ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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大変長くお待たせいたしまして申し訳ございません。

どうでもいいことですが、ここ最近のリメイク版のリュウ君が、オーズの映司だけでなく、エグゼイドの永夢や鎧武の紘太っぽくなっているなと思いました。

それどころか、ビルドに登場する仮面ライダークローズとはかなり共通点があるんですよね。青い龍をモチーフ、変身者の名前が万丈龍我(性格はかなり違いますが)。クローズといえば最近、クローズマグマにパワーアップし、挿入歌の「Burning My Soul」がカッコいいとなってます。エグゼイドや鎧武の時みたいにCDの発売日が今から待ち遠しいです。ですが、先週のビルドでクローズ/万丈がかなりヤバイ事態に……。

無駄話が長くなってしまいましたが、今回の話になります。


第23話 科学者とユニークスキルとかつての仲間

「ここは……?」

 

意識を取り戻して目を覚ましてみると、俺は分厚い水晶の板の上にいた。辺りは夕焼け空

がどこまでもそれはどこまでも広がっている。

 

俺は確か皆と一緒に須郷と戦って倒したはずだ。だけど、周りを見渡しても皆の姿はない。

 

ペイン・アブソーバが低い状態で蛮野/レデュエからまともに攻撃を受けた後も、無茶をして戦ったせいで死んでしまったのではないか。ここは死後の世界なんじゃないのかと思ってしまった。

 

だけど、ALOはSAOと違って死ぬことはない。それを証明するかのように、俺は蛮野/レデュエとの戦いでボロボロになった装備を身にまとっている。ならば、ここはALOの中に違いない。でも、ここは一体どこなんだ。

 

辺りを見渡していると、不意に後ろから声がした。

 

『気が付いたようだね、リュウガ君』

 

振り向くと男性が1人立っていた。白いシャツにネクタイを締め、白衣を羽織った科学者の恰好をした30代くらいの男性だ。

 

俺はこの人のことを知っている。最初は驚きを隠せなかったが、彼の名を口にする。

 

「あなたは茅場晶彦……」

 

茅場晶彦。SAOの開発者にしてSAO事件の首謀者。奴は血盟騎士団の団長ヒースクリフとしてSAOにログインしていたが、キリさんと相打ちになって倒され、現実世界では行方不明となっているはずだ。

 

『そうであるし、そうでないと言える。私は茅場昌彦という意識のエコー、残像だ』

 

「わかりにくいことを言う人ですね。俺には理解できないことですよ」

 

茅場は苦笑いする。

 

『キリト君にも同じことを言われたよ。わかりにくくて、すまないな』

 

これには俺も呆れることしかできなかった。

 

「そういえば、蛮野と戦っている時に俺を手助けしてくれたり、カイトさんたちが世界樹の中に来られるようにしたり、俺たちをSAOの時と同じ姿にしたのは、あなたの仕業なんですか?」

 

『その通りだ。君たちをあのまま見過ごすわけにはいかなくてね』

 

「まさかSAOのラスボスに助けられることになるなんてな……。まあ、あなたには色々と助けられたようですし、とりあえず礼は言っておきますよ」

 

『礼は不要だ。君は私の予想を上回るものをいくつも見せてくれたからね。私も君に驚かされてばかりだったよ。まさか、あの技……《龍刃(りゅうじん)》まで使えるとは私も思ってもいなかったよ』

 

「りゅ、《龍刃》……?」

 

茅場が言っているのは、俺が使ったあの見たことのないソードスキルのことなのか。でも、《龍刃》なんていうスキルは一度も聞いたことはない。それに、ALOにはソードスキルは存在しないはずだ。俺はてっきりオーバーロードの力の一種だと思っていたが、蛮野も知らないものだと言っていた。じゃあ、あれは何だって言うんだ……。

 

俺の疑問に答えるように茅場は答える。

 

「その様子だと気が付いてないようだね。《龍刃》はSAOで全十種存在するユニークスキルのうちの1つだ」

 

「何だってっ!?」

 

このことに俺は驚きを隠せなかった。

 

ユニークスキルはキリさんの《二刀流》やヒースクリフの《神聖剣》といったSAOで1人にしか与えられないスキルのことだ。でも、俺はユニークスキルなんて持っていなかったはずだ。

 

「《龍刃》は、盾と併用して使用することができないが、片手剣スキルより強力な専用のソードスキルを使うことができ、補正に敏捷性が上昇する効果があるスキルだ。このスキルは、全てのプレイヤーの中で最も悪しき力に負けない心を持つ者に与えられる。一応、《龍刃》は邪竜の力が源だっていう設定があるからね。その者が魔王に対するもう1人の勇者となる予定だったんだよ」

 

そういえば、ヒースクリフ団長の正体が茅場晶彦だと判明した時、茅場はこんなことを言っていたな。《あるユニークスキル》を持つ者が《二刀流》スキルを持つ者と共に、魔王に対する勇者たちの役割を担うと。

 

俺はそれに該当するのは、カイトさんかアスナさんのどっちかだと思っていた。だから、未だにこのことが信じられなかった。

 

『君は、自分はもう1人の勇者になることはありえないと思っているだろう。だが、君はかつて仲間を失って心の闇に囚われてもそれを乗り越え、《青龍の剣士》と呼ばれるほどまで強くなった。だから君が選ばれてもおかしくない』

 

《龍刃》を与えられた俺だから、茅場はあの時『悪の力を支配し、己の力にしろ』と言ったんだな。この言葉の意味をやっと理解できた気がする。

 

よく考えてみると思い当たることがいくつもあった。まずは、所持スキルの中に文字化けしているスキルが増えていたこと。次は、蛮野/レデュエにトドメを刺すのに使った《グランド・オブ・レイジ》は、キリさんが茅場に倒されそうになった時に無意識に放った技と同じものだったこと。そして、須郷と戦った時には、オーバーロードの力を失ったはずなのに何故か《ドラゴニック・ノヴァ》を使えたことだ。

 

俺自身予想もしていなかったことだから、今まで気が付かなかったんだろう。

 

『君がこの世界で《龍刃》を使えたのは、恐らくオーバーロードとなるメダルが君に入ったことと、君の誰かを守りたいという強い思いが重なったことが影響しているのだろう。こんな偶然、どうやって起きたのか、私にもよくわからないよ。まあ、この想定外のこともネットワークRPGの醍醐味というべきかな……』

 

ALOで《龍刃》を使えたのは、要するに偶然身に付いたことなのか。なんか、俺が生まれる前にやっていた特撮番組でもあった、主人公が電気ショックと受けたことと主人公の「強くなりたい」という強い意志が重なったことで、新たな力を手に入れたっていうやつみたいだ。それと似たような仕組みなんだろう。でも、俺のは力を使うたびに、オーバーロードへとなっていく危険性もあるオマケ付きだったが。

 

「なるほど。あの力は、あなたが作り上げたものだと言ってもよさそうですね。でも、俺に力を与えたのが誰であっても、俺がその力をどう使うかは俺が決めることですよ。例えそれが悪と同じものだったとしても、俺が悪と同じ存在でも、守りたいもののために戦えるなら……」

 

『君らしい答えだね。話が変わるが、彼らに会ってあげたまえ』

 

「彼ら?」

 

『君もよく知っている人物たちだ。彼らも君と会いたがっていたよ』

 

すると、目の前の空間に光が凝縮し、モスグリーンのフード付きマントを羽織った青年と少女が姿を現した。俺はこの2人を見て驚きを隠せなかった。

 

「えっ!?ファーランさん、ミラ……?」

 

「久しぶりだな、リュウ」

 

「会って話すのは1年と2カ月ぶりだね」

 

ファーランさんとミラが今目の前にいることが信じられなかった。

 

2人はSAOがデスゲームと化してからちょうど1年後、俺を助けようとして赤い目の巨人に食われて死んだ。現実世界には墓もあって、2人はそこに眠っているはずだ。

 

「ど、どうして……ここに……?」

 

『このことは私から説明しよう』

 

ファーランさんとミラが現れてから黙っていた茅場の口が初めて開く。

 

『確かに彼らはSAOで死んだ。でも、君が持っているメダル……《王のメダル》にファーラン君とミラ君の残留意識が宿っていた。《王のメダル》はSAOのアイテムだが、何故かALOでも消えることはなったのは、そのおかげだと言ってもいいだろう。こんなこと、あり得るはずもないのに。これには一番驚いたよ。私はそれに気がついて、ファーラン君とミラ君の意識を覚醒させようとした。君を立ち上がらせるには、私よりも彼らの方が最適だと思ってね』

 

だからあの時、ファーランさんとミラの声がしたのか。俺はまた、2人に助けられたんだな。

 

すると、ファーランさんとミラが俺に近づいてくる。

 

『リュウ、いつの間にか前よりもずっと強くなって。流石、うちのパーティーのエースだな』

 

『こんなにボロボロになっちゃって。リュウは本当に頑張ったと思うよ……』

 

「ファーランさん、ミラ。でも、俺……2人を助けることができなかった……。2人に手を伸ばしても俺の手は届かなかった……」

 

俺はずっと2人を助けられなかったことを後悔していた。いつの間にか、目から涙が溢れ出して止まらなくなる。

 

『ずっと、そんなこと気にしていたのか。俺たちは全然気にしてないぜ。それに、あの世界で死ぬまでリュウと過ごせて本当によかった。リュウと出会えたのは、俺たちにとって得だった。間違いなくな』

 

『そうだよ。リーファちゃんだっけ?リュウにはアタシたちがいなくても、あの子や他の人たちがいる。リュウが掴む手は、もうアタシたちじゃない』

 

「それってどういう意味だ?」

 

『ごめんな、リュウ。俺とミラはすでに死んだ存在だから、こうしていられるのもそう長くはないんだ。実際に俺たちがここにいられるのは、本当に偶然だと言ってもいいからな』

 

せっかくまた2人と会えて話せたのに。こんなことってありかよ。2人とまた別れるのが凄く辛い。目からは涙が溢れ出て止まらずにいた。

 

そんな中、ファーランさんは俺の左肩にポンと手を置いた。

 

「ファーランさん?」

 

『リュウなら大丈夫だって言っただろ。お前はうちのパーティーのエースだからな』

 

『今のリュウならアタシたちがいなくても大丈夫だよ』

 

「ミラ」

 

ファーランさんとミラは笑った。辛いのは俺だけじゃなくて、ファーランさんとミラだって同じだっていうのに、きっと俺に心配かけないようにとしているんだ。だから、俺も笑って2人を見送ろう。

 

「ファーランさん、ミラ。俺、2人と出会えて、本当によかった。絶対に2人のことを忘れないから……」

 

そして、2人の体が淡い金色に輝き始めた。

 

『そう言ってもらえて嬉しいぜ』

 

『リュウのこと、ずっと見守っててあげるからね』

 

そう言うと、ファーランさんとミラは笑みを浮かべて金色の光の粒になって消えていった。

 

胸ポケットから《王のメダル》の取り出してみる。3枚ともヒビが入り、ファーランさんとミラと同じく淡い金色に輝き始める。数秒後には、メダルも金色の光の粒になって消滅した。

 

《王のメダル》が残ったのは、ファーランさんとミラがSAOでの戦いが本当に終わせるのを見届けようとしていると思っていた。でも、本当はまだ過去のことを引きずっているところがある俺のためだったんだな……。

 

――ファーランさん、ミラ、本当にありがとう……。

 

心の中でもう一度、2人にお礼を言う。

 

しばし沈黙してから、茅場にあることを聞いた。

 

「茅場さん。あなたはどうして、1万人の人を巻き込んで4千人の人を死なせるきっかけまで作って、あんな世界を作ったんですか?」

 

「キリト君にも同じことを聞かれたよ。フルダイブ環境システムの開発を知る前から、私はあの城を……現実世界のあらゆる枠や法則を超越した世界を創りだすことだけを欲して生きてきた。そして私は、私の世界の法則をも越えるものを見ることができた……」

 

茅場の言葉は続く。

 

「空に浮かぶ鉄の城の空想に私が取りつかれたのは何歳の頃だったかな……。この地上から飛び立って、あの城に行きたい……長い、長い間、それが私の唯一の欲求だった。私はまだ信じているのだよ。どこか別の世界には、本当にあの城が存在するのだと……」

 

ファーランさんやミラ、4千人近くもの人を死なせることになっておきながら、何を言っているんだと思った。以前は茅場に対して敵意と殺意を抱いたが、今回はそういう気にはなれなかった。

 

俺が自分の手が何処までも届いて、誰かを救うことができるヒーローにずっと憧れていたかのように、この人もあんなことを思っていたのだろう。だけど、俺がこの人のことをちゃんと理解できるのはまだ先のこと……もしかすると一生かかっても無理かもしれない。

 

橘 龍斗……(あん)ちゃんが憧れていた人は本当によくわからない人だ。そう思ってしまう。

 

 

「では、そろそろ私は行くよ。いつかまた会おう、《青龍の剣士》リュウガ君」

 

そう告げると、茅場の姿は消え、視界が光に包まれて再び意識を失う。




ずっと謎に包まれていたリュウ君が使ったあの未知のソードスキルは、3つ目のユニークスキル。その名も《龍刃》。
リュウ君がALOで《龍刃》を使えたのは、クウガがライジングフォームみたいに偶然が重なって使用できたのだと思ってくだされば幸いです。
作中でも説明がありましたが、《龍刃》は盾を使えなくなる代わりに専用のソードスキルを発動させることができ、補正に敏捷性が上昇するという、防御を捨てて攻撃と素早さが上がるスキルです。一応キリトの《二刀流》と比べると連撃数や攻撃力は劣るが、ソードスキルの発動時間など素早さにおいては《龍刃》の方が勝っています。
スキルの名前を考えるのが大変で、《グランド・オブ・レイジ》をはじめ、いくつかのスキルは仮面ライダーの必殺技から名前を頂いたものもございます。ちなみにリュウ君にとって《ドラゴニック・ノヴァ》は、キリトの《スターバースト・ストリーム》みたいな立場となります。11連撃のため、ユウキの《マザーズ・ロザリオ》と勝負させたいなと思った私がいました(笑)

蛮野/レデュエ戦でピンチになったリュウ君を助けてくれたのはファーランとミラでした。とっくに気が付いていた人も多かったと思いますけど(笑)。2人の死はリュウ君のトラウマに刻み込まれるものとなりましたが、原作のユージオのように、死んでも周りを助けてくれるという展開にしました。あのメダルが残ったのもそのためです。ですが、メダルは最後に……。あの辺りは、オーズの最終回で映司がアンクと別れるところをイメージしたため、書いてて少し辛くなりました。

この章もあと数話となりました。安否不明のクリムさん、蛮野と須郷の末路、そしてリュウ君とリーファ/直葉の恋の行方は。

次回も更新が遅くなりますがよろしくお願いします。

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