一夏へと抱き着くセシリア。

一夏はそんなセシリアの頭を優しく撫でる。

 

「お疲れさま、よく頑張ったな。」

 

幸せそうな表情を浮かべ、笑顔のセシリアは満足そうにそのまま寝てしまう。

他ならぬ一夏の手によって、寝かし付けられてしまった。

 

「今日は頑張っていたからな、これ位良いだろう。」

 

そう呟く一夏の顔もまた、幸せそうだった。

 

 

 




1人1人は全く問題は無い鈴、シャルル。そしてラウラ。
良い子何ですよ、1人1人なら。
周りの見えない人間が増えると厄介な事になるのですよ。



そしてセシリアがブチ切れると、まさに手が付けられない。

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