この幸運の女神と紅魔族のボッチとの冒険は間違っている。   作:皐月 遊

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10話 「カエル狩りで、カズマのパーティーの残念さが露呈する。」

「皆聞いてくれ、作戦を伝える」

 

再びカズマが皆の前に立ち、話をする。

 

カズマのパーティーメンバーは……

 

「女神の凄さを見せてやるわ! カエルを惹きつけるだけなんて余裕よ!」

 

「私が1番頭がいい……私が1番頭がいい……ふふふ……」

 

「あぁ…あのカエル達が私を狙って…! っ! 想像しただけで!」

 

うん、見なかった事にしよう。 知らない方が良いこともあるしな。

 

再びカズマの方を見る。

 

「まぁ作戦って言っても単純だ。 まず、アクアとダクネスが出来るだけ多くカエルを惹きつける。

そんでカエルを一点に集め、めぐみんとゆんゆんがそこに魔法を撃ち込む。

俺とハチマンとクリスはめぐみんとゆんゆんが仕留め損ねたカエルを倒す。 これだけだ」

 

なるほど、それぞれが出来る事をするって事か。

 

確かに分かりやすいな。

 

カズマの意見に賛成なのか、皆首を縦に振った。

 

「よし、んじゃ早速やるぞ! アクア! ダクネス! 行ってこい!」

 

「任せなさい!」

 

「カエルー! どこだー!」

 

アクアとダクネスは走って行った。

 

俺の横でカズマが小さな声で「………チョロい」と言った時、俺は恐怖した。

 

「あの、あなたがゆんゆんの言っていたハチマンですよね」

 

「……ん? あぁ、そうだ」

 

突然後ろからめぐみんに話しかけられた。

 

やめろよ急に話しかけてくんなよびっくりするだろ。

 

「改めて自己紹介しますね。 我が名はめぐ…!」

 

「いやいいから、分かってるから」

 

めぐみんの自己紹介を聞くと俺の黒歴史を思い出すからやめてくれ。

 

「んで? 何の用だ?」

 

「いえ、ゆんゆんがあなたの事を話す時凄く楽しそうに話していたので、どこの馬の骨か見てやろうと思いまして」

 

「なんでさりげなく悪口混ぜたの?」

 

俺がそう言うと、めぐみんはクスッと笑った。

 

「ふふ…悪い人じゃないようで安心しました」

 

「は…? 一体どういう…」

 

「めぐみーん! ハチマンさんと何話してるの?」

 

ゆんゆんがいきなり会話に入ってきた。

 

ゆんゆんが積極的だと…⁉︎ ゆんゆんが会話に割り込むとか初めてだぞ。

 

「いやな、めぐみんが……」

 

「今ハチマンにゆんゆんの秘密をバラしていたんですよ」

 

「え⁉︎ 秘密⁉︎ 秘密って何⁉︎ 」

 

「さぁーて、アクア達が来るまで待ちますか」

 

「ねぇめぐみん⁉︎ 何をバラしたの⁉︎」

 

ゆんゆんが顔を赤らめながらめぐみんに聞く。

 

顔を赤くするなよ、どんな秘密か気になるだろ。

 

「カズマさあああん‼︎‼︎ 助けてぇええ!」

 

突然、アクアの悲鳴が響き渡った。

 

「おっ、来たか」

 

カズマがそう言い、声のした方を見ると…

 

「……多過ぎだろ」

 

10匹を超えるジャイアント・ドードがアクアを追っていた。

 

アクアは泣きながら助けを求めている。

 

「お、おいカズマ? 流石にまずいんじゃねぇか?」

 

「いや、大丈夫だ。 めぐみん、ゆんゆん、魔法の準備頼む」

 

「任せてください! 爆裂魔法で消し飛ばしてやります!」

 

「了解です!」

 

めぐみんとゆんゆんが杖を構える。

 

「ハチマン君もすぐ走れるように準備しときなよ?」

 

剣を抜いたクリスにそう言われた、見ればカズマも剣を抜いている。

 

何これ、俺がおかしいのか?

 

「アクアー! カエル達をその場で足止めしててくれー!」

 

「はぁ⁉︎ 無理に決まってるじゃない! ダクネスだって食べられちゃったのよ⁉︎」

 

よく見ると確かにカエルの口からダクネスの足が見える、だが抵抗はしていないようで、ピクリとも動いてない。

 

「ダクネスなら心配ない! あいつにとっては風呂みたいなもんだ! 」

 

あ、今ダクネスの足がピクッと動いた。

 

死んでいるわけではないらしい。

 

「そうかもしれないけど! 私はどうすればいいのよー!」

 

「同じ所をグルグル回ってるだけでいい!」

 

カズマにそう言われると、アクアは言われた通り草原をグルグルと周りを始めた、当然カエル達はアクアを追うが、さっきと場所は変わっていない。

 

「めぐみん、ゆんゆん! 今だ! ダクネスが食われてるカエル以外を狙ってくれ」

 

「了解です!」

 

「黒より黒く、闇より暗き漆黒に

わが真紅の混交に望み給たもう

覚醒の時来たれ、無謬の境界に堕ちし理

むぎょうの歪みと成りて現出せよ!」

 

めぐみんが何かを唱え始めた、そしてめぐみんの杖の先が赤く光り始める。

 

ゆんゆんはめぐみんの詠唱が終わるのを待っているらしく、杖を構えたまま横にいるめぐみんをチラチラと見ている。

 

「……行きます! エクスプロージョン‼︎‼︎」

 

「サンダー!」

 

一瞬だった。 先ほどまでカエルがいた場所に、 大爆発が起こったのだ。

 

爆風は凄まじく、離れた場所にいる俺達にまで風が来た程だ。

 

もちろんゆんゆんのサンダーも凄い威力だった、めぐみんの魔法で仕留め損なったカエルに正確にサンダーを当てていた。

 

………あれ? 俺らいらなくない?

 

「よーし、んじゃダクネスを回収しに行くぞ〜」

 

カズマが呑気に言って歩き出した。

 

視線の先には1匹だけ取り残されたジャイアント・トードがオロオロしている。

 

そのカエルの前まで行き……

 

「ダクネスー、いい加減出てこいよ」

 

「むがが! むぎぎぐ!」

 

「何言ってんだ……、まぁいいや、とにかく出すぞ」

 

残ったカエルに俺、カズマ、クリスの攻撃を撃ち込んだ。

 

カエルはすぐに倒れ、口の中からダクネスが出て来た。

 

「………ふぅ、 不覚だった。 私ともあろう者がまさかカエルに捕食されるとは…」

 

「はいはい。 気持ち良さそうで良かったよ」

 

「きっ、気持ちよくなどない!」

 

ダクネスはそう言ってるが、頬が赤い。

 

んー……こいつはアレだな。 考えないようにしてたが……

 

「うわっ、近寄るなダクネス! お前生臭いぞ!」

 

「なっ…! 女性に臭いとはなんだ! おい!」

 

「さっきより近くに来るな‼︎」

 

「もう一回言ってみろ! 」

 

うん、こいつドMだ。

 

「カズマ! どうよ、この私の完璧な逃げっぷりは!」

 

「あーはいはい、流石は女神様だ」

 

「でしょ! もっと褒めて!」

 

「アクア様天才」

 

「もっと!」

 

「アクア様さいこー」

 

「いい気分ね‼︎」

 

なんだこのやり取りは……

 

「ハチマン君、ゆんゆん達の方に行かない?」

 

「そうだな」

 

クリスにそう言われ、ゆんゆん達の元へ向かった。

 

それにしてもドMに馬鹿か……カズマは苦労してそうだな、いやでもめぐみんがいるから大丈夫そうだな、めぐみんはまともそうだし。

 

「ようゆんゆん、めぐみん」

 

「あ、ハチマンさん!」

 

ゆんゆんが俺を見て笑顔になった。 可愛い。

 

めぐみんは……めぐみん?

 

「……めぐみんはなんで寝てるんだ?」

 

「ば、爆裂魔法は…消費魔力が多いのです……」

 

めぐみんが寝ながら言った。

 

「倒れるくらいなら他の魔法でもいいだろ」

 

「あっ、ハチマンさん…それは…」

 

ゆんゆんが何かを言おうとした時、めぐみんが俺の顔を見て叫んだ。

 

「私はっ! 爆裂魔法しか愛せない! 他の魔法など興味はありません!」

 

「…………」

 

……あぁ…なるほどね。

 

さっきの言葉を撤回しよう。 めぐみんはまともそうだと言ったが、そんな事はなかった。

 

こいつもアクアやダクネスと同じだ。

 

「カズマ…苦労してそうだな…」

 

アクアとダクネスと話しているカズマを見て、俺は一言呟いた。


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