和を嫌い正義を為す   作:TouA(とーあ)

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色々書きたいことはありますが(主にアニメ)

えぇと、ボランティアが忙しくて年内に執筆が難しい状況になりました。申し訳ありません。1週間あって1話が限界かなぁと。

なので活動報告でアンケートを取りたいと思います。案が四つ程ありますので、それで判断してくれたらいいかなぁと。

まぁまずは本編をどうぞ。


呼吸

 AM9:30《武道場》

 

 

「ッッ!! …………ハァハァ……」

 

 

 現在、武道場には大の字で息切れ切れの青年と、其れを息を切らすこともなく見下ろしている青年がいた。武道場の端では眼鏡をかけた青年が正座をして黙祷している。

 

 

「国木田から基礎は教えたと聞いていたが……全然なって無いな。御前如きなら目を瞑っても勝てる」

 

「ハァハァ……其れは、流石に……」

「小僧。八さんが仰っているのは事実だ。俺はそんな芸当出来ないが八さんなら出来る……俺の苦い思い出だ」

 

 

 大の字になっているのは敦。見下ろしているのは八幡。正座し開目して発言したのは国木田だ。

 敦と八幡は9:00から武道場へと入り、国木田は遅れて入って来た。国木田が遅れた理由は入社して来なかった太宰の捜索に時間を使った為であった。

 敦と八幡は怪我をしない程度にほぐした後、即試合を開始した。理由は普段の戦闘に躰をほぐしたり、鍛練する時間などないからである。

 

 

「もう一本、お願い、します」

「……はいよ」

 

 

 敦は此の時点で三回投げられていた。其れも殆ど八幡に触れることなく、である。だが目は死んではいなかった。まるでなにかに執着している様に。

 

 敦が前屈みに足を滑らせる。八幡は宣言した通り()()()()()

 其れを見た敦は内心動揺したが速度(スピード)を緩める事はせず、八幡に突進した。

 

 

 八幡は意識を呼吸に集中する。自分を中心に球形を作る心象(イメージ)を形成し、自分の意識と感覚を外へ広げる。

 

 

 敦は咄嗟に八幡の正面ではなく左側へ跳ねる様に飛んだ。殆ど反射だった。其れも敦の反射ではなく、自分の内側にある何かの反射だった。危険を察知する野生の、()()()()()

 八幡は其の行動にも微動だにしなかった。唯、物が水面(みなも)に落ちた時、波紋が広がる様に、意識を、感覚を、広げる様に研ぎ澄ませた。

 敦は八幡の左方に跳ねた後、地面を蹴り右拳を八幡の側頭部に放った。八幡の手はダラリと下がっている状態。間違い無く入る……筈だった。

 パシッ、と鈍い音が立つと同時に敦の右拳は八幡の左手の手刀に依って防がれていた。敦の顔が驚愕に染まる。

 八幡は右の掌底を敦の鳩尾(みぞおち)に的確に叩き込む。形容し難い一撃が敦を襲った。

 

 

「グアッ!? ウゥ…………」

 

 

 敦は込み上げてくる胃液を何とか飲み込ンだが、あまりの一撃の重さに其の場で(うずくま)った。

 

 

「ふぅ……久し振りだと疲れるな。“識”」

「八さん、次は俺と善いですか?」

「あぁ」

 

 敦はズルズルと躰を引き摺りながら隅へ。正座から起立した国木田と八幡の間合いは3(メートル)弱だった。

 

 

「シッ!」

 

 

 国木田は気合と共に息を吐き出し、国木田の長身による巨体が一個の砲弾と化して八幡に襲い掛かった。

 八幡は敦の時とは違い、目は開いている。だが研ぎ澄まされた意識と感覚だけは敦の時と同等だった。(いや)、先程以上だ。

 

 敦は二人の戦闘を見ていた。国木田の霞んで見える猛攻を八幡が難なく躱している戦闘を。紙一重ではなく、余裕を持って八幡は躱していた。

 

 国木田の顔に焦りが見え始めると八幡が反撃に出た。八幡の猛攻に依る突き、右、左、右、左を国木田は外側に弾いて防ぐ。八幡の攻撃を捌き切った国木田は一歩踏み出し腰の入った反撃(カウンター)を八幡に放つ。

 

(捉えた!)

 

 国木田と見ていた敦がそう確信した瞬間、八幡の躰は国木田の躰をすり抜けていた。

 八幡の右手が国木田の右袖の肘の上辺りを摑む。国木田に引っ張られる形で八幡の躰が止まり、国木田が回転して八幡に脇腹を見せる。

 其処へ音も無く踏み込んだ八幡の右肘が突き刺さる。

 

「ぐあっ!?」

 

 国木田は呻き声をあげ、二歩三歩とよろめいた。其の後、膝を付き目の前に立つ八幡を見据えた。国木田は目の前に立つ八幡が未だ届かぬ山の様に感じた。

 

 

「うん。善いンじゃねえの? 焦りさえ無ければそこそこ善い線行ってたぞ」

「ハァハァ……有難う……御座い、ます……」

「敦。今の試合を見て如何(どう)思った?」

如何(どう)、と云われましても……そうですね。跫音(あしおと)が殆ど無い試合だと思いました」

 

 おずおずと答える敦。

 

「……他には?」

「えぇ……呼吸が、其の……ええっと何て云うンでしょう? 呼吸の仕方が僕と違うと思いました」

「良し。御前と違うのは俺と国木田は始まる前に二人共、呼吸を深く行っていたと云うこと。浅い呼吸は視野を狭くし手足を鈍らせる」

「はい! 判りました! 有難うございます!」

 

 敦が返事をすると八幡は少し嬉しそうに笑った。まぁ……シゴキがいがあると思っただけなのだが。

 

「国木田」

「ハァハァ、はい!」

「熟練の武道家、剣士でも何でもそうだが彼等の戦いでは刹那の間に多種多様な読み合いが繰り広げられる。俺よりも戦闘経験が少ない御前が先に読み合いを止めてどうする? だから俺の単純な攻撃に反応するンだよ。最後の俺の左の突きが何だったのか判るか?」

「……(わざ)と隙を見せて俺の反撃(カウンター)を誘導した。違いますか?」

「其の通りだ。判っているのなら問題ない」

「有難うございます」

 

 

 国木田は立ち上がると同時に敦が八幡に問うた。

 

「八幡さん。先程云っていた“識”とは何ですか?」

「仏教の五蘊(ごうん)の一つだ。外界の対象を識別し,認識する心の作用の事で“時任(ときとう)流”の原点。上手く云い表せないが自分の意識と感覚を外へ広げる様なモノだと思って善い」

「だから目を瞑っても僕の動きが判ったんですね……」

「まぁ補足すると先程の試合では“其れ”しか使って無い」

 

 国木田の補足に敦が声を上げる。

 

「えっ!?」

「まぁ、驚くのも無理はない。八さんの使われる“時任(ときとう)流”は幾つかの型が有るらしいが俺も数を見たことは無い」

「其りゃそうだ。殆どが……そのなんだ、物騒な技ばかりだからな。まぁ後は国木田にしごいてもらえ」

「ハイ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 AM10:30《武装探偵社》

 

 

「太宰さんが行方不明!?」

「あぁ。電話も繋がらんし、下宿にも帰っていないようだ。全く彼奴(アイツ)は……まぁ多分川だろうな」

「また土中では?」

「また拘置所でしょ?」

 

 武道場から戻った敦は武装探偵社に戻ると国木田から衝撃の事実を伝えられた。然し探偵社の調査員の反応は呆れ半分面白半分だった。(ちな)みに敦、国木田、賢治、乱歩である。

 

 

「マフィアに暗殺されたとかあるかも知れないじゃないですか!」

「阿呆か。あの男の危機察知能力と生命力は悪夢の域だ。あれだけ自殺未遂を重ねてまだ一度も死んでない奴だぞ? 己自身が殺せん奴をマフィア如きが殺せるものか」

「ですが……」

「ボクが調べておくよ」

 

 そう云って医務室から出てきたのは以前の事件で重傷を負った谷崎潤一郎だった。与謝野晶子による“異能”の治療の賜物だった。

 

「谷崎……何度解体された?」

「………………六回」

「「「あー……」」」

 

「敦君……探偵社で怪我だけは絶ッ対しちゃ駄目だよ……」

 

 谷崎はガタガタ震えだした。理由を察している国木田、賢治、乱歩は谷崎の肩に手を置いたりして慰めているが、敦だけは何故与謝野の治療で谷崎が顔を青ざめいるのか判らなかった。

 

「マズいと思ったら直ぐ逃げる。危機察知能力は必要不可欠だよ? 敦君。たとえば……今から十秒後」

「?」

 

 乱歩の忠告に敦は疑問で答えた。すると谷崎が出てきた医務室から欠伸(あくび)をしている女性が一人、口に手を当てて出てきた。

 

「ふァ〜あ……寝過ぎちまったよ」

「与謝野さん、お疲れ様です」

「あぁ、新入りの敦だね。八幡のシゴキは如何(どう)だったかい?」

「大変でした。でも頑張ります。強くなる為に」

 

 決意の瞳に与謝野は少し口角を上げた。

 

「そうかい。怪我は?」

「してませんけど……」

「チェッ。ところで、誰かの買い出しの荷持ちを頼もうと思ったンだけど……アンタしか居ないようだねェ」

「えっ!?」

 

 敦が振り返ると其処は既にもぬけの殻だった。国木田、谷崎、乱歩、賢治、誰一人としていなかった。何時の間にか全員忽然と消えていた。

 

(危機察知能力ってこれ!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《とある裏通りにある古びた本屋》

 

 

「やぁ久し振りだねヤハタくん」

「お久し振りです。梶井さん」

 

 声をかけた男“梶井基次郎”は年は三十手前。襟に幾つものバッジをつけたボロボロの白衣を纏い、鶯色(うぐいすいろ)の長いストールを両肩掛け巻きにしている。靴は下駄。其の様な格好から少し老けて見える。

 

 返事をした青年“ヤハタ”は黒の背広(スーツ)に黒の山高帽(ポーラーハット)。青年は先客の男性に脱帽し返事をした。

 

「実験と伺いましたが……何の実験でしょう?」

「其れは着いてからのお楽しみサ♪ もう少ししたら向かおう。“檸檬爆弾(レモネード)”は大量に持って行くよ」

「承知しました」

 

 鼻唄混じりに楽しげに話す男。

 青年は追うように歩を進める。

 

「あっ! そうそう、ヤハタくん。今回は協力者が居るから」

「協力者……ですか?」

「そっ! “35人殺し”! 聞き覚えは?」

 

「其れは有りますよ。六月(むつき)で35人殺した名の知れた暗殺者でしょう? 会った事は有りませんけど」

 

「芥川君から貸してもらってね。今は標的(ターゲット)を尾行してもらってるよ。ボクも初めて会った時は可憐なお嬢さんで吃驚(ビックリ)したよ」

「そう……ですか。芥川め、面倒なことを……」

「準備が出来たら向かおうか。ヤハタくん♪」

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も短いですね。お読みいただき有難うございます!

さて、前書きでも書いたようにボランティアで年内で時間が取れず、執筆活動がままなりません。

なので活動報告でアンケートを取りたいと思います。


1,探偵社による忘年会(乱歩主催)

2,織田作、生存ルートによる子供たちとXmasパーティー。(間違い無く時期外れ)

3,敦・鏡花、谷崎・ナオミ、八幡・晶子の3カップルによる仕事。(着物屋)

4,本編

5,55minutes


一つ選んで頂けると有難いです。年内最後の投稿をどれで締めくくるか読者さんが決めてください!

リンクをはっておきますね。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=136150&uid=106761


ではよろしくお願いします!

一票も入らなかったら・・・よいお年を!来年もよろしくお願いします!ってなります。おそらく。

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