ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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数日前の活動報告にも書きましたが、この作品も最高で66位という順位で日間ランキングに入ることができました。ありがとうございます。更新速度が遅くなるかもしれませんが、これからも頑張っていきたいです。


第18話 突入と自爆と頼れる仲間

ドームの天蓋にあるゲートを目指して急上昇を開始すると、先ほどと同様にガーディアンが出現して俺たちに迫って来る。

 

俺とキリさん、カイトさん、ザックさん、クラインさんの5人はガーディアンたちを簡単に蹴散らし、次々と白い炎へと変えていく。カイトさん、ザックさん、クラインさんの3人も俺とキリさんと同様に戦闘をこなせて、随意飛行をマスターしている。流石、SAOでは最前線で戦っていた攻略組だということはあるな。

 

ゲートまで半分のところまで到達したところで、俺たちのHPは1割ほど減少する。すると、後衛に控えているリーファとレコンが回復魔法で体力を回復させてくれた。さっきは俺とキリさんの2人だけで正面突破しようとしたが、今回みたいに皆がいるおかげで戦いやすい。

 

だが、リーファとレコンが魔法を使った直後、何体かのガーディアンが2人に狙いを定めようとする。

 

「ヤバい!!」

 

俺は急いでUターンしてリーファたちがいる方へと飛翔し、ガーディアンたちを真っ二つにする。

 

「大丈夫か!?」

 

「うん。おかげさまで」

 

「でも、何で僕たちがターゲットにされるの!?」

 

「多分、アイツらには前衛と後衛関係なく攻撃対象になっているんだと思う。こっちに向かって来るガーディアンは俺が倒す。2人はこのままこのままヒールを続けてくれ!」

 

剣を構えてガーディアンを迎え撃とうとしたとき、レコンが俺の隣に飛んでくる。

 

「待って!」

 

「レコン?」

 

レコンはいつも俺を敵視していたレコンだったが、今回は真剣な様子だった。

 

「僕、よく分かんないんだけど、これって君たちにとって大事なことなんだよね?」

 

「ああ。これはキリさん……いや俺たちにとって大事なことなんだ。そのためにだったら、俺は倒れるまで戦い続けてやるつもりだ」

 

「そうなんだ……。僕はまだ君のことは認めたわけじゃない。だけど、ガーディアンは僕がなんとかしてみる」

 

レコンは言うと、補助コントローラーを握って上昇し始め、正面からガーディアンの軍団に突入していく。

 

「レ、レコン!?あのバカ!アイツなんかが歯が立つ相手じゃないのに!!」

 

「レコンの方は俺が何とかする!リーファはこのままキリさんたちの援護を頼む!」

 

「リュウ君!」

 

リーファの静止を無視してレコンを追いかけるように俺も上昇する。

 

補助コントローラーを使って飛んでいるってことは、レコンは空中戦闘が得意じゃないだろう。それなのに正面からガーディアンに立ち向かうなんて自殺行為だ。

 

「頭が高いぞ!ガーディアン共っ!神の才能に……ひれ伏せぇぇぇぇっ!!」

 

レコンはガーディアンに向かって何処かのゲーム会社の2代目社長のように悪役みたいなセリフを言い、何かの魔法スペルを詠唱。風属性の攻撃魔法だと思われる緑色のカッターで正面にいたガーディアンたちを斬り裂く。

 

これがトリガーとなって、近くにいたガーディアンたちはレコンもターゲットにする。そして、1体のガーディアンがレコンに攻撃しようとする。

 

「悪ノリが過ぎるぜ、レコン!」

 

そう言い放ち、レコンに接近するガーディアンを真っ二つにする。

 

「今のはヒヤヒヤしたぞ。でも、ナイスファイトだ。流石ALO古参プレイヤーってだけはあるな」

 

「よく言った!」

 

――コイツ、チョロいな……。

 

すぐに調子に乗るレコンには呆れつつもレコンと協力してガーディアンたちと戦う。俺は剣を振り、レコンは魔法でガーディアンを倒す。だが、空中戦闘が得意ではないレコンのHPはじわじわと削られていく。

 

「レコン、無茶するな!このままだと死ぬぞ!」

 

「リュウ君の言う通りだよ!もういいよ!外に逃げて!」

 

もう見てられなくなり、俺とリーファはそう叫ぶが、レコンは逃げようとしない。とうとう押し寄せるガーディアンたちによって俺とレコンは引き離されてしまう。レコンはガーディアンから逃れようと更に上昇する。

 

「レコン、待ってろ!今すぐ助けに行く!!」

 

「あたしかリュウ君が行くまでどうにか逃げ切って!!」

 

リーファと共に今すぐにレコンを助けに行こうとするが、目の前に30体ものガーディアンが立ちふさがって邪魔してくる。急いでガーディアンたちを倒す中、レコンは決意に満ちた笑みを浮かべ、俺とリーファの方をちらりと振り向いた。そして、再びガーディアンの軍団の方に顔を向ける。

 

「ガーディアン共っ!神の恵みを受け取れぇぇぇぇっ!!」

 

またしても何処かのゲーム会社の2代目社長のようなことを言い、魔法のスペルを詠唱し始める。だが、先ほどとは違って紫色のエフェクト光が包む。

 

「あれってまさか、闇属性魔法!?」

 

闇属性魔法は、普通はインプとかスプリガンが使うものだ。風属性魔法を得意とするシルフのレコンがそれを使ったことに驚いてしまう。

 

複雑な魔方陣が球体となって展開し、どんどん巨大化していく。そして、強烈な光と共に大きな爆音が響き渡った。それが収まるとガーディアン軍団で作られた壁に穴が開き、緑色のリメインライトが1つあった。

 

「自爆魔法っ!?」

 

「じ、自爆魔法って……?」

 

「自爆魔法は通常の数倍のデスペナルティがあるんだよ……」

 

「何だって……」

 

リーファが教えてくれた内容に、絶句してしまう。

 

普通に見たら、ゲーム内の経験値やアイテムを無駄にしただけかもしれない。だが、レコンが費やした努力と熱意だけは本物の犠牲だ。

 

すると、カイトさんの叫びが響き渡る。

 

「これはレコンがくれたチャンスだ!!アイツの死を無駄にするな!!」

 

カイトさんの言う通りだ。ここでレコンの死を悔いていたらレコンの死が無駄になってしまう。

 

俺たちはガーディアン軍団で作られた壁に開けられた穴を目指し、迫るガーディアンを倒しまくって飛翔する。だが、ガーディアンたちが集まって開けられたところを見る見る内に塞いでいく。

 

「くそっ!」

 

迫ってくる1体のガーディアンに剣を振り下ろしたときだった。

 

バキンッ!!

 

突如、俺の持っている剣が真っ二つに折れ、ポリゴン片となって消滅する。

 

「何っ!?」

 

剣が折れた瞬間、さっきの戦いでガーディアンの剣を受け止めた時に剣から何か変な音が聞こえたのを思い出す。あの時に剣にヒビが入って耐久値が大幅に減ってしまったのか。

 

更に上空を見ると、弓矢を持ったガーディアンたちに苦戦して沢山傷ついているキリさんたちの姿が目に入った。これはかなりヤバいと言ってもいい状況だ。

 

「リュウ君、危ない!!」

 

キリさんたちに気を取られ、1体のガーディアンが俺に襲い掛かって来る。

 

――くそ、ここまでか……。

 

覚悟を決めて目を閉じようとした直後、無数の緑色に光る針と水色の泡が飛んできてガーディアンを倒す。

 

――何だ?これはリーファがやった魔法か?いや違う、これは……。

 

すぐにそれらが飛んできた方を振り向くと、錫杖を背負った小柄で中性的な顔立ちをしているシルフの少年と水色の小さなドラゴンを連れたケットシーの少女がいた。

 

「リュウ、大丈夫っ!?」

 

「ピナ、リュウさんに回復プレスを使って!」

 

「きゅるっ!」

 

「オトヤ、シリカ、ピナっ!?」

 

俺の元にやって来たのはオトヤとピナを連れたシリカだった。これに驚いている中、2人と1匹は回復の魔法やプレスを使って俺のHPを回復させてくれる。

 

そして、出口の方を見ると緑の色に輝く高性能の鎧に身を固めたシルフのプレイヤーたちに、飛龍に乗ったケットシーのプレイヤーたちもこちらにやって来る。

 

「あれって、シルフの精鋭部隊とケットシーのドラグーン隊っ!?どうしてっ!?」

 

驚きを隠せないでいるリーファの元にシルフ領主のサクヤさんと飛龍に乗ったケットシー領主のアリシャさんがやって来る。

 

「すまない。遅くなった」

 

「ごめんネー、装備を揃えるのに時間がかかっちゃってサー」

 

「サクヤ、アリシャさん!」

 

リーファも彼女たちが来てくれたことに眼尻に涙を浮かべながらも嬉しそうにする。

 

「オトヤとシリカだけじゃなくて、どうしてサクヤさんとアリシャさんまで……」

 

「君とスプリガンの彼には大きな借りがあるからな」

 

「攻略の準備も君たちがくれた大金があったからこそできたんだヨ。まあ、ウチもシルフも全財産使っちゃったから、ここで全滅したら両種族とも破産だけどネ」

 

「それにリュウ、いつも言っていたじゃん。『プレイヤーは助け合い』だって。だから来るのは当たり前だよ」

 

「オトヤ……」

 

笑みを浮かべて面と向き合って言うオトヤ。俺は思わず、涙を流しそうになるがグッと堪える。

 

「さてと我々も参戦するか。フェンリル・ストーム、放て!!」

 

「ファイアブレス、撃て――――!!」

 

2人の領主の指示の元、両部隊が攻撃を開始する。2種族の連合軍による攻撃でガーディアンたちを粉々に吹き飛ばしていく。

 

そんな中、シリカが話しかけてきた。

 

「リュウさん、あたしとオトヤ君だけじゃなくて2人も来てくれましたよ」

 

シリカが振り向いた方を見ると、右手にメイスを持ったピンク色の髪をしたレプラコーンと両手斧を持った大柄なノームがいた。見覚えのる2人だ。

 

「来てみたら、なんかえらいことになっているわね」

 

「カミさんに話を付けてオレもやって来たのは正解だったみてえだな」

 

「リズっ!?」

 

「エギル、オメーも来てくれたのかっ!」

 

ザックさんとクラインさんはリズさんとエギルさんがいたことに驚き、キリさんやカイトさんと共にこちらにやって来る。

 

「リュウ君、この人たちも……」

 

「ああ。この人たちも他の皆と同様にSAOで出会った人なんだ」

 

リーファにリズさんとエギルさんのことを簡単に紹介したところで、リズさんがメニューウインドウを操作し、何かを取り出した。

 

「とりあえず、アンタたちが生きていてよかったわ。これを渡さないといけなかったからね」

 

リズさんはキリさんに《エリュシデータ》に似た黒一色の片手剣、そして俺には《ドラゴナイト・レガシー》に似た片刃状の片手剣を渡してきた。

 

「《ユナイティウォークス》と《ドラグニティ・レイ》。あたしが今作り上げることができた最高の剣よ」

 

「俺好みの重い剣だ、サンキュー、リズ!」

 

「凄い、《ドラグニティ・レイ》と姿が似ているだけじゃなくて握った時の感覚も同じだ。ありがとうございます、リズさん!」

 

俺とキリさんはリズにお礼を言い、新たに渡された剣を装備する。

 

「料金は付けでいいわよ。他の皆には悪いけど、時間がなくて今はこの3人の分しか作れなかったの。ザック、全て終わったらアンタには最高の槍を作ってあげるわ」

 

「ああ。その時は頼む。期待してるぜ、オレの専属スミスさん」

 

会話を交わすリズさんとザックさん。この2人が絡むのを見るのも2ヶ月ぶりだな。

 

「よし!超協力プレイでクリアしてやるぜ!!」

 

「ここからは俺たちのステージだ!!」

 

俺とキリさんの叫びと共に、俺たちも戦闘を開始する。

 

これまでグランドクエストは1種族だけで行うものだと思われてきた。だが、今ここには様々な種族がいて、種族関係なしに共に戦っている。戦国乱世のように9つの種族で競い合っている世界でこんな光景を見ることになるなんて誰もが予想もしていなかっただろう。

 

「リュウ君!」

 

「ああ!」

 

リーファと共にガーディアンを倒しながらキリさんの元へと行く。

 

「リュウ、スグ!援護を頼むぞ!」

 

「はい!!」

 

「任せて!!」

 

俺たち3人は武器を構え、それぞれの背を守るように背中を合わせる。SAOでモンスターの大群に囲まれた時にファーランさんとミラと共に戦ったときを思い出す。

 

「行くぞ!」

 

キリさんの掛け声と共に俺たち3人は一気に上空へと飛びだった。次々とガーディアンたちが襲い掛かり、それぞれの剣で斬り裂き、貫いて倒していく。俺の背中はリーファが、リーファの背中はキリさんが、キリさんの背中は俺がというように、それぞれがカバーし合ってガーディアンたちを次々と倒していく。

 

「あの3人にガーディアンを近づけさせるな!!」

 

「ドラグーン隊!ブレス攻撃で敵部隊を殲滅するんだヨ!!」

 

サクヤさん、アリシャさんが叫び、シルフとケットシーの部隊、更にカイトさんたちも加勢してガーディアン軍団を蹴散らす。皆の援護もあって一瞬ではあったがゲートが見えた。

 

恐らくこれがラストチャンスだろう。

 

俺とキリさんとリーファはこの隙を見逃さず、ゲートに向かって猛スピードで飛翔する。だが、目の前には数十体ものガーディアンが立ちふさがる。

 

「ダメ!数が多すぎる!」

 

「まだだ!」

 

キリさんは大剣とリズさんから貰った片手剣を重ね、突進する体勢を取る。

 

――頼む、もう1度あの力を俺に貸してくれ!!

 

すると、俺の言葉に受け答えてくれたかのようにリズさんから貰った《ドラグブレード》の刃が赤く輝く。

 

――《クリティカルストライク》!!

 

片手剣スキルの《ウォーパルストライク》に似た単発重攻撃だ。

 

更にリーファが今あるMPを全て使って俺とキリさんに支援魔法を使う。俺たち3人の力が合わさって一筋の流星となり、押し寄せるガーディアンの軍団を蹴散らしていく。

 

「「「行けえぇぇぇぇぇぇぇっ!!」」」

 

ガーディアンの壁を突破し、俺とキリさんの剣先がゲートに突き刺さる。ついに俺たちは巨大な円形のゲートまで到達できた。

 

「リュウ君、大丈夫?」

 

「大丈夫……」

 

あの力を使ったせいなのか妙に体が重い。それに一瞬だけだったが、耳に入ってくる音は雑音が混ざったものとなる。簡潔に言うと濁った音だ。

 

それに妙なことがもう1つある。俺たちはゲートにたどり着いたのに、ゲートは開く気配はない。

 

「どうしてゲートは開かないんだ?ユイ、調べてくれ!」

 

「パパ、この扉はクエストフラグによってロックされているのではありません。システム管理者権限によるものです」

 

「どういうことなんだ!?」

 

「つまり、この扉はプレイヤーには絶対に開けられないってことです!」

 

「「「っ!?」」」

 

俺たちは絶句して驚きを隠せなかった。このゲームのグランドクエストは、最初に世界樹の上の空中都市に達した種族が《アルフ》に生まれ変われることになっている。つまりグランドクエストをクリアできないってことだ。これは酷過ぎる。

 

「そんな、今までのは無駄だったの……」

 

ずっと空を飛ぶ力に憧れていたリーファには、ショックのあまり座り込む。

 

「リーファ、今はそれどころじゃ……」

 

俺たちの周りには数十体ものガーディアンが現れてこちらに迫ってきている。このまま戦ってもいずれ体力は尽き全滅する。一体どうすれば……。あることを思い出す。

 

「キリさん、アスナさんが落としたっていうカードを使えばなんとかなりませんか!?」

 

「その手があったか!ユイ、これを使え!!」

 

キリさんがユイちゃんに銀のカードを差し出す。ユイちゃんの手が触れたことでカードに光の筋がいくつか出る。

 

「コードを転写します!」

 

ユイちゃんがそう叫び、ゲートに手を触れる。すると、巨大なゲートがゆっくり開き始めた。

 

「転送されます!パパ、リュウさん、リーファさん。手を!」

 

ユイちゃんに手を貸すと俺たちは光に包まれ、ゲートの中へ転送された。




前回、檀黎斗やラヴリカみたいになってしまったレコンですが、今回はちゃんと活躍してくれました。相変わらず、前回と同様に檀黎斗みたいになってしまいましたが(笑)。

そして、シルフとケットシーの連合軍にオトヤとシリカ、更にはリズとエギルまで来てくれました。本当に『プレイヤーは助け合い』、『超協力プレイ』ですね。

ついにグランドクエストを乗り越えることができたリュウ君たち。果たしてアスナを救い出すことはできるのか。次回からは本格的にシリアス要素が強くなります。

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