ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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今回はフェアリィ・ダンス編……アインクラッド編も含めてリュウ君の最大の見せ場となります。個人的意見ですが、挿入歌に『乱舞Escalation』をご用意して聞きながら読むと一味違うと思います。

それではどうぞ。


第21話 欠けた刃と赤い瞳と覚醒する力

「ぐわぁぁぁぁぁっ!!」

 

レデュエの渾身の一撃を受け、森の中を流れる川の近くまで吹き飛ばされて河原に転がる。

 

「がはっ!はぁ……はぁ……」

 

起き上がろうとしても、あまりの痛みで起き上がる力すらない。ペイン・アブソーバのレベルが下がったせいなのだろう。

 

そして、左手から離れて転がっている《ドラグニティ・レイ》は刃にヒビが入っている。なんとかギリギリの耐久値は残っているみたいだが、既に戦うだけの力は残ってないだろう。俺にはもう武器はない。

 

動けない状況の中、レデュエはハルバードを持ってゆっくり近づいてくる。

 

「フッ。英雄でもない無能なガキのくせに私に挑むとは、まさに愚か者だ」

 

「何だとっ!」

 

怒りを露わにしてレデュエを睨むが、顔を蹴られる。

 

「ぐはっ!」

 

「お前もクリムのように、完全にオーバーロードにしてから私のおもちゃにしてやるよ。システムコマンド、ペイン・アブソーバをレベル4からレベル0に変更」

 

「ぐっ!」

 

すると、先ほど攻撃を食らったところにより痛みが伝わってくる。現実世界と変わらない痛みだ。あまりの痛みに苦しんでいる中、レデュエはハルバードを倒れている俺に今すぐ振り下ろそうとする。

 

「すぐに楽にさせてやるから安心しろ。だから人としてのお前は醜く死ぬがいいっ!!」

 

赤い目の巨人に食われそうになった時のように俺に死への恐怖が降り注ぐ。

 

――すいません、キリさん……。ゴメン、父さん、母さん……。

 

ここまでだと覚悟を決めて目を閉じようとする。だが、ハルバードが俺に振り下ろされる寸前で何処からかレデュエに目がけて緑色に光る風の刃が飛んでくる。

 

レデュエは簡易一発のところで回避したことで、俺から離れることになった。

 

そして、1人のプレイヤーが長刀を中段で構え、俺とレデュエの間に割って入ってくる。金色の長髪をポニーテールにした少女だった。

 

「リ、リーファ……」

 

「あたしが相手よ!」

 

リーファは俺を守ろうと、レデュエに挑もうとしている。

 

「ダメだリーファ!早く逃げろっ!!」

 

「ボロボロになっているリュウ君を置いていけないでしょっ!!リュウ君はあたしが守るっ!!」

 

レデュエは自分に向かって剣を向けるリーファを見てニヤニヤ笑みを浮かべる。

 

「いいのか?そこに転がっているソイツはオーバーロード。あの醜い化け物なんだぜ」

 

「リュウ君はオーバーロードでも醜い化け物でもない!身も心も醜い化け物のアンタと一緒にしないでっ!!」

 

「私と戦おうとするなんてお前も随分といい度胸をしているな。だが、私はお前には用はない。やれ」

 

すると何処からか紫の触手のようなものがやって来て、リーファを縛って長刀を奪うと宙吊りにする。

 

「きゃっ!!」

 

「リーファ!」

 

現れたのはアインクラッド第61層にいた《ブルスラッグ》に似た2体の紫の色をした大きなナメクジ型のモンスターだった。

 

「副主任、この娘は俺たちの好きにしちゃっていいですか?」

 

「私はそんな女なんかより、こっちの研究材料の方が興味あるからな。お前たちの好きにしていいぞ」

 

「やった!須郷ちゃんが世界樹の上に捕えているあの娘は相手できなかったが、この娘も可愛いね」」

 

「スタイルもいいし、たっぷり可愛がってあげるよ」

 

ナメクジたちはリーファの体に触手を絡め始めた。

 

「やめて!いっ、嫌―!!」

 

リーファを見ると恐怖と絶望に支配されている表情になり、涙を流し始めた。見るに堪えなくなった俺は怒りが籠った声で叫ぶ。

 

「化け物がっ!リーファを離せっ!リーファに少しでも何かしたらお前らを絶対に許さないっ!!」

 

「化け物とは酷いなぁ。これでも深部感覚マッピングの実験中なんだぜ」

 

「そうそう。このアバターを使いこなすのに苦労したんだよ」

 

1体のナメクジは俺の右足に1本の触手を絡めて宙吊りにする。そして、触手を振り下ろして俺を地面に叩きつけた。

 

「がはっ!」

 

「リュウ君っ!!」

 

「威勢はいいけど、もう体はボロボロじゃないか。こんな奴、甚振って遊んでやる価値もないや」

 

「おいおい、コイツは私のおもちゃなんだ。あまり遊ばないでくれよ」

 

「す、すいません!」

 

「まあ、私はこうやって人が……おもちゃが壊れていくさまを見るのが好きなんだけどな。これほど最高の娯楽は他にはないよ」

 

「や、やめろ……」

 

リーファを助けようと手を伸ばそうとするが、身体が重くてあまりの痛みで思うように動かせなくて手が届かない。

 

――俺の手はまた届くことがないのか……。

 

手を伸ばしても届くことのない俺の手。

 

ファーランさんとミラが死んだ時、アスナさんがキリさんを庇って消滅してキリさんもヒースクリフ団長/茅場晶彦と相打ちになって消滅した時と同じだ。

 

赤い目の巨人に捕まって食われそうになってところをファーランさんとミラに助けられ、俺は無事だった。だけど、2人は俺を助けようとしたせいで、死んでしまい、俺だけが生き残るという結果になった。そして、アスナさんとキリさんが消滅した時なんか俺は動くことができず、黙ってその光景を見ていることしかできなかった。

 

剣の世界では、ゲームクリアを目指して数多くの強力なモンスターと戦いを繰り広げ、いつの間にか《青龍の剣士》なんて大層な二つ名まで呼ばれるくらいのプレイヤーとなった。そして、この妖精の世界では、全プレイヤー最強と言われていたユージーン将軍をも倒した。

 

でも、俺が持つ力には誰かを救うほどの力なんてない。今だってリーファを守ることさえできていないじゃないか。俺はキリさんのようにデスゲームから大勢のプレイヤーを救う英雄どころか、大切な人を救えるヒーローにもなることができなかった。それどころか、悪と同じ存在になろうとしている。何もできなくて倒れている自分が惨めで仕方なかった。

 

眼から涙がこぼれ落ち、そのまま意識を失ってしまう。

 

 

 

 

 

『君はこんなところで終わるつもりなのか?』

 

意識がなくなる中、1人男性の声がする。

 

――誰だ……?

 

『君はまた何か大切なものを失うつもりなのか?』

 

――失いたくない。だけど、俺には、この不利な状況を打開するような力なんてないんだ……。

 

『ならば、この不利な状況を打開するためには、君が今持っている悪の力を支配し、己の力にするんだ』

 

――悪の力を支配し、己の力にする?どういうことだ?あなたはいったい……。

 

『詳しい説明は後だ。悪いが私は彼の元へ急がなければならない。それに君を立ち直させるには私よりも()()の方がいいだろう』

 

すると、聞き覚えのある少女の声がする。

 

『リュウ!早く起きて!』

 

この声はスグか?いや違う、スグは俺のことを『リュウ』なんて呼ばない。

 

『リュウには守りたい人がいるんでしょ。アタシたちは死んじゃったけど、その人のことは守ってあげて!』

 

更に先ほどとは別の男性の声もする。

 

『リュウなら大丈夫だ。なんだってリュウはうちのパーティーのエースだからな。お前ならまだ戦えるはずだ。俺たちを信じてくれ』

 

この声の主も何処かで聞き覚えがある。何故か懐かしく思える。

 

『『立ち上がって戦うんだ(戦って)、リュウ』』

 

――この声、まさか……。

 

そう思った矢先、俺の意識はもう1つの現実でもある仮想世界へと戻る。

 

「やめて!離して!!」

 

その瞬間、リーファが2体の紫の色をした大きなナメクジ型のモンスターが持つ触手に捕まってしまっている光景が目に入った。

 

俺は今まで大切な人たちを守ることも助けることもできなかった。でも、俺にはまだ守りたい人がいる。その人が今危険な目に合っているのなら、自分が醜い怪物になることなんて関係ない。体はまだ動く、戦える力はまだ残っている。

 

――俺が、リーファを守るんだぁぁぁぁっ!!

 

体を縛り付けている鎖を破壊するかのように重い体を無理やり起こす。

 

 

 

 

 

もう駄目だと思ったその時だった。

 

「レデュエェェェェ!!」

 

突如、リュウ君の怒りがこもった声が響き渡る。

 

リュウ君は剣を持って傷ついて動けない身体を無理やり起こし、今まで見たことがないくらいの怒りと殺意を剥き出しながらレデュエたちを見る。

 

「お前たちみたいな奴らは、ここで俺がぶっ潰す!!」

 

「くたばり損ないめ!今のお前は牙を失った龍、そんな奴に何が出来るって言うんだっ!?」

 

リュウ君を見てあざ笑うレデュエたち。

 

事実上、今のリュウ君はやっと立っていられる状態で、羽織っている青いフード付きマントもボロボロとなっている。しかも、左手に持っている剣の刃にはヒビが入っていてすぐに壊れてしまいそうだ。とてもまともに戦える状態ではないと言ってもいい。

 

「うおおおおおあああああ!!!!」

 

そう思った時、リュウ君の青い瞳が赤く光る。そしてリュウ君が雄叫びをあげて剣をかざすと、剣は光り出してそれが消えると先ほどまであったヒビは完全になくなった。

 

「何!?バカな!?」

 

「リュウ君……?」

 

自力で剣を直した?あんな方法で武器を修復させるのは、鍛冶スキルを持っていても武器作成に優れているレプラコーンでもあり得ないことだ。

 

「リーファの運命は、俺が変える!」

 

「この…!いい加減にくたばれ!!」

 

レデュエは手から緑色の光弾をリュウ君に放ち、その場は一気に爆炎に包まれる。

 

――《クリティカルストライク》!!

 

爆炎の中からリュウ君が一陣の風となって出てきて、刃に赤い光を纏った剣でレデュエに突きを放つ。

 

――《ライトニング・スラッシュ》!!

 

続けざまに電撃が走るかのような速さでレデュエに3連撃の斬撃を与える。

 

「ぐはッ!」

 

ペイン・アブソーバがレベル0の状態だということもあり、レデュエは苦しそうにする。

 

「くそ、システムコマンド!ペイン・アブソーバをレベル0からレベル10に変更!!」

 

痛みを感じなくさせようとペイン・アブソーバを最初の状態に戻そうとする。だが、先ほどのようにメニューウインドウは表示されなく、反応は一切ない。

 

「どうして作動しないんだっ!?」

 

「副主任、ペイン・アブソーバを元に戻すことができません!!」

 

「何だとっ!?コイツの相手をしている間までにこのエラーを何とかしろっ!!」

 

レデュエはナメクジたちにそう言い残し、ハルバードで応戦。

 

両者共に攻撃をかわし、武器を激しくぶつけ合って互角に渡り合う。リュウ君の剣とレデュエのハルバードがぶつかり合う度に火花が散る。剣道経験者のあたしでさえも目で追うのがやっとのくらいの速さだ。

 

リュウ君の水平斬りがレデュエのハルバードを弾く。

 

――《クリスタル・ブレイク》!!

 

そして、龍が鍵爪でクリスタルを粉々に破壊するかのような4連撃の斬撃をレデュエに浴びせる。

 

「グワァッ!」

 

レデュエはよろけながらも体勢を立て直して一旦距離を取ると、ハルバードの矛先に緑色の光を纏わせる。そして、ハルバードを振るうと緑色の光弾がいくつも現れ、リュウ君に目がけて飛んでいく。

 

緑色の光弾がリュウ君や周りの地面に着弾すると爆発を引き起し、彼のHPを奪っていく。

 

「ぐっ!」

 

巻き起こるいくつもの爆発のせいで、リュウ君は身動きがとれなくなって反撃の隙が中々ない。それでもリュウ君は攻撃を凌ぎ、左手に持つ片手剣を強く握りしめる。すると、左手に持つ剣の刃に青い光を纏わせて構える。

 

――《ドラゴニック・ノヴァ》!!

 

地面を蹴り、ユージーン将軍を倒したときと同じように11連撃がレデュエに叩き込まれる。星が放った強力な光が青い龍を形作る連撃だ。

 

「グワァァァァッ!!」

 

11連撃の斬撃を受けたレデュエは吹っ飛ばされて地面に転がる。それでもまだHPは残っており、ハルバードを杖代わりにしてなんとか起き上がる。

 

「そんな……。どうして奴がこれほどの力を……。オーバーロードになろうとしている英雄でもない無能なガキのくせに……。何故だ!?」

 

「お前たちは知らないんだ。例え悪と同じ存在から生まれたり悪と同じ力を持っていても、守りたいもののために戦う者が現れるってことをな」

 

リュウ君の言葉を聞き、あることを確信する。

 

――リュウ君、君はまさか……。

 

「ならばっ!!」

 

レデュエは地面にハルバードを突き刺し、植物のつるを出現させて操る。植物のつるはリュウ君の姿を確認できなるほど完全に覆い尽くす。

 

「うわっ!ぐわぁぁぁぁっ!!」

 

リュウ君の悲痛な叫びが響き渡る。

 

「《ヘル・プラント》。その植物のつるに含まれる猛毒で対象者の体力を奪う植物系魔法の中で最強の魔法だ。ペイン・アブソーバが0の状態でこの攻撃を受けるのはかなりキツイだろ?」

 

「リュウ君!!」

 

彼の名前を叫ぶが、聞こえてくるのはリュウ君の悲痛な叫びだけだ。

 

「無駄無駄。あの魔法は邪神モンスターでも抜け出すことが出来ないほど強力なんだよ」

 

「このまま苦しみながら死ぬといい。君の王子様はここで終わりだ」

 

自分たちの勝利は確定した思い、レデュエやナメクジたちの顔からは笑みがこぼれる。

 

あたしは黙ってこの光景を見ていることしかできなかった。

 

「ぐっ……うおお……オオォォォォ!!」

 

リュウ君の叫びが悲痛な叫び声から籠った叫びへと変わっていく。それと共に青い光を発し、彼を包み込んでいた植物のつるを枯らして緊縛を解いた。

 

「バカな!《ヘル・プラント》を打ち破ったというのか!?」

 

この光景を見たレデュエたちは、リュウ君の力が自分たちの予想を大きく上回るほどのものだったということに再び驚愕する。

 

「くそ!システムコマンド!オブジェクトID《ジュワユーズ》をジェネレート!!」

 

これを見かねた1体のナメクジが叫ぶ。

 

すると、その前に微細な数字が猛烈な勢いで流れ、1本の剣を作り上げる。ALOの公式サイトで見たことがある。青白く光り輝く刃を持ち、鍔の辺りには白銀の宝石が装飾されている片手剣。名前は《聖剣ジュワユーズ》。

 

入手方法が一切不明の伝説の武器を作り上げるなんて……。しかも、それを醜いモンスターが扱うことに不快感を覚える。

 

「伝説の剣の餌食にしてやる!」

 

ナメクジは触手でその剣の柄を掴もうとするのだったが……。

 

「ギャァァァァ!!」

 

突如、リュウ君が持っていた剣が矢のように飛んできてナメクジの体を貫く。

 

ナメクジが悲痛な叫びを上げて触手を振った拍子にジュワユーズは宙を舞い、吸い寄せられるようにリュウ君の左手に収まった。青く光り輝く刃を持つ伝説の剣は、醜いモンスターではなく、敵から奪った力を我がものにして戦う剣士を選んだようにも見えた。

 

同時に1体のナメクジはポリゴン片となって消滅する。

 

リュウ君は剣を地面に突き刺す。すると爆発がいくつも巻き起こり、レデュエを包み込む。

 

「グワァッ!!」

 

爆発が収まるとリュウ君は剣を地面から抜き取り、怯んでいるレデュエに向かって地面を蹴る。剣を振るい、ハルバードを叩き落とし、レデュエの体を斬り裂き、勢いよく突き刺す。

 

「グワァァァァっ!!」

 

更に剣を抜き取り、もう1度斬り裂く。そしてジュワユーズの刃に白い光が纏う。

 

――《サウザント・スピア》!!

 

リュウ君が放った10連撃の突きがレデュエにクリティカルヒット。レデュエは地面に転がり、追い詰められていく。

 

「バカ…な、私が…負けるだと!!」

 

「うおおおおおおおおおおっ!!」

 

リュウ君は一度下がり、瞳を赤く光らせながら、龍のように雄叫びを上げて翅を出現させる。そして、刃を紫に光らせて、レデュエに向かって勢いよく飛んでいく。

 

レデュエは悪あがきに植物のつるを使って応戦するが簡単に打ち破られ、リュウ君の紫の光を纏わせた剣がレデュエに勢いよく振り下ろされた。

 

「《グランド・オブ・レイジ》!!」

 

「グワアアアアァァァァっ!!」

 

強力な一撃を受けたレデュエは断末魔を上げながら爆発に包まれて消え去った。

 

「そんな、副主任が倒されるなんて……。だったら、この女を人質に…… ヒッ…!」

 

「いつまでもそんな薄汚い手でリーファに触るな…!!」

 

「ま、待て…ギャァァァァ!!」 

 

あたしを触手で捕まえていたもう1体のナメクジはあっけなくリュウ君に斬られて悲痛な叫びを上げながら消滅した。その拍子にあたしは地面に落下するが、その前に何かに受け止められて地面に叩きつけられることはなかった。

 

「遅くなってごめんリーファ、もう大丈夫だよ」

 

「リュウ君……」

 

あたしを受け止めてくれたのは、ボロボロとなった青いフード付きマントを羽織った少年……リュウ君だった。今はレデュエやナメクジたちに向けていた敵意と殺意はなくなっており、微笑んであたしを見ている。そんなリュウ君に思わずドキッとしてしまう。

 

「うぐっ!?ぐあぁぁぁ!」

 

「リュウ君!?」

 

リュウ君はあたしを下ろすと、地面に倒れ込んでしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

もう1体のナメクジを倒した直後、苦しみのあまり、地面に倒れ込んでしまう。目に映るもの全ての色がくすんだ光景となり、音も濁った音しか聞こえなくなくなってしまう。俺はもう完全にオーバーロード……醜い化け物となるのだろう。苦しむ中、誰かが左手を両手で包み込んだ。

 

俺の左手を掴んだのはリーファだった。

 

「リュウ君、あたしがいるから大丈夫だよ」

 

「でも、俺は……」

 

「醜い化け物とかオーバーロードだって言うでしょ。そんなの関係ないよ。リュウ君は昔と変わらないあたしのヒーローだから」

 

「スグ……」

 

俺はリーファ/スグが思っているようなヒーローではない。だけど、リーファ/スグの言葉が何よりも嬉しかった。

 

「ぐっ!?」

 

「リュウ君!」

 

すると、再び苦しみが襲い掛かり、俺の体から龍の顔を催した紋章が描かれている藍色のメダルが出てくる。メダルにはヒビが入り、砕け散って跡形もなく消滅した。

 

「目の色が赤から元通りの青に戻ってる……」

 

「えっ!?」

 

「リュウ君はオーバーロードにも化け物にもならなずに済んだってことだよ。よかった、本当によかった……」

 

リーファが言ったことはすぐには理解出来なかったが、その意味が理解した瞬間安心感に包まれた。リーファは自分のことのように喜び、俺に抱きついてくる。俺はそんな彼女の頭を優しく撫でる。

 

数分ほどこのままでいた後、リーファに支えられて何とか立ち上がる。先ほどの戦闘のダメージが思っていたよりも大きく、立っているので精いっぱいだ。

 

「俺たちも早くキリさんたちのところに行こう。きっとアイツらみたいにヤバい奴がいると思うからな」

 

「う、うん。だけど、体の方は大丈夫?」

 

「キリさんたちのことが心配だからな。ここでジッとしている訳にもいかない」

 

出発しようとした時、何人かのプレイヤーが俺たちに近づいてくる気配がする。

 

――まさか、他にも敵が……。

 

すぐに戦闘に入れるようにするが、目の前に現れた者達を見た瞬間、俺とリーファは驚きを隠せなかった。




レデュエ/蛮野に追い込まれたリュウ君、そしてナメクジたちに捕まってしまったリーファと最初は絶体絶命という空気でした。そんなピンチを救ったのは謎の人物たち。彼らは何者なのか。

そして、吐き気を催す邪悪と言ってもいいレデュエ/蛮野たちにブチギレたリュウ君。謎のソードスキルを連続で使用し、更には敵から奪い取った武器も使用してレデュエ/蛮野たちを倒し、リーファを助けることができました。

ファーランとミラを失い、茅場との戦いではキリトとアスナを助けることができなかったリュウ君。ですが、今回の話で守りたいものを守れて、やっと成し遂げられなかったことを果たすことができたと思います。

悪と同じ存在でも力の源が悪と同じものだとしてもそれを善のために利用するという今回のリュウ君はまさに仮面ライダーと言ってもいいでしょう。

今回の話は見ていて気がついた人もいたと思いますが、全体的に鎧武41話を元しました。紘汰がレデュエにブチギレてカチドキロックシードを直して極アームズに変身するところはカッコよかったので。実際に、この時みたいに挿入歌に『乱舞Escalation』を聴きながら今回の話を執筆しました(笑)。本当はライバルとの対決時に合う曲ですが、今回のリュウ君にも合いそうなだと思いました(笑)

ただ、レデュエにトドメを刺したところだけは、オーズ・プトティラコンボが《グランド・オブ・レイジ》でカザリにトドメを刺したシーンみたいになりましたが。

余談ですが、今回の話はリーファ/直葉にちょっかい出すとリュウ君が滅茶苦茶怖いということを教えてくれた回でもありました。恐らく、アリシゼーション編でも今回みたいにリュウ君がブチギレるかと思います。

次回はアニメ24話の話になります。あのゲス野郎はリメイク版ではどうなることやら。

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