この幸運の女神と紅魔族のボッチとの冒険は間違っている。   作:皐月 遊

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12話を少し編集しました! なので13話を読む前に12話を読む事をオススメします!


13話 「このゴブリン達に爆裂魔法を!」

「ハチマン! 大丈夫ですか⁉︎」

 

「……ん?」

 

確か俺はゴブリンに殴られて気を失ったはずだ。

 

周りを見てみると…今俺が居るのは……洞窟か?

 

「なんで洞窟にいるんだ?」

 

「ダクネスがハチマンを担いで運んだんですよ」

 

めぐみんは俺が気絶した後の出来事を説明してくれた。

 

俺が気絶した後、めぐみんはパニックになったらしいが、アクアとダクネスは冷静だったらしい。

 

まずアクアが俺達から離れ、モンスター寄せのスキルを使ってモンスターを呼び寄せ、ダクネスが俺を担ぎ走る。

 

ある程度離れたらアクアもダクネス達の方に合流し、支援魔法でスピードを上げてこの洞窟に逃げ込んだらしい。

 

「はぁ…そんな事出来るなら早めにやってくれよ…」

 

「仕方ないじゃない、さっき思いついたんだから!」

 

でもアクアはお手柄だな。

 

「そうだ、俺はどれくらい気絶してたんだ?」

 

「大体30分くらいじゃないか? 長くは無かった気がするぞ」

 

30分か、まだ頭が痛むが、俺はそれを無視して立ち上がる。

 

「よし、帰るか」

 

そして、3人に帰宅宣言をした。

 

「え⁉︎ 帰るんですか⁉︎」

 

「あぁ、まだ10体討伐は終わってないけど、流石に危険だしな」

 

「私は反対だな」

 

ダクネスが俺の意見に反対しながら、剣を抜く。

 

「私は騎士だ。 ゴブリンなどから逃げる事など出来ん」

 

「私も! あのゴブリン共に爆裂魔法をぶち込んでやりたいです!」

 

「でもなぁ…」

 

流石に危険すぎるんだよなぁ…

 

だが、めぐみん達は完全に戦う気だし…

 

「はぁ…分かったよ。 でも、直接戦いはしない。

さっきのお返しだ、こっちから攻めよう」

 

さっきは完全にゴブリンに先手を取られ、終始ゴブリンのペースだったが、今回は逆だ。

 

俺はめぐみん達に作戦を伝えた。

 

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「お、まだいるな…数は…10体ちょうどだ。 お前ら、作戦通りに頼むぞ」

 

俺達は今ゴブリンに見つからないように茂みに隠れて話をしている。

 

俺の言葉に3人は静かに頷く。

 

「よし、んじゃダクネスとめぐみんは位置についてくれ。 アクアは残れ」

 

そう言うと、めぐみんとダクネスは音を立てずにゆっくりと歩いて行った。

 

後は俺の役目だ。

 

「アクア、頼む」

 

「了解よ」

 

アクアが俺に支援魔法をかけ、俺のスピードをあげる。

 

そして俺はゴブリン達の前に出て行った。

 

「よぉゴブリン共。 倒しに来たぞ」

 

俺を見つけると、ゴブリン達は一斉に咆哮をあげる。

 

この咆哮は仲間を呼び寄せるものだ、つまりもうすぐここに大量のゴブリンがやってくる。

 

ならさっさとここから離れよう。

 

「まず一体!」

 

俺は目の前にいた一体のゴブリンを倒す。

 

仲間がやられた事でゴブリンが怒り、俺に襲いかかってくる。

 

そこでアクアに上げてもらったスピードの出番だ。

 

「ついて来いゴブリン共‼︎」

 

俺は後ろを向いて走り出す。

 

ゴブリン達は俺を殺すために叫びながら追ってくる。

 

「アクア! めぐみん達に…」

 

「もう伝えたわ!」

 

アクアを連れて来た理由、それは俺のスピードを上げてもらうのと、めぐみん達に合図してもらう為だ。

 

今アクアは、空に向けて水の魔法を使った、それはめぐみん達への合図で、水の魔法を使ったら爆裂魔法の準備、水の魔法をいつまでも使わなかったら作戦失敗。

の合図だった。

 

後はめぐみん達の元へゴブリンを連れていくだけだ。

 

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「めぐみん! 来たぞ! 爆裂魔法は…」

 

めぐみん達が待機している場所につき、走りながらめぐみんに問いかける。

 

「はい! もう詠唱は終わってます! いつでも撃てます!」

 

「よし…ダクネス頼む!」

 

「任せろ! 《デコイ》!」

 

今まで俺を追いかけていたゴブリンが、一斉にダクネスの方を向き、ダクネスの元へ走り出す。

 

ダクネスはめぐみんの後ろにいるので、ゴブリンは今めぐみんに向かって来ている。

 

「おぉ…これは狙いやすいです!」

 

めぐみんがゴブリン達に杖を向ける。

 

その間に俺とアクアは巻き込まれないように出来るだけ離れる。

 

「皆まとめて消し飛ばしてあげましょう! ーーエクスプロージョン‼︎」

 

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「ふふふ…どうですかハチマン。 私の爆裂魔法は」

 

ゴブリン達を倒し、俺達は今アクセルの街へ帰っている。

 

「あぁ、相変わらず凄い威力だな」

 

「でしょう⁉︎ 流石は紅魔族随一の魔法使いですね!」

 

「あぁ、今ダクネスにおんぶされてなけりゃな」

 

「………」

 

今めぐみんはダクネスにおんぶされている。

 

めぐみんは爆裂魔法を使うと動けなくなる。 だから使わせたくはなかったのだが、今回は結果オーライか。

 

「はー…もう私疲れたんですけど、早くお風呂入りたいんですけど〜」

 

「同感だな、今回は流石に精神的にも疲れた」

 

アクセルの街まであともう少しという所でアクアとダクネスがそう言う。

確かに疲れた。

 

やはり無難にカエルにしておくべきだったな……

 

「パーティー交換なんてするべきじゃなかったな…」

 

カズマなら今回でも上手くやったのだろうか。

 

上手くこの3人と連携し、俺みたいに気絶する事もなく、クエストを達成する事が出来ただろうか。

 

きっと出来ただろうな。

 

「いや、そんなに悪いものではなかったぞ?」

 

「はい、ハチマンとのクエストも楽しかったです」

 

「駄女神とか言われて罵倒されないだけまだハチマンの方がマシだわ」

 

3人にそう言われた。

 

え、なに今の、ちょっとときめいちゃったんですけど。

 

いや、騙されるなハチマン。

これはお世辞だ、そう、これはこいつらの優しさだ。

 

うん、騙されないぞ俺は。

 

「あー! やっと帰って来た!」

 

突然、前の方から聞き覚えのある声が聞こえた。

 

声のした方を見てみると…

 

「ハチマン、随分と遅かったな!」

 

このパーティーのリーダー、カズマだった。

 

よく見るとカズマの後ろにはクリスとゆんゆんがいる。

 

あぁ懐かしい…クリスとゆんゆん、昨日ぶりだが。

 

「しかもなんだハチマン! ボロボロじゃねーか! 」

 

「い、いろいろあったんだよ」

 

カズマがそう言うと、クリスとゆんゆんは心配そうに俺を見てくる。

 

ゴブリンに気絶させられたとか恥ずかしくて絶対に言えない。

 

何か話題を変えてこいつらから離れないと…!

 

「ねーねー、私早くお風呂入りたいんですけど〜」

 

ナイスだアクア!

 

これに乗っからない手はない‼︎

 

「そ、そうだなアクア! よし、早く行こう!」

 

「何急にテンション上がってるんですかハチマン…まぁ、早くお風呂に入りたい気持ちは分かりますが」

 

めぐみんも同意し、カズマ達に一言言ったあと、俺達は風呂に向かった。

 

……カズマ達も一緒に。

 

あれ? 話題変更した意味なかった…?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ふー…やっぱりクエストの後の風呂はいいなぁー」

 

「…そうだな」

 

どうやらカズマ達はクエストが終わってから風呂や飯を食わずに俺達を待っていたらしい。

 

……心配かけたな。

 

「やっぱり、ハチマンの方はクエストキツかったのか?」

 

「あぁ、大分な。 ゴブリンのクエストなんて行くんじゃなかった。 カズマの方はどうだったんだ?」

 

俺がそう言うと、カズマはニヤニヤしだし……

 

「最ッ高だった! 何だよあのパーティーは! もう安定しすぎだ、あんなに楽にクエストが終わるなんて… 」

 

……気持ちは分かるぞカズマ。

 

今日のゴブリン討伐にクリスかゆんゆんのどちらか1人が付いて来ていたら、きっとスムーズに終わっていただろう。

 

「まぁ、カズマのパーティーメンバーも悪くなかったぞ。 上手く連携すればどんなクエストでも行けるんじゃないか?」

 

……それはカズマだったらの話だけどな。

 

きっとあの3人にはカズマが1番合っているんだ。 あの3人の力を最大限引き出せるのは、きっとカズマだけだ。

 

「お前……それ本気で言ってるのか…?」

 

カズマが信じられない。 とでも言いたそうな顔をしながら言う。

 

「な、なら…いっそこのままパーティー交換でも…」

 

「却下だ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

カズマより先に上がり、ゆっくりしていようと外に出たら…

 

「…何でいるんだめぐみん」

 

「あ、ハチマン。 待ってましたよ」

 

「は? 待ってたって俺をか?」

 

なんだ? 今回の事でダメ出しとかされるのか?

 

確かに今回は俺色々やらかしたからな……言われても仕方がないが…

 

「あの…助けてくれてありがとうございました」

 

「……は?」

 

「だから、あの時ゴブリンから私を守ってくれて…ありがとうございました。 そのせいで気絶までさせてしまって…」

 

めぐみんが申し訳なさそうに言う。

 

え…? 何これ、予想と全然違うんだけど…

 

しかもあれは完全に俺がゴブリンから目を離したせいであって…そのせいでめぐみんを危険な目にあわせたんだからむしろ謝るのは俺の方じゃないのか…?

 

「あの…今回は色々迷惑をかけましたが、もし良ければ、また今度一緒にクエスト行ってくれませんか?」

 

「……あ…うん…」

 

何この子。 めっちゃ可愛いじゃん。

 

何も考えずに「うん」って言っちゃったし…

 

「約束ですからね! では私はこれで失礼します」

 

「あ、あぁ…」

 

めぐみんはそう言うと、また温泉に入っていった。

 

何だったんだあれは……

 

「ハチマン君…?」

 

身体が震えあがった。 何今の冷たい声。 一瞬雪ノ下かと思った。

 

ゆっくり…ゆっくりと振り返ると…

 

「良かったね、まためぐみんとクエスト行けるね」

 

怖い笑顔をしたクリスが立っていた。

 

え…何でこの人こんなに怒ってんの…?

 

「それと、さっき気になる事が聞こえてきたなぁ…私達に黙ってパーティー交換した事も聞きたかったけど……ねぇハチマン君。 気絶したって…どういう事かな?」

 

あれ…もしかしてさっきの話…聞かれてた…?

 

クリスは俺の耳元に口を近づけ…

 

「…帰ったらお説教ですよ? ハチマンさん」

 

エリスの口調で言ってきた。

 

この日初めて、俺はエリスに恐怖を抱いた。


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