この幸運の女神と紅魔族のボッチとの冒険は間違っている。 作:皐月 遊
「それじゃあまずは、ゆんゆんの実力が見たいから、クエストに行こうか」
俺達はゆんゆんをパーティに加え、今後の事を話し合っている。
場所は先程と同じくギルドだ。
「はい! 頑張ります!」
ゆんゆんが両手の拳をグッと握る。
随分とやる気ですね。
「行ってらっしゃい」
俺はヒラヒラと手を振る。 ぶっちゃけゆんゆんは相当強いだろうし、実力を見るだけならクリスだけで十分だろ。
「ハチマン君も行くんだよ!」
「え、なんでだよ。 実力見るだけなんだからクリスだけでいいだろ」
「ハチマン君のレベル上げも兼ねてるんだよ! このパーティで1番レベル低いのハチマン君だからね⁉︎」
隣に座っているせいでクリスの声が耳に響く。
なんでエリスと同じ声なのにこんなに違うんだ……
「……へいへい分かりましたよ、行きますよ」
「よろしい」
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「クエストって、またカエル狩りかよ」
俺達は先日ジャイアント・トードを狩った草原へやってきた。
「しょうがないでしょ、まだクエスト完了してないし、今は初心者用のモンスターはコイツしかいないんだから」
「わ、私は構いませんよ? 」
「はぁ…分かったよ、確かあと3匹だったよな?」
「うん、そうだね」
ちょうど今草原には三体のジャイアント・トードがいる。
さっさと終わらせて帰ろう。 家に帰るまでが遠足だからな。
「じゃあゆんゆん! やっちゃって!」
「遠慮しなくていいからなー」
「はい!」
ゆんゆんがカエルに杖を向け……
「ライトニング‼︎」
叫ぶ。
すると、ゆんゆんが狙っていたカエルに雷が落ち、一瞬で黒焦げになった。
そう、一瞬だ。
「…………………は?」
俺は唖然としていた、あのカエルは強い訳じゃないが、決して弱い訳でもない。
なのにそれを一瞬………
「す、すごいよゆんゆん! ビックリしたよ!」
「そ、そうですか…? えへへ…」
ゆんゆんが頭を撫でながら恥ずかしがる。
そして、ゆんゆんが倒したカエルの近くにいたもう1匹がこっちに向かってくる。
「お、おい…なんかこっち来てるぞ」
「よぉーし! ならもう一体も倒しちゃいますね!」
「やっちゃえやっちゃえー!」
ゆんゆんはカエルの方に走っていき……
「ライト・オブ・セイバー‼︎」
ゆんゆんの右腕に光の剣が現れ、カエルを真っ二つにした。
…………………………いやいや…
「ゆんゆん…」
「な、なんですか? ハチマンさん」
「お前…強すぎない?」
「そんな事……えへへ…」
可愛い。 素直にそう思える。 どっかのあざとさ100%の一年とは大違いだな。
「この調子で残りの一体も……」
「いや、待ってゆんゆん」
残りのカエルに杖を向けたゆんゆんを、クリスが止める。
………なんだ、嫌な予感がする、ハチマン帰りたい。
「最後の一体はハチマン君に任せない?」
ほら来た。
「嫌だよ、このままゆんゆんがやった方が早く終わるだろ」
「さっきも言ったでしょ、今回はハチマン君のレベル上げも兼ねてるの。 ………それに…」
クリスが俺の耳に顔を近づけ、ゆんゆんに聞こえない小さな声で……
「それに、ハチマンさんが強くならないと、魔王は倒せませんよ?」
エリスの口調で言ってきた。
……そんな事言われたら、断れないだろ。
「分かったよ、確かに、女より男の方が弱いのはカッコ悪しな」
「うん! やる気になったね!」
「あぁ」
俺は背中の片手剣を抜き、遠くのカエルを見る。
「ヒキガエルと散々言われ続けてきたからな、あいつに八つ当たりしてやる」
「八つ当たり⁉︎」
「ひ、ヒキガエル…?」
2人の声が聞こえるが、もう反応しない。
俺は足に力を入れ、全力で地面を蹴る。
すると、自分でも驚くようなスピードが出た。
「は、速っ‼︎ ハチマン君⁉︎」
「す、すごいスピード……」
あっという間にカエルの近くまで来た、今回カエルは俺の方をじっと見ている。
流石に気づくか。
「でも…もう遅いぞ」
俺は既に居合斬りのモーションに入っている。
今俺に気づいたばかりのカエルには、避ける時間はない。
「じゃあな、経験値ゲットだぜ」
俺はカエルの腹に全力で居合斬りをした。
カエルは見事に下半身と上半身に真っ二つに分かれた。
「ふぅ……おっ、レベルが2になってる」
俺は冒険者カードを見ながら、未だに口を開けているクリスとゆんゆんの元へ歩いて行った。
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