ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》 作:グレイブブレイド
リュウ君とは小学生の時に通っていた道場で出会った。最初はお互いに同じ道場の仲間としか思っていなかったが、
しかし、3日前に出会ったインプの少年に対しても惹かれ、初恋相手の彼へと同じ想いを抱くようになるのだった。彼と容姿と名前が似ているだけだというのに、どうして5年もずっと想いを寄せ続けている彼と同じ想いを抱くようになったのか……。もしかすると、知らない内にあたし……直葉からリュウ君……龍哉への想いは消えてしまったのではないかと思ったこともある。
そんな中、お兄ちゃんから今日はリュウ君とアスナさんのお見舞いに行くと聞き、あたしも行きたいと同行した。アスナさんには一度会ってみたかったし、どうしても直葉から龍哉への想いはまだ残っているのか確かめたかったからだ。
そして病院に行き、3年ぶりに彼と再会した。
3年ぶりに会う彼と2人きりになって話をしている内に、胸の鼓動が速くなっていくのが感じ、もう少し彼と一緒にいたいという気持ちでいっぱいになってきた。つまり、直葉から龍哉への想いはまだ残っているのだ。それがわかったのはよかったけど、どうしてリーファとしてインプの少年……リュウガに惹かれているのかと新たな謎も生まれた。家に帰るまでずっと考え続けたが、結局わからないままとなってしまった。だが、リュウガの正体が龍哉だと知り、その理由を知ることができた。
――あたしは、どっちのリュウ君も好きなんだ……。
このことを知って嬉しいはずなのに、今はどうしてもそういう気持ちになれなかった。
あたしの正体を教えた時のリュウ君は何か信じられない事実を知り、あたしを拒絶しているかのような感じだった。もしかするとリュウ君に何か嫌われることでもしてしまったのではないのか。
今すぐにも確かめたかったが、リュウ君は意識を失って目の前にあるベッドの上に眠りについている。
ALOでは武器や魔法などでダメージを受けても痛みは感じることはなく、不快な感覚が軽く感じる程度だ。でも、リュウ君のあの苦しみは本当に苦痛を感じているようなものだった。それに一瞬だけリュウ君の身体に青紫色の電撃が走ったのが見えたがした。一年もALOをプレイしてきたが、こんなことは一度も見たことがないし、聞いたこともない。
一体リュウ君の身に何が起こったのか。あたしはもちろん、お兄ちゃんにもユイちゃんにもわからなかった。
「リュウ君、大丈夫かな……」
目を覚まさないリュウ君を見て、不安になってきて自然とそんなことを呟いてしまう。すると、お兄ちゃんがあたしの右肩に左手をポンと置く。
「リュウはALOだけじゃなくてSAOでも数多くの困難を乗り越えて来たんだ。絶対に大丈夫だから安心しろ」
「お兄ちゃん……」
お兄ちゃんとリュウ君には絶対的な信頼関係がある。スイルベーンからここまで冒険をしてきた中で2人を見てきたからそう思うことができた。お兄ちゃんがそう言っているんだからリュウ君は大丈夫。今はそう信じてリュウ君が意識を取り戻すのを待とう。
「ねえ、お兄ちゃんはリュウ君のことで何か知っているの?」
「まあな。SAOにいた時に一度だけリュウが話してくれたんだ……」
「ねえ、あたしに詳しく教えてくれる?」
そう聞くとお兄ちゃんは話すのを躊躇うかのような反応をする。だが、数分間悩みに悩んで話そうと決意した表情を見せる。
「ここじゃあれだから隣の部屋で話すよ」
お兄ちゃんに連れられてあたしは隣の部屋へと移動する。隣の部屋に着くとお兄ちゃんは話を始める。だが、その内容は胸を痛めるほどあまりにも衝撃的なもので驚きを隠せないものだった。お兄ちゃんも話し終えた時には辛そうな表情をしていたほどだ。
すると、隣の部屋の中から何か物音がする。リュウ君が意識を取り戻して起きたのかと思い、ドアを開けて部屋に入ったが……。
「リュウ君……?」
ベッドの上で寝ていたはずのリュウ君の姿がなくなっており、部屋の窓が開いていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
隙を見て宿屋の窓から抜け出し、やって来たのはアルンの北側のテラスだった。
あのままログアウトしてもよかったが、仮にしてもあの2人だったら絶対に現実世界で連絡したり、直接家に来るだろうと思ったからだ。今はどうしてもあの2人……特にリーファ/スグと会う気になれない。スグを傷付けてしまうかもしれない、スグに嫌われるかもしれないと恐怖を抱いているからだ。
俺は5年前からずっとスグのことが好きだった。
だが、カズさんとスグが兄妹だと知ってから、俺にはスグに想いを寄せる資格なんてないことを思い知らせた。俺は大切な人たちに手を差し伸べて守ることもできず、彼らを失った。そして、自分の目的のためにある人……カズさん/キリさんをも殺そうとしたことがある。
今日3年ぶりにスグと会ったが、このことを知らない彼女は昔と変わらず俺に接してくれた。でも、スグへの想いを捨てようと決心したのに関わらず、未だにこの想いを捨てることができずにいたことを思い知った。
そんな中、アスナさんを助けるためにやって来た妖精の世界。
俺はここで出会ったスグと雰囲気が似ているリーファに惹かれていった。スグに対する想いも、深く埋める痛みも、リーファの隣でならいつかは忘れられそうだとそんな気がしていた。だけど、それはリーファの正体がスグだという思いもよらない残酷な結末が全て壊した。
このどうしようもない気持ちをどうすればいいのかわからない。
「リュウ君!」
この場に立ち尽くしていると後ろの方から聞き覚えのある声が俺の名を呼んだ。この世界で出会ってここまでずっと俺たちと共に冒険してきたリーファだった。
「スグ。どうしてここが……」
「えっと……勘かな……。あと、ここではスグじゃなくてリーファって呼んで。あたしはここでもリアルでもリュウ君って呼ぶけどね。まあ、龍哉とリュウガは一文字違いであまり変わりないからね。今思えばお兄ちゃんだってどっちの世界でもリュウ君のことを『リュウ』って呼んでいるし」
いつものように明るく俺に接してくるリーファ。だけど、俺はこれ以上リーファ/スグのそばに居るのが辛くなってこの場を離れようとする。
「リュウ君待って!」
リーファは俺のフード付きマントを掴んで呼び止めた。
「リーファ、俺にはもう二度と関わらないでくれ……」
「関わらないでくれって……どうしてなの?あたし、リュウ君に何か嫌われることしたなら謝るよ」
「違う、スグは何もしてないよ」
顔だけリーファの方に向け、話し始める。
「スグはリーファとしても昔と変わらず俺と接してくれた。だからスグを嫌いになることなんて1つもないよ……。今の俺はもうスグが知っている昔の俺じゃないし、君に関わる資格なんてない。それだけなんだ。だから、俺にはもう関わらないでくれ……」
「そんなの全然理由にならないよ。ちゃんと話して」
「頼むから関わらないでくれっ!!」
中々マントから手を離さないでいたリーファの手を振り払い、怒鳴った。これにはリーファもビクッとして黙って俺を見ていた。
「
心の奥にあった感情が一気に膨れ上がって、リーファにぶつけるように叫んだ。
「リュウ君、あのね……」
「だから俺に関わらないでくれって言ってるだろっ!!」
その瞬間、俺の左側の頬に強い衝撃が伝わるのと共にパチンッという音が響いた。初めは何が起こったのかわからなかったが、すぐにリーファが俺の頬を引っ叩いたものだとわかった。
これには俺も驚きを隠せず、リーファは眼尻に涙が浮かべていた。
「いい加減にしてよ、リュウ君。リュウ君はおかしいよ。そんなことであたしがリュウ君を拒絶することも嫌いになることもあるわけないじゃんっ!」
リーファは抑えきれなくなった涙を流しながら話を続ける。
「あたし、全部知っているの。リュウ君のお兄さんのことも、ファーランさんとミラちゃんのことも、リュウ君がお兄ちゃんを傷付けようとしたことも……。お兄ちゃんから全部聞いたの」
「えっ……?」
「リュウ君はいっぱい傷ついて苦しんでいるでしょ。だから、あたしはそんなリュウ君を放ってはおけないよ」
「でも、俺は……」
「リュウ君、覚えている?リュウ君があたしを上級生たちのいじめから助けてくれた時のことを」
リーファがそう聞いてきて俺は小さく頷いて答えた。
それは今でもはっきりと覚えている。
スグは道場で上級生の男子にも勝てるほど強かったが、それをよく思っていなかった上級生たちにいじめられていた。俺は偶然その現場を目撃し、割って入ってスグを助けようとした。それでもスグのことを悪く言って彼女を泣かせた上級生たちに頭にきて、ソイツらと取っ組み合いのケンカとなってしまった。お互い怪我をしたこともあって保護者まで呼ばれるほどの騒ぎになったが、最終的に相手側が自分に否があったことを認めて事態は解決した。
この出来事を通してスグと仲良くなったんだったな。
「あの時のリュウ君はあたしにとってヒーローみたいな存在だったよ。今だってそう。リュウ君はサラマンダーからあたしを助けてくれたし、インプでありながら異種族のシルフとケットシーのために戦ってくれた。それにキリト君……お兄ちゃんとアスナさんのために戦っている。あの頃からずっと誰かのために手を差し伸べている。今でもリュウ君はあたしの知っている昔のリュウ君のままだよ」
そして、リーファは両腕で俺を抱き締めてくれ、耳もとで囁きかける。
「あたし、リュウ君の気持ちが分かるなんて言えない。でも、リュウ君に手を伸ばすことは出来る。リュウ君が辛いときはあたしがリュウ君の手を掴むよ。だから安心して」
「リーファ……」
俺は呟いてリーファを両手で抱き締め、同時に目からは涙があふれ出てきた。そんな俺をリーファが子供をあやすように優しく頭を撫でてくれる。
ずいぶん長い間そのままの格好でいたが、リーファは何も言わずに俺を抱き締めて頭を撫で続けてくれた。涙はいつの間にか止まっている。
「ありがとう、リーファ……」
「あたしは別に大したことはしてないよ。でも、リュウ君が元気になってよかった……」
微笑んでくるリーファに思わずドキッとする。
――これは反則だろ。だからリーファ/スグへの想いを諦めきれないじゃないか……。
それに今更だけと俺たちって今抱き合っているよな……。このことを自覚すると更に鼓動が速くなくなり、頬が熱くなるのが伝わる。
「ねえ、ビンタしたところ、大丈夫?痛くない?」
「ゲームの中だから痛みなんてないから大丈夫だよ」
「で、でも……ビンタしたところ赤くなっているよ……」
心配そうにしてリーファは俺の左側の頬に手を当ててくる。
「ほ、本当に大丈夫だからっ!」
――逆にリーファが頬に触れてくると余計に赤くなるんだけど!
心の中で葛藤し、何とか気持ちを落ち着かせる。
「でも、リーファ……スグに嫌われなくて安心したよ……」
「そんなことあるわけないよ。あたし……むしろリュウ君のこと……」
「ああああああああ――――っ!!」
リーファが頬を少し赤く染めて何か小声で言いかけていたところ、聞き覚えがある少年の声が響き渡る。
「うわっ!?何だっ!?」
驚いた拍子にリーファと離れてしまう。せっかくリーファと抱き合っていたのに。いったい誰なんだ……。すると、俺とリーファの目の前に黄緑色のおかっぱヘアーのシルフの少年……レコンが現れる。
「「れ、レコンっ!?」」
突然現れたレコンに俺とリーファ……特にリーファは驚く。
「リーファちゃん、どうしてこのインプと抱き合っていたのっ!?」
「えっと……」
リーファは頬を赤く染めて中々答えられずにいたため、代わりに俺が答えることにした。
「あの~レコン。これにはちょっと深い事情が……」
「黙れぇえええええっ!!!」
言い終える前に、レコンは自分のことを神とか言っている何処かのゲーム会社の2代目社長のように逆切れする。このときのレコンがあまりにも強烈過ぎてビクッとしてしまう。
さらにレコンは敵意を剥き出して睨み、俺にぐいぐい近寄ってくる。しかも右手にはダガーが握られている。
「リーファちゃんに手を出しておいたからにはここで斬られてもらうよっ!」
「ちょ、ちょっと待って!どうしてそんな理不尽なことに合わなきゃいけないんだっ!?話し合えばわかるって!!」
「問答無用っ!!」
レコンは全く俺の話に聞く耳を持たず、今すぐにも俺にダガーを振り下ろそうとする。
「やめなさいレコンっ!!」
「グホッ!!」
リーファの腕が炎に包まれるほど強烈なパンチがレコンの下腹にクリティカルヒット。何故かゲームのように殴った部分に『HIT!』という文字までも表示される。レコンはそのまま1メートルほどふっ飛んで、ピクピクして地面に倒れる。そして、『ゲームオーバー』という音声まで聞こえる始末だ。
俺はビクビクしてこの光景を黙って見ていることしかできなかった。
一方でリーファはマジギレの状態で倒れるレコンの元に歩み寄る。
「ちょっと!何リュウ君に手出そうとしてんのよっ!!」
「うぐぐぐううぅぅ……。リーファちゃん、いきなり殴るなんて酷いっ!!」
「どっちがよっ!リュウ君にあんなことしたからに決まっているでしょ!!最低10回はPKしてやるわよっ!!」
「ええええええっ!?僕はただリーファちゃんに手を出そうとしているこのインプに制裁を与えようとしただけなのに!それに、この剣はリーファちゃんだけに捧げているんだよっ!!」
「はあ?あんたマジ寒いんだけどっ!」
「ぐはっ!」
リーファが言った『寒い』という単語がレコンにクリティカルヒット。その衝撃でレコンは空高くまでふっとんでしまう。
「うわ~!ハートブレーク!僕、落ちてる?飛んでる?」
そして、近くにあった噴水にザパーンッ!!と音を立てて落下し、水の上に浮かび上がった。
――あれ?前にも一度、今回みたいな光景を見たことがある気がするな……。
流石にこのままだと可愛そうだと思い、レコンを引き上げることにした。それから数分ほどして『ネーバーギーブアップ!!』という音声と共にレコンは意識を取り戻して復活した。だけど、先ほどのショックが大きかったせいか、先ほどの出来事は綺麗さっぱり忘れていた。俺としてはまたレコンが襲い掛かって来ないで済んでよかったけど……。
とりあえず、俺たちはレコンにどうしてここに来たのか聞いてみることにした。
「ねえ、レコン。アンタって地下水路でサラマンダーに捕まってたんじゃなかったの?」
「実はいいサラマンダーたちに助けられたんだ。最初はサラマンダー同士で仲間割れして戸惑ったけど、『助けるから世界樹まで案内しろ』って言ってきたね。途中でその人たちの仲間だって言うインプの人も加わって、ここまで来たんだよ」
「いいサラマンダー?」
どんな人なのかと聞こうとしたら、何処からか誰かがレコンを呼ぶ声がする。
「おーい!」
声がした方を見ると2人のサラマンダーと1人のインプがこっちにやって来るのが見えた。2人のサラマンダーはどちらも刀を腰の鞘に収めていたが、1人は悪趣味なバンダナを頭に巻いた男性で、もう1人はクールで大人びた感じの高校生くらいの男性と雰囲気は明らかに異なっていた。そして、インプのプレイヤーは高校生くらいの背が高めの男性で背中に槍を背負っていた。
なんか見覚えがある3人だ。
「おめえ、いきなり何処に行くんだよ」
「レコンはオレたちの案内人だから勝手にいなくなられると困るんだぜ」
「す、すいません……」
バンダナを巻いたサラマンダーと槍を背負ったインプに言い寄られ、レコンは謝る。
そして今やって来た3人と目が合う。オトヤとシリカの話を思い出し、ある人物たちが頭に思い浮かぶ。
「もしかして、あなた達ってクラインさんとカイトさんとザックさんですか?」
クールで大人びた方のサラマンダーは何か気が付き、俺の質問に答えてくれた。
「ああ。俺はカイトだ。そして、俺と同じサラマンダーはクライン、インプはザックで合っている。もしかしてリュウか?」
「はい!俺ですよ、カイトさん!」
「やっぱりお前だったのか」
「久しぶりだな、リュウ。お前もあまり変わりがないなぁ」
「それはザックさんたちもですよ」
「エギルの奴から聞いたぞ!おめーとキリトの2人はアスナさんを助けるためにここにやってきたじゃねえかよ!全く、オレたちにも一言言ってくれよ!水くせーだろ!」
「すいません……」
カイトさんたちと再会を喜んでいるとリーファが声をかけてきた。
「ねえリュウ君。この人たちってリュウ君の知り合いなの?」
「うん。この人たちはSAOで知り合った人たちなんだ」
「そうだったんだ。初めまして、リーファって言います」
すると、リーファに気が付いたクラインさんは彼女の元へと行く。
「初めまして。クライン24歳独身、彼女募集中……ぐほっ!!」
リーファに言い寄ろうとしたクラインさんの腹にパンチを一発叩き込む。そして、レコンの時と同様に『HIT!』という文字が表示される。
「イテテテ……。いきなり何するんだよリュウ!この娘に挨拶していたのによ!」
「だったら最後の彼女募集中は何なんですか?いくらクラインさんでも今回ばかりは怒りますよ」
リーファをナンパしようとしたクラインさんをチベットスナギツネのような表情をして睨む。カイトさんもクラインさんに呆れた表情をしてこう言い放った。
「全く、お前のその女好きはどうにかならないのか?そんなんだから彼女がいないんじゃないのか?」
「黙れぇえええええっ!!!」
カイトさんが言い放った言葉がトリガーとなり、クラインさんはレコンと同様に何処かのゲーム会社の2代目社長のように逆切れする。
「カイト!お前もオレと同じく非リア充同盟じゃねえかよっ!」
「知るか……」
カイトさんに突っかかるクラインさん。種族も使用武器も共通するところがいくつもあるのに、中身は全く違うなこの2人は。
この2人のことは置いといてザックさんからどうしてレコンと一緒にいたのか話を聞くことにした。
ザックさんの話をまとめるとこうなった。
ザックさんはインプ領からスタートし、カイトさんとクラインさんと合流するためにまずは中立の街まで行き、2人が来るのを待つことにした。
一方で、カイトさんとクラインさんはサラマンダー領からスタートしたが、通行証のようなものを渡されてシルフ領の地下水道に行くことにハメに。そこでレコンが捕まっているところに遭遇し、世界樹への案内を条件にレコンを救出。
そして中立の街でザックさんと合流して、レコンの案内の元ここまでやって来たのだという。
俺もこれまでの出来事やALOはSAOのコピーだということを簡潔に説明した。
「なるほどな。だからSAOのスキル熟練度や所持金を引き継いだのか。まあ、そのおかげで装備を整えることができたけどな。槍はリズが作ったやつがよかったが……」
「今は緊急事態ですからね。リズさんに頼めばまた作ってくれますよ」
「そうだな」
そうしている間にキリさんもやって来て、カイトさんたちとの再会を喜び、ここに来た理由を簡単に説明した。そして、グランドクエストに挑むため、世界樹の根元にある剣を持つ妖精の像が二体いるところまでやって来た。
「えーっと、ど……どうなってるの?」
「世界樹を攻略するのよ。アンタを合わせたここにいる7人で」
「そ、そう……って……ええ!?」
レコンは大きな声をあげて驚いく。まあ、驚くのも無理はないだろう。
「ユイ、いるか?」
キリさんの声にピクシーのユイちゃんが姿を現す。
「はい、パパ」
すると、カイトさんたち3人がユイちゃんに驚きを見せている中、レコンは物凄いスピードでユイちゃんの前に首を伸ばし、食いつかんばかりの勢いでまくし立てた。
「うわっ!?こ、これプライベートピクシーって奴!?初めて見たよ!!うおお、スゲェ、可愛いなあ!!」
「ひっ!?」
「こら!恐がってるでしょ!ちょっと黙っててもらえる?」
リーファは真顔でレコンにキレて、レコンは叱られた子供のようにしょんぼりして立ち尽くす。
「あーあ、怒られちゃった」
ザックさんが何処かの監察医のように一言。そして、俺たちはレコンを放っておいて、ユイちゃんからあのガーディアンのことを聞くことにした。
「ステータス的にはさほどの強さではありませんが、出現数が多すぎます。あれでは攻略不可能な難易度に設定されているとしか思えません」
「確かにガーディアンはあまり強くはなかったけど、数が問題ですよね。100体は軽く超えていたと……」
「それは異常だな。まるでゲームをクリアさせるつもりがないような」
「ああ。総体では絶対無敵の巨大ボスと一緒ってことみたいだ」
俺に続き、ザックさん、カイトさんの順にそうコメントする。
「でも、パパたちのスキル熟練度があれば瞬間的な突破は可能かもしれません」
確かにALOプレイヤーのリーファとレコンを除くとここにいるのは、全員がSAOで攻略組を務めていたプレイヤーたちだ。特にキリさんとカイトさんの2人がいれば、なんとかなるかもしれない。
キリさんは何か考えると、真剣な顔で俺たちに言った。
「皆、すまない。もう1度だけ俺のわがままに付き合ってくれないか?なんだか、時間がない気がするんだ……」
俺とカイトさん、ザックさん、クラインさん、リーファはもう答えは出ているという顔をして笑みを浮かべる。
「俺は最初からそのつもりでしたよ。そのためにここまでキリさんに付いて来たんですからね」
「俺がそんなことで引き下がると思うのか?絶対に突破するぞ」
「オレたちが力を合わせれば大丈夫だ」
「さっさと終わらせようぜ!」
「あたしに出来ることなら何でもする。それとコイツもね」
リーファがしょんぼりして立ち尽くしているレコンの肩を肘で突っつく。
「え、ええ~……。こうなったらもうヤケだ。コンティニューしてでも……クゥリィアァするっ!!」
復活したレコンはヤケになって何処かのゾンビのライダーみたいなポーズを取りながらそう言う。その内、本当に「新レコン」とか「レコン神」とか名乗ってきそうで不安になってきたな。
そして、リーファが手を前に出すと、その上にレコン、ザックさん、カイトさん、クラインさん、俺、キリさんの順で手を置く。最後にピクシーのユイちゃんがちょこんと乗る。
「ありがとう、みんな。前衛は俺とリュウ、カイト、ザック、クラインの5人で受け持つから、リーファとレコンは後方からヒールしてくれ」
俺たちはキリさんの言葉に頷いた。
「よし、行くぞ!!」
『おーっ!!』
扉に手をかけると再び攻略不可能と言われるグランドクエストが始まった。そして、大量のガーディアンが出現し、俺たちに襲い掛かってくる。
「ガーディアン。お前たちの運命は、俺たちが変える!」
リーファ/直葉の方はどっちのリュウ君も好きだということで原作みたいなことにならずに済みましたが、リュウ君の方は本格的にヤバいことになってしまいました。ですが、リュウ君を救ってくれたのはリーファ/直葉。そして、最終的にはまだ付き合っていないのにいい雰囲気に……。リメイク版でも早く2人をくっ付けてあげたいです。
実は初期の段階では、今回の話でリュウ君が「スグの代わりにリーファを好きになることもなかった」と原作の直葉みたいなことを言う案もありましたが、リーファ/直葉もリュウ君が好きなため、完全にギャグになってしまうと思い、ボツとなりました。
なんか後半は前半のシリアスな雰囲気を破壊してしまうほどエグゼイドネタが満載となってしまいました(笑)。やっぱりエグゼイドロスが影響しているんでしょう……。
レコンが完全に檀黎斗みたいに。以前レコンはグリドンよりもピクシスゾディアーツやブレンなど仮面ライダーの怪人のイメージが強いとコメントを頂きましたが、今回の話を書いてて私もそう思ってしまいました。ゲーム版では大丈夫なのか…。
そして、カイトとザックとクラインの3人が登場。クラインも相変わらずです。
色々ありましたが、再びグランドクエストに挑むことになったリュウ君たち。旧版と違ってカイトとザックもいるので、戦力が強化されています。なんかこのメンバーだったら大丈夫そうな気がしてきました。
次回もよろしくお願いします。