和を嫌い正義を為す   作:TouA(とーあ)

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お久しぶりです。報告は後書きにて。

ここで久しいので流れをさらいたいと思います。


ギルドが探偵社に開業許可証を金で購おうとする。

八幡がギルドに宣戦布告。

モンゴメリVS八幡と敦

モンゴメリを勧誘→断られる

探偵社・マフィア・特務課で会合。決裂。

探偵社の本拠を晩香堂へ。

移して社長の言葉と八幡・太宰の話。直後に谷崎から連絡。

谷崎が禍狗とマーガレットを捕縛。
八幡、国木田、与謝野がハイエースで迎えに行く(※←ここから始めます)

晩香堂にマフィア(中也・紅葉)が攻める。警察の包囲網で逃げる。

箱根で芥川が目覚める。八幡に同盟を持ちかけられる。


こんな感じです。久しぶりのお楽しみください!!

ではどうぞ!!





咆哮

 

 

 

数時間前《横浜湾・ 瑞穂埠頭・ゼルダ号》

 

 

『残り二人は残しておいて良かったんですか?』

 

『あぁ必要無い。必要なのは()()()()()()()だ』

 

 

 芥川が目覚め、八幡との邂逅から数時間遡る。

 燃え猛り沈み逝く旧組合(ギルド)の本拠地であるゼルダ号を背中にポートマフィアの“禍狗”である芥川龍之介と組合(ギルド)の“徒弟(アプレンティス)”であるマーガレット・ミッチェルをハイエースへと運ぶ三人の男達。

 

 

『晶子…済まないが』

 

『皆まで言うンじゃないよ。判ってる』

 

 

 車内には山高帽(ポーラーハット)を軽く押さえ付け、申し訳なさそうに声を震わせる八幡と医者の与謝野。運転席には国木田が居り、助手席には谷崎が座っている。

 

 

『其れに(アタシ)ャ医者だよ?助けを求めている患者が居るのなら手を差し伸べるのが筋ってもんサ。仮令(たとえ)其の患者が幾百と人を殺した殺人鬼で在ろうとね』

 

『……』

 

『ハァそんな顔するンじゃないよ。確かに芥川(コイツ)は人の命を何とも思っていない、目的の為ならば躊躇いも無く人を屠るクズだ。だけど其れは(アタシ)が助けない理由には成り得ないのサ。アンタが敵のモンゴメリ(少女)を助けようとしたのと一緒でね……』

 

『………あぁそうだな』

 

 

 暫し黙考し物想いに耽る八幡。

 与謝野を含め、国木田も谷崎も彼が何を考えているのか全く判らなかった。

 ふぅと溜まっていた息が漏れ出ると八幡は意識を切り替えて之からの行動を指示した。

 

 

『晶子は晩香堂へ。太宰が云っていた様にポートマフィアの襲撃があるだろうから備えてくれ』

 

『判ったよ』

 

『あと之を鏡花に』

 

『ん?……あぁ成程。渡しとくよ』

 

『国木田と谷崎は俺と之から箱根へ……組合(ギルド)を叩く』

 

『『はい!』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在《箱根・民宿》

 

 

(ぶつかるのは俺だけか…然も共闘するのは“禍狗”と組合(ギルド)の幹部ときた……はぁ)

 

 

 時は戻って箱根。

 八幡と谷崎は一足先に離脱し、残っているのは国木田と元組合(ギルド)のスカーレット・オハラ。

 

 

一寸(ちょっと)国木田ァ?其処らを探して来なさいよ」

 

(何故、敵対している組織の女に味方面した上に顎で使われなければならん!─────其れに)

 

 

 スカーレット・オハラ。

 其の女性、見目麗しいのはそうだが格好も相まって高飛車なお嬢様其のもの。理想に生きる高徳な国木田からしてみれば彼女は五十八要素もある理想の女性像からかけ離れ過ぎているのもあって怪訝な表情を浮かべてしまうのだ。

 

 

「八さんは如何(どう)やって組合(ギルド)の幹部を仲間に引き入れたのだ?」

 

 

 

 ➕ ➕ ➕ ➕ ➕ ➕

 

 

『八さん…俺には無理です』

 

『別に仲良くやれって云っている訳じゃない……が、飽くなき理想主義者で情の厚い御前はそう割り切るのは難しいか』

 

『……はい。芥川の顔を見ると奴に殺された知己の顔が浮かびます。俺は八さんや太宰の様に出来ない、振る舞えない』

 

『んー仲良くやるンじゃなくて()()()()()って事なんだが』

 

『上手く、やる?』

 

『あぁ、仲良くする必要は無い。芥川もマーガレット…いやスカーレットも敵ではないが味方でもないからな。上手くやれれば其れで善い。其れに』

 

『其れに?』

 

『此の程度の単純思考の奴等を支配(コントロール)出来なくて、太宰を支配(コントロール)出来る訳が無いだろう?(また)、暖房代わりに怒らされるぞ?』

 

『むぅ…そうですね。やってみます』

 

『頼んだ。まぁどうせ忘れるから気にするな』

 

『は、はい?』

 

 

 ➕ ➕ ➕ ➕ ➕ ➕

 

 

「オハラ、我儘を云うンじゃない。何時敵が攻め込んでくるか判らないと云うのにバラけて如何(どう)する?」

 

冗談(ジョーク)に決まってるじゃない。真逆、本気にしてたの?私も其処まで莫迦じゃないわよ」

 

(女版太宰じゃないか…!)

 

 

 唯我独尊のスカーレットを前に国木田は何時の間にか主導権を握られていた。否、振り回されていた。

 国木田が頭を抱えていると刹那、世界一体が異様に重圧に押し潰された。其れは殺気と云うには余りに不似合いで激情の一言で片付けるには余りに烏滸がましい。無謬で非業で異形な存在が眼前に現れた事を意味した。

 

 

「おや?ミッチェルじゃないか。事務員ではなくて君が出てくるとはね…確か行方知らずだった筈なんだけど」

 

「はぁ私はスカーレット。スカーレット・オハラよ。人違い」

 

「ふぅん成程。畢竟(ひっきょう)、君は何方(どちら)にしろ其方(そちら)に付くのだろう?なら覚悟することだね」

 

 

 ハンチング帽を被った金髪蒼眼の好青年は笑顔でそう答えた。

 国木田は体で感じ取っていた。その好青年が此の異様な空間を作り上げているのでは無いのだと。其の背後で虚な目をしている長身痩躯で長髪の男こそ元兇(げんきょう)なのだと。

 

 

「……探偵社が一隅、国木田独歩。推して参る」

 

「じゃあ僕も」

 

 

 サクッと腕にナイフを突き刺した好青年…組合(ギルド)職人(フェロークラフト)“ジョン・スタインベック”は衣嚢(ポケット)からある種を取り出し、刺した傷痕に植え付けた。

 瞬間、ジョンを宿木として種子が成長し、禍々しい葡萄の枝と蔓と葉がジョンを護る様に展開した。

 国木田は引金に掛かった人差し指を何度も曲げ、ジョンの眉間や人体の急所、そして枝とジョンとの結合部を集中的に狙った。其の行為に躊躇いは無かった。

 然しジョンも異能の扱いに慣れており、弾丸の凡てを悉く枝で弾いた。異能組織に在籍しているだけあって異能の扱いは上位クラスだ。

 

 

「矢っ張り君が邪魔するか…相性最悪なんだけど」

 

「風よ」

 

 

 ジョンに結合していた葡萄の木が風化していくが風化した枝とは違う枝を伸ばし穿孔された空間を補完していく。(いたち)ごっこではあるが一対二の状況では孰れ二の方に軍配が上がる。

 

 

「ラヴクラフトッ!!」

 

「了解した」

 

 

 ジョンの咆哮に長身痩躯の男が呼応する。

 無表情で覇気の無い顔に浮かぶ漆黒に窪んだ瞳が国木田を捉えた。サッと血の気が引き『死』の一文字が脳裏を(よぎ)る。心を奮わせ奥歯を噛み締め銃口をラヴクラフトへ向ける。

 

 

「糞ッ!!」

 

 

 空気を切り裂く銃弾を呑み込み吸盤の付いた触手が国木田の銃を弾く。其の儘、触手が国木田の左手を吞み込んだ。

 

 

─────ボキボキッ!!

 

 

「─────ッ!!」

 

 

 

 肘関節から橈骨(とうこつ)、尺骨、手の平の毛根骨を含めた数十を超える骨が砕かれた。

 激痛に顔を歪め、声にならない声が音となって漏れ、人形の様に左腕がダラリと垂れ下がる。其れでも立っていられるのは大事な糸が切れていないからだ。

 

 

「─────()てられぬ」

 

「御前は……!!」

 

 

 漆黒の猛獣が触手を喰らい、国木田と触手を分断させた。

 国木田とスカーレットの前に黒衣の外套を羽織った目を狂気に爛爛と輝かせた一匹の獣が降り立った。

 

 

「時には情も桎梏(しっこく)と知れ。貴様が其の程度なら探偵社の底も知れると云うもの。初めから信を其処の女に預けて於けば()るに耐えん姿に成らずには済んだだろう」

 

「─────ッ」

 

「女、其の男を連れ()け。十全でも無い者が居ても邪魔なだけだ」

 

 

 スカーレットは無言で国木田を連れ、森へ消えた。

 其の間、 消える二人にジョンとラヴクラフトは何もしなかったのでは無い。何も出来なかったのだ。其程、芥川が放つ殺気が尋常では無かった。

 

 

「僕達に独りで向かってくる気かい?」

 

「愚問」

 

 

 芥川の周りに顕現していた黒獣と黒刃が芥川自身の躰に纏わり付く。黒洞々たる黒衣の装束が芥川の装甲服となる。

『羅生門』の新たな形態にジョンは目を剥くがラヴクラフトは相変わらず無感情のまま其の芥川を空虚な眼で覗く。

 

 刹那。

 

 ラヴクラフトの横面に黒衣の外筋たる拳が吸い込まれていた。

 触手と共に森の木々を薙ぎ倒しながらも其の勢いが止まること無く砂塵を巻き上げながら其処ら周辺を死地へと変えていった。

 

 

「─────羅生門“天魔纏鎧”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「急げッ!」

 

 

 与謝野は晩香堂から駆け出していた。

 国木田の携帯から救援の連絡が入ったのだ。重症の国木田を救ってくれ、と聞いた事が無い女性の声で助けを求められた。ただ其の女性が誰なのかは察しがついていた。恐らくハイエースに乗せた組合(ギルド)の女性なのだろうと。

 

 ドンっと。

 

 駆けていた所為(せい)か曲がり角から急に出て来た存在に気付かずぶつかってしまった。其の存在が背の低い子供だった事もあって与謝野は周りが見えなくなっていた自分を自戒した。

 

 

「ご、ご免っ!大丈夫かい?」

 

「─────大丈夫?」

 

 

 声の高さや格好から性別が男か女か判らなかったが与謝野は咄嗟に其の子供を畏れた。

 何がそうさせたのか判らない。子供の持つ奇怪な人形がそうさせたのかもしれない。だがそうではない事を直感で感じ取っていた。

 

 

「ねぇお姉さん………遊ぼ☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まず謝罪を。

二ヶ月も明けてしまい申し訳ありませんでした!

改変のプロットが完成したのでこれからは一週間おきに投稿します!お楽しみに!!

感想と評価、お待ちしてます!映画の話とかしたいなぁ(願望)

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