今回は短いです。ではどうぞ!
《武装探偵社》
「『メッセージ』とは此れか・・・」
発言した国木田を含め、探偵社の調査員一同は辛酸を舐めさせられた表情を浮かべ、各自が別々の
理由は、今朝から
七階建ての建物が一夜にして消滅したのだ。
今朝の朝刊や
其れについても理由が有り、消滅した建物はポートマフィアのフロント企業、つまり構成員の事務所として使われて居たのだ。市民に敵対組織の襲撃の可能性と危険性が有ると警告する為だった。
「八さん、太宰は俺と会議室で社長会議を。他の調査員は事務員を護る事も含めて
「「はい!」」
《武装探偵社 会議室》
「会議を始めます。今回は今朝から大々的に放送されている『建物消失事件』を含めた、『
「間違いなく
「だろうな。其れに付け加えるなら
「・・・・・・・・・。」
会議室では、議論を交わす国木田、太宰、八幡と、双眸を閉じ、黙考している福沢の四人が居た。
「気になる発言ですか?」
「あぁ。連中は“敦”が欲しいのでは無くて、“敦”を使って
「八さんの云う通りならば、敦が幾ら傷つこうが生きていれば問題無し、って事になりますね。」
「そう云う事になるな。」
「国木田君の意見に付け加えると、連中は敦君が生きているのなら多少は街に被害が出ても問題無し、って事になりますね。今朝の事件が其れを物語ってる。」
「若しくは、連中の探し物は多少の攻撃では傷つかないし破壊されない、って事だろうな。まぁ
三人は議論を重ねる毎に顔を
「消えた建物にポートマフィアの事務所が入ってた所から、ポートマフィアは用済みって事だろう。連中は俺達と同様、ポートマフィアにも喧嘩を売った訳だ。」
「そうなりますね。其れだけ自信が有るのでしょう。太宰はどう見る?」
「どうもこうも自信過剰だね。探偵社とポートマフィアを相手取って勝てる筈がない。だからと云って探偵社とポートマフィアが組む事は決して
福沢は双眸を見開くと、凛とした声で自身の意見を、即ち探偵社の総意と成る意見を口にする。
「此の世に存在する
「では・・・」
「市民の安寧と安穏を優先せよ。何が有ろうとも、此の街と民の為に探偵社の仁義を貫き通せ。以上だ。」
「「「はい!」」」
探偵社の方針が決まった事により、三人はそれぞれに課せられた行動を開始した。其れに伴い、探偵社でも慌ただしく人が駆け回った。
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《武装探偵社 オフィス》
「助けて下さい!お願いします!!娘を・・・娘達を・・・」
「ど、どうされました?」
流水の如く人が流れる探偵社の行動にストップを掛けたのは一人の女性だった。社長の号令から数時間後の出来事である。
女性は悲痛な面立ちで探偵社に駆け込み、敦に縋り付いた。震える体と目から幾度と零れ落ちる涙から状況は危急である事が伺えた。
「娘達が・・・
「光代ちゃんと絵都ちゃんだって!?」
「光代が何故!?絵都ちゃんも!?」
光代と絵都は或る一件で探偵社に協力してくれた姉妹である。と同時に光代は学生時代のナオミと同輩であり仲がとても良かったのだ。
光代ら姉妹の母親と見られる女性は敦に縋り付つ自身の思いを叫ぶと、交流が合った太宰とナオミが同調する様に声を荒らげた。
太宰は姉妹の母親を椅子へ案内すると事情を聞いた。八幡とナオミ、敦も同席した。
少し落ち着いた姉妹の母親はポツポツと何が起きたのか話し始めた。
「二人の娘は何時も一緒に帰宅するんです。でも今日は帰りが遅かったんです。暫くリビングで待っていると、玄関の戸が開いた音がして慌てて玄関に向かったのですが・・・玄関から入って来たのは
(流石に敵方の
八幡が一人納得していると、姉妹の母親は再び嗚咽を漏らしながら語りだした。
「男性が光代の通学鞄と絵都のランドセルを私の前に投げ捨てて『娘を返して欲しくば武装探偵社に赴き、“災禍”と“白虎”を指定の位置にまで呼び出せ』と吐き捨てて行きました・・・う、うぅ・・・・・・」
そう云い、一枚の地図を差し出した。ナオミが姉妹の母親の肩に手を添える。
太宰は受け取ると目を細め、其の儘八幡に渡した。受け取った八幡も太宰と同じく目を細めた。
「敦、行くぞ。」
「はい!」
八幡は探偵社の外に繋がる扉へ向かい歩き出した。敦も其れに続いた・・・が、途中で振り返り、姉妹の母親に向かって宣言した。
「絶対に助けてみせます!其れまでどうか待っていて下さい!」
「・・・・・・うぅ・・・はい。娘達をどうかお願いします。」
《とある街中の交差点》
「何故、敵はこんな場所を・・・」
「こんな場所だから、だろ。木を隠すなら森の中。俺達の奇襲を避ける為に人通りの多いこの場所を選んだのだろうよ。」
敦と八幡は街中の交差点で周囲を見渡していた。
姉妹の母親から渡された地図には此の場所に印が入っていたのだった。帰宅時間と被っている為か、いつも以上に人通りが多い。
「八幡さん・・・罠ですよね?」
「当たり前だろ。十中八九罠だ。だが是しか姉妹を助ける方法が無いのも事実。やるしかねぇよ。」
「はい・・・」
二人は背合わせで周囲を観察した。だが其れらしき人物は見当たらない。
敦は異能で自身の目を“虎眼”にし、再び周囲を観察した。すると、少し離れたところに赤髪の女性を捉えた。
「八幡さん見付けました。でも・・・一人です。」
「十分だ。行くぞ。」
敦が先陣を切り、八幡が其れに続く。
横断歩道を渡る人混みを掻き分け、目的の人物に近付いて行くと────すとん、と。
「────ぇ?」
「・・・厄介だな。」
横断歩道ごと切り抜かれた様に敦と八幡は
敦と八幡だけではなく、横断歩道を渡っていた民間人も其の異質な空間へ飛ばされたのだった。
非現実的な出来事に依る恐怖が恐怖を呼び、伝染し、民間人に狂騒を
「ようこそ。アンの部屋へ。」
そう口にしたのは
何故か狂騒に包まれていた空間でも全員の耳に届いた其の声は妙に透き通っていた。
「あたしの名前はモンゴメリ。此処はあたしの異能力で創った空間なの。いらっしゃい、アン。」
赤髪の女性────モンゴメリがそう呟くと何処からか巨大な人形が姿を現した。
人形はモンゴメリと同じく、赤髪で三つ編み。主人に似て残酷な笑みを浮かべている。
「アンは遊ぶのが大好きなの。少し甘えん坊だけれど可愛いのよ?あ、遊んでくれない方は後方の白い扉から帰れるわよ。」
民間人は其の言葉と巨大なアンに恐れを為して、次から次へと外へと飛び出して行った。其の後ろ姿に陽気な声でモンゴメリが呼びかける。
「あっ、但しその部屋から出たら部屋の中の事は忘れちゃうわよ?宜しくて?」
其の言葉も届いたかどうか怪しいのだが、結局此の異能空間に残ったのは敦、八幡、そして白衣を着た中年の男性だった。
「あの・・・此処は危険ですよ?逃げた方が
「女の子を探しているんだ。天使の様に可愛い子なのだよ。」
「・・・・・・・・・ハァ。」
敦は注意を促すが、男性は確固たる決意を持って此処に居る様だった。隣で八幡が嘆息していたのを敦は知らなかった。
「約束通り赴いてやった。姉妹を返せ。」
「そうね。アンと遊んでくれるならいいわよ?」
「なッ、約束が違うじゃないか!!」
敵方の約束の反故に敦が激昂するが、所詮は口約束。其れも敦達と結んだ物では無いので言及する事も出来ない。
八幡は感情的に成る敦を制止し、モンゴメリに向き直る。そして何時もより数段落とした声で話し掛ける。
「何にせよ、先ずは姉妹の安否だ。居ないのなら受ける理由も無い。」
「其れもそうね。あっちの扉にちゅうも〜く。」
モンゴメリがそう云うと民間人が出て行った白い扉とは真逆の位置に有る黒い扉が勝手に開いた。
其の部屋の中にはセーラー服の少女と体操服を着た少女が囚われていた。遠目からでは有るが目立った外傷はない。
「之で宜しいかしら?では始めましょう。貴方達が其の鍵を使って扉を開ける事が出来たら貴方達の勝ち。逆に負けはアンに捕まったらよ。
「他には?」
「暴力は禁止。後、この空間にある物は傷付けたり、壊したりは出来ない様になってますから。」
モンゴメリの創った異能空間は
「では始めましょうか。」
其の言葉に反応する様に敦は一瞬で手足を虎化し、八幡は大きく一歩後ろに下がった。中年の男性は座りこんだ儘だ。
「────ぇ?」
敦は瞬きした瞬間、自分の躰が何かに掴まれている事を感知した。
恐る恐る振り返ればアンの大きな手の平が自身の腰を鷲掴みしていた。
「うわぁぁぁぁあ!!」
「先ずは一人。」
奥の部屋に繋がっている黒い扉が独りでに開き、中から敦を捕らえる無数の手が伸びてくる。
敦は拘束を外そうと暴れるが、外れる事はなく其の儘、奥の部屋へ引き摺り込まれた。
「
「随分と強気な発言ね?まるで私達から逃げきれる様に聞こえるわ。」
「少し黙れ。」
「────ッ。」
モンゴメリを八幡は殺気と言葉の重みで捩じ伏せる。
ふっと息を吐くと八幡は隣に座り込む、白衣を着た中年の男性に話し掛けた。
「森
「
「か弱い少女が一生日の光を浴びぬまま、死に逝くでしょうね。」
「よし手伝おう。」
白衣の男性────森鷗外は立ち上がり、モンゴメリの方へ向き直った。
押し黙っていたモンゴメリは、二人が知り合いだった事に驚いて、何時もの調子で再び語り始めた。
「次はどちらが遊んでくれるのかしら?中年のおじさま?黒い帽子のお兄さん?お兄さんは捕縛命令が出てるから見逃せないけれど、おじさまなら見逃してあげるわよ?其れともアンに捕まって絶望した顔を、二人とも見せてくれるのかしら?」
「試すかね?」
「試してみるか?」
「────────ッ!?」
二人から爆発的に吹き出した殺気はモンゴメリだけではなく、アンまでも震えさせた。息が詰まり、顔が青ざめ、口が乾く。
「じゃあ俺が異能担当で。森さんは本体を宜しく御願いします。」
「仕方ないね。幼女の為に一肌脱ごうじゃないか。」
今此処に、数時間前に太宰が否定した“武装探偵社”と“ポートマフィア”の共同戦線が実現した。
はい、第三章 二話が終わりました。いかがでしたか?まぁ原作を変えました。姉妹は番外編で出た犬の飼い主です。
母親が純粋に探偵社を頼ったのは、娘と仲が良いナオミが居たことと、太宰の復讐の時に娘が世話になった事が大きいです。
そして謝辞。
『冷奴先輩』さん、『シューベル』さん、『八機』さん、最高評価ありがとうございます!!
『林大』さん、『みなぃ』さん、『エメシア』さん、高評価ありがとうございます!!
皆さんの評価と感想はとても嬉しく、やる気が出ます!今後ともこの作品を宜しくお願いします!
ではまた次回。感想と評価、お待ちしてます!