和を嫌い正義を為す   作:TouA(とーあ)

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皆さんお久しぶりです。待たせてしまって申し訳ありません。

サブタイですが組合(ギルド)と読みます。・・・言うまでもないありませんね。

色々言いたいことはあるのですが、それは後書きにて。


では第三章 三社鼎立編スタートです!!





第三章 三社鼎立篇
組合


 

《武装探偵社》

 

 

 「同棲なんて聞いてませんよ!」

 

 「部屋が足りなくてね。それに新入り二人には家賃折半が財布に優しい。」

 

 

 探偵社の朝。

 敦は出社と同時に太宰に問い詰めていた。理由は今朝の出来事に有る。

 

 今朝、或る良い匂いが鼻腔を(くすぐ)り、敦は自室で目を覚ました。

 寝惚け(まなこ)の儘、良い匂いの方向へ顔を向けると卓袱台(ちゃぶだい)の上に数々の和食の料理が置かれてあった。白米をはじめ、焼き鮭、味噌汁、冷奴、漬け物、そして────凛とした佇まいで敦を見つめる“泉鏡花”の姿。

 

 

 「然し・・・」

 

 「彼女は同意してるよ。ねぇ?」

 

 「指示なら。」

 

 「えぇ・・・・・・」

 

 

 鏡花は敦が何故、狼狽えるのか理解出来なかった。指示であるのだから其れ以上其れ以下でも無い筈だ、と。

 

 

(若しかして朝食が合わなかったとか・・・)

 

 

 鏡花が的外れな考えをしてしまうのも無理は無いだろう。今迄、人生の殆どを闇で過ごした鏡花には十代の男子特有の思春期の悩みを理解出来る筈も無いのだから。

 

 

 「鏡花、気にするな。敦はな・・・・・・あ〜男なら誰にでも訪れる試練に四苦八苦してるだけだから。」

 

 「・・・うん。」

 

 

 顔を曇らせていた鏡花に八幡がフォローを入れる。其の後、八幡は鏡花の頭を()()()()()()()。最近の探偵社ではよく見られる光景である。

 其の二人から距離を取って敦と太宰は小声で話し始めた。

 

 

 「マフィアを追われ、縁者も無い彼女は沼の中の様に孤独だ。其れに裏切者を処する為に組織の刺客が来るやもしれない。独り暮らしは危険なんだ。」

 

 「た、確かに・・・」

 

 「君が守るんだ。之は大事な仕事だよ!」

 

 「判りました!頑張ります!」

 

 

 誰がどう見ても太宰が敦で遊んでいるだけなのだが、誰も太宰を止めようとしない。其れもまた事実だからだ。

 敦と太宰の会話がひとしきり終わると二人は自身の席についた。太宰は先程の態度を一新して敦に語り掛ける。

 

 

 「敦君。君に懸賞金を掛けた黒幕が判ったんだ。」

 

 「え?判ったんですか!」

 

 「うん。マフィアの通信記録に依ると出資者は『組合(ギルド)』と呼ばれる北米異能者集団の()()だ。」

 

 

────組合(ギルド)────

 構成員は財政界や軍閥の重鎮揃いで、膨大な資金力と異能で策謀を企む秘密結社と噂されており、実際に数多くのホテルと会社を有している。其の資産額は横浜の土地と其処に建つ会社(すべ)てを余裕で購入出来る程だと云われている。

 自国では都市伝説程度の噂しか無いので、其の三文小説の悪玉の様な組織が敦を狙っていると云う話は(にわか)に信じ難いものだった。

 

 

 「其の連中が敦を狙う理由は?」

 

 「其れだけは判らないのだよ国木田君。比企谷さんは何か知り得ました?」

 

 「(いや)、何も。探っているが、情報が錯綜していてどれが事実なのか判断がついていない。」

 

 「そう、ですか。何故僕を・・・・・・」

 

 「た、大変です!外を見て下さい!」

 

 

 調査員が探偵社と敦の行く末を案じていると、谷崎が社内に声を上げながら駆け込んで来た。

 谷崎の剣幕に何かを感じ取った調査員たちは、揃って目を外に遣った。中には窓から身を乗り出す者も居た。

 

 

 「先手を取られたね・・・」

 

 「(いや)、好都合だ。飛んで火に入る夏の虫。」

 

 「何でそんなに強気なんですか八幡さん・・・」

 

 

 探偵社の真向かいに有る公道に一機のヘリコプターが着陸した。

 其のヘリコプターからは、如何にもと云う雰囲気を醸し出した金髪長身の男と側使えの様な雰囲気の男と不気味な笑みを浮かべる赤髪の少女の三人が地に降りた。

 其れと同時に社長室から福沢が何時もの凛とした顔でオフィスへ入室する。そして八幡に一言。

 

 

 「八幡。」

 

 「何か御用ですか社長。」

 

 「茶を。」

 

 「承知しました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《探偵社 社長室》

 

 

 「会えてとても嬉しいよ。社長(president)・・・フクダ・・・フクナ・・・・・・」

 

 「福沢。」

 

 「そう其れだ。ヘリを道路に停めさせたが不味かったかね?何しろヘリポートの無い会社を訪ねるのが初めてでね。」

 

 「外国(とつくに)の方が遠路はるばるご苦労でしたな。して用件は。」

 

 

 静かな戦争。

 言葉と云う一種の凶器を持って互いに牽制し合う。そして互いに一歩も譲らない。

 客人の金髪長身の男は福沢に名刺を差し出し名乗った。

 

 

 「フィッツジェラルドだ。北米で『組合(ギルド)』と云う寄合を束ねている。」

 

 「フィッツジェラルド殿。貴君は懸賞金でマフィアを唆し我等を襲撃させたとの報が有るが、誠か。」

 

 「ああ!然しあれは過ちだったよ親友(old sport)。真逆、此の国の非合法組織があれ程役立たずとは。謝罪に良い商談を持ってきた。」

 

 

 フィッツジェラルドの背後に控えていた側使えの男が福沢に向けてアタッシュケースを開く。

 アタッシュケースの中にはぎっしりと札束が詰まっていた。

 福沢は双眸を細めるがフィッツジェラルドが気にした様子は無い。お互いに口を開こうとする。其の時。

 

 

 「失礼します。口に合えば宜しいのですが。」

 

 「君は確か“大災禍(カタストロフ)”君だったかな?」

 

 

 社長室の扉から八幡が人数分の茶を持ち入室する。

 八幡は返答せず、感情を表に出す事無く、福沢には湯呑みを、フィッツジェラルド等にはマグカップ置いていく。

 フィッツジェラルドは福沢の背後に控える八幡を一瞥すると再び口を開いた。

 

 

 「此の会社を買いたい。」

 

 「・・・」

 

 「勘違いするな。俺は此処から見える土地と会社を(すべ)て買う事も出来る。此の社屋に興味は無い。有るのは一つ。」

 

 「────真逆。」

 

 「そうだ。“異能開業許可証”を寄越せ。」

 

 

 フィッツジェラルドが発した“異能開業許可証”と云う言葉に八幡は少しだけ目を見開くが、直ぐに双眸を閉じフィッツジェラルドからの視線を遮断した。

 

 

 「此の国で異能者の集まりが合法的に開業するには内務省異能特務課が発行した許可証が必要だ。特務課の石猿共だけは金で買収出来ない。何しろ表向きは()()事になっている秘密組織だ。其の連中を敵に回さず大手を振って此の街で『探し物』をするには其の許可証が────」

 

 「断る。」

 

 「そうか?何なら此の腕時計もつけよう。限定生産で特注ダイヤが────」

 

 「命が金で()えぬ様に、許可証と替え()る物など存在せぬ。あれは社の魂だ。特務課の期待、許可発行に尽力して頂いた()()()()の想いが込められて居る。頭に札束の詰まった成金が易々と触れて良い代物では無い。」

 

 「『金で()えない物が有る』か。貧乏人の決め台詞(ゼリフ)だな。だが幾ら君が強がっても()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そうなってから意見を変えても遅いぞ。」

 

 「御忠告、心に留めよう。」

 

 

 フィッツジェラルドからの忠告と云う名の脅しに福沢は屈する事なく受け流した。

 福沢は之で終わりだと湯呑みを持ち上げ口に運ぶ。フィッツジェラルドは其の態度が気に入らなかったのか一気にマグカップの中の液体を口に流し込んだ────だが。

 

 

 「Cough, cough!何だこの飲み物は!」

 

 「お気に召しませんでしたか?フィッツジェラルド様。MAX珈琲と云う此の国で愛され続けている缶珈琲で御座います。」

 

 

 フィッツジェラルドのマグカップの中に入っていた液体はMAX珈琲であった。

 八幡は抑揚の無い淡々とした口調でフィッツジェラルドを気遣うが其れがフィッツジェラルドの神経を逆撫でした。

 

 

 「チッ。珈琲の味も判らない黄色人種(イエローモンキー)にはお似合いの代物だろうが、我々の舌には合わない様だ。甘過ぎる。」

 

 「・・・・・・・・・ハハ。」

 

 「・・・何だね。“大災禍(カタストロフ)”君。」

 

 「いえ、失礼しました。ただ、()()()()()()()()()()()()()()と思いまして。」

 

 「・・・私の見通しが甘いと?」

 

 「まさか。唯、一つ云うのであれば其の傲慢な態度で足元を掬われない様に注意すると良いでしょう。絶対に噛まないと保証できる猛獣を見た事はお有りで?」

 

 「成程・・・御忠告痛み入るよ。だが俺は欲しい物は必ず手に入れて来た。其の為には手段は選ばない。明日の朝刊をよく見ておけ親友(old sport)。」

 

 

 フィッツジェラルドはそう云い席を立った。側使えの男と赤毛の女が其れに続き、八幡は彼等を下まで送る為に続いた。

 一行は自動昇降機(エレベーター)に入るが口を開く事は無い。重たい沈黙が彼等を包み込むが其れを破ったのはフィッツジェラルドだった。

 

 

 「モンゴメリ君。作戦は中止だ。彼()()手を出すな。」

 

 「フィッツジェラルド様・・・」

 

 「・・・・・・・・・。」

 

 

 組合(ギルド)の三名は探偵社(此 処)を訪ねるまでは不敵な笑みを終始浮かべていた。だが今は三名の誰もが顔を曇らせている。眠れる()()を叩き起こしてしまったのでは無いかと不安に駆られた為だ。

 

 

 「此の度は此の様な辺鄙な場所に、態々御足労頂き有難う御座いました。御気を付けて()()()()()()()()。」

 

 「“大災禍(カタストロフ)”君・・・(いや)、比企谷君だったかな。君にとって“武装探偵社”とは何かね?」

 

 

 ヘリコプターに組合(ギルド)の三名が乗り込む前、フィッツジェラルドは足を止め背後に佇む八幡に問い掛けた。

 

 

 「其の質問は組合(ギルド)の長として、でしょうか?」

 

 「(いや)、個人的な興味だよ。」

 

 「・・・では一つだけ。“本物”です。“本物(genuine article)”の方が宜しいでしょうか。」

 

 「“本物(genuine article)”か・・・・・・。私にとって“本物(genuine article)”は家族だ。家族を救う為ならば手段は選ばない。」

 

 「私も“本物”を護る為ならば手段を選びません。手を出した者が、仮令(たとえ)、諸外国の一大組織であろうが此の世から消し去るでしょう。勿論、()()()()()()()()()()。」

 

 「・・・フフ。君と再び間見える時は戦場だろう。其の時を楽しみにしている。」

 

 

 フィッツジェラルドはそう云い残すとヘリコプターに乗り込んだ。

 八幡はヘリコプターが飛び立つまで頭を下げ見送った。其の顔は()()を決意した男の顔であった。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、第三章始まりました。如何でしたでしょうか?


第三章が始まると共に八幡の過去を僕の活動報告でまとめました。そこでしか明記されてないことがありますので出来るだけ目を通して頂けると嬉しいです。


報告。
僕自身、この作品の新しい話が更新できるのは三月の中旬あたりだと思っていました。てか掛かると思った。

ですがね。あの()()で目覚めたんですよ。一刻も早く書き上げないと・・・と。



『文スト』舞台化&映画化決定来たァァァァ!!



先ずこれを見た時は目を疑いましたよ。まさかこれほどまでに成るとは思いませんですから。

これからの情報が楽しみですね。双黒が映ってたけど何か関係有るのかな?まぁ関係あったら『一夜限りの復活』じゃなくなりますね!ロリコンやろう!!


ではまた次回。感想、評価お待ちしてます!

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