和を嫌い正義を為す   作:TouA(とーあ)

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文スト早く、2クール目始まらないかなぁ。


短いですがどうぞ!!


邂逅

「金之助さん…。其の恰好は如何(どう)にか成りませんか?」

 

「ホッホッホ。之も又、余興じゃて。却説(さて)何が起こるやら…」

 

 

 漱石、(もとい)金之助の恰好は痩せ過ぎの体型に合っていない大きな紺の外套に鍔のある丸帽子。加えてT字のステッキを持っている。一般人から見れば西洋風の紳士だ。だが或る人から見れば何処(どこ)から見ても怪しく、T字のステッキは仕込み刀にしか見えない。

 

 

「ステッキは持って来なくて良かったでしょう…。(ちな)みに席は何処なんです?」

 

「む?あぁ一番前じゃよ。比企谷君は運が良いのう」

 

「…其れを判断するには内容を見てからですよ」

 

 

 何から何まで仕組まれた様に感じる八幡は口をへの字に曲げる。其れを見て二度、漱石は笑う。何時もの光景である。

 

 二人は劇場へ入り、人毛の無い椅子へと腰を掛ける。劇場ホールへは時間に成るまでは入れない。八幡は客層見る。老若男女居るが二十代女性が目立つ。漱石は変わらず、笑みを浮かべたままだった。

 

 

「市警は何人居たかい?比企谷君」

 

「警備員を除いて二人。恐らくホールの中に数人。(ぬる)いですね」

 

 

 之は私服警官の数も入れてである。若し何か事件が起こるのだとしたら此の規模のホール全員を守りきる事など不可能だろう。八幡の辛辣な評価はそれを含めてである。

 

 

「ふむ、及第点かの…。比企谷君。此の劇場で起こっている事を調べて来てはくれまいか?君の異能を使えば容易だろう?」

 

「お断りします。俺は余計な事に巻き込まれたく無いので」

 

「“飼い犬に手を噛まれる”とは此の事か…」

 

「…分かりましたよ。行きますよ。行けばいいんでしょ」

 

 

 裏社会に身を置いているとは(いえど)()だ子供。煽られると弱い。尚更、漱石が下手(したて)に出ると…だ。

 

 

 

 

 

 八幡は飽く迄(あくまで)、客の振りをする。暫く、劇場を散策し、真面目に見えるスタッフを見つける事が目的だった。

 

 

「すみません」

 

「お客様、如何なされましたか?」

 

「えぇと、口では説明しづらくて…。私と来てもらえませんか?」

 

「えぇ、構いませんよ」

 

 

 二人は並んで人毛が一層少ないところへ行く。之には流石に真面目なスタッフも怪訝な表情を浮かべた。

 

 

「お客様?」

 

「異能力『本物』」

 

 

 八幡はスタッフに手を触れる。スタッフは朱殷色(しゅあんいろ)の光に包み込まれ、驚きの表情を浮かべる。光は数秒で消え去った。

 

 

「ん?あれ?比企谷じゃないか。早くスタッフの服に着替えないと江上さんに怒られるよ?」

 

「すみません。スタッフの服が切れてまして…。余りの1着ありませんかね?」

 

「それならスタッフルームへ行こう。何着か有った筈だ」

 

 

 二人は()()()()()()()()のように話し始めた。スタッフの人員、キャストの配慮、舞台裏、そして『犯行予告』。とは云え八幡は聞く一方であったが。

 

 

「先輩、僕は『犯行予告』については何も知らされてないのですが?」

 

「それは仕方のない事だよ。私にだって知らされていないのだから。只、其れが届いたという事だけだよ?私が知り得ているものは」

 

 

 どうやら知っているのは市警と江川、支配人だけの様だった。八幡はスタッフの服に着替えると名も知らぬ『先輩』に江川の元へと案内してもらった。

 

 

「江川さん」

 

「何よ!今忙しいの!…貴方、名前は?」

 

 

 江川は黒縁の鋭角三角形の眼鏡を掛け、長髪の髪を一本に纏め、ピリッとした雰囲気を醸し出すスーツ姿の女性だった。

 八幡の第一印象は『何時までも嫁げないだろうな此の人』だった。塞がりかけのピアスの穴と飾り気の無いネックレスを見れば…言うまでもない。

 

 それとは打って変わり、観察眼と仕事への勤勉さは優れているように八幡は感じていた。何故なら少ない人員で此の劇場を回す手腕は優れていると判断するに値し、八幡と云う全くの部外者に気付いたのだ。スタッフの服を着ているとは云え中々、社員の顔を覚えている事は無いだろう。恐らく、真面目な性格から求職の候補者の面接にも立ち会って居るのだと予測できる。つまり此の劇場の人員を把握している、と八幡は結論付けた。

 

 周りに誰も居ない事を確認し、目を(すが)める江上に触れる。瞬間、江上を朱殷色(しゅあんいろ)の光が包み込む。

 

 

「あら、比企谷君、何か用かしら?」

 

「犯行予告状が届いているんですよね?見せてくれませんか?」

 

「そんな物見て如何(どう)するの?まぁ別に構わないけれど」

 

 

 先のスタッフの様に()()()()の様に二人は話し始めた。目を眇めていた江上は今、八幡に対してまるで身内に向ける目をしている。(はた)から見れば職場に遊びに来た弟を構う姉の様に見える。

 

 八幡は江上から渡された犯行予告状を事前に嵌めていた手袋で受け取り見る。予告状にはこう記されていた。

 

 

 

『天使が演者を、真の意味で死に至らしめるでしょう。─────“V”』

 

 

 

 それから講演の日時と演目も書かれていた。云わずもがな、八幡と漱石が見る演目だった。江川が云うには何日か前に事務所に届けられたと云う。

 江川に礼を言い、(ついで)に劇場の下見の許可を得た。

 

 劇場ホールは四百人近くを収容する事が出来る。まだ開演時間では無い為、客は入っていないが警備員と私服警官が数名いた。市警は二人で計四人のようだ。或る程度見て回り、危険物、爆弾を含めた兵器はない事を確認した後、着替えようと劇場ホールを後にした。

 

 

 

「君さぁ、スタッフじゃ無いでしょ?」

 

 

 

 そんな声が掛かったのはスタッフルーム迄、残り六尺の所だった。八幡は訝しげに声の方向へ向くと其処には二人の男が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無口で無愛想だが、近接戦闘では超人的な強さを誇る白髪の壮年の男性と。

 

 

 警察学校の制服に身を包んだ若い童顔の顔をした天才的な推理力を持つ探偵少年と。

 

 

 腐った目をしている誰よりも強く在り、優しく在る、“本物”を求め続ける男の。

 

 

 数年後“横浜にこの組織あり”と云われ、その名を海外にまで轟かす武装集団の。

 

 

 

 三人の邂逅であった。

 

 




この作品難しい…。

過去の言葉もそうだけど、ルビとかかなり時間がかかる。

でも楽しい!

ではまた次回!!感想待ってます!

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