和を嫌い正義を為す   作:TouA(とーあ)

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11月4日 鏡花ちゃん誕生日おめでとう❗❗

いや〜ホントめでたいです❕❕

少し天然入ってるところとか本当に好きなんですよ!!あ、決しては僕はロリコンではありません。本当だよ?

そしてアニメの2クール目の要となる鏡花ちゃんに之からも期待です!


では第二章 3話どうぞ!


この作品が三人称なので敦の気持ちなんか想像でしかありませんが頑張りました。楽しんで頂けたら幸いです。





試験

「や、やややややめなさーい!親御さんが泣いてるよ!」

 

 

 何をやってるンだ僕は…敦は心底そう思った。敦の目の前の若い男は若い女性の人質と爆弾を盾に自暴自棄に喋りまくっている。

 

 

「なっ何だ!アンタ!」

 

(ひぃっ!怖いぃぃぃぃ!!)

 

 

 青年は鬼の様な形相を浮べながら敦に怒鳴る。何故、敦が此の様な事件に巻き込まれたのか。時は数十分前に遡る…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

 久しぶりに嗅ぐ畳の匂い。

 

 中島 敦はゆっくりと意識を覚醒させて行った。

 

 周りを見渡すと六畳一間の大きさの部屋で、自分が眠っていた布団を除くと目の前にちゃぶ台があるぐらいの昭和テイストの簡素な部屋だった。其れでも野宿に比べれば天と地ほどの差があり、“武装探偵社”の御厚意に胸が熱くなった。

 

 

♪〜♪〜♪

 

 

 布団の横にある携帯が鳴り始めた。(ボタン)を押し電話を出た。

 

 

『グッドモーニンッ♪昨晩はよく眠れたかい?敦君』

 

「だ、太宰さん!お陰様で…。こんな大層な寮を紹介して頂いて有難う御座います」

 

『なに、善いのだよ。敦君、ひとつお願いがあるのだが……』

 

 

 “太宰治”は敦が無自覚のまま『人喰い虎』に変身していた所を助けてくれた恩人だった。

 

『武装探偵社』

 

 太宰治と国木田独歩が敦の知る限りの人員であった。然し、噂とは全く違い太宰に至っては本当に武装探偵社なのか半信半疑だった。

 

 其の証拠に…。

 

 

「何をやっているんですか?」

 

「何ね、こうした自殺法があるという事を聞き、早速試してみたのだ。が苦しいばかりで一向に死ねない」

 

 

 太宰の御願いは『助けて欲しい』と云う事だった。急いで傍にあった服に着替え、部屋を出てみると寮の目の前でドラム缶に頭と両足をドラム缶から突き出している太宰がいた。太宰が云うには足場を固定しておくのがポイントなのだそうだ。知ったこっちゃない…敦はそう思った。

 

 

「でも、自殺なら其のままいけば…」

 

「苦しいのは嫌だ。当然だろう!」

 

 

 さも、当たり前のように怪訝な顔をして太宰は云い切った。困惑した敦だが其れも直ぐ考えない様にした。ドツボにはまる予感がした為である。敦はドラム缶を蹴り倒して太宰を…恩人を救った。

 

 

 

 

 

 

 

「今日は君に仕事を斡旋してあげようと来たのだよ」

 

「本当ですか!」

 

 

 孤児院を追い出され無一文の敦にとって仕事は何でも善いから喉から手が出るほど欲しいものの一つであった。何から何まで世話になるのは悪い気がしなくも無かったが太宰の厚意に甘えることにした。

 

 

「此処におったか!此の包帯無駄遣い装置!」

 

「国木田君…流石に其の呼称は傷つくよ…」

 

「其れ所では無い!此の唐変木が!」

 

「もう朝から元気だなぁ。あんまり怒鳴ると悪い体内物質が分泌されてその内、痔に罹るよ?」

 

「何!?本当か!?」

 

 

 “国木田独歩”は太宰の云う事を『理想』と大きく書かれたメモ帳に書き足した。敦は昨日も同じ様な場面を見た様な気がしてなんとなく結末が判った。

 

 

「嘘だけどね」

 

「ウオゥラァァ!!」

 

 

 国木田は太宰に関節をきめ、締め上げた。太宰の口から血のような物が垂れた気がしたが敦は見て見ぬふりをした。此の2人については其れが正解だと理解した瞬間であった。

 

 

「ハッ、こんな事をしている場合では無かった。探偵社に来い!人手がいる!」

 

「何で?」

 

「爆弾魔が人質を連れて探偵社に立て篭もった為だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう嫌だ!全部、武装探偵社のせいだ!社長を、社長を出せ!!出さないと爆弾()で皆死ぬよ!?」

 

 

 何故、部外者の僕も?…敦がそう思うのも無理は無かった。敦と国木田、太宰は爆弾魔から数メートル離れた観葉植物に身を隠していた。そして状況から推測するにこの現場に居たって何の役にも立たない事は目に見えていた。

 

 爆弾魔は探偵社のバイトの子を人質に取り、起爆リモコンを手に持って脅していた。犯罪者によく怨恨を買う探偵社にとってよくある事ではあったが…敦が知る由もない。

 

 

「あれは高性能爆薬(ハイエクスプロオシブ)だね…。此の部屋丸ごと吹き飛ぶよ。まぁ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…」

 

「なら方法は一つしかないな…」

 

「そうだね…。行くよ国木田君」

 

(異能力を使うのか!?)

 

 

 二人の青年は真剣な顔でジャンケンを始めた。こんな非常事態に何をしてるのか叫びたくなった敦だったが堪らえた。結果は太宰の勝利で国木田の敗北。国木田は舌打ちをして爆弾魔に向かって“降参”の意味で両手を上げて歩き出した。

 

 

「来るなァ!吹き飛ばすよ!」

 

「落ち着け、少年」

 

「し、知ってるぞ。アンタは国木田だ。アンタもあの嫌味な『能力』とやらを使うンだろ!?妙な素振りをしたら皆道連れだ!嫌なら机の上で四つン這いになって両手を見える所に置け!!」

 

 

 爆弾魔の青年はヒステリックを起こした様に叫びながら国木田に警告した。即ち、国木田だけでなく()()()()調()()()()()()()()()()()()()()。其の声は勿論、太宰と敦の元にも届いていた。

 

 

「之は不味いね…。探偵社に怨恨を持つだけあって社員の顔と名前を調べてる。社員の私が行っても余計警戒されるだけか…となると…」

 

「へ?」

 

 

 太宰は敦を見てニタァと笑った。敦は悟り、拒否したが其れしか方法が無いと云われ渋々引き受けた。

 

 

 

 そして冒頭に戻る。

 

 

 

 太宰は落伍者…つまり駄目人間の振りをして犯人の気を逸らせば善いと云った。後は探偵社がやると云った。武装探偵社にとっては此の程度の揉め事は朝飯前だそうだ。

 敦は太宰から大量の新聞を受け取り、新聞配達員に扮して説得を試みた。

 

 

「ぼぼ、僕はさ、騒ぎを聞きつけた一般市民ですっ!いい、生きていれば善いことあるよ!」

 

「誰だが知らないが無責任に云うな!皆、死ねば良いンだ!」

 

「僕なんか孤児で行く宛も家族も友達も居なくて、此の前その孤児院でさえも追い出されたンだ!」

 

「え、いや…其れは…」

 

「害獣に変身しちゃうらしくて軍警にバレたら縛り首だし、とりたてて特技も長所も無いし誰が見ても社会のゴミで…。其れでもヤケにならず生きてるンだ!だ、だから…」

 

 

 敦の座右の銘は『生きていればいいじゃない』…まさに其の通りであった。演技を超えて…本音が漏れ出ていた。駄目人間の演技上手いなぁ…と太宰治(駄目人間)が思う程に。

 

 

「ね、だから一緒に仕事探そう?」

 

「え!いや!ボクは別にそういうのでは…!」

 

 

 敦の鬼気迫る演技?に犯人の青年は気圧され怯ンだ。其の隙を逃す調査員などいない。国木田は手帳を破り叫んだ。

 

 

「“異能力”『独歩吟客』!鉄線銃(ワイヤーガン)!!」

 

 

 手帳の(ページ)鉄線銃(ワイヤーガン)に変わる。国木田から撃ち出された鉄線(ワイヤー)は爆弾魔の青年の起爆リモコンに命中し弾き飛ばした。

 其の後、国木田は瞬時に爆弾魔の青年に近寄り、手首を捻って投げ飛ばした。其のまま関節をきめ、身動きを取れない様にした。

 

 

「一丁あがり〜♪」

 

 

 太宰が陽気な声でそう云うので敦は力が抜けた。太宰は敦に笑顔を向け一段落した様に見えた。

 

 然し…何かが敦の体を後ろから突き飛ばした。

 

 其の衝撃で敦は倒れ込ンだ。そして其の先には起爆リモコンがあった。

 

 

「「「あ…」」」

 

 

 敦は倒れた拍子に起爆リモコンの(ボタン)を押してしまった。

 

 爆弾のカウントが始まった。残り三秒…。

 

 

(何か無いのか!?爆弾を覆い被せる物は!?探せ!何処かに有る筈!?)

 

 

 敦は周囲を一瞬で見たが何も無かった。そして爆発の時間が迫り、敦の躰はカウントに呼応する様に自然と動いた。

 

 

「あれ?」

 

 

 此の状況に間抜けな声を出したのは他でも無い敦だった。敦は爆風を抑える為に爆弾を下に抱え込んだ。

 

 

莫迦(バカ)ッ!!」

 

 

 叫んだのは太宰だった。敦は爆発するのだと理解すると同時に目を閉じた。カウントは0になった。カウント特有の音が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────爆発が起きない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 敦はおそるおそる目を開けると目の前には怪訝な顔をした国木田と愉快に笑う太宰と心配そうに敦を覗きこむ爆弾魔の青年だった。

 

 

莫迦(バカ)だとは思っていたがここまでとは…」

 

「自殺嗜好(マニア)の才能があるね、彼は」

 

「へ…え…?」

 

 

 敦の頭は現状にまだ追い付いてなかった。すると人質になっていたバイトの事務員が爆弾魔に向かって抱き着いた。

 

 

「ああーん!御兄様♡大丈夫でしたかぁぁ!?」

 

「痛ッ!痛いよ!ナオミ!折れる折れる!」

 

「…へ?」

 

 

 理解が追い付いていない敦はゆっくり太宰の方へ向いた。

 

 

「敦君。之は一種の入社試験だよ」

 

「入社…試験…?」

 

 

 

 

「其の通りだ」

 

 

 

 

 

「社長!」

 

 

 太宰を含め国木田たちは背筋を伸ばしある男の方向へ向いた。男は壮年でありながら威厳を全身から感じた。敦は一癖も二癖もある探偵社員を纏める人間は此の人なら納得できた。

 

 

「其処の太宰めが『優秀なる若者が居る』と云うゆえ、其の魂の真贋(しんがん)を試させて貰った」

 

「で、社長。結果は…」

 

 

 武装探偵社社長“福沢諭吉”は敦を一目し、こう云った。

 

 

「太宰に一任する」

 

「………へ?」

 

「合格だってさ。敦君。よかったね」

 

「つ、つまり、僕に斡旋する仕事って云うのは…此所の」

 

 

 太宰はクスッと笑った。つられて国木田や爆弾魔の青年…いや、探偵社調査員“谷崎潤一郎”、そして妹の“ナオミ”はゆっくり頷いて笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「武装探偵社へようこそ。中島 敦くん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

如何(どう)思う?八幡よ」

 

 

 

 

「善いと思いますよ。太宰が何を企んでいるか知りませんが新人の影響は大きいものになる」

 

 

 

 

「ふむ……其の根拠はあるのか?」

 

 

 

 

 

「新人の過去をさらってみましたが…。なかなかの環境で育っていました。そして彼は『生きる価値が無い』と度々思っている様ですが…逆です。一番『生に執着している』」

 

 

 

 

 

「そうか…」

 

 

 

 

 

「生きる為に必死になる人間は少なからず人に影響を与える。泥沼を走る迷い犬(ストレイドック)は其れだけで人を変える」

 

 

 

 

「ふむ。…八幡、茶を」

 

 

 

 

 

 

「はい、淹れたてです。熱いのでお気をつけ下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「熱っ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




第二章 三話終わりました。

アニメも四年後に戻り、一気にキャラが増えましたね。

アニメもこの小説も楽しんで頂けたら幸いです。


そして謝辞。

新たに『薬袋水瀬』さん、『景義』さん、高評価ありがとうございます!励みになってます!


ではまた四話で。早く更新できると思います。

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