ペルソナ Blood-Soul   作:龍牙

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第三夜

「…………相変わらずですね」

 

相変わらず真っ暗なモニターを眺めながら、ゆかりは呆れた様子で呟いた。

 

「彼の様子は昨日と変わらずか」

 

美鶴は幾月の言葉に頷きながら、

 

「ええ。これでは適性があるか分かりません」

 

「そのようだね。彼に適正があるのは間違いないはずなんだけどね」

 

「……なんか、実験動物(モルモット)みたい……だったんですよね」

 

ゆかりのその言葉に一瞬沈黙が流れた。初日から監視カメラの存在には気付かれ、次の日からは徹底的に潰されている。実験動物(モルモット)と言う意見は入寮初日の奏夜も持った意見だったが、少なくとも、今の彼には絶対に当てはまらない言葉だろう。

 

「………そういうな。これも彼の為なんだが………」

 

自分達の間に流れる沈黙を振り払う様に、苦笑を浮かべながらそう会話を始め、言葉を続ける。

 

「理屈は、分かりますけど……」

 

一人でも仲間は多い方がいいと頭の中では……理屈としては理解していても罪悪感が有るのは隠せないはずだった。だが…こうも連日監視も何も出来ない状況では、罪悪感も薄れてきている。しかも、それでも罪悪感を持っているし、悪いとは思っているのだが…。

 

今後、奏夜の監視を如何するかと考えていると、無線の呼び出し音が鳴り響いた。美鶴が応答した所、通信の相手はここに居ない最後の一人である『真田明彦』の様だが……

 

 

『凄い奴を見つけた! これまで見た事もない奴だ!』

 

 

彼、『真田 明彦』の言葉には切迫した…必死な物が有った。『見た事も無い奴』とは、考えるまでもなく、相手はこの時間の中に存在する『敵』だろう。それも、自体は緊急を要している。

 

 

『ただ、生憎追われていてな……。もうすぐそっちに着くから、一応知らせておく』

 

 

「ッ!?」

 

続けられた明彦の言葉によって、美鶴達の間に緊張が走り、ざわめく。明彦は敵に追われていて、もうすぐこの寮に帰り着くという。それはつまり……

 

「それ……ヤツらがここに来るって事ですか!?」

 

「ひとまず今日の監視は中止だ! 理事長! 我々は応戦の準備をします!」

 

立ち上がり、そう鋭く言い放つと、美鶴は唐突な襲来に震えながら頷くゆかりと幾月を連れてラウンジへと降りて行く。

 

階段を下り切り、ラウンジに到着すると同時に、玄関の扉を開いて一人の少年が姿を現した。

 

「真田先輩!」

 

ゆかりが叫び、その少年……『真田 明彦』に駆け寄る。明彦は「大丈夫だ」と答えてはいるが、何処かを負傷しているのだろう、その表情は痛々しい。

 

だが、その場に居る3人の顔を順に見つめた次の瞬間、その顔に不敵な笑みを浮かべて、言葉を放つ。

 

「それより凄いのが来るぞ。見たらきっと驚く」

 

「面白がってる場合か! これは遊びじゃないんだぞ、明彦!」

 

「そ、それより真田くん、奴らなのかッ!?」

 

緊急事態なのに面白そうに放たれた明彦の言葉に激昂した美鶴を抑えて、幾月が震える声で問いかける。その問いを肯定する様に明彦は深く頷く。

 

「ただ普通の奴では……」

その瞬間、明彦の言葉を遮る様に寮全体を巨大な振動が襲いかかった。それは地震等の自然の揺れによって発生する振動ではない…。それは、物理的に何かが叩きつけられた事で起きた振動。

 

当然、その何かというのは考えるまでもなく、全員がその答えを持っている。そんな真似が出来る存在は、既に奴等しか存在していない。

 

「何この揺れ……冗談でしょ!?」

 

「理事長は作戦室へ! 岳羽は二階にいる彼を非難させてくれ!」

 

美鶴が事態に動揺することなく、冷静に指示を飛ばす。戦闘員では無い幾月を作戦室へ、戦闘経験の無いゆかりを無関係な第三者の避難へと向かわせる。

 

「えっ……? 先輩たちは?」

 

「ここで何としても食い止める。明彦、連れて来たのはおまえだ。責任は取ってもらうぞ」

 

「ヤツらの方が勝手について来たんだ! まったく……」

 

美鶴の言葉に毒づきながらも明彦は立ち上がり、ヤツらを迎える体勢を整えた。元々以前より戦闘を経験している最強戦力である二人が正面から敵を食い止める為にその場に残る。それは合理的であり、適材適所な判断だろう。

 

だが、彼等、彼女等は知らない…自分達が無関係な第三者と考えている奏夜こそ、今この場における真の最強最大の戦力なのだ。

 

 

 

 

奏夜の部屋

 

「おい、奏夜」

 

キバットの言葉を聞き、私服に着替えながら奏夜は彼の方へと視線を向ける。

 

「分かってる。……この感覚…奴等が出た」

 

キバットの言葉に答えながら、奏夜は窓の外に浮かぶ満月を睨み付ける。空に浮かぶ今夜の満月は、今までこの時間の中で見た物の中でもっとも禍々しく…もっとも妖しく…そして、もっとも、美しかった。

 

突然寮全体が揺れる。地震では無い…。恐らく、まだ推測の域を出ない事だが、ここを襲撃してきた奴等の仕業だ。

 

「これって?」

 

「ああ、今までの奴等じゃなさそうだ。キバって行けよ、奏夜!」

 

「うん」

 

キバットを手に取り、それを右手に近づけようとした瞬間…

 

「変……」

 

「紅君!」

 

「「ッ!?」」

 

突然、騒々しい音と共にドアが開かれ、ゆかりが部屋の中に飛び込んでくる。ドアに背を向けていた奏夜達には見えなかったが、部屋に飛び込んできたゆかりの表情は、酷く切羽詰った物だった。

 

奏夜とキバットはそれに思いっきり驚いてしまった。奏夜は反射的にポケットの中にキバットを隠す。

 

「うわ!」

 

突然の事に驚いてキバットが抗議の意思を込めて叫び声を上げるが、今はそれ所ではない。

 

「勝手に入ってゴメン。悪いけど、説明してる暇無いの。今すぐここから出るから!」

 

「う、うん!」

 

実際、自分達はその原因と今から戦いに行こうとしていたのだが、『キバ』の事を隠している以上、そんな事を言える訳も無く、ただ彼女の指示に従うしか出来ない。

 

「ふう、セーフだったな、今のは」

 

奏夜のポケットの中でキバットはそう呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

ゆかりに連れられて奏夜は部屋を飛び出す。ゆかりに案内されながら、二人と一匹は裏口へと辿り着く。

 

「ここ?」

 

「うん、ここまで来れば……」

 

裏口の前、そこで一息付いた所に電子音が鳴り響く。それに気が付いたゆかりが無線のスイッチを入れると、すぐに無線の向こうから美鶴の声が聞こえてきた。

 

 

『岳羽、聞こえるか!?』

 

 

「は、はい! 聞こえます!」

 

 

『気をつけろ、敵はあの1体だけじゃないみたいだ。こことは別に本体がいる!』

 

 

「マジですか!?」

 

美鶴の言葉にゆかりが慌てると同時に、目の前のドアが軋み声を上げる。

 

敵と言う言葉にこの扉の先に待っているのは自分達が戦おうとしていた相手と言う事を考え付くのはそれ程時間は掛からなかった。しかも、自分以外にもどこかで美鶴達が戦っている。それも…この寮全体を揺らすほどの相手と…。

 

しかも、それだけではない…通信から聞こえてきた美鶴の言葉が正しければ、この扉の先に居るのは先程、彼女達の話に出てきた『本体』の可能性が高い。

 

自分達だけならば、すぐに変身して扉を蹴破るべきだろう。…だが、今は自分達だけではないのだと、奏夜は頭の中から考えを消し去る。

 

「これ以上ここに居るのは拙い、すぐに離れよう!」

 

「う、うん!」

 

恐らく正面には敵と戦っているであろう人達が居る。裏口と正面…この寮の脱出ルートは全て相手に抑えられている。

 

自分を案内するゆかりに連れられて下から迫ってくる何かを叩く嫌な音に追われながら、屋上へと向かい走りながら、奏夜は考えを展開させていく。

 

(はっきり言って状況は最悪…岳羽さんが居たらぼくは変身できないし、屋上に逃げるのは時間稼ぎにしかならない上に追い詰められたら逃げ場は無いか。……どうする?)

 

そう考えていてもすぐに答えと言う名の一枚絵は浮かんでこない。気が付くと既に最上階から屋上へと出て、ゆかりが扉を閉めていた。

 

「ここまでくれば…少しは…」

 

「いや、寧ろ逆でしかないと思うよ」

 

安堵の感情を浮かべているゆかりとは正反対に奏夜は真剣な顔で後ろを振り向く。そこにあるのは満月の浮かぶ夜空だけのはず…だった。

 

「…………」

 

「うそ…」

 

無言のまま、それを睨み付ける奏夜とそんな声を上げるゆかり……二人の視線の先、そこに有るのは…夜空に浮かぶ仮面だった。

 

それに続いて屋上に這い上がって来るのはそれの持つ体であろう、剣を握り互いに絡み合う無数の手が作り上げている黒い塊…。夜空に浮かんだ仮面は無数の手の中の一つが剣の代わりに握り、掲げていたのだ。暗く確認こそ出来ないが、その仮面にはⅠらしき数字が書かれている様にも見える。

 

(…こいつが奴等の仲間…それも、ぼくが戦ってきた奴等よりも上級の奴か…?)

 

「岳羽さん…あれって?」

 

「アレは、ここを襲ってきた化け物………『シャドウ』よ」

 

互いに視線は常に敵に向けながら奏夜の言葉にゆかりが答える。奏夜は彼女の言葉に確信を持った。彼女達は自分と同様にこの時間の中を生き、そして、ここに出現する敵(彼女達の呼称では『シャドウ』と言うらしい)と戦っている。

 

「紅君、下がって」

 

その言葉に彼女の方を振り向くと、ゆかりが意を決した表情で前へと進み、逆に奏夜を庇う様な形となった。そして彼女の手には、入寮初日に彼女が持っていた武器で有る銃が有った。

 

彼女が銃を持っていた理由もこれで納得できた。何故なら、敵が存在している以上はそれと戦うための武器は必要になってくる。だが、ただの拳銃では気休めにも成らない事を…奴等の危険性を奏夜は良く知っているのだ。

 

だが、ゆかりは何を思ったのか……その銃を自らの眉間へと宛がった。

 

「って、ちょっと、岳羽さん!」

 

「キャアァッ!」

 

明らかに間違った使い方をしようとしているゆかりを止め様と奏夜は叫ぶが、それと同時にゆかりの持つ拳銃がシャドウによって弾き飛ばされ、彼女も思い切り床へと倒れる。

 

(どうする、彼女が居たら変身できない…武器はあれだけ…やるしかないか)

 

自分へと迫るシャドウの攻撃を回避すると意を決して、床を蹴り、先程彼女が落とした銃を回収する。

 

 

-ドックン-

 

 

それを手に取った瞬間、心臓を初めとする全ての臓器が…いや、脳が…血液が…細胞が…全身の…『紅 奏夜』を構成する全ての物が脈打つ。

 

その瞬間、奏夜は理解した。その銃の意味を…。それに弾丸は無い…いや、それは正しくは別に存在している。銃ではなく、これ自体が引き金(トリガー)、撃ち出される弾丸、それは……。

 

 

 

 

 

『さぁ、はじまるよ。』

 

 

 

 

どこかで、あの少年の声が聞こえた気がしたが、そんなのは関係ない。全ては…

 

「……ペル……ソナ」

微笑を浮かべてトリガーを引く。衝撃音と共に『それ』は打ち出された。

 

 

『我は汝……汝は我……我は汝の心の海より出でし者……『幽玄の奏者』──オルフェウスなり。』

 

 

「オルフェウス…。……!!!!!!」

 

自分のうちより出た存在の名を呟いた瞬間、喉の奥から声にならない悲鳴が上がる。次に襲い来るのは自分の中から突き破ろうとしてくるモノが存在しているような不快感。

 

その感覚には過去に一度だけ経験が有った。『あの姿になった時』の感覚とまったく同じなのだ。そして、苦しみを堪えながら、オルフェウスを見上げると、オルフェウスもまた彼と同じように苦しんでいる。

 

「く、紅君!!!」

 

その様子にゆかりが彼の名前を呼ぶが、奏夜にはその声は届いていない。

 

そして、オルフェウスの口から無数の手が出現し、内部より破裂する。

 

「!? アァァァァァァァァァァァァァアアア!!!!!!」

 

体は何も傷ついて居ないのに感じられる全身が引きちぎられる様な激痛。響くのは奏夜の絶叫。オルフェウスを突き破って出現したのは…残虐な仮面をつけ、幾つ物もの棺を繋ぎ担いだ死の具現…黒衣の死神だった。

 

本能が理解する。これもまたオルフェウス同様、自分の内に潜んでいたモノ。だが、その力はオルフェウスよりも…目の前のシャドウよりも…そして、自分よりも強い。

 

無数の手に持つシャドウの剣は死神の持つ一振りの剣に劣る。その全てが死神には敵ですらない。圧倒的な力で相手を蹂躙し、その怪物達を喰らっていく。

 

そして、全てが終わった時、不快感が消え、死神はオルフェウスへと戻っていた。

 

「……終わったの?」

 

ゆかりがそう呟いた。彼女が安堵とともに奏夜に対しても僅かなに恐怖を抱いているのを彼は感じ取る。

 

異形の姿へとならずとも、自分へ向けられる恐怖の感情…。他者から拒絶されるのを恐れていた。恐れていたはずなのに…。

 

奏夜は少しだけ微笑み返し、自分達へと近付く敵の気配に気が付く。

 

「ごめん、岳羽さん」

 

「え?」

 

「もう少し、借りる」

 

這いずりながら、自分へと近付く敵の存在に気が付く。その数は2、先程よりも増えているが、前に居た町で何度も戦った敵の中でも簡単に倒してきた物と同種。

 

「…行くよ…。オルフェウス!」

 

自分の額へと突きつけた銃のトリガーを引き、自身の意識の中より奏者(オルフェウス)を呼び出す。

 

背中に背負う竪琴を外し、振り回し、力任せに叩きつける。乱暴すぎる程の力技に一体のシャドウは簡単に叩き潰す。

 

今度は先程の様な『暴走』は無い。一体を叩き潰した奏夜に二体目のシャドウが迫ってくるが、はっきりとした意識の元で相手の動きを見て避けると再びトリガーを引き、カウンターでオルフェウスの一撃で粉砕する。

 

キバットの力を借りずとも、キバの姿に成らずとも、あの化け物…彼女達の言うシャドウを倒せる力の存在に彼は戸惑いを隠せなかった。

 

「終わった…? なに!?」

 

今度こそ終わったかと奏夜が安堵した瞬間、その顔が驚愕へと変わる。

 

それは最初に倒した大型の相手の黒き肉片。死神に蹂躙され、千切れ跳んでいた黒い肉片の如きパーツは一つになり、粘土を捏ね合わせている完全な人型の何かを形成している。だが、それは人型であっても人ではない。

 

「おいおい、嘘だろう?」

 

キバットの驚愕の声が聞こえる。奏夜も、ゆかりも、それから視線を外す事は出来なかった。

粘土を捏ねる様に黒い泥は練りあわされ、一つの怪物を作り上げていく。

馬をイメージさせる頭部と鎧を纏った人間の如き体躯。

 

唯一キバットはそれには見覚えが有った。…それは絶滅したはずのモンスターの種族の一種…『ファンガイア』。

 

だから、キバットだけは他の者達とは違う疑問が浮かんでいたのだ。『何故、ファンガイアの姿をしているのか?』と言う疑問が…。

 

「アンビリバボー…」

 

キバットの呟きが漏れる。沈黙が支配する中、黒い『ホースファンガイア』は先ほどのシャドウのつけていた仮面を手に取り、自身の顔へと重ねる。そして、それと同時に焼き上がった陶器の様に、水分を失った粘土の様に…泥の様だった肉片は固さをもち、全身が黒から青と黒の色彩を得る。

 

その瞬間、青と黒の体に無理矢理シャドウの仮面を付けた『ホースファンガイア』の姿を模したシャドウが目の前に存在していた。

 

目の前の光景に対するショックから開放されない奏夜を衝撃が襲う。それはシャドウの突進によって体が吹き飛ばされたのだ。

 

「ぐっ!」

 

柵に叩きつけられて勢いは止まるが、全身のダメージは大きい。だが、それは立ち上がれないほどではない。

 

だが、吹き飛ばされた衝撃で手放してしまったのだろう、手の中にあの銃は無かった。

 

ホースファンガイアの姿をしたシャドウの手の中に大剣が現れ、横凪に振るわれると再び奏夜の体が宙を舞う。

 

「がは…」

 

奏夜の体はそのまま落下防止の柵を飛び越え、外へと吹き飛ばされる。

 

「紅君!!!」

 

ゆかりの叫び声が響く。寮は四階建てであり、そんな所から落下しては無事では済まないだろう。そして、落下に対するせめてもの抵抗の様に振るわれた手は虚しく空を切る。

 

 

 

 

 

 

 

絶対的な『死』を告げられる状況。だが、奏夜の目には絶望は無かった。

 

「ッ!? キバット!!!」

 

「よっしゃ! 待ってたぜ! ガブ!」

 

そう、ここなら誰にも見られる事無く変身できると確信しながら、屋上より落下する奏夜はその手を翳す。

 

翳された彼の腕をポケットの中から飛び出したキバットが噛む。それにより口内の牙『アクティブファング』から『魔皇力』と呼ばれる力の一種『アクティブフォース』を注入し、渡より奏夜に受け継がれ、秘められた『魔皇力』を活性化させる。

 

それに合わせ、彼の右手から右頬までステンドグラスの様な模様が浮かび上がり、何処からか現れ、腰に巻きついた鎖が砕け散り、『キバットベルト』を作り出す。

 

「変身!!!」

 

そして、彼の叫びと共にベルトのバックル部分『キバックル』にある止り木『パワールースト』へとキバットが停まり、彼の体を『キバの鎧』が纏う。奏夜に秘められた魔皇力を活性化させ、それを制御する拘束具である『キバの鎧』を纏う事により彼は変身するのだ。

 

「よっしゃ、キバって行くぜ!!!」

 

「ああ!」

 

赤き異形の戦士は壁に手を振れ落下の勢いを殺し、そのまま壁を蹴り先程までとは反対に上空へと舞い上がる。

 

 

 

 

 

 

 

「キャアァッ!」

 

大剣を構えたシャドウは獲物と認識したゆかりとの距離を詰めていく。手の中にはシャドウに吹き飛ばされた時に奏夜が手放した銃は有るが、その引き金を引くことは出来ない。

 

そして、シャドウが大剣を振り上げた瞬間、月を背景に背負いシャドウとゆかりの間に新たな異形の影が降り立ち、次の瞬間、振り下ろされた大剣を受け止めシャドウを殴り飛ばす。

 

「な・・なに?」

 

恐怖に震えた視線でゆかりは突然の乱入者を見上げる。黒のスーツに真紅の装甲、両腕両足に銀の部分も目立つ鎧を身に纏った異形の戦士。

 

彼女の言葉に振り向く。後ろからでは見えなかったその仮面は蝙蝠をイメージさせる瞳に相当する部分が黄色に輝く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其の物の名は『仮面ライダーキバ』


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