この幸運の女神と紅魔族のボッチとの冒険は間違っている。 作:皐月 遊
めぐみんのお願いを断る事が出来ず、結局カズマを尾行する事になってしまった。
「カズマは3日に一回のペースで朝帰りをします。 2日前に朝帰りをしたので、今日の夜、屋敷を出ていくはずです」
「なんか浮気調査を依頼する妻みたいだな」
「なっ…! た、ただ私は同じパーティーメンバーとして、仲間の事は把握しておきたいだけなのです! 断じて浮気調査などではありません!」
めぐみんが顔を赤くして否定する。
「はいはい。 じゃあカズマに見つからないようにこっそりと張り込みしとくわ」
あんまりイジると面倒くさくなるからイジらないようにしよう。
俺が立ち上がり、帰ろうとすると…
「何帰ろうとしてるんですか?」
「は…? まだ何かあるのか?」
めぐみんに止められた。
「ですから、カズマを尾行してほしいんです」
「分かってるよ。 夜にお前らの屋敷の前で張り込みしとけばいいんだろ?」
「なんでそんな面倒くさい事するんですか? 張り込みとか…最近夜寒いのに、悪いですよ」
「いや…お前が尾行してくれって言ったんだろ」
なんなんだ全く。
めぐみんは、はぁ……とため息を吐くと
「ハチマンは今日ウチに泊まってください。 そうすればカズマが出て行ってすぐに尾行出来るでしょう?」
「断る」
「なっ⁉︎」
女子と同じ家で寝るとかマジ無理。
エリスは…まぁ仕方ないとして、女子が3人もいる家に泊まるとか本当に無理だ。
「そうだ! この際ハチマンのパーティーメンバーも全員ウチに来て、お泊まりパーティーをしましょう!」
「お泊まりパーティー…? 絶対に嫌だが」
「ハチマンが嫌と言っても、ゆんゆんとクリスはどうでしょうね? 」
こいつ…的確に断りづらい状況を作り上げようとしてる…
めぐみんが悪い笑みを浮かべながら…
「クリスはノリが良いのできっとOKしてくれます。 ゆんゆんはチョロいので、テキトーに親友だの友達だの言っておけば断らないはずです」
「流石にゆんゆんが可哀想じゃないか?」
「良いんですよ。 さぁハチマン! 早速ゆんゆんとクリスを誘いに行きますよ‼︎」
「行ってらっしゃい」
「行ってきます! ……じゃない! ハチマンも来るんです!」
めぐみんに手を引っ張られながら、ギルドを後にした。
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「いました。 ゆんゆんです」
「そうだな」
アクセルの街を適当に歩いていると、目的のゆんゆんを見つけた。
めぐみんはゆんゆんの方に向かい…
「ゆんゆん、ちょっといいですか」
「めっ、めぐみん⁉︎ どどっ、どうしたの⁉︎」
ゆんゆん焦りすぎだろ。
「え、ハチマンさんも一緒⁉︎」
「ようゆんゆん、散歩か?」
「はい! 1人でやる事なくて暇なので!」
「…おう。 …ごめんな…」
そんな事を満面の笑顔で言わないでくれ。
もしかしてゆんゆんっていつも暇な時散歩してるのか?
……今度から街で見かけたら声かけてあげよう。
「そんな事より! めぐみん、なんでハチマンさんと一緒に居るの?」
「気になりますか? ゆんゆん」
「そりゃ同じパーティーメンバーだもの! 」
「そうですか、気になりますか…」
なんだ? 何かめぐみんの様子が…
「私とハチマンは…」
「めぐみんとハチマンさんは…?」
突然めぐみんが俺の腕に抱きついてきた。
えっ…なになに急に何すんのこの子…
「おい、離……」
「私とハチマンはこんな関係です」
「はぁ⁉︎ お前何言って…」
めぐみんが突然爆弾発言をしやがった。
からかうためとは言えこれは心臓に悪い。
現に今も俺の心臓がバクバクいってる。
「ま、冗談ですけどね。 ゆんゆん? あれ? ゆんゆん?」
めぐみんが俺から離れ、ゆんゆんを見ると…
見事に固まっていた。
「おいどうすんだよこれ、ゆんゆん動かないぞ」
「仕方がありませんね、動かないのならいっそゆんゆんの服を全て剥ぎ…」
「それやったら2度とお前と話さんからな」
「…仕方ないですね。 ゆんゆん、いい加減に戻ってください」
めぐみんがゆんゆんの頭を数回叩くと…
「はっ…! え、えっと…お幸せにっ‼︎」
「いや…ゆんゆんあのな…」
めぐみんがゆんゆんにさっきのは嘘だという事を伝えた。
全く…マジで心臓止まるかと思ったぞ。
「え…嘘なの⁉︎ は、ハチマンさんめぐみんと何もないの⁉︎」
「あるわけないだろ」
「な、なんだぁ…びっくりしました…あ、じゃあなんでハチマンさんとめぐみんが一緒にいるんですか?」
やっと本題に入れた。
「実はですね、今日カズマとハチマンのパーティーメンバー全員でウチでお泊まりパーティーをしようと思ってるんですが、来ますよね?」
頼むゆんゆん、断ってくれ…
「私としては、親友であるゆんゆんには是非是非来て欲しいのですが…」
「! 行く行く! もちろん行くよ! おじゃまします!」
ゆんゆん…お前本当にチョロいな。
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「ゆんゆんが来る事は決定したので、後はクリスだけです」
「クリスは絶対に来ないと思うぞ」
クリスは寝る時はいつもエリスに戻ってたからな。
屋敷に行ったらエリスになれないし。
……と、思っていたら…
「お泊まり? 勿論行くよ!」
あっさりOKしてしまった。
俺はクリスだけに聞こえるように小声で
「おい本当にいいのか? 屋敷だとエリスになれないんだぞ」
「1日くらいなら別に大丈夫だよ」
マジかよ…クリスは絶対断ると思ってたのに…
「さぁハチマン! これであなたのパーティーメンバーは全員ウチに泊まる事が決定しました! どうしますか?」
ニヤニヤしながらめぐみんが聞いてくる。
俺は はぁ… と溜息を吐き
「…分かったよ、泊まればいいんだろ」
その瞬間めぐみんが笑顔になり
「では食料を買いに行きましょう! 新たに3人分の食材を買わなければ!」
なんだかんだ言って、実はめぐみんも楽しみにしてるのかもしれない。