和を嫌い正義を為す   作:TouA(とーあ)

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どうもTouAです。

短く、投稿も遅いですが宜しくお願いします。


第一章 武装探偵社設立篇
序幕


横浜の黄昏時の空は蒼と紅。

 

横浜の雑踏の音が身体に響き渡る。

 

黒髪の青年が血で染まり変えっている瀕死の男に手を触れる。

 

 

「異能力『本物』」

 

 

 呟かれた言葉により、朱殷色の光が瀕死の男を包む。

 

 

「悪く思うな…安らかに眠れ」

 

 

 男の存在が消える。青年の記憶以外からすべて抹消される。彼が遺した足跡も、近しい友や仲間でさえも…。

 

 

 “異能”

 常識では起こりえない現象を起こす特殊な力。異能を宿す人間は『能力者』と呼ばれる。

 

 

 曰く、一個人につき一能力。

 

 曰く、本人が自覚し意図的に操れるものもあれば、制御不能に自動発動するものもある。

 

 曰く、生来の異能者もいれば、或時突然異能が開花する場合もある。

 

 曰く、異能がそれを所持する本人を倖せにするとは限らない。

 

 

 能力の効果は己の体の一部を変化させるものを始め、攻撃系から完全非戦闘系と幅広い。ただし治癒能力は存在自体が珍しく保有する者も少数。戦闘に生かせる異能は数多くある。

 彼の異能は最も忌み嫌われる中での最上に位置する“精神に及ぼす異能”である。

 

 

 

 青年は歩く。

 

 街が在り、人が在り、時には事件と悲しみの在る横浜の街を。

  何時からだろうか。青年が言葉の意味を失い、心の血を流し始めたのは。正義を為そうとし始めたのは。

  政府と黒社会の両方に通じ始めてからだろうか。神出鬼没の上司に拾われてからだろうか。それとも生まれた時からだろうか。

 

 

 

 否。答えは無い。

 

 

 

 横浜のある薄暗い地下通路を通り、設えられた鉄扉を押す。

 

 

「帰ってきおったか。比企谷君」

 

 

 口元にある短い髭を蓄えている、背筋の伸びた壮年の痩せた男が青年を迎える。

 

 

「金之助さん…マフィア相手の仕事は懲り懲りです。仕事をもう少し選んでくれませんか?」

 

「“漱石”じゃ。その名はもう捨てておる。…まぁいい。演劇を見に行かんか?」

 

「演劇…ですか?」

 

「うむ。どうやら面白い仕掛けがある様じゃ。一興を楽しもうではないか」

 

「貴方が云う一興は不安なんですよ。仕事が増えるから」

 

「ふむ。この劇場は巷で有名なはずじゃが…。不可侵領域(アンタッチャブル)である異能者を題材にしとると聞いたが」

 

「その劇場ですか…。金之助さんは見なくてもいいでしょう?異能者(本物)なのに」

 

「それとは別じゃろうて…。そうじゃ、咖喱(カレー)を奢ろう。人目も少なく、私が気に入っておる店だ。一度食べてみらんか?」

 

「はぁ。…食費浮くから行きましょう」

 

 

 二人は演劇場へと歩を進める。

 

 横浜の街は何時でも喧騒に包まれている。

 

 

 

 

 青年の名は“比企谷 八幡”

 

 裏社会と政府に知らぬ者はいない“夏目漱石”のたった一人の側近である。

 

 

 




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