和を嫌い正義を為す   作:TouA(とーあ)

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アンケートの結果4番となりました。

たくさんの返信ありがとうございました!

では、4『太宰治に復讐を!』お楽しみください。



“復讐”

 

《探偵社会議室》

 

 

 「此処に集まって貰ったのは他でもない。()()()の件についてだ。」

 

 

 重い空気の会議室に集まったのは、発言した八幡、顔が疲労に染まっている国木田と谷崎、嘆息している与謝野、なぜ集められたのか判っていない敦、鏡花、賢治の七人だった。

 

 

 「()()()()が仕事を遅刻する事は珍しく無くなっている。加えて外回りに出ると雰囲気の良い居酒屋があれば飲み、息をするかの如く女を口説く。お蔭で苦情の電話が耐えん。」

 

 「・・・今回は六丁目のお爺さんに苦情の電話を貰いました。要件を話されず急に怒鳴られたので僕がお伺いしたンですが、何故か国木田さんに怒っていたので国木田さんをお呼びしました。其処で真実が判って・・・昨日、()()()が酒代の為に国木田さん名義でお金を借りた様でした。其れを翌日の今日まで返さなかったのでお怒りになっていたと云う事でした。・・・・・・二人で三時間ほど説教されました。」

 

 

 国木田に続き、谷崎が顔が疲労に染まっている訳を話した。

 六丁目のお爺さんと云えば金の亡者の転生体と云われるほど吝嗇(ケチ)で、お釣りの額を五円間違っただけで二時間説教したと云われ、地元民から恐れられている人だ。

 

 

 「然しだ。()()()はやるべき仕事はきちんとこなしている。腹立つほど頭が良いから仕事の要領はいい。依頼の解決についても()()()の尽力の甲斐あって評判はいい。・・・だが。」

 

 「八さんの云う通り、()()()()が探偵社に(もたら)した利益は大きい。今や、探偵社に無くてはならない存在になっているのも確かだ。・・・だが。」

 

 「「もう我慢の限界だ!!」」

 

 

 八幡と国木田が声を揃えて云い放つ。

 谷崎は声こそ出さなかったものの頷いた。他の調査員は可哀想なものを見る目で彼らを見つめた。

 

 

 「此処に『DOF作戦』の決行を宣言する!」

 

 

 八幡の宣言と共に何故自分たちが集められたのかを敦たちは理解した。此の作戦に加担しろと云われているのだ。

 

 

 「谷崎、説明を。」

 

 「はい。太宰治に復讐を!作戦、(かしら)文字を取った略称『DOF作戦』は日頃の鬱憤を太宰さんに晴らすと共に太宰さんの性格の歪みを直そうと云う作戦です!!」

 

 「え、えぇ・・・谷崎さんノリノリじゃないですか。」

 

 「敦君。探偵社の流され屋である僕でも此の作戦は遂げたいときちんと意思を持っている。僕も再三、太宰さんに辛酸を舐めさせられて来たからね・・・今回は八幡さん込みでの作戦だ。成功確率は八割を優に越していると思う。」

 

 

 疲労に染まっている顔に笑みを浮かべる谷崎を見た敦は頬を引き釣らせる。

 静かに手を挙げた与謝野が八幡に疑問を呈した。

 

 

 「八幡。操心術の権化である太宰に作戦を練るのかい?策を弄した処で看破される様な気がするンだが・・・」

 

 「あぁ。俺は頭脳と悪巧みで太宰の上にいけるとは思っていない。其れは敦の入社試験で判った。未だに俺は太宰が行った籤のネタが判っていないしな。考える度にアイツの若気(にやけ)顔が脳裏を()ぎる。」

 

 

 敦の入社試験で国木田と谷崎が太宰を嵌めようと一策案じていたが、看破された挙句の果てに谷崎が陥れられると云う反撃を貰った。

 

 

 「あの・・・八幡さん。」

 

 「何だ敦。」

 

 「太宰さんに一泡吹かせようと云うのは判ったンですが、僕にとって太宰さんは居場所をくれた恩人な訳でして・・・叩いたり蹴ったりするンなら此の作戦には参加したくないなぁと。」

 

 「安心しろ。暴行は加えない。寧ろ、殴ったりしたら喜ぶだろうが。死ねて本望みたいな奴だろう?御前の先輩は。」

 

 「ハハハ・・・じゃあ何をするンです?」

 

 「「()()()()()()()()。」」

 

(うわぁ悪い顔・・・・・・。)

 

 

 味方の谷崎でさえ引いてしまう顔をした八幡と国木田は各々に作戦書と実行すべき内容が書かれた手紙を渡していく。

 目を通した調査員たちは目を見開く。そして考えが一致した。此の作戦はえげつない・・・と。

 

 

 「決行は明日。各自、役割を果たしてくれ。国木田、御前の役割が一番辛いと思うが・・・頼んだ。」

 

 「判っています。ですが亦とない機会ですから。あの阿呆の嫌がる顔を見れるのなら易いものです。」

 

 「トリは御前だ敦。頼んだ。」

 

 「は、はい!精一杯やらせて頂きます!」

 

 「よし、解散!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日《探偵社 社員寮》

 

 

 「太宰さーん。探偵社に行きましょーう。」

 

 「・・・・・・ふわぁぁぁ・・・むにゃむにゃ・・・賢治くん?」

 

 

 太宰は自身を呼ぶ声で起こされた。部屋の玄関の戸を開けると満面の笑みを浮かべた賢治がいた。

 

 

 「太宰さん宛に依頼があるそうです。出来るだけ早く解決して欲しいとのことでお迎えに来ました!」

 

 「私に依頼ぃ?誰から?然もこんな朝早くからぁ?」

 

 「えっと・・・若い女性の方だと八幡さんが云ってました。」

 

 「五分で支度するから待ってて。」

 

 

────五分後。

 

 

 「じゃあ行こうか。」

 

 「はい♪」

 

 

 二人は社員寮を出て、探偵社へ歩を進めた。

 太宰は欠伸(あくび)をしつつ、隣にいる賢治を見た。何となく怪しく思ったのだ。

 

 

 「あの太宰さん。」

 

 「なぁに?賢治くん。」

 

 「僕はもっと太宰さんと仲良くなりたいです!」

 

 「ど、どうしたの急に・・・」

 

 「或る本で都会の男性はこうしてもらうと嬉しいって書いてありました!」

 

 「へ?其れって何のほn・・・痛いッ!!」

 

 

 賢治は太宰の手を握って探偵社へ走り出した。

 太宰は顔を苦痛で歪めているのだが、賢治は前を見ているので知る由もない。

 

 

 「ミシミシ云ってる!!ミシミシ云ってるよ賢治くん!!手が手がぁぁぁ!!」

 

 「アハハ!聞こえなーい♪」

 

 「其の局面(シチュエーション)は女の子が手を引っ張ってくれる時のだよ!!イタタタタタタ!!」

 

 

 賢治の役割・・・(あらかじ)め自身は朝飯を抜き、太宰を探偵社へ連れてくる。手を繋ぐと尚、良い。どの様にするかは同封されている記事を読むと良い。

 

 賢治の手紙の中には女性用の雑誌の切り抜きが入っていた。

 

 

《♡男性と仲良くなるテクニック♡》

 

 1,まずは上目遣いで『仲良くなりたい』と云ってみましょう♪

 2,次に手を繋いで走り出しましょう♪ここで大事なポイントは返事を待たずに手を握ること♪勢いって大事だよ♡

 3,走り出したら目的地まで相手から何を云われても『聞こえなーい♡』で通すこと♪出来るだけ明るく、可愛い声を出そう♪

 

 

※ナオミが切り抜いてくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《探偵社 社内フロア》

 

 

 「太宰さんを連れて来ました♪」

 

 「助かった賢治。朝飯は机の上にある。・・・太宰、仕事だ。」

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぁい。」

 

 

 太宰は賢治に繋がれていた手を押さえながら入社してきた。もう既に涙目になっていたが八幡は気付いていないふりをして続けた。

 

 

 「地図に記した此処に行ってくれ。依頼人が待ってる。」

 

 「・・・比企谷さん。私を連れてくるだけなのに随分手荒な真似しましたね。」

 

 「まぁ朝早いからな。御前が逃げる可能性があったんで賢治に向かわせた。其れだけだ。」

 

 「・・・そうですか。では行ってきます。」

 

 「おう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《とある公園》

 

 

 「却説(さて)と・・・依頼人は何処だろう?」

 

 「あ、あの武装探偵社の方ですか?」

 

 「はい、其の通りです。麗しきお嬢さ・・・ん?」

 

 

 太宰の背後から声をかけた女性はセーラー服に身を包んでいた。其の後ろにはランドセルを背負った少女の姿があった。

 

 

((いや)、若過ぎる!!心中頼めないじゃないか!)

 

 「朝早くからすみません。光代(みつよ)と云います。後ろに隠れているのは妹の絵都(えと)です。ほら、挨拶。」

 

 「絵都・・・です。宜しく、お願い・・・します。」

 

 「うん。宜しくね絵都ちゃん。私は太宰だ。」

 

 

 太宰は万人の女性に振り撒く笑みを少女に向ける。絵都は少しだけ安心した様で釣られて笑みを零した。

 

 

 「其れで光代ちゃん。依頼とは何かな?」

 

 「えっとですね・・・・・・私たちの通学路に一寸(ちょっと)怖いのがいまして・・・」

 

 「怖いのとは?」

 

 「通る度に鋭い眼光で睨んでくるんです。時には近づいてきたりして・・・まるで私達を襲おうとしてるみたいに・・・妹は時々怖くて泣いてしまったりして・・・」

 

 「何だって!?こんな未だ成長途中の可憐なお嬢さんたちに何てことを!!許せない!光代ちゃん、絵都ちゃん私に任せたまえ!」

 

 「あ・・・ありがとう・・・・・・」

 

 「有難う御座います!其れで依頼料の方なんですが・・・」

 

 「(いや)、要らない。其のお金は君たちがより、将来健気で美しい女性になる為に使うと善い。」

 

 

 太宰が豪語すると安心した様に二人は笑みを浮かべた。

 

 二人は太宰を問題の場所へ案内し始めた。太宰は二人を護ろうと静かに闘志を燃やした。

 

 

 「あの角を曲がったところに有る家が・・・」

 

 「成程。あの家が・・・君達は此処で待っておくと良い。私は様子を見てこよう。」

 

 

 太宰は慎重に足音を立て無いように家へ近づいた。朝早い事もあって人の気配はない。

 

 

(若しストーカーであるのならば取るべき手段を取らねばならない。彼女たち姉妹の安全は私が守らねば。)

 

 

 太宰が決意を新たにしていると、何ものかの気配を感じとり躰を硬直させた。息を潜ませ周囲を探る。

 

 

 「バウッ!!」

 

 「うひゃあッ!!」

 

 

 大きな音に驚き尻餅を着いた太宰は音源の方向へ首を向けた。

 其処には体長が一(メートル)近い大型犬がいた。太宰を()()()()()()()()()()。太宰は顔色が真っ青になる。

 

 

 「其の“犬”です!何時も私たちを睨んできて・・・どうにかして下さい!お願いします!!」

 

 「い、犬・・・・・・・・・・・・・・・最ッ悪。」

 

 

 太宰は其の考えに至らなかった事を後悔した。美少女に鼻を伸ばしていた自分を苛んだ。

 

 太宰治は大の()()()である。

 

 だがらと云って依頼を放棄する訳にはいかない。美少女二人に依頼され、護ってみせると豪語した今、尻尾巻いて逃げるのは格好悪いこと此の上ない。

 

 

 「バウッバウッ!!」

 

 「い、威勢がいいね。・・・良いだろう。人間より余程難敵だが私の力を見せてあげよう。だから近寄らないで。」

 

 「グルルルルル・・・」

 

 「待つんだ。私は危害を加える心算(つもり)は無いンだ。彼女達を安全に通らせてあげたいだけなのだよ。」

 

 「グルルルルルル・・・」

 

 「私と雌雄を決したいのは判った。だが今では無いのだ。・・・ねぇ、本当に待ってくれない?」

 

 「バウッバウッ!!」

 

 「ギャァァァァ!!」

 

 

────────。

 

 

 「此の犬は君たちとじゃれ合いたいだけらしい。ほら見給え。此の懐きようを。」

 

 「あ、あの太宰さん・・・顔引きつってますけど・・・」

 

 「かっこ悪い・・・」

 

 「何を云ってるんだ光代ちゃん、絵都ちゃん。私は此の犬と相互理解したのだ。・・・ねぇ、舐めるのやめてくれない?顔がベットベトなのだけど。」

 

 

 太宰は犬に顔面を舐められていた。

 其の光景はもう二人の間に切っても切れない絆が存在するのだと豪語できる程だ。変わらず、太宰の顔は真っ青だが。

 

 光代と絵都は太宰とじゃれている犬をゆっくり撫でた。最初は恐る恐るだったが慣れてくると優しくじっくり撫でた。

 

 

 「之で依頼は・・・へぶッ!!」

 

 「もう、こそばゆいよぉ〜」

 

 「太宰さん。有難う御座いました。」

 

 

 犬は太宰を突き飛ばし、光代と絵都とじゃれあい始めた。其の光景はまるで()()()()()()()()()()様に思わせた。

 

 学校に遅れないようにね、と太宰は二人に優しく諭して探偵社へと歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《探偵社 社内フロア》

 

 

 「ただいま・・・帰りました・・・・・・ゲッ」

 

 「ん?」

 

 

 場所は変わり探偵社。

 太宰は二人の姉妹の依頼を終えた後、探偵社へ戻った。社内に繋がる扉を開くと目の前には書類整理をしている国木田の姿があった。

 国木田は書類整理を一度打ち切り、扉の前で固まっている太宰の元へ歩き出した。

 

 

 「あ、あの国木田君。六丁目のお爺さんのことなんだけど・・・」

 

 「大丈夫だよ。太宰()()。」

 

 「へ?く、国木田君?」

 

 「其れよりお仕事お疲れ様。今からお茶を入れてくるよ。太宰()()。」

 

 「・・・・・・太宰・・・・・・・・・・・・くん?」

 

 

 太宰は唖然とした。

 未だに目の前の光景が信じられない。若しかしたら先程の犬の所為(せい)で異世界にでも飛ばされたのでは無いのかと自分を疑った。

 

 コト、と自分の机にお茶が置かれる。国木田はお盆を持ったまま其の場から動かない。

 

 

 「い、頂きます。・・・・・・美味しい。」

 

 「其れは良かった。お口にあったようで嬉しいよ。」

 

 「ね、ねぇ国木田くん。」

 

 「何かな?」

 

 「変な物でも食べた?」

 

 「食べてないよ。何時も健康的な生活を送っているからね。ファストフード何て食べないよ。」

 

 「うん。其処は何時もの国木田君だ・・・。」

 

 

 太宰は国木田が淹れてくれたお茶を啜りながら黙考した。どうして此の様な国木田が出来てしまったのかを。()()()()()()()()()がどうして出来てしまったのかを。

 そして一つの結論へ至った。

 

 

 「国木田君。疲れてる?」

 

 「疲れてないよ。其れに疲れていても依頼を終えた()()()()()()()()()太宰()()の前ではとてもじゃないけど云えないよ。」

 

 

────グサッ。

 

 

 「グハッ・・・国木田くん。今日は帰って寝た方が良い。」

 

 

 自分を卑下する国木田に太宰は国木田の()()()()()()()催促した。

『人間失格』。太宰が至った答えは何らかの異能の干渉が有り、国木田が優しくなったと云う事だった。・・・然し。

 

 

 「有難う太宰()()。でも大丈夫だよ。早く()()()()()()()()()()()()()()いけないから。太宰()()は寛いでいてよ。」

 

(解除されてない?真逆、抑々異能に掛かってないのか・・・ん?溜まった仕事?)

 

 「溜まった仕事って・・・」

 

 「太宰()()が溜めた仕事だよ?」

 

 「ご、御免!!私がするから!国木田君は休んでて!」

 

 「君が活躍して私が書類を書く。パートナーなんだから之くらいは任せて。」

 

 「今、理由が判ったよ!過労で頭がおかしくなってたんだ!私の所為(せい)だね!御免、国木田くん!!」

 

 

 太宰は国木田から書類を奪おうとした。

 だが頑なに国木田は太宰に仕事を渡そうとしない。国木田は困った顔して太宰を宥める。

 

 

 「太宰()()。気持ちは嬉しいよ。僕は大丈夫だから。」

 

 「大丈夫じゃない!!(いや)だ!こんな優しい国木田君は厭だ!!元に戻って!!」

 

 「矢っ張り、太宰()()は優しいね。」

 

 

────グサグサッ。

 

 

 「痛い!心が痛い!!お願いだから元に戻ってよ国木田君!怒って罵ってよ!私、ツッコミが居なきゃ駄目だよぉ〜・・・・・・」

 

 

 太宰の心に傷が刻まれる。

 国木田が戻って欲しいと目に涙を溜めて懇願するが国木田は優しい笑みを浮かべたままだ。

 其の時、探偵社の扉が開き、敦が鏡花と共に帰って来た。

 

 

 「ぎい゙でよ゙敦君!国木田君が・・・国木田君が・・・・・・」

 

 「ど、如何(どう)したンですか?太宰さん。」

 

 「国木田君が私に優しいんだ!!何を云っても微笑むだけで怒ってくれないンだよ!言葉の返しが優しさに溢れてるンだよ!」

 

 「え、えぇ・・・・・・」

 

 

 上司の泣き顔に困る敦。

 鏡花は其の光景を、しっかり者の弟に泣き付く駄目な兄の図と見た。だからと云って何もしないが。

 

 

 「あのですね太宰さん。」

 

 「グスン・・・なぁに敦くん。」

 

 「之を受け取ってくれませんか?」

 

 

 敦は太宰に花束を差し出した。

 (ピンク)の薔薇に同じく(ピンク)のガーベラ、白のダリアに小さな花が幾つも付いたかすみ草。

 太宰は驚愕に目を見開いた。

 

 

 「僕の気持ちです。之らの花は鏡花ちゃんと与謝野女医(せんせい)が選んでくれたんですよ。僕だけじゃ判らなくて。」

 

 「き、君まで私に優しくするのかい?」

 

 「善い機会だと思いまして。何時も御世話になっている御礼です!」

 

 

────グサグサグサッ。

 

 

 「グフッ・・・あ、敦くん・・・・・・」

 

 「(ささ)やかですけどプレゼントを贈りたいと思いまして。」

 

 

────グサグサグサグサッ。

 

 

 「此の花たちの共通する花言葉は『感謝』です。何時も有難う御座います!!太宰さん!」

 

 

────グサグサグサグサグサッ。チーン。

 

 

 云われ慣れない言葉を羅列された太宰は其の場で倒れ伏した。

 次の瞬間飛び上がり、手を組んで空へ祈った。

 

 

 「あぁ神よ!私が悪かったのです!!日頃、仕事を真面目にして無いくせに先輩ヅラして後輩に仕事を押し付けたり、同輩のパートナーの仕事を増やしたりして性格を変えてしまいました!!」

 

 

 

 

 

 「────仕事を真面目に取り組むと誓いますから皆を元に戻して下さいッ!!」

 

 

 

 

 

 「仕事を真面目に取り組むと・・・そう云ったな?」

 

 「へ?」

 

 

 太宰が声のした方に振り向くと国木田と八幡が悪い顔で微笑んでいた。

 其処で太宰は(すべ)てを悟った。そして再び地面に倒れ伏した。

 

 

 「そうか・・・之は(すべ)て比企谷さん、貴方が仕組んだンですね・・・」

 

 「冷静になった様で何より。」

 

 「最初の賢治君、そして光代ちゃんと絵都ちゃんの依頼で私に痛い目を合わせて、探偵社で国木田君と敦君が私に優しく接する。通常の数倍の優しさが私に染み渡る訳だ・・・・・・素晴らしい嫌がらせですね。」

 

 「ハッ。因みに気付いていただろうが光代さんはナオミの学友だ。演劇部に所属しているらしい。」

 

 「通りで・・・あの犬も光代ちゃん達の飼い犬ですね。やけに人懐っこい犬でしたから。」

 

 「其の通りだ。」

 

 「・・・国木田君のアレは演技かい?」

 

 「演技だ。常に寒気がしていたが貴様の困り果てる顔を見ただけで十分だ。今夜は久し振りに深い眠りにつけそうだ。」

 

 「・・・敦君は?」

 

 「え、えっと八幡さんに作戦に誘われたのは本当です!でも指令は『二人に買ってもらった花束を渡せ』としか書いてなくて・・・・・・だから!あの気持ちと言葉は本当です!」

 

 

 敦の言葉に太宰は言葉に詰まった。

 探偵社内が優しく温かい雰囲気に包まれる。八幡も、国木田も静かに笑っていた。

 

 

 「太宰、御前まさか・・・泣いて」

 

 「あーもう悔しいなぁ!いつか比企谷さんに復讐してやろっと。」

 

 

 太宰は何時もの調子を取り戻して万人を虜にする笑みを浮かべた。口を開きかけた国木田も肩をすくめて口を閉ざした。

 

 

 「では仕事に戻るぞ。太宰、自分で仕事を真面目に取り組むと云ったのだからきちんとこなせよ?」

 

 「判ってますよ比企谷さん。国木田くん、仕事は何からこなしたら良いかな?」

 

 「六丁目の爺様にお金を返してこい。」

 

 「え?」

 

 「聞こえなかったか?お金を返してこいと云っている。貴様が俺名義で借りた金だ。」

 

 「敦君。相談があるのだけど。」

 

 「貴様が行って来い!!」

 

 

 

 

 探偵社は今日も平和である。

 

 

 

 

 




番外編終わりました。いかがでしたか?

太宰をいじめる為に国木田を壊し、敦の純粋な優しさをぶつけてみました。太宰の目から零れたのは・・・なんでしょうね。

因みに谷崎は光代たち姉妹の交渉に当たりました。それとナオミに光代たちを紹介してもらうために動きました。


「ナオミ、作戦の為に君の友達に手伝って欲しいんだけど。」

「・・・女性ですか?」

「うん。お願いしていいかな?」

「お兄様。手を出さないと誓いますか?」

「誓うよ。ナオミの大切な友達に手を出すわけないじゃないか。」

「私より綺麗でも?」

「何云ってるのさ。ナオミより綺麗な女性なんて居ないよ。」

「お兄様♡!!」


なんて会話があったり。其の後、光代と仲睦まじく話す兄を見て嫉妬の炎に燃えた妹を宥めたり。
まぁきちんと谷崎くんも活躍してます。




それと1つ謝罪を。

私は第三章のプロットを現在練り直しています。
理由は八幡が想像以上に暴れたから。テンションhighにして書いたら駄目だね。大変なことになる。

すみません。投稿はかなり遅れます。早くて三月。それぐらい時間を貰えたらな・・・と。大学の宿題やら小論やらに追われてるという理由もありますが。

では第三章にお会いしましょう。感想、評価お待ちしております!!


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