この幸運の女神と紅魔族のボッチとの冒険は間違っている。   作:皐月 遊

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3話目です!

今回、ついに八幡の職業が決まります!


3話 「意外と、俺のステータスは高いらしい。」

「さて、ハチマン君! さっそくギルドに行こうか」

 

「ギルドなんてあるのか?」

 

なんかゲームの世界みたいだな。

 

……にしても、やっぱりエリス……いや、今はクリスか、クリスの口調は慣れないな。

 

しかもエリスの時と違って名前呼びだし。

 

「うん、ギルドで君の冒険者登録と、職業を決めるんだよ」

 

「……なぁクリス」

 

「何?」

 

「この世界って本当に現実か? ゲームの世界じゃないのか?」

 

冒険者登録て……職業て……

 

「え? 何言ってるのさ、現実に決まってるじゃん」

 

「あ、そう…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そんなこんなで、俺達は冒険者ギルドにやって来た。

 

「いらっしゃいませ!お食事なら好きな席へどうぞ!ギルドに用があるなら奥へどうぞ!」

 

俺達がギルドに入ると、両手にジョッキを持った若い女の人がそう言ってきた。

 

「……うす…」

 

「は、ハチマン君? どうしたの? 急にキョロキョロしだして」

 

「いや…何でもない、何でもないんだ…」

 

ボッチにとっては人がたくさんいる場所は地獄でしかない。

 

しかもこのギルドには怖そうなオヤジ達がいっぱいいる。

 

ハチマンコワイ。

 

「何でもないなら早く行くよ。 ほらこっち」

 

クリスが俺の手を引きドンドン進む。

 

やめてクリス! 手を握らないで! 皆の視線が痛い、怖い!

 

「おー? なんだクリス、彼氏かぁ⁉︎」

「手を繋いじゃって、熱いねぇ!」

「彼氏は…おいおい何だあの目」

「死んだ魚みてぇな目してんなぁ!」

 

ほっとけ! DHA豊富そうだろ!

 

なんて言えるわけもなく、俺とクリスは無言で手を離し、歩き出した。

 

「ルナさん、久しぶり」

 

「あっ、クリスさん! お久しぶりです」

 

クリスが話しかけたのは金髪の女性だ。

 

ルナという名前なのか、めっちゃ美人だな、それにデカイ。

どこがとは言わないけどな。

 

「本日はどうしました?」

 

「こっちの彼の、冒険者登録をお願いしたいんだ」

 

「冒険者登録ですね。 えっと……」

 

ルナさんが俺の顔をジッと見る。

 

な、なんですかジッと見て……何もあげませんよ?

 

「あの…余計なお世話かもしれませんが…ちゃんと睡眠はとったほうがいいですよ?」

 

「……この眼は、生まれつきです」

 

「えっ! あ、すみません!」

 

「いえ」

 

「…………」

 

「…………」

 

俺とルナさんが沈黙する。

 

気まずい。

 

「あーもう! なんで2人してテンション低くなってんのさ! ほらルナさん! 仕事仕事!」

 

「はっ! あぁそうでした。 では、登録料として1000エリスかかります」

 

「は? エリス?」

 

1000エリスってなんだ?

 

「あっ、そうだった。 じゃああたしが払うよ」

 

そう言ってクリスがポーチから金貨を出す。

 

え? 何? エリスってお金なの?

 

「はい、1000エリスいただきました。 ではえっと…こちらの紙に名前、身長、体重、年齢、身体的特徴を書いてください」

 

ルナさんから紙が渡される。

 

俺はササッと書き終え、ルナさんに髪を渡す。

 

「はい、えっと…ヒキガヤ…ハチマンさんですね。 では次にこの機械に触れてください」

 

「機械に?」

 

「はい、するとあなたの潜在能力が分かります。 それによって、なれる職業が決まってきますよ」

 

「ほぅ…」

 

ハイテクすぎるだろ、潜在能力か……やばいな、自信が無いぞ……

 

「ハチマン君はどんな職業なのかな〜」

 

クリスはワクワクしながら言う。

 

やめて、あんまり期待しないで。

 

俺はため息をついて、機械に触れた。

 

さて……俺の潜在能力は如何に…

 

「はい、ありがとうございます。 えっと…おお!」

 

なんだ? 急に大声出して……

 

「俊敏と知力が非常に高いですね、それ以外は…筋力は普通よりも少し高い、生命力、魔力は普通ですね。 あ、あと運がすごく低いですね、でもまぁ、運はぶっちゃけ必要無いので」

 

知力が高いのは素直に嬉しいが、俊敏も高いのは意外だったな。

日本では全力疾走なんてしたことなかったしな。

 

だが、中々の高ステータスじゃないか?

 

「これなら…冒険者か、前衛のソードマンか、ナイト。 それか遠距離のウィザードになれますね」

 

「凄いじゃんハチマン君! 」

 

ふむ……悩むな…俊敏を生かすならソードマンかナイトだが、魔法も使ってみたいんだよな……

 

「私のオススメは、やっぱりソードマンですかね、せっかく俊敏が高いんですし、レベルが上がればソードマスターに転職も出来ます」

 

「じゃ、ソードマンで」

 

結局ソードマンにした。

 

考えてみれば、俺は魔力は普通らしいし、魔力が切れたら終わりだしな。

 

ソードマンでも使える魔法はあるだろうし。

 

「ソードマンですね! ヒキガヤハチマンさん! あなたを歓迎します!」

 

その後、怖い顔の人達が笑顔で俺を胴上げするという、トラウマになるかもしれない出来事があった。

 

「ハチマン君がソードマンかぁ、なんか意外だな」

 

「俺もだ、もっとアーチャーとか地味系の職業かと思ったが…」

 

「はは…でもいいじゃんソードマン。 カッコいいよ?」

 

「お、おう……」

 

そんなストレートにですね、カッコいいとか言われるとですね……

 

うっかり告白しそうになりますね。

 

「そういえば、クリスはなんの職業なんだ?」

 

「あたし? あたしは盗賊だよ」

 

「と、盗賊?」

 

え? この人女神だよね? え、盗賊⁉︎

 

「あ、勘違いしないでね? これにはちゃんと理由があるから。それに、盗賊でも短剣スキルは取ってるし、ちゃんと戦えるから」

 

「へ、へぇ…」

 

「じゃ、今日はもう休もうか、そして明日、ハチマン君の装備を買いに行くよ!」

 

「あぁ、でも、泊まる場所なんてないぞ?」

 

「大丈夫、この街には安く泊まれる場所があるから」

 

「へぇ」

 

「じゃ、正式に。 これからよろしくね? ハチマン君!」

 

クリスは右手を前に出す。

 

……これはあれか…握手か。

 

「あぁ、よろしくな。 クリス。 よし、行くか」

 

「え⁉︎ 今完全に握手する流れだったよね⁉︎ なんでスルーなの⁉︎ 」

 

ボッチに握手なんて出来るわけないだろ。

 

後ろでガミガミ言いながらついてくるクリスを無視し、俺はギルドを出た。

 


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