第二章の始まりです。
楽しんでください!!!
人虎
『武装探偵社』
横浜にこの組織ありと云われ、海外までその名を轟かせる武装組織。
昼と夜の世界。其の
正義を為し、悪を震え上がらせ、ずば抜けた才能の異能者を要する薄暮の異能者集団。
そして、知る人ぞ知る“変人”の集まりである。
「
「いえ、之も仕事ですので。また何かありましたら
警察署から一人の男が刑事に見送られ出て来た。刑事の名は『安井』と云い武装探偵社によく依頼を寄越す。其れは刑事や巡査だけの力では解く事の出来ない難解、且つ複雑な事件を武装探偵社きっての或る“異能者”に解いて貰う為だ。
「あ、そう云えば比企谷さん。“人喰い虎”は
「優秀な後輩達が解決に向けて走り回っています。進捗状況から推測すれば、恐らく今日あたりには解決すると踏んでいます」
「いやぁ〜流石、武装探偵社さんだ。感服します。私もそろそろ引退時でしてね。後釜も決まった事ですし」
「そう…でしたか。寂しくなります。今迄、御苦労様でした。安井さん」
「いえいえ!頼りにしてたのは
「此方こそ。之からも武装探偵社を御贔屓に」
男は振り返り歩き出した。刑事は男に敬礼し見送った。
横浜の黄昏時の空は蒼と紅に塗り分けられている。
街は喧騒に包まれている。
“表”では子の手を引く母親が民謡を口
“裏”では藥の取引を始め、諸外国との密輸や銃声は日常茶飯事であり、表沙汰にならぬ凶悪な事件が蔓延り、政府でさえ手に負えぬ犯罪者が巣食っている。
そんな悲哀に、慈愛に満ち溢れた街を男は歩く。
男の名は“比企谷八幡”
顔立ちは整っているが其れを台無しにする程の腐った目。黒の
そして武装探偵社設立時の古株であり、探偵社員から謎多き人物と位置づけられている探偵社員である。
「お、TOPPOが安い」
〜〜〜〜
武装探偵社は横浜の港に近い。
見た目は煉瓦造の赤茶けた建築物だ。年季の入った建物で、潮風が強い為に
探偵社が実際に居を構えるのは建物の四階のみで、其れ以外には他の、ごく穏当な
八幡は其の建物の
「八、おかえり〜〜」
ドアをあけた八幡に間の抜けた声が掛かる。八幡を“八”と呼んだ青年は見た目は少年にしか見えない容貌ではあるが八幡と同じ齢である。
青年の名は“江戸川乱歩”
探偵社、生粋の名探偵である。そして八幡が頭を抱える人物の
「お菓子ある〜?」
「ほらよ。買って来た」
「さっすが八!よく判ってるね……ってTOPPOじゃないか!僕はPocky派だよ!」
「…じゃあ俺が食う」
八幡は差し出したTOPPOを乱歩の届かぬ位置(身長的に)にTOPPOを上げる。乱歩は八幡が上げたTOPPOに向かって手を伸ばしながら謝罪する。
「悪かったって!食べるから!好き嫌いしないから!」
「はぁ。最初から素直に食えば善いンだよ」
乱歩は八幡から受け取ったTOPPOを速攻開き、夢中になって食べ始めた。そんな乱歩を怪訝な表情で八幡は見ながらも口元は綻んでいた。其れは探偵社、全員に云える事だった。
「八幡、私には無いのかい?」
「晶子か。ほれ、大福」
「流石、よく判ってるじゃないか。頂くよ」
八幡に声を掛けたのは蝶のヘアピンに黒の
女性の名は“与謝野晶子”
探偵社の専属医であり、探偵社の生命線である。
「賢治。三ツ矢サイダー」
「うわぁ!有難うございます!八幡さん!」
明るい声で八幡に感謝を伝えた少年は水色のサロペットに白のトップス、黒のインナー。麦わら帽子を首にかけ天真爛漫の笑顔を浮かべている。
少年の名は“宮沢賢治”
常に裸足で、探偵社最年少でありながら極めて優秀な社員である。
八幡が社員に差し入れを配っていた時、探偵社のドアが勢い良く開かれた。
「はぁはぁ。あ、八さん戻っていたンですね。お疲れ様です」
「
「太宰から手紙を受取りました。太宰に依れば十五番外の西倉庫に“人喰い虎”が出るそうです」
八幡を“八さん”と呼んだ青年は肩まである髪を一つに括り、眼鏡をかけ如何にも真面目そうな風貌だ。
青年の名は“国木田独歩”
理想に生き、理想を追い求める理想主義者である。そして八幡同様、探偵社の苦労人である。
「若しもの可能性があります。非番の方も之から俺と十五番外の西倉庫へ御願いします。太宰は
「
「太宰が鶴見川で流れているのを助けた孤児院を追い出された少年です。名は“敦”としか訊いていませんが…。
八幡が問い、国木田が答えた。其れから暫くして乱歩と八幡の笑い声が探偵社に響き渡った。
「なら太宰一人で大丈夫だな」
「そうだねぇ〜。其れにしても国木田は愚かだなぁ〜」
「なっ!?何故、そんな事が云えるンですか?」
「国木田。直ぐ答えを他人に求めるのは御前の悪い癖だ。自分で考えて最適解を導き出せ」
「は、はい!すみません。移動し
国木田は西倉庫に行く社員を選出した。選ばれたのは“宮沢賢治”、“与謝野晶子”、“比企谷八幡”だった。乱歩は『八が居るなら大丈夫だよ。僕は留守番しとく。』と云って八幡にぶん投げた。
国木田、賢治、八幡と続いて事務室を出た時、与謝野がポツリと呟いた。
「非番の
〜〜〜〜
一行は国木田の車で十五番外の西倉庫に向かっていた。運転は勿論、国木田。助手席には八幡、後部座席には与謝野と賢治が座っていた。
一行が十五番外の西倉庫に着く前から破壊音が周囲に響いていた。
其れは地面を抉る音であり、貨物を破壊する音であり、全てを薙ぎ倒す音でもあった。
其の音を車の中に居ながらも肌身に感じた一行であったが顔には出さず国木田は八幡に問い掛けた。
「八さん。あの小僧が“人喰い虎”と云う事ですか?」
「…
「普通に考えれば孤児院の経営が傾いたからと云って児童を追放する訳が有りません。そもそも経営が傾いたなら一人、二人、追放しても
「其の通りだな」
八幡は目を閉じて国木田の推理を聞いた。そして答えを待った。
「小僧が此の街に来たのが二週間前。虎が報告されたのも二週間前。小僧が鶴見川べりに居たのが四日前。同じ場所で虎が目撃されたのが四日前。之は決して偶然では片付けられない。なら“人喰い虎”は何か…」
国木田は一呼吸置いて吐いた。
「小僧の“異能”です。乱歩さんや八さんが『太宰なら大丈夫』だと云ったのは太宰の“異能”が“異能力無効化”だからです。…此の言葉が無ければ俺は答えまで辿り着けませんでした。不甲斐ない限りです」
「…国木田。自分を憐れむなよ。大抵の奴は答えが見つからない時、現実逃避するか他人に頼るが、御前は真っ向から受け止め、答えを導いた。誇っていい」
「はい!」
答え合わせが終わると同時に一行は西倉庫へと着いた。其の時には既に破壊音は止んでおり静かな波の音が響いていた。
「太宰!!」
「おや?国木田くん。遅かったね。“虎”はもう捕まえたよ」
国木田から太宰と呼ばれた男は倒れている少年を指さした。其の少年は眠っているらしい。
「“虎”の異能者だよ。変身している間、記憶がなかったンだね」
「次からはもう少し事前に説明しろ。非番の奴らまで借り出す始末だ」
太宰は反省してない様にケラケラ笑う。そんな太宰に八幡は話しかけた。
「それで此のガキを
「比企谷さん。もう決めてありますよ」
「ほう?」
「うちの社員にする」
第二章始まりました。
どうでしたか?感想評価まってます。
アニメの『黒の時代』はいいね!ほんとそう思います。
次回は入社試験の為の会議です。小説の話ですね。
ではまた次回で。