和を嫌い正義を為す   作:TouA(とーあ)

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今回は幕間みたいなものでとても短いです。ホントに。

その代わり週末にはもう一話投稿するのでお楽しみに。

ではどうぞ!!


正義

 

 

 正義とは。

 

 軽易に云えば“こうあるべきだ”と云う価値と理念である。

 

 其れは時代や地域によって支配的な価値判断は異なる“相対的”なものであり、正しさを主張として正義に近付こうとする“説得的”なものでもある。

 

 故に正義の観念は“等しきものは等しく、等しからざるものは等しからざる様に取り扱え”と云う合理性に富むものとされる。

 

 正義の観念は三つ程に分けられる。

 

 一つは“配分的正義”。

 何らかの具体的基準に基づいて有るものや機会が比例的に配分されるべきとする正義だ。()()()()()()()、之が配分関係に於ける正義である。

 

 二つ目は“矯正的正義”。

 並列個人間の利益と喪失の調整に関する交換関係に於ける正義である。間違いや不正を正すにはどの様な結論を取るべきかと云う観点からの正義だ。つまり()()()()()()と其の()()天秤(バランス)によって為されていると云えるのだ。御互いの正義のぶつかり合う“戦争”は之に当たる。

 

 最後に“手続的正義”。

 決定に至る迄の手続き過程について、其の決定の利害関係者の各欲求に対して公正な手続きに(のっと)って公平な配慮を払う事の要請、手続きとしての正しさを求める視点の正義である。要するに結論と引き離された正義であり、冤罪事件は此の適正手続の観念を基礎としている。

 

 

 では“異能”はどれに当たるのか。

 二つ目の“矯正的正義”が最も当て嵌まるだろう。各々が人智を超えた“異能”を用い命を刈り取ろうと“異能”を奮おうが、神秘の力で人の心や傷痕を治そうが其処に絶対的な“正義”は存在する。利益と喪失の調整の天秤(バランス)が異様であろうが、其れは“()()()()()()()の一言で事足りる。畢竟(ひっきょう)、 “異能”其の物を合理的に語るなど無意味であるのだから。

 

 

 では問おう。

 其の“正義”さえ書き換える“異能”は何と呼ぶべきか。

 正義の観念を置き換え、正義の価値を変換し、正義の理念を換算する。世界の(ことわり)を塗り替え、辻褄を合わせるそんな“異能”を。

 理論的に合理的に説明出来ぬ、人智を超えた数多(あまた)の“異能”でさえも“正義”と云う概念から外れる事は無かった。では其れから外れたものは何と呼べば良いのだろうか。神か、悪魔か、化物か…其れでも()だ叙述出来たとは云えない、云えないのだ。

 

 

「災厄・兇変・大災・惨禍・潰滅・無慚……矢張り似合いませんねェ」

 

 

 男は嗤う。

 何処か冒涜的な其の微笑は禍々しくもあり、見る人が見れば狂笑に見えるだろう。だが男はさも嬉しそうに嗤った。哄笑、と云う言葉がよく似合う。

 

 

「私が貴方を見付け、名付けたのは十数年前……(ようや)く、漸くです」

 

 

 彼我の距離が埋めれたのか、それとも(また)、別の何かを見出したのか。男は歓喜に震え、声を漏らした。

 其れは形容するに長年欲しかった玩具を買って貰った稚児の様で────。

 

 

 

大災禍(カタストロフ)……貴方は必ず私が手に入れます」

 

 

 

 

───────魔人が動く。

 

 

 

 

 





前書に書いた様に幕間です。

少しだけネタバレ…的な。

以後謝辞。
『冷奴先輩』さん、『白い皇』さん、『五水九日』さん、最高評価有難うございます!!
『watan』さん、『モグラタタキ』さん、高評価有難うございます!!

皆さんの評価や感想があってこそのこの小説です。本当に力になってます!有難うございます!!

ではまた週末に。感想や評価お待ちしてます!

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