ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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リーファ「GGOで最強ガンナー決定戦の第3回BoBが行われている中で、死銃(デス・ガン)たちによる殺人が行われた。その様子をALOで見ていたあたし達は菊岡さん……クリスハイトさんを呼び出し、リュウ君たちが事件に関わっていたことを知る」

ユイ「ママとリーファさんは、クリスハイトさんにパパとリュウさんの居場所を聞き出して2人の元に、そしてザックさんもカイトさんの元に向かうのでした」

アスナ「なんか前回の話から時間が大分経った気がするんだけど、気のせいかな?」

リーファ「あたしもなんかそんな気がするんですよね」

ユイ「いえ、気のせいではありませんよ、ママ、リーファさん。作中ではあまり時間が経っていないのですが、読者の方々からすれば既に4カ月近くの時間が経過したようですよ」

アスナ「ありがとうユイちゃん。でも、わたし達がそのことにあまり触れてはいけないような気が……」

ユイ「細かいことは気にしちゃダメですよ。ここではメタ発言もOKな場所なんですから」

アスナ、リーファ(既にヤバいとしか言えないような……)

ユイ「では、GGO編第16話どうぞ!」



第16話 激闘

太陽が完全に沈み、夕焼けの空から夜空へと変わっていた。その下に広がる砂漠の中を、俺とキリさんはバイクで駆け抜けていた。

 

最中、俺は洞窟の外でキリさんと2人で見張りをしていた時のことを思い出していた。

 

 

 

 

「キリさん、実は俺……大会が始まる前にALOに再コンバートして逃げ出したいって思ったんです。一緒にGGOに行ったキリさん、安全の保障がないのに協力してくれるカイトさん、死銃たちに命を狙われているシノンさんを見捨てて……。自分だけ助かろうとしてたんです……」

 

俺は地面に視線を落とし、少し間を空けてから再び口を開いた。

 

「誰かのために手を伸ばすって言っておきながら情けないですよね、俺……。青龍の剣士なんて皆が思っているような強いプレイヤーじゃないみたいですね……」

 

自虐している内に、余計に落ち込んでしまう。すると、キリさんが声をかけてきた。

 

「そんなことないぞ。怖いとか逃げ出したいって思ったのは俺も一緒だ。俺なんかSAOで殺した3人のプレイヤーのことを忘れようとしていたくらいだしな……」

 

「キリさん……」

 

「青龍の剣士は悪魔の力でも誰かを守ったり助けるために使える。黒の剣士にはないそんな強い力を持っているだろ」

 

キリさんの言う通りだ。 青龍の剣士はそんな奴だったよな。

 

「ありがとうございます、キリさん。俺はもう大丈夫です」

 

彼を安心させようと笑みを浮かべる。

 

「いつもみたいにいい顔になったな。俺が本当に女だったらお前に惚れていたかもな」

 

普段通り軽い冗談で言っているみたいだが、俺にはとてもそうには見えなかった。

 

「あの、今の姿でそんなこと言うの止めてくれませんか?なんかキリさんが本当にそっちの気があるんじゃないのかって思うんですけど……」

 

俺の言ったことに、キリさんは慌てた様子を見せる。

 

「ちょっ!俺はそんな気は一切ないから!今のも軽い冗談だから!!」

 

大会前に彼のせいでえらい目に合ったから、仕返しにもう少し彼をからかっておこうか。

 

 

 

 

そんなことを思い出し、気持ちを落ち着かせ、バイクのアクセルひねった。

 

一刻も早く奴らがいる場所に行こうと、瓦礫が散乱しているエリアを通り抜けようとする。普通のバイクは悪路地を超えるのは困難だ。だが、俺とキリさんが乗るビートチェイサーとトライチェイサーには問題ない。俺たちが乗るバイクは、トライアル用のバイクをベースとしているため、軽々と瓦礫などの障害物を乗り越え、急斜面を駆け上っていく。

 

更にバイクを走り続けていると、前方に2台のバイクが走っている姿を捉えた。

 

「来たな」

 

アビスとソニーは俺たちが来たのを確認すると、俺たちを挑発するかのようにスピードを上げて蛇行運転を繰り出してきた。

 

「逃がすかっ!」

 

俺たちもスピードを上げて距離を詰めようとする。だけど、奴らも更にスピードを上げて引き離そうとする。オマケに蛇行運転しているせいで迂闊に近づくこともできない。

 

それでも俺たちはこれ以上距離を離すわけにはいかないと一段とスピードを上げ、少しずつ距離を縮めていく。

 

あともう少しで追いつけるとなった途端、アビスは急にバイクのスピードを落として俺の後ろへと回った。そしてバイクの前輪を浮かせる技……ウィリー走行で攻撃を仕掛けてきた。

 

「しまった!」

 

俺はビートチェイサーを操って横に避ける。だが、アビスはバイクの前輪が地面に付いて体制を整えると、再びウィリー走行を繰り出してきた。

 

「くっ!」

 

なんとか攻撃を回避して奴の横に付こうとするが、今度は後輪を浮かせる技……ジャックナイフを繰り出して攻撃してきた。そして、俺はハンドルを横に切ってそれを攻撃をかわす。

 

「リュウ!」

 

キリさんが俺を助けようとトライチェイサーを走らせるが、行く手をソニーのバイクが阻む。

 

「邪魔はさせないぞ、黒の剣士」

 

「くそ!」

 

キリさんの助けに期待できない以上、アビスの相手は俺1人で何とかするしかない。

 

アビスのバイクと並走状態となった瞬間、左手をハンドルから離し、左腰のホルスターからイクサカリバーを抜き取る。

 

「これでも喰らえ!!」

 

トリガーを引き、アビスに目掛けて発砲する。

 

アビスはバイクを操ったり攻撃を全てかわすと、お返しにと言わんばかりに奴もハンドガンを取り出し、俺に発砲してきた。

 

1発の弾丸が俺の頬を掠め、残りの数発が数メートル先にあるドラム缶に命中。ガソリンが入っていたのかドラム缶は大きな爆炎を上げる。

 

俺たちはそんなことに気を止めることもなく、バイクを走らせながら銃の打ち合いをする。その後ろとキリさんとソニーが付いてくる。

 

お互いの銃弾がなくなった瞬間、俺は一気にアクセルを全開にしてアビスを引き離す。俺のビートチェイサーの方が速度を上回っていてアビスから距離を離してしていく。

 

奴との距離を数百メートルまで離したところでバイクの速度を徐々に落としていき、バイクをUターンさせてアビスに向かって走らせる。そして、イクサカリバーをガンモードからカリバーモードへと変え、すれ違いざまにアビスを斬りつける。更にその後ろを走るソニーも同様に斬りつけた。

 

「ぐおっ!」

 

「ぐわっ!」

 

アビスとソニーは転倒し、地面を転がる。同時に俺は急ブレーキをかけてバイクを停める。

 

先に起き上がったソニーがサブマシンガンを手に取り、銃口を俺に向ける。

 

「させるかぁぁぁぁっ!!」

 

キリさんがフォトンソードを手に取り、バイクから飛び降る。そして、ソニーのサブマシンガンを弾き飛ばす。

 

この拍子にソニーは殺害したプレイヤーをカウントするのに使用していた赤と黄色の玉が着いた算盤のようなものを落とす。拾おうと手を伸ばすが、俺はそれより先に右腰のホルスターからディエンドライバーを抜き取り、算盤へと発砲。算盤は真っ二つになって壊れた。

 

「貴様ら、俺のゲーム記録をよくも……」

 

顔は深く被った黒いニット帽と顔半分を隠すように覆っている白い布のせいでよく見えないが、声から怒っているのがわかる。

 

だけど、勝負の決着はもう着いたも当然だ。

 

「どうやら俺たちの勝ちみたいだな。ログアウトして、警察に自首した方がいいと思うぞ」

 

キリさんはアビスとソニーに言い放つ。すると、地面に倒れ込んでいたアビスがゆっくりと起き上がった。そして……。

 

「フハハハハハハ!!」

 

突然狂ったように笑い出すアビス。頭でも打っておかしくなってしまったのか?

 

「何がおかしいんだ?」

 

「いやぁ、ここまで俺を楽しませてくれるなんて流石は青龍の剣士と黒の剣士だなぁ。でも、まだ戦いは終わってないぞ」

 

何を言っているんだ、この男は。殺害方法もわかったし、菊岡さんに言えば本名や現在の住所だって明らかになるっていうのに。それに、ここにはアイツの得意な長剣だってない。もう追い詰められたも当然だというのに……。

 

すると、アビスはボロボロのポンチョの中から何か取り出す。大きさからして拳銃だろう。そう思った瞬間だった。

 

アビスはポンチョの中から取り出したものを右手に持ち、俺に一気に襲い掛かってきた。俺は咄嗟にイクサカリバーの刃で攻撃を受け止めた。この時初めてアビスが取り出したのは、拳銃じゃなくて短剣だということに気が付いた。

 

「デスゲームは1年前に終わったはずなのに前に戦った時より腕は上がっているみたいだな」

 

俺は奴の短剣を弾き、一旦距離を取った。

 

「言い忘れていたが、俺は長剣だけじゃなくて短剣の扱いも得意なんだよ。SAOでは短剣スキルも完全習得していたくらいだしな」

 

嘘だろ…!?アビスが短剣も使うなんて一度も見たことも聞いたこともないぞ!

 

「それともう1つ、特別サービスとして教えてやるよ。今俺が使っているのは《エタールエッジ》と言ってな、GGOに存在するナイフ系の武器でもトップクラスのものだ」

 

ただでさえアビスの実力だけでも厄介だというのに、そこにトップクラスの武器も加わるっていうのかよ。「最悪だ」と口に出したくなるくらいだった。

 

緊迫とした空気の中、武器を構えてアビスと向き合っていると、後ろの方からキリさんの絶叫がする。

 

「ぐわあああああっ!!」

 

後ろを振り向くと、地面に倒れているキリさんの姿があった。そして、ソニーが右手に武器を持って立っていた。

 

奴が持っているのは、俺のイクサカリバーやカイトさんの無双セイバーのように拳銃に水色の刃が付いた銃剣型の武器だ。

 

「キリさん!」

 

急いで彼の元に駆け付ける。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「なんとかな。アイツの攻撃は防いだはずなのにどうして……」

 

「黒の剣士。ソニーが今持っているのは《ブレードガンナー》って言ってな、俺のエターナルエッジと同じくトップクラスの武器だ。お前のそのビームセイバーじゃ防ぐことはできないぞ」

 

ご丁寧に解説してきたアビスに俺もキリさんも腹を立てつつ、背中合わせになって武器を構える。

 

アイツらを追い詰めたと思ったら逆に俺たちが追い詰められるなんて……。これはヤバいぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

千代田区のお茶の水の都立中央病院に着いたあたしと明日奈さんは料金を払うと、タクシーから飛び降りる。

 

時刻は夜の10時近くだったため、入口にある自動ドアは電源が落ちていて、その脇にある夜間面会口の表示があるガラス戸を押し開け、面会受付カウンターに向かう。

 

「7025号室に面会の予約がある桐ヶ谷と結城です!」

 

そこにいる女性看護師さんに菊岡さんから聞いた部屋番号と自分たちの名前をいい、学生証を出す。菊岡さんからすでに連絡が入っていたようで、女性看護師さんはすぐに面会者パスのカードを渡してきた。

 

そしてリュウ君とお兄ちゃんがいる部屋に向かおうと、小走りでエレベーターを目指す。

 

エレベーターの手前にある駅の自動改札口に似たゲートに面会者パスのカードをかざし、ゲートが開くとすぐに上に行くボタンを押す。エレベーターの扉が開くと飛び込んで、リュウ君とお兄ちゃんがいる部屋がある階のボタンを押す。

 

「リュウ君、お兄ちゃん……」

 

「直葉ちゃん、2人は絶対に大丈夫だよ」

 

「明日奈さん……」

 

心配するあたしを明日奈さんが微笑んでそっと抱きしめてくれる。でも、明日奈さんも不安そうにしているがよくわかる。

 

『ママ、リーファさん、大丈夫ですよ。パパとリュウさんはどんな強い敵が来ても負けません。だって2人とも強いですから』

 

明日奈さんのケータイからユイちゃんの声がする。ユイちゃんの明るい声を聞き、あたしと明日奈さんは安心する。

 

その間にも目的の階に着き、あたしたちはエレベーターから降りる。

 

ユイちゃんのナビ通りに無人の廊下を走り、7025号室の部屋の前まで来る。そこにあるプレートに面会者パスのカードをかざし、ドアのロックが解除されるとドアを開ける。

 

部屋の中には2つのベッドがある。そのベッドには2人の少年が横たわっており、医療関係の機械と接続されたコードが幾つも枝分かれして彼らの剥き出しの胸に貼り付けられている。そして、2人の頭にはアミュスフィアがある。

 

近くには髪の毛を三つ編みにし、メガネをかけた1人の女性看護師さんがいた。

 

「桐ヶ谷君っ!橘君っ!」

 

ベッドに横たわっていたのはリュウ君とお兄ちゃんだった。でも2人とも息を切らして苦しそうにしていた。

 

「リュウ君っ!お兄ちゃんっ!」

 

「2人に何かあったんですかっ!?」

 

急いで看護師さんの元に行く。

 

「結城さんと桐ヶ谷君の妹さんね?お話は伺っています。2人共身体的に危険ということじゃないから大丈夫だわ。でも、急に心拍が上がって……」

 

VRMMOをプレイしている時に心拍が上昇することは異常ではない。恐ろしげなモンスターと戦えば、緊張し、脈が速くなることがある。だけど、リュウ君とお兄ちゃんはデスゲームとなったSAOで戦ってきたから普通のゲームでここまでなることはないと思う。こうなっているということは何か余程のことがあるに違いない。

 

『ママ、リーファさん、壁のパネルPCを見てください。回線をMMOストリームの回線に繋ぎます』

 

ユイちゃんの声がし、病室にあるモニターの方を見る。すると、電源が付き、ALO内で見ていた中継が映し出される。

 

それは、ALOで見た中継映像に映っていた黒いポンチョで身を隠しているプレイヤーと黒いニット帽を深く被っているプレイヤーが、2人のプレイヤーを挟み撃ちにして追い詰めているものだった。名前はそれぞれ《エイビス》、《Bean》と表示されていた。そして、 エイビスの手にはダガー、《Bean》の手には拳銃の上部に水色の刃が付いた武器が握られている。

 

追い詰められている2人の内1人は、紺色のフード付きを羽織った、やや癖がある長い黒髪をポニーテールにしている少年で、左手には拳銃の上部に赤い刃が付いた武器が、右手には水色と黒の拳銃が握られている。アバターの足元に小さなフォトンで《Ryuga》と表示されている。

 

「あれが……リュウ君……」

 

髪型がいつもと違う影響もあって、初めはリュウ君本人には見えなかったが、よく見てみるとあたしが知る彼の面影があった。

 

もう1人は黒一色の服装に身を包み、黒髪のロングヘアーをした少女で、その右手には青紫色の刃のビームソードらしいものが握られている。足元には《Kirito》と表示されている。

「お兄ちゃんなの……?」

 

「わたしたちが知るキリト君とは姿が大分違うけど、あの構えは間違いなくキリト君だよ」

 

あたしたちと同じくモニターを見ていた看護師さんが、やや戸惑ったように口を開いた。

 

「今モニターに映っているのが橘君と桐ヶ谷君のアバターってこと?」

 

「そうです。戦闘中で、だから心拍が上がっているんだと思います」

 

明日奈さんがすぐにそう答え、言葉を続けた。

 

「あの2人はザック君の言う通り、アビスとソニーだわ……」

 

アビスとソニー。それはザックさんが言っていた《ラフィン・コフィン》という殺人ギルドにいたというプレイヤーの名前だ。

 

「リュウ君、お兄ちゃん……」




お待たせしました!4カ月ぶりの本編になります。久しぶりのシリアスなので文章がおかしいところがあるかもしれないですが。

旧版ではキリトと途中で別れましたが、リメイク版ではキリトと別れることはなく一緒に戦う展開にしました。そしてソニーの武器もブレードガンナーに変更しました。

SAOアニメは先々週ではベルクーリが死に、昨日の話では「最悪だ」の一言は出てくるほどヤバい状況に。本作でもこの辺りから一気に地獄と化すでしょう。そして悲報ですが、本作のアリシゼーション編で、主要キャラの何名かがデスゲームだったらアウトな展開になる可能性が高くなってきました。

ゼロワンも今日の放送を見て最初は衝撃的過ぎて言葉を失いましたが、ゼロツ―が登場してからはテンションが上がりました。次回は滅と手を組むようなのでSAOアニメと並んで楽しみです!

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