和を嫌い正義を為す   作:TouA(とーあ)

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少し間が空いて申し訳ありません。

番外編で力尽きちゃって。

今回超長いです。いろいろ要素ぶっ込んだら13000字。俺が未熟なせいで大変な文字数に・・・

では『蒼の使徒編』最終話どうぞ!!




使徒

昨日(さくじつ) 《白い図書館改め───“異能特務課”》

 

 

『あぁ。取引に来た』

 

『取引・・・ですか。大災禍(カタストロフ)と呼ばれた貴方が随分と弱腰ですね。まぁ聞くだけ聞きましょう』

 

『其の二つ名で呼ぶンじゃねえよ・・・。まぁいい。此方から提供するのは“檸檬爆弾(レモネード)”の爆薬成分。及び“輸出ルート”だ』

 

『ッ!?各国が血眼になりながら成分を調べている“ポートマフィア”の爆弾ですか。一体どうやって・・・悪くは有りませんね。良いでしょう。其方の要求は何です?』

 

 

 

『俺の要求は二つ。一つ目、此の一連の事件の間、御前たちが使える()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。二つ目、ここ一ヶ月の間に横浜に入った反乱者(テロリスト)の情報を提供すること。関係者も含めてな』

 

 

 

『・・・判りました。比企谷さんの云う其の事件は・・・』

 

『あぁ。“蒼王事件”の続きだ。自身が悪を裁くか、悪に悪を裁かせるか、と云う手口が同じだからな。加えて今回は()()()()()()()()()()事も目的に入ってやがるから、一層タチが悪い』

 

『では噂されていた()()()の存在ですか・・・』

 

『恐らくな』

 

 

 《蒼王》に共犯者が居るのではないか、と云う推測は以前から有った。余りにも犯行が鮮やか過ぎたからだ。だが軍警、市警をはじめとする当局は《蒼王》には共犯は居ない、と云う結論を下した。何故か。犯罪者が徒党を組むのは概ね政治的思想の共有か金銭の山分けが動機だからだ。一連の《蒼王事件》にはどちらも無い。

 

 

『其れでも起こった。犯罪に依る悪の断罪。今迄、何も起こさなかったのは策略に依るものだろう。策略、此の場合では根回しと云うのが妥当だろうがな』

 

『其れで犯人の目星はついているンです?』

 

『・・・あぁ。だが捕らえる事は出来ない。何故なら()()()()()()()()()()()()。此の国の法律では起訴さえ出来ない。だから敢えて()()()()事にした』

 

『貴方は…。直ぐに資料をお持ちしますので外で待っておいて下さい』

 

『頼む』

 

 

 

 

 

 

《一般図書館・駐車場》

 

 

 

 

プルルルル・・・ピッ

 

 

 

 

『あぁ俺だ』

 

『比企谷調査員ですか?国木田調査員から連絡がありましたよ!場所は横浜港の海辺、河口の(ほとり)です!』

 

『報告、感謝する』

 

『何を云って居るんですか!臓器売買が上手くいっているのは()()()調()()()()()()()()()()()()()!其れに選別方法や仕方など教えてくれたのは()()()()()()()()()!!御陰で善い収入源になってますよ!』

 

『・・・そうだな』

 

(俺にはそンな記憶無いけどな・・・。)

 

『では又、後ほど!』

 

『ん』

 

 

 八幡は電話を切った後、息を吐いた。そして一つの前進に拳を握った。少しして先程話していた、大学教授の様な朽葉色の背広(スーツ)に丸眼鏡の青年が歩いて来た。分厚い資料を八幡に渡し、問うた。

 

 

『誰からです?』

 

犯人()からだよ。後輩たちは上手く動いてくれている様だ』

 

『・・・比企谷さん』

 

『何だ?』

 

『太宰君は・・・』

 

『・・・彼奴は昨日、毒茸(ハッピーキノコ)を喰って阿呆に拍車がかかっていた』

 

『そう、ですか・・・。元気そうで良かった』

 

『じゃあな・・・安吾』

 

『お気を付けて。比企谷さん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 国木田、太宰、敦は国木田の自家用車に乗っていた。理由は“江戸川乱歩”の推理で“アラムタ”が設置した爆弾の場所が判った為である。まぁ製造者の“アラムタ”は“蒼の使徒”の策略に依って口封じの為に消された訳だが。

 

 爆弾の場所は───石油保管施設(コンビナート)

 

 乱歩は初め、『釣具屋さん』と云った。『釣具屋』だけでは悪辣さに欠けるが“蒼の使徒”の狙いは別にあった。『釣具屋』は石油施設の近辺だったのだ。

 横浜は日本有数の港湾都市で日本の燃料輸送の一大拠点だ。広大な敷地には石油や天然瓦斯(ガス)を保管している。其れ等は関東一円の産業を支えてある。

 つまり、近辺で爆発が発生し引火した場合、爆炎が湾岸全域に広がるのは明白だった。何日も消えぬ国内史上最大の工業火災になる事を想像するのも容易だった。人的被害もさることながら、其れよりも国内経済に与える衝撃は計り知れないだろうと誰でも予測がついた。

 此の災厄級の犯罪を簡単に起こす方法が、車に爆弾を乗せて石油施設の近辺に放置する事だった。

 

 

プルルル・・・ピッ

 

 

『太宰か?』

 

「えぇ。如何(どう)したンです?比企谷さん」

 

『旧国防軍施設に爆弾の通信機を運び込ンだ輩が居る事が判明した。爆弾の方は俺が向かう。御前達は其方(そちら)へ向かってくれ』

 

「判りました」

 

『其れと太宰。タクシーの運転手に一度“人間失格”で触ったな?』

 

「えぇ。比企谷さんに云われた通り、触りました」

 

『そうか・・・訃報だ。軍警からの情報でタクシーの運転手が死んだ事が判った。死因は“アラムタ”と同じ。躰に無数の《00》が浮き出ていたそうだ』

 

「“異能”ですか・・・」

 

『そう考えるのが妥当だろう。御前が触った事により()()()()()()()()()()()()()()()()()()。考えられるのは強力な遠距離攻撃系の“異能”だ』

 

「恐らく条件は一度視認することでしょうね」

 

『あぁ。其方は頼んだぞ。俺は爆弾へ向かう』

 

「はい。国木田君!旧国防軍施設へ向かってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《旧国防軍施設》

 

 

如何(どう)やら当たりだった様だな!!行くぞ!!『独歩吟客』“閃光榴弾(フラッシュバン)”!!」

 

 

 旧国防軍施設に着いた国木田一行は機関銃(マシンガン)と云う手厚い歓迎を受けた。国木田の自家用車の陰に隠れて凌ぎ、国木田の“異能”に依って道が拓けると、太宰と敦は二階へ駆け出した。国木田は片手に愛銃“ベレッタ92F”を装備し、交戦した。

 何故、太宰と敦が二階へ向かったのか。理由は若し八幡が爆弾の解除に間に合わなかった場合の保険だ。

 

 

「元気で素敵だよ、君。さぞかし良い数字を持っているんだろうねェ」

 

(なに!?)

 

 

 小銃撃部隊を制圧した国木田は太宰達の後を追っていた。

 突然、不快感が襲い、膝をついた国木田は違和感の源である服の袖を捲った。皮膚には数字が生じていた。其の数は《39》。確認すると同時に国木田の目の前に金髪痩躯に擦れた紅の頭巾衣(パーカー)を被った青年が現れた。

 

 

「動くな!俺は武装探偵」

 

 

 云い切る事も出来ず、国木田は横殴りの不可視の力に吹き飛ばされた。地上に叩きつけられ再び跳ね、壁に激突する。先程の衝撃で銃を手放してしまった国木田は為す術がなかった。

 

 

「銃は使わないよ?折角の大事な数字なのに使う訳ないじゃないか。(いや)だなぁ。もう一度数字を見てご覧よ」

 

「数字が減っている・・・真逆!」

 

「其の数字は毀損(ダメージ)を受ける度に減るよ。時間経過でもね。そしてゼロになれば・・・」

 

(此奴が太宰が云っていた遠距離攻撃系の異能者か・・・)

 

「御前が運転手とアラムタを殺した異能者だな?」

 

「うふふ、あははははは、其れ知ってるよ。探偵が云う奴だよね?あははは」

 

 

────此の異能者が敵の首領(ボス)だ、国木田は確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《旧国防軍施設・二階》

 

 

「旧式にも程があるよ、此の通信機!之は・・・制御(キー)がないと命令を変更できないのか!」

 

「太宰さん、操作出来ないンですか!」

 

「私には無理だね。残念ながら」

 

 

 太宰と敦が居る通信室は床材が剥げ、随所に錆が浮く古色蒼然たる代物だった。然し少しだけ残った酒の瓶と新調された扉の蝶番(ちょうつがい)から何者かが頻繁に出入りしている事が示されていた。

 太宰が通信機を弄っていると、太宰と敦の背後から影が差した。

 

 

「何を()て居る?」

 

 

 立っていたのは異国風の大男だった。褐色の肌に隆々たる筋骨。腕に椿の入墨。禿頭には幾筋も古傷が走っていた。

 

 

最重量(スーパーヘヴィ)級だね・・・敦君」

 

「・・・はい」

 

「行くよ!」

 

 

 二人は一斉に駆け出した。太宰が正面から、敦は素早い動作で後方に回った。

 大男は正面から向かってくる太宰に拳を振った。其の攻撃を見抜いていた太宰は後方に回避。大男の拳は木製の机に突き刺さり粉砕した。

 

 

「凄い腕力!荷運び業者に転職しなよ!」

 

「うぉぉぉ!!」

 

 

 太宰に気を取られた大男に敦は身近にあった酒瓶を手に取り大男の頭に振りかぶった。

 バリンッと云う鈍い音がした。大男は少しよろけたが持ち直し、敦に向かって低空回し蹴りを放つ。

 

 

「しまっ───」

 

「敦君!!」

 

 

 敦は反対方向の壁にまで吹き飛ばされた。大男は太宰の方向へ振り返りながら大きく一歩を踏み出し、鉤突き(フック)を放つ。

 

 

(はや)い!!」

 

 

 上体を逸らして回避した太宰だが、僅かに衣服が拳に巻き込まれ引っ張られて均衡を崩した。

 大男が其れを見逃す筈がなく、追撃で太宰の腹部に拳をめり込ませた。太宰は衝撃を殺せずくの字に折れ曲がったまま水平飛翔し、窓硝子(ガラス)に激突。

 大男は太宰に駆け寄り首を片手で絞めあげる。

 

 

「グッ・・・カハッ・・・」

 

「だ、太宰さんを離せっっ!!」

 

 

 敦は躰を震え立たせ、大男の背中に組み付いた。右腕を大男の首に回し、三角形にした腕の内側で相手の頚動脈を絞める。左腕を相手の首の後ろを押さえる様に回し腕を固定した。《裸絞(はだかじ)め》と呼ばれる技だ。

 だが・・・大男の首周りにある筋肉と脂肪が其れを不可能にした。

 背負われる形になった敦を大男は、(かぶり)を振る事により強制的に外し、宙に浮いた格好の的の敦を太宰を絞め上げている手とは逆の拳で鼻頭に裏拳を叩き込ンだ。

 

ボキッ

 

 不快な音ともに敦は吹き飛ばされた。襲った激しい鈍痛は孤児院を想起させた。敦の鼻は普通とは違う方向へ折れ曲がっている。

 

 

「ぐぅッ・・・」

 

「あ、あつ、し、くん・・・ウグ・・・」

 

 

 大男は其のまま太宰を割れた硝子に叩きつけた。

 

 

パリィィィン

 

 

 太宰は割れた窓硝子から階下の国木田を見た。全身に攻撃を受けた満身創痍の国木田が居た。

 太宰が叫ぶのと()()()()()()()()のは同時だった。

 

 

 

────視線が交錯する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《旧国防軍施設・一階》

 

 

 国木田は青年に向かって突進。銃を失った国木田は近接武術で制圧するしか無かった。

 青年は笑いながら後退する。国木田は相手を捕まえる必要がある為、迷わず前進した。

 青年が腕を掲げるのを見て国木田は急停止した。

 

 

(衝撃波が来る!)

 

 

 国木田は地面を横に転がり、青年の腕の射線から逃れた。・・・が。

 

 

「グッ!?・・・な、何故だ・・・避けた筈・・・」

 

 

 国木田の躰は後方に吹き飛ばされた。半回転し床に仰向けに倒れる。

 

 

「ぼくの力は数字のある人間を好きな方向に“加速”させるのさ。衝撃波じゃないンだ。だからこうするンだ!」

 

「ガッ!?」

 

 

 青年が振り下ろすのに合わせて、国木田の躰は地面に叩き付けられる。国木田からしてみれば重力が瞬間だけ万倍にも増した様な感覚だった。其れを何度も何度も繰り返され、骨が軋み、皮膚が裂けた。

 国木田の数字は《21》にまで減っていた。

 

 

「武装探偵社のお兄さんを殺して、上にいる二人を殺して、アラムタ爆弾が爆発して探偵社が面目を失えば仕事がしやすくなるなぁ」

 

「仕事・・・だと?」

 

「そうだよ?君たちの様な民間異能組織に怯えてこそこそ荷物を運ぶなんて御免だからね。堂々と臓器を買って、堂々と武器を売る。商売繁盛さ」

 

(臓器に・・・武器。此奴ら臓器密売組織(シンジゲート)か!)

 

 

 ポートマフィアが売り手とするなら、青年たちは買い手だった。臓器、化学兵器、更には犯罪者人材。裏社会に関わる違法商品を悉く扱う、闇の総合商社だ。

 

 

「《蒼王》の事件で学んだよ。武装探偵社の捜査力を舐めちゃいけない。ぼく達は慎重が売りだ。危ない敵は最初に潰す。商売の基本の基本だよ」

 

「武器商人からしてみれば無法地帯の横浜は美味しい市場だと云う事か・・・」

 

「其の通り。あれだけやられて未だ目が死んでないとはね。ダメ押しだ。ここに鍵がある。欲しいよね?」

 

 

 青年は衣嚢(ポケット)から薄い鍵を取り出した。小さく脆い、黄色く濁った鍵。

 

 

「欲しいならこうだ」

 

 

ポキッ

 

 

「な──」

 

 

 青年が力を込めて捩じると、鍵は音を立てて半ばから折れた。青年は嘲笑した。泥の煮立つ様な世界の終わりの様な嘲笑だった。

 

 

パリィィィン

 

 

 二階の窓硝子が割れる音が響く。国木田が其方へ目をやると殴られて傷だらけの太宰がいた。

 

 

 

 ────視線が交錯する。

 

 

 ○ ○ ○

 

 

「国木田君!!」

 

「太宰ィ!!」

 

 

 ○ ○ ○

 

 

 其れだけで(すべ)て諒解した。

 国木田は書き込んでいた手帳を破り、鉄線銃(ワイヤーガン)を素早く構えて太宰に向かって射出した。

 鉄線銃の鉤針は太宰たちの居る通信室の天井に突き刺さった。鉄線を巻きとり、国木田の躰が宙に浮いた。

 

 

 ○ ○ ○

 

 

「うぉぉ!」

 

 

 満身創痍の敦が立ち上がり、大男に向かってもう一度飛びついたのは太宰が国木田に向かって叫んだ瞬間だった。不意をつかれた大男は太宰の首を絞める手を緩めてしまった。

 

 

クソがっ(S h i t)!!」

 

 

 太宰は大男の手から逃れた後、窓枠を蹴って跳躍し、空中に躍り出た。

 空中を踊る太宰の視線が国木田に向けられる。

 鉄線に引かれ空中を疾走する国木田も太宰に目を向ける。

 

 両者の視線が交錯し、何かを対話し、また離れる。

 

 

 ○ ○ ○

 

 

 国木田が室内に踊り込み、見上げると・・・

 

 褐色肌の大男が国木田の後輩を片腕で持ち上げていた。敦の状態は・・・無惨の一言に尽きた。

 顔は原型をとどめておらず、鼻や頭からは血が止まること無く溢れでている。何度か大男の拳を防いだのか、両腕は青痣で腫れ上がっていた。若しかしたら折れているのかもしれない。

 

 

「小僧ォォォ!!!」

 

 

 国木田は大男に駆け出した。気付いた大男は敦を投げ捨て国木田に向かって拳を振り抜いた。

 

 大男は空中に飛ばされた。

 

 飛んだ勢いのまま壁に激突した大男は驚愕と当惑の表情を浮かべていた。何が起きたのか理解出来ないのだ。大男は直ぐ様立ち上がり、第二の拳を国木田に放つ。

 

 

「御前に構ってる暇などない!!」

 

 

 国木田は敵の勢いに逆らわず、躰を流しつつ相手の手首を取った。躰を斜めに引きながら、大男の肘を軽く支える。其のまま体重を後方に引き、大男を天井に激突させた。衝撃に大男の眼球は裏返った。

 国木田は其れを確認せず、投げ捨てられた敦のもとへ向かった。

 

 

「小僧!しっかりしろ!小僧!!」

 

「く・・・にき、だ・・・さ、ん?」

 

「死ぬなよ小僧!御前が死ぬなど俺の予定には無いからな!」

 

(死に・・・た、くな、い・・・死に・・・たく、な・・・)

 

「おい!意識をしっかり持て!」

 

(死ね、ない・・・生、き、る・・・生き、て・・・)

 

「小僧ォ!!・・・え?」

 

(生きて──やる)

 

 

 何処かで虎が吠えた。敦は其れに応えた。

 全身の痛みが反転し、血液が音を立てて逆流する。毛が逆立ち、筋肉が急激に膨張し、(すべ)ての細胞が燃え上がった。敦の躰が眩い光に包まれる。

 

 

「だ、だ、太宰ィィィィ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ○ ○ ○

 

 

「な、貴様は・・・」

 

「悪いねェ。君の相手は私だよ。」

 

 

 一階の旧国防軍施設に飛び降りた太宰は軽い足取りで青年へと近づいていく。

 

 

「何故だ!数字が・・・出ない!!“加速”も出来ない!!」

 

「・・・調査不足だね。私に異能は効かない。」

 

 

 口元に笑みを浮かべながら青年へと近付いていく太宰。青年は太宰に手を掲げるが太宰は全く頓着せずに歩み寄って行く。

 

 

「お、御前は一体!」

 

「五月蝿いよ。後輩が命を張って私を此方へ行かせてくれたンだ。話す暇も惜しい」

 

「ま、待て!」

 

「シッ!」

 

 

 気合いの入った太宰の拳は青年の顔面を捉えて振り抜くれた。衝撃に半回転した青年は白目を剥いて昏倒した。

 

 

「敦君、無事で居てくれ」

 

「だ、だ、太宰ィィィィ!!」

 

「く、国木田君?敦君は?」

 

 

 太宰が飛び出した、加えて国木田が通信室に入った窓から国木田が飛び降りて来た。国木田は躰を回転させ衝撃を緩和し、太宰の方へ顔を向けた。其の後・・・唸る猛獣の声が響いた。

 

 

 ヴオォォォォォ!!!!

 

 

 国木田と太宰は顔を見合わせ、一度頷いた。二人の顔は引きつっている。太宰も国木田に話を聞かずとも状況を把握した様だった。

 

 

「何でこンな事に成ってるの!?国木田君!」

 

「俺が知りたいわ!!頼んだぞ太宰!」

 

 

 ────“白虎”が二階から飛び降りる。

 

 

 地響きと共に“白虎”が国木田たちの前に着地した。圧倒的な存在感に国木田の頬に一筋の汗が流れた。太宰は依然見据えたまま、目線を外そうとしない。

 

 

 白い颶風(ぐふう)と共に“白虎”は太宰たちに襲いかかった。国木田は一歩下がり、太宰は“白虎”に手を掲げ、呟いた。

 

 

「“異能力”『人間失格』!!」

 

 

 太宰から放たれる光が“白虎”を包み込む。

 光が弾けると、其処には気を失っている青年が一人。

 

 

「心臓に悪いよ敦君。・・・外傷がない?」

 

「何だと?・・・傷跡も全く無いな。如何(どう)いう事だ?」

 

 

 “白虎”から人型に戻った敦は大男によってもたらされた傷、鼻の骨折、腕の青痣、皮膚の裂傷etc・・・(すべ)て無くなっていた。傷が修復したのでは無い。傷跡さえ残ってないのだ。

 

 

「一応、与謝野女医(せんせい)に診て貰うのが善いだろうな」

 

「そうだね・・・あ!国木田君!爆弾は!?解除までに時間が無いよ!」

 

「・・・爆弾?何を云っているンだ貴様。此処には俺たちは()()使()()()()()()()()()()()()()。太宰、頭でも打ったか?」

 

「え?・・・あ、(いや)、何でも無いよ。少し混乱している様だ」

 

(上手く解除してくれたンですね。比企谷さん)

 

「はぁ・・・全く御前は。軍警が来た様だ。小僧については後回しにするぞ。取り敢えず、一件落着だ」

 

「・・・そうだね。撤収しよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日《湾岸近くの小さな墓地》

 

 

 小さな墓がポツポツと斜面に並んでいる。国木田は墓の間を縫いながら歩き、墓の一つ、真新しい小さな墓の前で立ち止まった。

 献花し、手を合わせる。

 

 

「犠牲となった方のお墓参りですか、国木田様」

 

 

 澄んだ声に国木田が振り向くと傍らに白い和服姿の佐々城が居た。右手には白菊の花を持っている。佐々城は国木田の横に並び花を添えるとそっと目を伏せた。

 

 

「和服の方が似合う」

 

「喪服の方が善いのでしょうけど、生憎これしか持ち合わせがありませんので。・・・国木田様は何時も、仕事で関わった方が亡くなると、こうして墓前に献花されるのですか?」

 

 

 二人が来たのは、誘拐され、廃病院の地下で死んだ事件の被害者の墓だった。

 

 

「あぁ。──別に理由はない。そうすべきだと思ったから、そうしている迄だ」

 

 

 佐々城は肯定も否定もせず、ただ国木田を見て微笑んでいる。国木田は独り言のように続けた。

 

 

「初めて業務で死者を出した時には起き上がれぬ程泣き、仕事を無断欠勤した。だが今では涙1つでん。故に其の代替としてこうして墓参りすべきだと思っているだけだ」

 

「涙を流せば・・・死んだ方々は浮かばれますか?」

 

「判らん。おそらく浮かばれも救われもせんだろう。何をしても死者には届かん。彼らの時間は既に止まっている。俺達に出来る事は・・・ただ(いた)む事だけだ」

 

「・・・・・・残酷なのですね。国木田様は」

 

 

 佐々城の言葉に国木田は振り返った。何時の間にか、佐々城は瞳に涙を(たた)えていた。

 

 

「先般の話で私、一つ嘘をつきました。別れた恋人とは死別したのです。理想に燃える人でした。私は()の人の力になろうと尽くしましたが、私に愛の言葉ひとつ囁く事なくひとり()きました」

 

「そうか」

 

 

 国木田は間の抜けた相槌を打つ事しかできなかった。気の利いた慰めの言葉を掛けることなど出来なかった。

 

 

「死んだ人は卑怯です。国木田様の仰る通りです。死んだ人の時はもう止まっていて、今から何をしてもかの人は喜ばず・・・微笑みません」

 

 

 佐々城の頬を一筋、瞳が支え切れなかった大きな涙が流れ落ちた。

 

 

(俺は“理想”の実現の為ならば何だって耐えて来た。今も完璧な言葉、世界の万民が救われる完璧な救済は無いかと考えている。だが其の奮励も、一人の女性の涙の前にはあまりにも無力だ・・・)

 

「取り乱してしまいました。所用が有りますので・・・そろそろ失礼します」

 

「・・・あぁ」

 

 

 黙礼をして佐々城は去った。其れを何も云えず見送った国木田は横浜の風景を眺めた。ふと電話が鳴り、意識を移した。

 

 

「太宰か」

 

「国木田君、或る場所に来て欲しいのだけど・・・」

 

 

 太宰の声は珍しく暗かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後《廃病院》

 

 

 太宰に呼び出された国木田は第一の事件があった件の廃病院だった。闇夜では不気味な廃病院も、日中の陽ノ下ではただ色褪せた廃屋に過ぎなかった。

 

 

「之は潜窟(アジト)のパソコンの中にあった、横浜の調査情報だ」

 

「其れが如何(どう)した?」

 

「驚く事に、この横浜支配には探偵社の殲滅が第一だと書かれていたのだよ。でも彼等の邪魔をする武力組織は何も武装探偵社だけでは無い筈だよ。軍警、沿岸警備隊、異能者なら“異能特務課”も警戒しなくちゃならない。之だけの規模の脅迫を起こしおいて、相手が探偵社だけと云うのは費用対効果(コストパフォーマンス)が悪過ぎないかな?」

 

「結論を云え」

 

「彼等は何者かによって歪んだ状況認識をさせられていた。つまり、探偵社こそ最大最悪の敵と過大評価する様な情報を彼等に吹き込ンだ奴がいる。私は真犯人に此処に来る様、電子書面(メール)を出した。間もなく現れる筈だ」

 

 

────跫音(あしおと)

 

 

「御前なのか・・・六蔵!!」

 

「何云ってンだ眼鏡。己等(オイラ)は事件の真相の見物に来たんだ」

 

 

 国木田が“蒼の使徒”を六蔵と思うには理由があった。何故なら六蔵には動機がある。探偵社を憎む動機が。・・・国木田を怨む動機が。

 

 

「そうか、六蔵君、君は──私の電子書面(メール)を覗き見たね?」

 

「・・・何?本当に御前じゃ無いンだな!?本当だな!?」

 

「だからそう云ってるだろうが。・・・眼鏡危ねぇっ!!!!」

 

 

────銃声。

 

 

 国木田は六蔵に押され、銃弾を受けることは無かった。だが其の代わりに六蔵が受け、六蔵の胸に大きな穴が開き、鮮血が飛び散る。

 崩れ落ちる六蔵を太宰は抱えた。太宰は自分の懐に装備していた拳銃を抜き、銃口を入口に向けた。

 

 太宰も国木田も表情を凍らせている。太宰でさえ此の状況を呑み込めていないのだ。

 

 

「矢張り、貴女(アナタ)が“蒼の使徒”ですね。佐々城信子さん」

 

「なっ・・・・・・」

 

 

 入口から現れた人は長い黒髪に細い首。白い和服。手には拳銃を持ち、其の拳銃は薄い硝煙を立ち上らせている。

 

 

「幾つか質問しても善いかな?」

 

「構いません」

 

「佐々城さん、貴女は何故、探偵社を狙ったンだい?」

 

「太宰様は・・・既にご存知かとお見受けしますが」

 

「・・・うん。流石だね。貴女がやりたかった事は二つ。犯罪者の断罪と、探偵社への復讐。そうだね?」

 

「此の方法しか思いつきませんでした。間違いであると自分で判っていても、死者の為に復讐しなければ我を失いそうだったのです」

 

「貴女と云う個人は非力だ。だが貴女には其の頭脳と犯罪に対する知識があった。だから此の一連の事件は貴女にとって必然とも云える計画だったのだろうね」

 

「では・・・佐々城女史は・・・」

 

「そうだよ国木田君。此の一連の事件は、亡き恋人による蒼王の為の弔い合戦だ」

 

 

 一度、沈黙が訪れる。佐々城と太宰は互いに銃口を向けたままだ。

 

 

「共犯者がいるのではないかと云う説は前から有った。当局は共犯者は居ないと云う結論を下した。それはそうさ。真逆、《蒼王》の恋人が本人よりも遥かに優秀な策略家であったなど誰一人想像出来ないからね。一連の犯行は殆ど貴女が考えたものだね」

 

「後悔はしておりません。止めれば善いと云うのでしょうが()の人が死んだと云う現実を前に何もしないで居る事など私自身が耐えられなかった。私はただ・・・()の人が苦しむ顔を見たくなかっただけなのです」

 

 

 恋人、《蒼王》の為なら悪鬼にも修羅にもなると佐々城はハッキリ明言した。

 

 

「其処で貴女は断罪すべき残りの犯罪者に()()()()()()()()()()()、探偵社に其れを裁かせる、と云う計画を組み上げた。探偵社を醜聞攻撃すれば動かざるをえないからね」

 

 

 証拠の残らぬ誘拐を続けたタクシー運転手。

 国内では犯罪者であると云う資料さえない爆弾魔のアラムタ。

 違法臓器売買を行い、密かに武器を輸入しようとした武器商人。

 (いず)れも現行法の法規では裁くことの難しい、姿なき犯罪者達である。

 

 

「此の計画で最も素晴らしいのは、貴女自身は何の罪も犯していない、と云う事だ。実際の設備などは全部武器商人達が行っていて貴女は何一つ協力して無いのだろう。武器商人達からしても真逆、情報源である貴女から得た情報と状況が意図的に歪められたとは思わない。だから当局が捜査しても『武器商人達の情報収集ミス』てしか判断できない」

 

 

 “此の事件の犯人は自ら手を汚さない”

 法規上、何の罪も犯して居ない犯人は誰にも裁く事など出来ない。理不尽がまかり通る世界は今此処にある。

 

 

「そして貴女は計画者である匂いを消す為に自ら廃病院で誘拐被害者に成り済ました。探偵社に近付くためにね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。まぁ運転手は『其の駅の女性は本当に知らない』と我々に弁解すれば他の被害者は知っていると公言したに等しい為、其れも云えない」

 

「今の話は比企谷様からもされました。でも、私は・・・(いや)、何もありません。・・・太宰様、私を撃ちますか?でも私は銃を下ろしました。撃つと過剰防衛になりますね」

 

 

そう云って佐々城は銃を下ろして微笑んだ。

彼女は────美しかった。

 

 

「そうだね、私には撃てない。でも・・・」

 

 

────銃声。

 

 

 佐々城の胸を三発の銃弾が貫通した。白き和装の佐々城は糸が切れた人形の様に倒れた。

 

 

「佐々城ぃっ!」

 

 

 国木田は駆け寄り、佐々城の躰を抱き上げた。肉を持たぬ人形の様に軽かった。胸の傷口から溢れた鮮血が、和服を真紅に染めていく。

 

 

「ざ・・・まァ、見やがれ・・・《蒼王》が・・・御前が、父上を殺し、たんだッ・・・父上の、仇だ・・・ざ、まァ・・・見や、がれ・・・!!」

 

 

 流血し真っ青な顔をした六蔵が凄絶に笑む。手の拳銃からは硝煙が立ち上っている。其の拳銃は・・・太宰が持っていたものと同一だった。六蔵は一度痙攣して、動かなくなった・・・。

 

 

「国、木田、様・・・」

 

 

 国木田の腕の中で佐々城が囁いた。口の端から一筋の鮮血が静かに流れている。鳶色の瞳は静かに揺れていた。

 

 

「貴方は・・・どこか、()の人に・・・似ています・・・どう、か・・・理想に、殺されぬ、よう・・・私は・・・好・・・・・・」

 

 

────────死んだ。

 

 

「何故だ…何故こンな事になる!!何が間違いだった!?誰が悪かった!?」

 

「誰も悪くない。国木田君、あれが彼女にとっての唯一の救いだ。之が一番良かったのだよ」

 

「違う!こんなものが“理想”であって善い筈が無い!何故なら」

 

(彼女が本当に世界を憎んでいたのなら。俺たちを本気で滅ぼす気で居たのなら──)

 

(あの時、廃病院で俺が毒瓦斯(ガス)に踏み込もうとした時、間近に居た佐々城女史が咄嗟に止めなければ、俺は死んでいた。唯の過失に見せかけて、何の罪も負わずに。何故だ?其れが────本能から出た反射的な行動だったからではないのか?)

 

「何故なら佐々城女史は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!彼女はただ」

 

 

───私はただ・・・()の人が苦しむ顔を見たくなかっただけで。

 

───近づいては駄目です!!

 

 

「教えろ太宰!御前なら救えたはずだ!之が正しい結果とでも言うのか!?」

 

「正しさを求める言葉は武器だ。其れは弱者を傷つける事は出来ても、守り救済する事は出来ない。佐々城さんを殺したのは・・・結局《蒼き王》の、君の正しさだ」

 

 

 太宰の弾劾は国木田の心を抉った。太宰の視線は国木田に向けられているように見えるが、他の誰かにも向けられている様だった。

 

 

「君がその理想を求める限り、何時か蒼き王の炎が君にも宿るだろう。そして周囲ごと焼き尽くす。私は・・・そう云う人間を、何人も見て来た」

 

「其れでも・・・!其れでも進んで突き抜けてやる!俺の“理想”をなめるなよ!」

 

 

 太宰から目を逸らした国木田は目を閉じた。瞼の裏には・・・彼女の微笑みの面影だけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄昏《横浜港外・湾岸沿いの道》

 

 

 

「や、やめろ。何故、御前らポートマフィアがぼくを」

 

 

 軍警の護送車が横転して炎上している。護送憲兵の一人は無惨に殺されている。

 

 

「理由を問うか、武器商人。愚かな。(やつがれ)らポートマフィアを愚弄した事だ。臓器を(ひさ)ぎし運転手を、ポートマフィアに情報を態と流し処理させようとしたな。自らの利が為にマフィアを騙し、動かす者はこれ迄必ず滅びてきた。今、此の瞬間も変わらぬ。『羅生門』!」

 

 

 芥川の外套より生じた黒獣が二頭、青年に殺到する。青年は・・・国木田と太宰によって逮捕された武器商人だった。

 青年は回避しようとするが間に合わず、黒獣の鋭い(アギト)に食い裂かれた。青年は苦痛の絶叫を上げながら食い千切られ、引き裂かれ、無数の肉片となって死に果てた。

 

 

「うわぁ食欲が無くなる光景だな」

 

 

 芥川は振り返った。

 芥川の視線の先には黒帽子の壮年の男の白人がいた。白人の男は気安く芥川に話し掛ける。

 

 

「米国諜報員か・・・」

 

「まぁそう怖い顔するな。俺は御前たちの依頼主(クライアント)だろう。あんたらマフィアは其処の武器商人に代わって武器取引の海外流通路(ルート)を手に入れた訳だ。俺達は自国の違法輸出業者が、日本で問題を起こすのを阻止した。win-winじゃないか」

 

「貴様ら諜報員は騙し唆しが常套だ。此の事件に関わるのも別の狙いが有る筈だ」

 

「・・・そりゃあるさ。だが心配するな。もう」

 

 

 

「もう終わった・・・か?」

 

 

 

「「!?」」

 

 

 米国諜報員の男と芥川は声がした方向に首を向けた。目線の先には軍警の服(プロテクターと正面に防弾ガラス付きのヘルメット)に身を包んだ男が一人。

 芥川は振り向くと同時に『羅生門』による黒獣を展開し、一体を地を這うように射出した。

 

 

「見飽きた」

 

 

 軍警の服に身を包んだ男は片手に15cm程度の棒状の諸刃の刃物を持っていた。男はスナップで手首をしならせ神速で棒状の刃物を黒獣に投擲。棒状の刃物は黒獣の下顎を貫通し、黒獣を地面に打ち付ける。

 

 

「!?・・・比企谷さん。貴方でしたか」

 

「比企谷・・・だと?“大災禍(カタストロフ)”が出てくるとはな。・・・分が悪い」

 

(何で其の二つ名広まってんの?まぁいい。・・・よくはないけど)

 

 

 軍警の服に身を包んだ男・・・比企谷八幡はヘルメットを脱ぎ捨て、二人を見据えた。そして壮年の白人の男性に向けて言い放った。

 

 

「御前だな?《蒼王》事件で探偵社に()()()()()()()()()()()、市警の捜査本部に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「・・・流石だ。《蒼王》事件で俺達は青くなったもンだ。何しろ《蒼王》が断罪した与党議員は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったからな」

 

「事件が長引けば(いず)れ露見する。そう考えた訳か・・・だが一つ疑問が残る」

 

「ふむ。何だ?」

 

「俺は後輩達が捕らえた米国の違法輸出業者を“餌”にした。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、先程、御前が云ったwin-winの関係、つまり取引が成立する確認の為に“黒幕”が動くと確信していたからな。だが・・・武器商人の排除は取引として判る。然し、海外の諜報機関が秘密保持の為に日本の擾乱者(テロリスト)を消すとは到底思えなかった」

 

「其の確認が目的か・・・《蒼王》を消したのは政府諜報組織として動いた訳じゃない。()()()()()()()()()()()()

 

「別組織・・・だと?」

 

「あぁ。陳腐な内情だよ。其れと片手に持っている“棒手裏剣”は収めてくれ」

 

「・・・」

 

「話は終わりかな?では我々は此処で失礼させてもらうよ」

 

「・・・逃がすとでも?此処で過去を精算する事だって出来るぞ」

 

「君は逃がすさ。何故なら君は私が列席している組織に心当たりがあるからだ。違うかい?」

 

「・・・表と裏の二つの顔を持つ、海外の北米の異能組織。名は───組合(ギルド)。財政界や軍閥の重鎮揃いで膨大な資金力と異能で策謀を企む秘密結社。・・・違うか?」

 

「ふふ、ハッハッハッ!流石だ!少ない情報で結論を導く、見事だよ!そして我々、組合(ギルド)はポートマフィアにある依頼をしててね。今、君が手を出すと、ポートマフィアと組合(ギルド)を敵に回すことになる。云わなくても理解しているみたいだけどね」

 

 

 依頼と云う言葉に芥川は顔をしかめた。何故なら芥川が担当している案件だからだ。其の芥川の顔を見た八幡は確信した様に云った。

 

 

「五十七億の懸賞金を後輩に賭けたのも御前達か」

 

其の通り(That's right)。・・・ではな」

 

「あーそうそう」

 

「・・・何だ?」

 

「軍警の護送車で送っていたのは俺と軍警の服を着た()()()()()()()だ。第三者による悪意無き殺人。何処かで聞き覚えは?」

 

「!?・・・意趣返しか。また会う事になるだろう。じゃあな(See you)大災禍(カタストロフ)”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっと終わった!!

《蒼の使徒編・最終話》どうでしたか?

アニメではなかった点、詳しい事情、動機、裏で起こっている事、などなど盛り沢山の一話だったと思います。

原作でもアニメでもなかった点は矢張り、敦の“白虎”化では無いでしょうか。
アニメや原作では芥川との初邂逅の時に“白虎化”します。ですが此の作品では白虎化する前に八幡が助けに来た。だから今回入れました。そうしないと晶子による診察がなくなるもの。

ここで今回の編で判りにくかったであろう八幡の動きについてまとめて解説したいと思います。


ポートマフィアで臓器の値が下落。不審に思った八幡が調査。

以前の《蒼王》事件と手口が似ている事件だと判明。加えて探偵社による醜聞攻撃。探偵社に怨恨を持つ犯人だと確信。以上から《蒼の使徒》が《蒼王》に続きの事件だと判明。

取引の為に資料を集める。
ポートマフィアに武器商人による情報提供。
タクシーの運転手が犯人だと判明。知った八幡は其のタクシー運転手のタクシーに乗り“異能特務課”へ。

着いた後、タクシーの運転手と握手。
其の時、異能でタクシー運転手の記憶に“誘拐などの仕方を教えた奴を自分に書き換える”。

異能特務課、参事官補佐の“坂口安吾”とコンタクトを取り、取引。
駐車場でタクシー運転手に連絡される。国木田たちが運転手を犯人とたどり着いたのが判る。

異能特務課との取引による指揮権の譲渡で市警と軍警を編成。ポートマフィアからの情報により動いているのが芥川と判明。対策を練り、市警と軍警を配置。

芥川との取引で戦闘せずに勝つ。
タクシー運転手の確保。太宰に異能が掛けられている可能性を指摘し、“人間失格”で触らせる。

二回目の脅迫状の文と異能特務課との取引により手に入れたテロリストの資料を見比べ、爆弾の製造主がアラムタと判明。軍警と市警を使って調査。

アラムタの死亡を確認。
探偵社の会議で社長による号令。
お洒落デートをかましている太宰に資料を渡す。
乱歩との連絡がつき、国木田、太宰、敦は爆弾の在処へ。
この時、佐々城と八幡会話。(次回少しします)

タクシー運転手の死亡と爆弾の通信機が旧国防軍施設に運ばれたことを軍警によって報告される。太宰に連絡を取り、三人を旧国防軍施設向かわせ、自身は爆弾の元へ。“忘却”によりアラムタ爆弾が此の世の理から抹消される。(太宰を除く)

翌日、ポートマフィアに武器商人の護送情報を流す。
其の時にポートマフィアと何かの組織が取引している情報を耳にする。詳しいことは知らない。

護送車に八幡と“異能”をかけ、軍警だと思わせた武器商人の一人が乗り込む。芥川による強襲。

全ての悪事を暴露。組合(ギルド)の構成員と初対面。


こんな感じですね。長くなって申し訳ありません。


毎度恒例謝辞。

『シューベル』さん高評価有難うございます!励みになってます!


では次回!
ではまた次回。ようやく鏡花ちゃん出せる。

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