ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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5日以内に連続して投稿できたのは凄く久しぶりな気がします。小説を書き始めた頃は3,4日のペースで投稿していたのに、今となってはペースもすっかり落ちてしまって。あの頃は早くリュウ君とリーファをくっ付けたいというのを糧に頑張っていて、時間も今よりあったというのが影響しているかと思います……。

今回からシリアスな要素が多くなります。では、どうぞ。


第6話 《巨大樹の森》

2023年11月7日 第45層主街区

 

デスゲーム開始から1年が経過した。攻略は順調に進められ、現在の最前線は45層となった。残りは55層。この調子で行けば、後2年もしないうちに第100層まで行けるだろう。

 

「回復アイテムに転移結晶、それに武器や防具の耐久値はこれでよしと。ファーランさん、オレはいつでも出発できますよ」

 

「リュウは準備OKだな。ミラはどうだ?」

 

「あと3分待って。女の子の準備って時間がかかるからね」

 

「しょうがないな。早くしろよ」

 

まだ準備を終えてないミラを待つ俺たち。本当なら今年で中2になった俺は中学に行かなければならないけど、この仮想空間の迷宮攻略に行くのがすっかり日常になっていた。

 

ミラも準備を終え、迷宮区に出発する。

 

「この層の迷宮区も大分攻略されたし、5日後には第46層に進めそうですね」

 

「そうだな。ん?あそこにいるのって……」

 

話しながら迷宮区がある方への門へ向かっていると、ファーランさんが何か発見する。俺とミラもその方向を見る。そこにいたのは7人のプレイヤー。その中に俺たちがよく知っている人がいた。

 

「フラゴンさん」

 

俺が話しかけるとフラゴンさんはこっちの方を見た。

 

「君たちか。この前の攻略会議以来だな」

 

フラゴンさんは第1層フロアボス攻略の時にパーティーを組んだ人で、現在は攻略組の小規模ギルドを作り上げ、そこのリーダーをやっている。

 

「ところで、何かあったんですか?」

 

「実は……」

 

「頼む、仲間を助けてくれ!」

 

フードで顔を隠した1人の男性が泣きわめいていた。

 

フラゴンさんの話によると、その男性の仲間の人がこの層の南側にある《巨大樹の森》というフィールドダンジョンに行って中々戻って来なくて、攻略組のプレイヤーたちに助けを求めていたという。仲間の人たちはまだ全員が無事らしい。恐らく、フィールドダンジョンにある安全地帯にいるのだろう。

 

事情を知った俺たち。すると、ファーランさんが男性に声をかけた。

 

「なあ、アンタは何で1人だけここにいるんだ?それにここは最前線だろ」

 

「俺たちはもう少しで攻略組に入れるレベルだからって、今日は最前線のフィールドダンジョンに行こうってなったんだよ。でも、途中で仲間たちとはぐれて、探したんだけど、回復アイテムもなくなりそうになって、ここに戻って来たんだよ。本当は今すぐに助けに行きたかったんだけど、俺……仲間の中で一番レベルが低くて……」

 

これは中層プレイヤーの軽い考えが引き起こしたことだ。でも、このままこの人を放っておくわけにはいかない。

 

「あの、俺たちでこの人の仲間を助けに行きませんか?まだ生きているって言うなら行かないとっ!」

 

俺が言ったことに反対する人は誰もいなかった。

 

「そんなの当たり前だろ」

 

「アタシたちで助けに行こうよ!」

 

「攻略組は攻略を進めることだけが全てじゃないからな」

 

ファーランさん、ミラ、フラゴンさんの順に言う。フラゴンさんのギルドの人たちも頷く。そして、フラゴンさんが男性に依頼を引き受けると言った。男性は喜んでいた。

 

早速、《巨大樹の森》へ向かう。

 

《巨大樹の森》。高さが15~20メートル近くもある巨大な木によって形成されている森だ。この層の3分の1近くの広さを持ち、第35層にある《迷いの森》と同様にいくつものエリアに分割され、1つのエリアに一定時間いると東西南北の連結がランダムにされてしまうという仕組みとなっている。《迷いの森》の完全上位版と言ってもいいダンジョンでもある。

 

そして、そこで一番厄介なのが巨人型モンスターだ。3,4メートルの大きさを誇る巨人は、他のフィールドに生息しているモンスターと比較してもステータスは高い方だ。そのため、攻略組プレイヤーでない限り苦戦することが多い。流石に、昔流行っていた人類と巨人の戦いを描いた漫画に登場する巨人のように、大砲で頭を吹っ飛ばしても1,2分くらいで再生してしまうほどの生命力はないが。こんなものがSAOに本当にあったら、かなりヤバかった。

 

途中、武装した兵士たちによって厳重な警備体制がなされている、高さ20メートル近くにもなる石造りの壁が設けられたところにある関所を通り、《巨大樹の森》へと到着する。

 

「ここが《巨大樹の森》……」

 

「凄く高い木だね……」

 

俺とミラが一言。

 

この森にある木は迷宮区タワーほどではないが、かなり高いと言ってもいいくらいだ。アインクラッドでこんなに高さがあるものを見るのは初めてだ。

 

入り口前で、装備やアイテムの最終確認をする。それを終えるとフラゴンさんが先頭に立ち、皆に言う。

 

「これから森に入るわけだが、まだ攻略はあまり進められていないため、トラップも沢山あるかもしれない。それに、ここにいる巨人型モンスターは強い。気を引きしめていくように」

 

その言葉に全員が頷く。

 

「行くぞ」

 

フラゴンさんが言い終えると、《巨大樹の森》に入る。

 

森の中は、巨大な木々によって日の光が遮られていて、それに出発したときは晴れていた空も今は曇っているため、日中でも迷宮区並に薄暗い。

 

森の中を進んでいる途中、何回か巨人型モンスターと遭遇するが、俺たちは特に苦戦することなく倒すことができた。

 

「これで10体目ですね」

 

「ああ。向こうもちょうど終わったみたいだだから合計12体だぜ」

 

2体の巨人と戦っていたフラゴンさんたちもちょうど戦いを終えたようだ。フラゴンさんも俺たちも倒したことに気が付くと、こっちに向かってきた。

 

「やっぱり君たちもいると普段より効率もいいな」

 

「ホント?やっぱりアタシたちって凄いんだ」

 

「おい、あまり調子に乗るな」

 

フラゴンさんに高く評価され、浮かれているミラの頭に軽くチョップして注意するファーランさん。このやり取りに場の空気が和む。

 

こんなやり取りを終え、出発する。

 

その後も《巨大樹の森》の中を進むが、プレイヤーは中々発見できず、一時間ほどが経過する。しまいには雨が降ってきて、霧までも出てきた。

 

俺とファーランさん、ミラは普段から羽織っているフード付きマントのフードを深く被り、雨具替わりにする。フラゴンさんたちも装備ウインドウを操作し、俺たちと同様にフード付きマントを羽織って、フードを深く被る。

 

その間にも2体の巨人型モンスターが出現し、戦闘になる。雨と霧のせいで視界が悪く、地面も滑りやすくなっている。

 

ファーランさんやミラ、フラゴンさんたちとスイッチを繰り返しながら巨人型モンスターの相手をする。

 

そんな中、前線で戦っていると1体の巨人が俺に拳を振り下ろしてきた。バックステップで攻撃を回避し、ぬかるんだ地面を滑る。剣を構え、巨人に反撃しようとしたときだった。

 

足元の地面が急に光だし、俺を包み込む。これはワープトラップだ。すぐに抜け出そうとするが、すでに遅かった。

 

気が付くと、先ほどとは風景が変わっていて、他の皆も巨人型モンスターもいない。

 

「ファーランさん!ミラ!皆!」

 

叫ぶが、誰の返事も聞こえない。

 

マップを出して確認してみると、いるのは《巨大樹の森》に変わりないが、俺は先ほどいたところとは別のマップにいた。

 

「ワープトラップがこんなところにあるなんて聞いたことないぞ。それよりも早く皆と合流しないと」

 

過去にワープトラップにかかって、ファーランさんとミラとはぐれたことが1度あったので、それほど焦ることはなかった。だけど、このフィールドダンジョンはまだマッピングが終わっていない。どんなトラップやモンスターが待ち受けているかわからない。

 

皆とはぐれてしまった俺はたった1人で、慎重に巨人たちが支配するこの森の中を進むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リュウとはぐれてから20分ほど経つ頃には、フラゴンのギルドメンバー4人ともトラップによってはぐれてしまった。今、俺と一緒にいるのは、ミラとフラゴン、彼のギルドメンバー1人だ。

 

「ファーラン、雨や霧のせいで全然見えないよ!」

 

「ミラ、俺から離れるな!」

 

雨は止む気配はなく、霧もますます濃くなっていく。俺たちははぐれないようにと固まって移動している。

 

「これはかなりマズイな。サイラム、転移結晶で街に戻って血盟騎士団や他の攻略ギルドに応援を要請してくれ」

 

「はい!」

 

サイムラと呼ばれた少年は転移結晶を取り出し、街に戻ろうとする。だが、いくらやっても転移結晶は反応しない。

 

「ダメです!転移結晶が使えません!」

 

「このダンジョンの最深部付近はクリスタル無効化エリアか」

 

「外部との連絡が取れないとなると、俺たちでリュウたちやあのプレイヤーの仲間たちを見つけ出さなければならないってことかよ」

 

「一旦、森を出て転移結晶で街に戻って応援を呼びに行く時間もなさそうだ。私たちだけでなんとかするしか……」

 

「そうなると早く見つけ出さないと……。最初にはぐれてしまった彼一人じゃ……」

 

「リュウを甘く見ないで!」

 

サイラムという少年が言っている途中ミラは声をあげて割って入ってきた、更にそれに続くように俺も言う。

 

「リュウはうちのパーティーのエースだ。そんな簡単にやられたりはしないぜ。アイツの強さは俺が保証する」

 

「すいません……」

 

この光景を見ていたフラゴンは笑みを浮かべ、俺に話しかけてきた。

 

「彼のことをそんなにも信頼していて、君たち3人の絆は強いんだな」

 

「アタシたちの絆は簡単に壊れたりはしないよ!絶対に3人で現実に帰るって決めているんだよ!」

 

「君たちが仲間を思う気持ち、強く伝わって来たよ。仲間を思う気持ちは私も同じだ。早く皆を見つけるぞ!」

 

仲間の絆が強いのはフラゴンたちの方も同じのようだな。

 

リュウ、お前は今どこにいるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファーランたちとはぐれたフラゴンのギルドメンバー4人の内2人は、雨が降り、霧が立ち込める森の中を進んでいる。

 

「一向に雨が止む気配も、霧が晴れる気配もないな」

 

「そうね。早くフラゴンさんや他の皆と合流できればいいけど……ん?」

 

槍を持った女性プレイヤーが濃い霧の中を動く巨大な影を発見する。その巨大な影はゆっくりとこちらに向かってきている。

 

「どうした?」

 

「何かが近づいてきているみたい。巨人型モンスターかもしれないけど、サイズが他のよりありそうなのよ」

 

「サイズがデカくても巨人型モンスターは、攻略組プレイヤー2人だけでも倒せないレベルではないだろ」

 

2人は武器を手に取り、警戒態勢に入る。そして、濃い霧の中から巨大な影は2人の前に姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《巨大樹の森》を一人で歩き続けて30分近く経過する。策敵スキルをフルに活用し、巨人との戦闘をなるべく避けつつ、ファーランさんたちを探している。だが、皆は一向に見つからない。

 

そんな中、ある場所へとたどり着く。そこには5,6人ほどのプレイヤーの分の武器や防具が地面に転がっていた。

 

「これってまさか……」

 

恐れていたことが起こっていった。これらの武器は遭難したプレイヤーたちの……。それはつまり……。悔やんでいると足元に1つの記録結晶があるのに気が付く。

 

「これは録音クリスタル。どうしてこんなものが……」

 

録音クリスタルを確認してみると、1人の男性の声が結晶から聞こえる。もしかして、この録音クリスタルお持ち主だった人のものなのか。

 

『オレはもう終わりだ……。あのフードで顔を隠した奴は、このフィールドダンジョンは中層プレイヤーでも最前線で安全に探索することができるところだと言っていたけど、どう見ても危険過ぎる。きっと、アイツに騙された。転移結晶は使えず、あの()()()()()()はヤバすぎる。オレの仲間は奴に…………ぎゃああああ!!』

 

男性プレイヤーの悲鳴とポリゴンが砕け散る音がしたところで、録音クリスタルに残っていた音声は途切れていた。

 

()()()()()()……?」

 

このフィールドは巨人型のモンスターは多い。だけど、赤い目をした巨人なんていなかった。それに俺たちに仲間の救援を依頼してきたあの男性との話といくつも矛盾がある。どういうことなんだ……。

 

「っ!?」

 

その時、地面に巨人の足跡と手の型があることに気が付く。それもこのダンジョンに入ってから戦った巨人たちより明らかに大きいものだ。

 

「これって、()()()()()()のものなのか?」

 

その直後、何処からか悲鳴が聞こえる。

 

「うわあああああ!!」

 

「きゃあああああ!!」

 

あの声はフラゴンさんのギルドの人たちの……。

 

急いで悲鳴が聞こえた方に言ってみると、悲鳴をあげていた2人のものと思われる武器や防具が転がっていた。そして、赤い目の巨人のものと思われる足跡と手の型はまだ先へと続いている。それが続く方向から別の2人の悲鳴が聞こえる。

 

「まさか、あそこに……。ファーランさん、ミラ!」

 

2人もそこにいるんじゃないのかと思い、雨と霧で視界が悪い中を全速力で走って向かう。

 

「頼む、無事でいてくれ!」




巨大樹の森、巨人など第45層はオリジナルで「進撃の巨人」をベースとした感じとなっています。「進撃の巨人」の要素は他にも色々ありますが。

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