和を嫌い正義を為す   作:TouA(とーあ)

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お久しぶりです。

一ヶ月ぶりの更新ですね。待たせてしまい申し訳ありません!!

後書きにて色々書きますので取り敢えずどうぞ!!


殺意

 

 

「へぇ。其れで弱った女子(おなご)をお持ち帰りしたってのかい。()い御身分だねぇ。(いや)塵芥(ゴミ)分だねぇ・・・」

 

「おぉふ・・・」

 

 

 探偵社医務室。

 八幡は正座をしていた。

 目の前には回転椅子に座り、腕と足を組んだ与謝野。明らかに不機嫌な其の姿は八幡にとって“恐怖”其の物だった。

 

 

「敵方の幹部を背負って探偵社に来た時は何事かと思ったさ。其れがただの私情に流されただけとはねぇ・・・なぁ八幡、アンタ森先生みたく年下が好きなのかい?」

 

「最初の言及については返す言葉もねぇが・・・俺は普通(ノーマル)だからあの人と同じにしないでくれません?」

 

「ハンッ如何(どう)だか・・・」

 

 

 八幡の意見や反論を素直に受け取らない与謝野。其の行動には、其れこそ与謝野の私情が挟まれているのだが八幡が知る由もない。

 話を変える様に八幡は医務室の寝台(ベッド)の方へ向き、与謝野に問うた。

 

 

「依頼主の娘、少女二人は・・・」

 

「外傷なし。健康上は何も問題ないけど異能を目の当たりにした事に依る心的衝撃(ショック)が不安だよ。未だに目を覚ましていない事から自己防衛本能が激しく働いた事が判るからねぇ。心的外傷後ストレス症候群(P T S D)に成らない事を祈るだけさ。」

 

「・・・そうか。」

 

 

 八幡は二人の少女が眠っている寝台(ベッド)へと移動した。長女である光代(みつよ)の額に手を乗せ、小さく呟いた。

 

 

「“異能力”『本物』」

 

 

 八幡は光代の“記憶”を辿る。モンゴメリに襲われたのが放課後であった事から時間を絞っていく。

 

 

(放課後、姉妹共に探偵社に遊びに来て、ナオミと一緒に太宰を犬で苛めたと云う風に改竄、と。)

 

 

 光代に続いて絵都(えと)も同じように改竄する。八幡は此の様にして被害者達の心的外傷後ストレス症候群(P T S D)を防いでいる。勿論、自身の異能の情報が外に漏れない様に、そして被害者達が太宰に触れない様に細心の注意を払っている。

 

 

「八幡、終わったかい?」

 

「あぁ問題ない。」

 

「そうかい。じゃあ(アタシ)ゃ別室に待たせて在る親御さんに説明に行くからね。」

 

「頼む。」

 

 

 二人の親の説明の為に与謝野は席を立った。医務室の扉を開き、半分躰が外に出た所で何かを思い出した様に口を開いた。

 

 

「八幡。」

 

「ん?」

 

「アンタの無遠慮に振り撒く“優しさ”・・・嫌いじゃないよ。」

 

「なっ────」

 

 

 与謝野は其の一言だけ口にすると脱兎の如く消えて行った。取り残された八幡は口を開き阿呆面を見せて、云われた一言を頭の中でずっと反芻する羽目になった。

 

 

貴方(あなた)、かなり鈍感なのね。」

 

「起きたのか・・・」

 

 

 簡易寝台(ベッド)から起き上がったのは件のモンゴメリだった。簡易寝台(ベッド)とは云っても唯の寝椅子(ソファー)ではあるが。

 

 

「鈍感って何だよ。俺は敏感だぞ。人の悪意とか殺意とか。」

 

「そう云う話じゃ無いのだけど・・・苦労するわね、あの女医も。」

 

「だから何の事だ?」

 

「云わないわよ。少しは貴方の頭で考えなさいよ。」

 

「判らねぇから聞いているんだが・・・」

 

「じゃあ一生悩み続けることね。何時迄も其の阿呆面の儘で居れば()いわ。」

 

 

 どこかツンとした態度のモンゴメリに不満を隠せない八幡。

 モンゴメリはふぅと一息吐くと意を決した様に口を開いた。

 

 

「勧誘の件なんだけど・・・」

 

「あ、あぁ・・・」

 

「お断りするわ。折角の誘いだけど。」

 

「そうか・・・」

 

「居場所は無くなったとは云え、私は居場所を此処で築けるとは思えないわ。贖罪の為に此処で働くには()だ心と躰が足りないもの。其れに────」

 

「其れに?」

 

「私を組合(ギルド)に誘ってくれたあの子を置いては行けないわ。孤児院では独りだったけれど、あの子が誘ってくれた事で孤独を感じる事が無くなっていた事に、今気付いたから。」

 

 

 角が取れて丸くなったモンゴメリは優しく微笑んだ。もう既に組合(ギルド)で追い込まれていた時の陰は無くなっていた。

 

 

 「ではもう・・・」

 

 「えぇ組合(ギルド)に戻るわ。異能が貴方達にバレた今、幹部としては使えないだろうけど、メイドや掃除婦とか出来る仕事からやってみる事にしたわ。」

 

 「判った。止める理由は無いからな。御前がそう決めたのなら俺は其れを尊重する。出るなら裏口を使え。二人の母親も居るからな。」

 

 「有難う。(また)、機会が有れば会いましょう。」

 

 

 モンゴメリは与謝野が出た扉とは違う扉の方へ歩を進める。

 与謝野と同じく半分躰が医務室から出た時に何かを思い出した様に足を止めて、其の儘の体勢で口を開いた。

 

 

 「あぁそうだ。貴方、早く素直になった方が()いわよ。気付かないフリをしているの丸判りだから。」

 

 「・・・御親切にどうも。じゃあ此方(こちら)からも。」

 

 「何?」

 

 「(ヨダレ)の痕付いてる。」

 

 「~~~~~っ!!先に云いなさいよ!莫迦(バカ)ッ!」

 

 

 バタンッと勢い善く扉を閉めたモンゴメリ。

 八幡は少し微笑むと、直ぐに切り替え、次の行動へ移した。携帯を取り出し、とある人物へ連絡する。

 

 

 「太宰、少しばかり早いが呑みに行くぞ。」

 

『わーい♪』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《武道場》

 

 

 「之で三度目。」

 

 「くっ・・・・・・」

 

 

 敦の首の喉元に小刀を(かたど)った玩具が当てられている。小刀を握るのは鏡花だ。

 

 

 「云った筈。目で追い掛けては駄目。()()()を前にした時、或いは自身に危害が加わる時、考えるのでは無くて感じなければならない。」

 

 「そうは云っても・・・」

 

 「貴方は“虎”と云う異能を宿してる。即ち、其れは野生の本能を使役出来ると云うこと。野生の獣の()()を早々に掴めば貴方の実力は格段に上がる。」

 

 「目だけで捉える事に限界が来ている事は判ってる。でも僕は・・・」

 

 「(また)、貴方は関係の無い無辜の市民を巻き込んだ時、今回の様に先輩任せにするの?貴方が敵の目的で在る事をもっと自覚し、対処出来る様にしないと。」

 

 「そう、だね。よし!有難う鏡花ちゃん。」

 

 「〜〜〜〜っ。う、うん・・・」

 

 

 決意の炎を目に宿し、優しく微笑む敦に少し頬を赤らめる鏡花。

 

 

 「あの二人とも?仲睦まじいのはとても微笑ましいけど、続きしない?」

 

 「あ、はい。すみません谷崎さん。」

 

 「うん。」

 

 

 二人の訓練を陰から観察していたのは谷崎だ。

 何故此の様に観察しているのかと云うと八幡から提案を持ち掛けられたからである。

 

 

 

 + + + + +

 

 

『谷崎、彼奴(アイツ)等の修行を観察しろ。』

 

『な、何故です?』

 

『御前の異能の使い方について今一度見直せ。その答えが二人の訓練の中に有る。』

 

『な・・・』

 

『御前自身判っている筈だ。異能力『細雪』は決して人を欺く為だけの異能ではない事を。一番何に向いているか、人を護るのではない事を御前は理屈では判っている筈だ。』

 

『其れは・・・』

 

『之から先、何が起こるか判らない。敵は凡百(あらゆる)手段を講じて此方(こちら)を錯乱させ、敦と俺を奪いに来るだろう。其の手段として事務員を餌、(また)は人質にする事も考えられる。』

 

『っ!?』

 

『何が云いたいか判るな?御前の大事な者を失わない為にも、探偵社として此の街を護る為にも最善を尽くしてくれ。』

 

『はい・・・』

 

 

 + + + + +

 

 

 

(八幡さんは何かを決意した目だった。恐らく、之から三つ巴の戦争が起こる事を予測している。其れを防ぐ為に策を講じているんだろうけど・・・)

 

 

 谷崎は二人の訓練を観察しながら、之からどうするべきか頭を捻っていた。そして此の訓練を見る意味を。

 

 

 「はぁはぁ・・・」

 

 「今のは良かった。」

 

 

 体力と云うより、気力を使う此の訓練は敦にとっては過酷其のもの。精神的な負担が多いので敦からは脂汗が滴り落ちている。

 

 

(鏡花ちゃんを見て理解した。僕の異能は間違いなく“暗殺”に向いている。殺気の殺し方とか放出の仕方とか・・・ナオミはこんな兄を見たらどう思うかな・・・)

 

 

 谷崎は二人を見ながらも最愛の者に思い馳せる。そして目に小さな殺意を灯し、呟いた。

 

 

 「僕はナオミの為ならば世界を焼こう。森羅万象を欺き、ナオミの為に力を奮う事を誓おう。」

 

 

 漏れた殺意に気付いたのは鏡花だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《呑処 来る味屋》

 

 

 「比企谷さん・・・何故、此所(ここ)に?」

 

 「入れば判る。」

 

 

 太宰と八幡は裏路地に有る呑み屋に来ていた。

 八幡は此の呑み屋には大した思い出は無いのだが、太宰には有る。其れはポートマフィアを辞めて探偵社に入る切っ掛けとなった場所であるからだ。

 

 

 「へいらっしゃい!何名様で?」

 

 「探偵社二名。」

 

 「・・・了解しやした!ご案内しやす!」

 

 

 一瞬固まった店員は二人を奥の座敷へと案内する。其れに八幡、太宰と続く。

 

 

 「水をお持ちしやすんで少々お待ち下せぇ!」

 

 

 中に通された二人から逃げる様に店員は座敷を後にした。二人は座敷へと入ると、既に中には二人の女性が座っていた。

 

 一人は鮮やかな紅の着物に身を包んだ女性。赤み掛かった茶髪を結い上げ、物腰は優雅で色っぽく遊女にも見える。大人の女性の貫禄を十分に感じられる女性だ。

 

 もう一人は灰色(グレー)背広(スーツ)に身を包んだ細身の女性だ。青磁色の髪に白のスカーフを首に巻き、気の強そうな吊り目をしている。

 

 

 「姐さん・・・」

 

 「おや?久しいのぉ太宰。」

 

 

 妖艶な笑みを浮かべる女性に太宰は少したじろぐ。(いや)、この面々に面食らったの方が正しいのかもしれない。

 

 

 「御前が安吾が寄越した異能特務課の人間か?」

 

 「はい。内務省・異能特務課の“辻村深月”と申します。」

 

 

 此処に横浜を護る三組織の幹部が揃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






一ヶ月ぶりの更新。お待たせしてしまい申し訳ありません。

更新まだですか?というお言葉を感想欄や直接コメントで貰ったりして申し訳ない気持ちで一杯です。楽しんで頂けたら嬉しいです。


今回から第三章が大きく動きました。原作とは違ったストーリーになって行くのでお楽しみに。


では毎度恒例謝辞。

『こばこば』さん最高評価有難う御座います!!
『びゃっP』さん、『飯田 真央』さん、『飛翔するシカバネ』さん、高評価有難う御座います!!


感想をくれた方、応援してくれた方、本当に有難う御座います!!


ではまた次回!!感想、評価、お待ちしてます!!

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