ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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大変長くお待たせしてしまい申し訳ございません。
この3カ月間、忙しかったり、体調を崩したり、FGOの映画を観に行ったなどして中々執筆する気力がわかない状況が続いてしまいました。ですが、失踪だけはしないので!

この期間中に、ストレス発散に以前書いたリュウ君がディーアイエルをボコボコにするシーンを加筆し、修正しました。この前、アリブレでリーファのあのシーンやディーアイエルが実装されて怒りが再燃したのでちょうどいい機会でした(笑)
「No chance of surviving(生き残る術などない)」というフレーズが相応しいかもしれないです。同時にリュウ君が大丈夫か心配になるフレーズですが。

https://twitter.com/glaiveblade/status/1391256128621740032


番外編4 レクチャーという名のデート

弓矢から右手を離した瞬間、矢は70メートル先にいるイノシシ型モンスターに目がけて一直線に飛んでいき、眉間に命中。すると、イノシシ型モンスターは断末魔を上げてポリゴン片となって消滅した。

 

「まだ弓を使い始めて1週間も経ってないが、もうこの距離から急所を狙えるのか。流石、GGOで一番のスナイパーだな」

 

「そ、そんなことないわよ……」

 

カイトにそう言われ、嬉しくて少し照れてしまう。

 

私が今いるのはGGOではなく、アルヴヘイム・オンライン……ALOという妖精の世界を舞台としたゲームだ。

 

このゲームはカイトや彼の仲間たちがプレイしていて、彼らに誘われて私も1週間ほど前からやり始めた。

 

ALOでアバターを作る際9つある妖精種族の中から1つ選ぶことができ、GGOでは人間しかいなかったので中々新鮮だった。私が選んだ種族は敏捷性と視力、モンスターのテイムに優れた猫妖精のケットシーだ。GGOで鍛えたスナイパーの技術を活かすには優れた視力を持つケットシーがいいと思ったからだ。

 

ちなみに、ALOを始めるのにコンバートではなく、新規のアカウントを作ったが、アバターの姿はGGOのシノンと殆ど同じで、唯一変わっている点は猫妖精らしく猫耳と尻尾が付いているところだ。当初は猫耳と尻尾が付いていることに少し抵抗があったが、アスナたち女性陣には「可愛い」と、そしてカイトからは「似合っている」と言われ、今ではケットシーを選んで本当によかったと思っている。

 

「これなら近いうちに100メートル離れたところからでも狙えるんじゃないのか?」

 

「欲を言えば、その倍の射程は欲しいとこね。GGOでは2千メートルも離れたところから狙撃もしてきたから、100メートルでも物足りない感じがするし」

 

「おいおい、ALOの弓は通常は槍以上、魔法以下の距離で使う武器だ。そんなに離れたところから狙おうとする奴はシノンくらいだぞ」

 

少々呆れてそう言うカイト。そして、私はそんなカイトを見てクスリと笑う。

 

今日はこうしてカイトに弓の扱いのトレーニングに付き合ってもらっている。カイトと2人きりで過ごすのはとても幸せな時間で、殆どデートみたいなものだと言ってもいい。

 

「まあ、距離の話はこのくらいにしておいて、今日は《リトリーブ・アロー》も教えておこうか」

 

「《リトリーブ・アロー》?」

 

初めて聞く単語で、そう聞き返す。

 

「《リトリーブ・アロー》は弓使いが使う魔法の1つだ。矢に強い伸縮性・粘着性を持つ糸を付与して発射して、使い捨てになってしまう矢の回収をしたり、手の届かないオブジェクトを引っ張り寄せることができる」

 

「便利な魔法ね」

 

「ああ。だけど、これには欠点もある」

 

「欠点?」

 

「糸が矢の軌道を歪めて、ホーミング性もないから近距離でしか当らない。オマケに距離とか風向きや風速も影響する」

 

「風向きや風速も影響するっていうのはGGOで実弾銃のデメリットみたいね」

 

「そうだな。だが、GGOで半年間ライフルを使ってきたシノンなら、風向きや風速の影響もすぐに克服して扱えるようになるだろう。試しにやってみるか?」

 

「ええ」

 

カイトに勧められて《リトリーブ・アロー》の練習もすることにもなった。

 

まず初めは《リトリーブ・アロー》のスペルを覚えるところから始まった。スペルはすぐに覚えることができたけど、そこからが予想以上に難しかった。

 

30メートルほど離れた場所にある木を的にして矢を撃とうとしたけど、糸を付けたことで矢の軌道を歪めてしまい、思うように命中しなかった。

 

「糸を付けて射撃するなんて一度も経験したことないから難しいわ」

 

「矢以上に糸の方が風の影響を受けやすいからな。だったら俺が観測してタイミングを教えてからシノンが撃つって方法で試してみるか?」

 

「ええ。やってみましょうか」

 

矢を1本取り出して矢を放つ構え、《リトリーブ・アロー》のスペルを詠唱する。辺りは風が吹く音しか聞こえないくらい静まり返っている。

 

上手く当てられるか不安こそあったが、私の隣にはカイトがいる。だから大丈夫だと自分に言い聞かせ、専念することができた。

 

「南西から風が少しあるな。だが、風が止んだ瞬間がチャンスだ。………………今だ!」

 

カイトの合図と同時に弓を放つ。すると、矢は見事に木の中心に命中する。

 

「上手くいったみたいだな」

 

「カイトが指示してくれたからよ」

 

「俺はただ観測しただけだ。的に当てたのはシノンだろ。本当に凄いな」

 

そう言いながらカイトは私の頭を撫でてくる。嬉しさのあまり、耳と尻尾をピクピクと動かす。

 

「弓だけじゃなくてコイツも使えこなせるようになったらキリト達もビックリすると思うぞ」

 

「ふふ、そうね」

 

 

 

 

その後は空中戦闘の練習の兼ねてカイトと一緒に狩りをすることとなった。

 

「俺がモンスター達を引き付けている間に、シノンは弓矢で攻撃してくれ!」

 

「分かったわ!」

 

カイトは単身前に飛び出し、大型の鳥型モンスター達に刀を振り下ろす。すると、モンスター達はカイトに狙いを定めて攻撃してきた。それでもカイトは攻撃をかわしつつ、巧みな剣裁きでモンスター達を斬りつけていく。

 

私は少し離れたところから、カイトを援護するように弓矢でモンスター達を狙う。

 

1体、2体と次々とモンスター達を倒していき、残りは2体だけとなった。だが、2体だけになった途端、モンスター達はバラバラの方向へ逃げ出した。

 

「バラバラに逃げ出したか」

 

「右に逃げた方は私が仕留めるから、カイトは左に逃げた方をお願い!」

 

「ああ、頼む!」

 

カイトはそう言って左に逃げたモンスターを追い、私は右に逃げたモンスターに弓矢を向ける。さっきのイノシシ型のモンスターよりも動きが素早いが、これくらいなら問題ない。

 

――今だ!

 

ケットシーの視力を活かして狙いを定めて弓矢を放ち、モンスターを仕留めた。同時に左の方からモンスターの断末魔が上がり、ポリゴン片が砕け散る音が聞こえた。どうやらカイトもモンスターを倒したみたいだ。

 

「カイト、お疲れ様」

 

「ああ、シノンもな」

 

そう言い、拳をコツンとぶつけ合う。

 

「こうして空を飛びながら戦うのもいいわね」

 

「ALOはプレイヤーが空を飛べるのが売りのゲームだからな。だけど、まだ飛行に慣れてないと落っこちることがあるから気を付けろよ」

 

「大丈夫よ。だってこうして空も飛べているんだし」

 

少し調子に乗って宙で舞う。だが、気を緩めてしまい、翅が消えて地面へと落ち始める。

 

「きゃっ!」

 

「シノン!」

 

カイトが私の手を掴むが、彼も巻き込まれるように落ちてしまう。

 

私達はそのまま落下を続け、バキバキと木の枝の間を通り抜けて最後にドシーンッと音を立てて地面に落下する。

 

途中、木の枝の間を通り抜けたことが衝撃が和らいだおかげで、あまりダメージはなかった。それでもVR特有の不快な感覚は多少あった。

 

「シノン大丈夫か?」

 

「ええ。なんとか……」

 

私はカイトに覆いかぶさるように地面に倒れていた。落下している最中に、カイトが私を守ろうと自分が下になって受け止めてくれたんだろう。

 

「カイトの方は大丈夫なの?」

 

「ああ。今まで何度も敵の攻撃を受けて地面に落っこちたし、壁に叩きつけれてきたからな。それでもVR特有の不快な感覚にはあまり慣れないが……」

 

カイトがそう言った直後、私の尻尾のあたりに快感に似た変な感覚が伝わってきた。

 

「ひゃん!!」

 

反射的に見てみると、カイトの右手が私の尻尾を掴んでいたのだ。

 

前に私と同じくケットシーを選んだシリカから、ケットシー特有の三角耳と尻尾を触られると《すっごいヘンな感じ》がすると聞いていた。まさか、ここまでのものとは思いもしなかった。

 

「いきなり変な声なんか出してどうしたんだよ?」

 

「カイトっ!手、尻尾握ってるっ!」

 

「尻尾?これってシノンの尻尾だったのか」

 

カイトは撫でるように指先を軽く動かす。すると、またしても変な感覚が伝わってくる。

 

「わっ、ちょっ、いやっ!ひゃん!」

 

「何だ?尻尾に触れられるとこうなるのか?」

 

私の反応が面白いからなのか、カイトは意地悪するかのように笑みを浮かべ、尻尾を弄繰り回す。

 

「わんっ、きゃっ!にゃっー!!カイトっ!や、止めて~!!」

 

中々止めようとしないカイトをポカポカ叩く。

 

「わ、わかったっ!この辺にしておくから俺を叩くな!」

 

カイトはそう言って尻尾からやっと手を離してくれた。そして、私は尻尾を弄繰り回されたせいで体力を消耗してぐったりしていた。

 

「おい、大丈夫か……?」

 

「だ、大丈夫じゃないわよ……。この感覚にまだ慣れてないんだし……」

 

「わ、悪い……。シノンの反応が面白くて、触り心地もよかったからつい……」

 

ちょっぴりご立腹な態度をとると、カイトもやり過ぎたと反省している様子を見せる。

 

でも、実をいうとカイトにだったらまた尻尾を弄繰り回されてもいいかなと思っていた。仮にカイトが「尻尾触ってもいいか?」と聞いてきたら、迷わず「いいよ」と言ってしまうかもしれない。って、何てこと考えているのよ…!そんなことしたらカイトにそっちの気があるんじゃないかと思われるかもしれないっていうのに……。

 

こんなこと考えていると、カイトが声をかけてきた。

 

「シノンどうかしたのか?」

 

「な、何でもないわっ!そ、それよりも、私の尻尾を触っただけじゃなくてイタズラまでしてきたんだから、この後街でスイーツの1つは奢ってもらうわよ」

 

「そこまで怒るかよ。ていうか、調子に乗ってあんなことしたシノンにも原因があるんじゃないのか?」

 

「そ、それは…そうだけど…」

 

「まあ、別にそれくらい構わないが。シノンは何が食べたいんだ」

 

「ケットシー領で採れた果物を使ったフルーツタルトがいいわね。前にアスナたちから聞いて美味しそうだなって思って食べてみたかったの」

 

「なら決まりだな」

 

 

 

 

 

 

 

狩りを終えた私達がやってきたのはケットシー領の首都《フリーリア》。ケットシーの首都だということもあって、街にいるプレイヤーたちはケットシーが殆どだ。その中をカイトを連れて、フルーツタルトを出しているカフェへと向かっていた。

 

「あれ?カイト君ダー」

 

カイトを呼ぶ女性の声がし、声がした方を振り向く。

 

そこにいたのは、1人のケットシーの女性プレイヤーだった。トウモロコシ色に輝くウェーブヘアにケットシー特有の大きな三角の耳が付き、ワンピースの水着に似た戦闘スーツを身に纏い、スーツのお尻からは髪と同色の尻尾が生えている。

 

「何だ、ケットシーの領主様か」

 

「もう、普通にアリシャって呼んでくれてもいいのにー。今日はケットシー領まで何しに来たノ?」

 

「シノンにフルーツタルトを奢る約束して来ただけだ」

 

カイトにケットシーの領主様と呼ばれた女性は、私に気が付くと近づいて話しかけてきた。

 

「キミがシノンちゃんネ。アタシはケットシーの領主、アリシャ・ルー。よろしくネ」

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

アリシャさんは両手で私の手を掴んでブンブン振って握手する。なんか子供っぽい感じがするけど、気さくでいい人そうだ。

 

「話しはカイト君たちから聞いているヨ。凄腕の弓使いだって」

 

「す、凄腕の弓使いって……そんなこと……」

 

ケットシーの領主であるアリシャさんからそう言われて照れてしまう。

 

「シノンちゃんって凄腕のボディガードって雰囲気もあるし、よかったらアタシの護衛やらない?三食おやつに昼寝もついているヨ」

 

ALOを初めてまだ日が浅いのに、もう領主さんからスカウトされて驚いてしまう。

 

「え、えっと……。せっかく腕を高く評価してくれてありがたいですが、カイトたちと一緒にこの世界で冒険したりしたいので……」

 

「そっか〜。そういうことなら仕方ないネ。でも、シノンちゃんが暇な時とかはお願いしちゃってもいいカナ?」

 

「アリシャさんがそれでもいいなら、私は大丈夫です……」

 

「じゃあ、その時はよろしくネ!」

 

「は、はい」

 

アリシャさんは私との話を終えると、今度はネコ科めいたいたずらっぽい笑みを浮かべ、カイトの方へと近づく。

 

「ところでサ~、カイト君は本当にケットシー領で傭兵やらないノ?カイト君なら大歓迎なんだけどナー」

 

「前にも言ったが、アンタのところで傭兵はやる気はない」

 

「もう相変わらずクールでカッコいいんだから。リュウ君達も中々よかったけど、アタシはカイト君が一番なんだヨネ」

 

「知るか」

 

カイトはポーカーフェイスを崩すことなく、アリシャさんからの積極的なアプローチをかわす。そして、私の方をチラッと見て彼女にこう言った。

 

「アンタにはまだ言ってなかったが、俺にはシノンがいる。だからアンタのものにはなれない」

 

「カイト君、シノンちゃんとそういう関係だったんダ。なら、仕方ないネ」

 

私とカイトが付き合っていることを知ったアリシャさんは、ちょっと残念そうにする。

 

「でも、まだ完全に諦めたわけじゃないからネ。シノンちゃんもアタシや他の女の子にカイト君を取られないよう気を付けないとダメだヨ」

 

アリシャさんは「じゃあネ」と言って、何処かへと歩いていく。

 

「相変わらずだな、あの領主様は」

 

「そうね……」

 

いつも通り冷静でいるカイトに、ちょっと不機嫌そうにしてそう言う。カイトは私の様子に気が付き、声をかけてきた。

 

「シノン、何か怒ってないか?」

 

「別に怒ってないわ」

 

「絶対怒っているだろ」

 

「フン、ここでもモテモテで大変そうね……」

 

カイトは顔立ちもイケメンだと言ってもいいくらい美形で、性格もクールで落ち着きのある。その影響もあって、GGOでは非公式のファンクラブが作られるほど女性プレイヤーにモテているほどだ。アスナたちには他に意中の相手がいるから大丈夫だと思っていたけど、ALOでもモテていたなんて……。

 

カイト自身はそういうのには興味がないとは言え、私としては自分の彼氏がモテているのにはどうしても妬いてしまう。

 

すると、カイトは何か察して私の手を掴んだ

 

「カイト?」

 

「シノン、ちょっとこっちに来てくれ」

 

そう言って私の手を引いて人気のない狭い路地へと連れて行く。

 

「やっぱり、さっきのことで怒っているのか?」

 

「だって、自分の彼氏が他の女の子にモテていたら嫉妬しちゃうのは仕方ないじゃない。ましてやカイトは私の初めての恋人なんだから。」

 

「シノン、俺がモテているかどうかは自分ではよく分からない。だが、他の女が言い寄って来てもお前への想いがブレないとはハッキリと言える。それだけは信じてくれ」

 

「…疑ってるわけじゃないけど、本当に信じていいのよね?」

 

「ああ。それを今から証明する」

 

カイトはそう言うと私を自分の方に抱き寄せて、顔を近づけてきた。

 

「え……?」

 

何をするのかと思った矢先、カイトはいきなり私の唇に自分の唇を重ねてきた。

 

「んっ!?」

 

突然のことに驚いてしまい、抵抗しようとする。しかし、カイトの唇の気持ちよさからすぐに抵抗はなくなり、私は目を閉じながらカイトのキスを黙って受け入れた。唇を重ねるだけの軽いキスだったが、しばらくの間このままでいたいと思い、カイトの背中に手を回す。

 

10秒ほどしたところで、わたし達の唇は離れた。

 

私はポーッとカイトを見つめている。それに対してカイトはあまり照れた表情はしてない。

 

「か、カイト……?」

 

「俺がこんなことするのは本気で惚れた女だけだぞ、シノン」

 

「だからっていきなりしてくることないでしょ!」

 

すると、カイトは意地悪っぽい笑みを浮かべる。

 

「ほう。なら聞くが、GGOで俺のファーストキスをいきなり奪ってきたのは何処の誰なんだ?」

 

「そ、それは……」

 

私は言い返そうとするが中々言葉が思い浮かばない。

 

この前、GGOで第3回BoBが行われた時の出来事だ。最後に残った私とカイトで優勝者を決めるため、倒した闇風から拝借したグレネード弾を使い、同時優勝しようとしていた。しかし、場の空気の流れでつい、カイトに自分の想いを伝えるだけでなく、彼のファーストキスまで奪ってしまった。それでもカイトは照れることなく、いつも通り冷静を保っていたが。

 

今思うと、私はなんて大胆なことをしてしまったんだろうか。その時のことを思い出してしまい、一段と顔が熱くなるのが伝わる。

 

そんな私を見てカイトは再び意地悪っぽい笑みを浮かべ、こう言った。

 

「スナイパーでも自分がターゲットになっていることにも気を付けた方がいいぞ。まあ、これでおあいこだろ」

 

カイトと付き合い始めてから気が付いたけど、カイトは少女漫画に登場するクールな肉食系の男性キャラみたいなところがある。そんな彼に、私も少女漫画に登場する女の子みたいに手玉に取られている。

 

「バカ……」

 

凄く恥ずかしくなってカイトの顔が見れなくなり、彼の胸板に顔を埋める。

 

「カイト。もう少し、このままでいていい?」

 

「ああ。だけど、お前のオススメの店に早く行かなくていいのか?」

 

「それよりも今はカイトとこうしていたいの」

 

「まあ、俺はお前が望むなら構わないが」

 

そうして私とカイトは抱き合った。

 

「カイト」

 

「何だ?」

 

「んっ…」

 

「…!」

 

先程のお返しに、今度は私からカイトにキスをした。そのままキスを返しただけじゃカイトは動じない。だから…

 

「んっ……はむ…」

 

「…!?」

 

さすがにカイトも驚いた様子だ。何故なら、私はカイトの舌に自分の舌を絡めているキス…要するにディープキスをカイトにしているのだ。20秒ぐらいで唇を離し、カイトの顔を見ると…

 

「…………」

 

顔を少し赤らめて、びっくりした様子で呆然としていた。

 

「さっきのお返し……倍返しにしてやったわ。その様子だと効果は抜群だったようね」

 

「…………」

 

ポーカーフェイスで感情を表にあまり出さないカイト。さっき見せた意地悪な笑顔や優しい顔だって、きっと見た事あるのは、キリトやザック達のような親しい人だけだろう。

 

だけど、今のこの表情は……私しか見たことのない顔だったらいいな……。

 

「ねぇカイト……私はね……ずっと思ってたよ……あなたの女になりたいって……私の初めてを全部あなたにあげたいって……」

 

「……!」

 

「んっ!?」

 

今度はカイトが私にキスをしてくる。私がしたような深いキスだ。カイトは一旦唇を離すと……今まで見た事のないような雄の顔をしていた。

 

「……さすがに今はまだ早いが、これだけお前から煽ってきたんだ。後々に俺がお前に何をしても構わない覚悟はできているんだろうな……」

 

「もちろん……。今はさすがにまだ無理だけど、あなたにならどんなことをされても喜んで受け入れられるわよ……」

 

「面白い……。その時は覚悟しとけよ?」

 

私たちはその後しばらく、2人きりの世界に酔いしれた。




カイトとシノンのカップルは、リュウ君とリーファのカップルとは雰囲気が異なり、書くのに苦労しました…。それでも、カイトがシノンの尻尾を掴んだり、シノンとイチャつくシーンなどは書いて楽しかったです。

シノン相手にはちょっと肉食系なところを見せるカイトですが、アンダーワールド大戦では上弦の参……ではなく、サトライザーからシノンを守ってくれるでしょう。流石にディーアイエルのように一方的にボコボコにするのは難しいですが。

次回は旧版である意味伝説となったあのギャグ回になる予定です(笑)

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