この幸運の女神と紅魔族のボッチとの冒険は間違っている。   作:皐月 遊

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12話 「予想以上に、アクア達は残念すぎる。」

「これなんてどうでしょう! ブルーアイズドラゴンの討伐」

 

「却下だ。 ドラゴンとか倒せるわけないだろ」

 

ちょっと見てみたい感はあるがな。 だってブルーアイズだぞ? ドラゴンだぞ?

 

そりゃ見たいだろ。

 

「ならこれなんかどうだ⁉︎ 一撃熊の討伐!名前の通り、一撃が凄いのだろう、ぜひ受けてみたい!」

 

「却下だ。 それに耐えれるのはダクネスぐらいだろ」

 

「もー、さっきから否定ばっかりじゃない! ならハチマンはどのクエストがやりたいのよ、カエル以外で!」

 

アクアが俺に質問してくる。

 

どのクエストがいいか、か……

 

クエスト掲示板を見てみると……

 

「これなんかどうだ? この程度なら俺達でも大丈夫だろ」

 

「なになに…? ゴブリン10体の討伐…ですか?」

 

「…地味すぎないか?」

 

「えー、ゴブリンとか超弱くてつまらないんですけど、私もっと倒しがいのあるモンスターがいいんですけどー」

 

文句ばかり言いやがってこいつら……

 

「ほ、ほら…よく見てみろよ、カエルなんかより報酬がいいだろ?」

 

「確かに…報酬は倍近く違いますね」

 

「だろ? 」

 

「ではそれにしようか。 ゴブリンか……悪くはないな…」

 

何がだ? とは聞かないようにしよう。

 

クエストが決まり、俺はクエストの紙を受付の女の人に渡し、俺達はギルドを出た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ここはアクセルの街からさほど遠くない森だ、ここに最近ゴブリン達が住み着いているらしい。

 

俺達は今森の入り口にいる。

 

「いいか? 受付の人の話だと、ゴブリンは3体以上いる時は連携して襲ってくるらしいから…」

 

「爆裂魔法で纏めてぶっとば…」

 

「違うよ」

 

「3体でも30体でも纏めて…」

 

「纏めるな、違うんだよ」

 

「何々? ゴブリンを集めればいいの? 任せて! 私モンスターを集める魔法使えるの!」

 

「やめろ! 頼むから話を聞いてくれよ…」

 

くそ…今すぐに帰りたい。 カズマの奴…いつもこんなに苦労してたのか、何だこれ、小学生に勉強教える先生みたいだな。

 

「ゴブリンは3体以上いると、連携して襲ってくるらしいから、1体ずつ確実に撃破するぞ」

 

俺はようやく3人に作戦を伝えることが出来た。

 

ちなみにこの作戦はクリスから教えてもらった事だ。

 

「えー、1体ずつとか地味じゃないかしら」

 

「そうですよ! しかも1体ずつだと私の爆裂魔法が撃てないじゃないですか! 私居る意味皆無じゃないですか‼︎」

 

「そうだぞ、しかも時間もかかってしまう。 それに大勢に襲われた方が……」

 

集団で反対されると言い返せない。 くそこいつら…反対ばっかりしやがって…

 

んー…でもこいつら一応は上級職だしな…ゴブリン程度なら…

 

「はぁ…分かったよ。 纏めて撃破にしよう。 その代わり、お前らが纏めて撃破が良いって言ったんだ。

ピンチになっても助けないからな、一応は上級職なんだ、自分の身くらい自分で守れるだろ」

 

「なっ…一応とは何ですか一応とは! 私は立派なアークウィザードですよ! 」

 

「あーすみませんね」

 

「むー! もういいです! ハチマンがピンチになっても助けませんからね!」

 

「どうぞお構いなく。 ぼっちは人に助けを求めないんだ」

 

めぐみんとの会話が終わり、俺達は森の中へと入っていった。

 

森に入って数分くらい歩いた頃…

 

「ね、ねぇハチマン、この森結構不気味じゃない…?」

 

「そりゃ森だし不気味なのは当たり前だろ」

 

「い、いや…でもさっきから視線を感じるのよ」

 

「はぁ…?」

 

俺はとりあえず《敵感知》のスキルを使ってみた。

 

すると……

 

「…まじかよ…」

 

「どうしたの? 急に止まって」

 

「最悪だ、囲まれてる」

 

周囲には20を越える程のモンスターが俺達を囲っていた。

 

敵感知はモンスターの名前までは分からないが、これはきっとゴブリンだろう。

 

「え、ど、どうするのよ!」

 

「わ、私の爆裂魔法で!」

 

「ダメだ! 爆裂魔法は最後の最後まで絶対に撃つな」

 

「な、ならどうすれば良いんですか!」

 

どうするって言われてもな……

 

はっきり言ってこれは想定外だった。

 

まさか囲まれるとは思わなかった…しかもダクネスは攻撃が当たらない、めぐみんは1発しか魔法が使えないから撃たせるわけにはいかない。

 

実質戦えるのは俺とアクアだけだ。

 

「はぁ…アクア、支援魔法で俺のパワーとスピードを上げてくれ」

 

「え、なんでよ」

 

「とりあえずは逃げる方向に居るゴブリンだけを倒す、倒して道が開いたらその方向に走る。 まずはこの不利な状況から抜け出すんだよ」

 

俺とアクアで戦うのも考えたが、それだとめぐみん達は無防備になってしまう。 なら回復魔法が使えるアクアが残った方がいい。

 

「早くしてくれ、いつゴブリン達が来るか分からない」

 

「分かったわよ」

 

そう言うとアクアは俺に支援魔法をかける。

 

おぉ…凄いなこれは…自分でもパワーが上がってるのが分かる。

 

「よし、なら次はめぐみんとダクネスのスピードも上げといてくれ。 じゃ、行ってくる」

 

俺は真っ直に走った。 すると直ぐにゴブリン達が襲いかかってきた。

 

数は……6体か、以外と多いな…

 

ゴブリン達は剣やら斧やら色々な武器を持っていた。 背の高さはめぐみんくらいか。

 

「来いよお前ら、相手してやるよ」

 

ゴブリン達は一斉に襲いかかってきた。

 

まずは目の前の1体に向かって走る。

 

そして…

 

「死ね!」

 

その首を斬る。

 

仲間がやられたことにより、ゴブリンが咆哮をあげる。

 

そして五体になったゴブリンはハンマーを持つ二体と剣を持つ三体に別れ、三体の方が俺の方に走ってきた。

 

二体の方も気になるが、今は目の前の敵だ。

 

「ふっ!」

 

三体の真ん中のゴブリンを斬り殺す、すると左右に居たゴブリンが俺に剣を振り下ろしてきた。

 

「くそっ…!」

 

俺はそれを後ろに飛んで交わした……つもりだったが、足に掠っていたらしく、そこからは血が出ていた。

 

俺を攻撃した二体のゴブリンは、俺を見てニヤニヤと笑っている。

 

「何笑ってんだ……ぐっ⁉︎」

 

突然俺の頭に激痛が走り、俺は地面に倒れる。

 

そこで俺は思い出す。 ゴブリンは連携して攻撃するモンスターだと言うこと、そして、先程別れた二体のゴブリンはどこに行ったのか。

 

俺の頭を踏みつけ、ハンマーを持ち上げて笑う二体のゴブリンが、その答えだった。

 

……なにやってんだ俺は…

 

「くっ…そが…」

 

まだ頭が痛い。 そりゃそうだろう。 ハンマーで殴られたんだ、気絶しなかったのが奇跡みたいなものだ。

 

「まだ…死ねないんだよ」

 

奉仕部に帰るまで、俺は死ねない。

 

こんな所で、ゴブリンに負るわけにはいかないんだ。

 

「その足をどけろ!」

 

俺は頭を踏みつけているゴブリンの足を思い切り掴んだ。

 

するとゴブリンは痛みからか悲鳴をあげ、足をどけた。

アクアの支援魔法でパワーが上がっていたおかげだな。

 

足をどけた瞬間に俺は立ち上がり、後ろにいたハンマーを持った二体の胴体と足を切り離した。

 

辺りには血が飛び散るが、気にしてられない。

 

あと…二体だ。

 

俺は最初に殺したゴブリンの剣を奪い取る。

 

「……死ね」

 

右手の剣で右のゴブリンを、左手の剣で左のゴブリンを同時に殺した。

 

よし、これでこの道は安全だ、アクア達に知らせに行かないとな。

 

まだクラクラする頭を抱えながら、俺はアクア達の元へ向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おーい、お前ら、もう大丈夫……は?」

 

「は、ハチマン…! 大変なの! 」

 

「さっき突然こいつらが一斉に襲いかかって来たんだ!」

 

「ハチマンも聞きましたか⁉︎ あの咆哮の後からですよ!」

 

そこには木の上に登り、木にしがみついている3人がいた。

 

木の下には二体のゴブリンがいる。

 

辺りには…ゴブリンは見当たらないが、隠れてる可能性がある。

 

「ハチマン! もう爆裂魔法撃っていいですか⁉︎」

 

「ダメだ! とりあえず木から降りられるようにするから、そしたら直ぐ逃げるぞ!」

 

俺はさっきゴブリンから奪い取った剣を木の下のゴブリンの方に投げた。

 

剣はゴブリンの後頭部に当たり、当たったゴブリンは倒れた。

 

そしてその横にいたもう一体のゴブリンは俺の方を向く。

 

よし、計算通りだ。

 

「お前ら! 今のうちに降りろ!」

 

ゴブリンが俺の方に走り出し、アクア達は木から降りる。

 

後は逃げるだけだ。

 

追って来たゴブリンを倒し、アクア達の方へ向かおうとすると…

 

「これ以上近づくなら、我が爆裂魔法で…!」

 

ハンマーを持った三体のゴブリンに杖を向けているめぐみんがいた。

 

やっぱりまだゴブリン残ってたのか!

 

ダクネスはめぐみんの所とは違う一匹のゴブリンと剣を合わせて鍔迫り合いをしている。

 

アクアは必死にダクネスに支援魔法をかけている。

 

「ダクネス! めぐみん! 大丈夫か⁉︎」

 

「あぁ、ゴブリン程度に負ける程弱くはない!」

 

「任せて! 私の支援魔法がある限り、ダクネスに負けは無いわ!」

 

アクアの支援魔法もあるし、ダクネスは大丈夫か。

 

なら問題はめぐみんだ。 アクアはダクネスにつきっきりだし。

 

俺は三体のゴブリンに狙われているめぐみんの元へ走った。

 

「めぐみん、絶対に爆裂魔法は撃つなよ」

 

「で、でも…今はピンチじゃないですか!」

 

そう言っている間にゴブリンが襲いかかってくるが、右に飛んで回避する。

 

その際ゴブリン達から一瞬目を離してしまった。

 

「あれ…? 」

 

「どうしました? ハチマン」

 

おかしい。 ゴブリンは三体居たはずだ、なのに今目の前に居るのは二体だけ……

 

「まさか…‼︎」

 

俺は背後にある木の上を見た。

 

だが、もう遅かった。 ゴブリンはもう木の上から落ちて来ていた。

 

ハンマーを持ち、めぐみんの頭を狙って一直線に…

 

「くそっ…!」

 

「えっ…⁉︎」

 

俺はめぐみんの身体を思い切り押し、その場から強引に離す。

 

そして俺はその場から動く事が出来ず、ゴブリンの強烈な一撃を頭からくらってしまった。

 

「は、ハチマン! ハチマン⁉︎ 嫌…やめて下さい! ハチマン‼︎ 」

 

めぐみんの声が聞こえる中、俺は地面に倒れ、気を失った。


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