ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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今回から数話リュウ君回になります。映画の特典の《ホープフル・チャント》のネタもあります。基本シリアスに変わりありませんが。


第18話 あの日の真実

2024年10月14日

 

現在の最前線は第74層となり、約2年でやっと全体の4分の3近くまで来ることができた。しかし、70層台に突入してからモンスターのアルゴリズムにイレギュラー性が増してきて、ソロで攻略するのが難しくなってきている。俺も攻略に行くときはカイトさんとザックさんの2人、クラインさん率いる《風林火山》とよくパーティーを組んで行動するようになり、最前線には1人で行くことがほとんどなくなった。

 

今日はカイトさんとザックさんは用事があって攻略は休むということで、クラインさんたちと一緒に攻略に行こうと考えた。しかし、ここ数日の間、いつも迷宮区に行ってため、たまには休もうと下の層に来ていた。

 

やって来たのは第35層の主街区である《ミーシェ》。白壁に赤い屋根が立ち並ぶ放牧的な農村みたいな作りをした街で、中層プレイヤーが主に利用しているため、街は賑わっている。

 

そう言えば、最前線がまだ第40層くらいの時にこんなことがあったな。まだファーランさんとミラは生きていた時のことだった。

 

その日は、攻略を終えて帰ってきた時にはすっかり深夜12時を越えていた。街に帰ってきた俺たちはすぐに宿屋に行って身体を休めようとしたが、街の転移門の前にプレイヤーが集まっているのを発見。そこに行ってみると、白い衣装に身を纏った1人の女の子が楽団のNPCたちと歌っている姿があった。

 

「どうやら、あの女の子は楽団のNPCたちの曲に合わせて作った歌詞を歌っているようだな」

 

「凄くいい歌声だよ。アタシ、あの女の子のファンになろうかなぁ」

 

ファーランさんは軽く解説し、ミラはすっかり歌っているあの女の子のファンになったようだ。確かにこの曲は何か安らぎというものを感じていいものだ。俺たちは目を閉じ、耳を傾けて曲を聴いていた。

 

3曲歌い終わると女の子はぺこりと一礼し、転移門を使用して何処かへと行った。

 

「また明日もやらないかなぁ。もし、そうだったらまた来たいよ」

 

「攻略を終えた後に聞くとなんか心が安らぐから俺も来たいって思うよ。ファーランさんは?」

 

「まあ、2人そこまで言うならまた来ようか。俺もあの女の子が歌う曲は気に行ったし」

 

2人と話していると俺たちと同様に曲を聴いていた1人のプレイヤーが話かけてきた。

 

「嬢ちゃんたちは《ウタちゃん》に会うのは初めか?」

 

「ウタちゃん?あの女の子のプレイヤーネームってウタっていうの?」

 

「ちゃうちゃう、誰もあの子のプレイヤーネームは知らないんだよ。それで皆からは、《歌エンチャンター》の略で《歌ちゃん》って呼ばれているんだ」

 

「そうなんだ。だったらアタシも歌ちゃんって呼ぼうかな」

 

「そう言えば、《歌エンチャンター》っていうのは何ですか?」

 

「歌ちゃんの歌を一曲、最初から最後まで聞くと曲によって違うバフを貰えるんだ。それで歌エンチャンターってな。まあ、ここにいる全員は歌ちゃんの歌が好きだから来ているだけなんだけどな」

 

更にそのプレイヤーの仲間だと思うプレイヤーが話しかけてきた

 

「歌ちゃんがライブやるのは深夜の転移門広場だけど、フロアは決まっていないし、予告もしてくれないから探すのに苦労しているんだよ。毎晩3曲しか歌わないから全部聴くとなったら時間もかかるぜ」

 

そのことを聞いた直後、ミラはショックを受ける。まあ、俺たちは攻略組だから場所がわからない以上、いつも行けるのは難しいからな。

 

それでもミラは諦めることなく、アルゴさんに聞いて彼女が現れる場所の情報を買って聴きに行っていたな。俺とファーランさんが疲れているのに関わらず、俺たちを振り回して。今でもミラのあの元気すぎるパワーは何処から来ているんだろうと思う。

 

でも、去年の10月の半ば頃から彼女は姿を現さなくなって、それから数週間後にはファーランさんとミラは死んでしまった。

 

懐かしいと思ったと共に、ファーランさんとミラが死んでしまったことを思い出して悲しくなってしまう。でも、このことを気にしたって2人は戻って来ない。それに俺は決めたんだ、この世界の結末を見届けてみせるって……。

 

なんとかこの気持ちを振り切って、街の中を歩く。だが、その途中、人気の少ないところに見覚えがある人たちがいた。見覚えがある人たちとは情報屋のアルゴさんと黒猫団の人たちだ。でも、黒猫団の人たちは全員、何かに脅えているような様子だった。とりあえず、話しかけてみよう。

 

「アルゴさん、それにケイタさんたちも。どうかしたんですか?」

 

黒猫団の人たちの代わりにアルゴさんが答えてくれた。

 

「リュー坊カ。実は黒猫団の皆がオレンジプレイヤーに襲われそうになったらしいんダ」

 

「オレンジプレイヤーっ!?」

 

アルゴさんが言ったことに驚いてしまう。オレンジプレイヤーは犯罪行為を行ったプレイヤーのことだ。ソイツらに襲われたとなるとこれはただ事じゃない。

 

「そのオレンジプレイヤーってどんな奴ですか?」

 

俺の問いにアルゴさんではなく、サチさんが声を震わせながら答えてくれた。

 

「黒いポンチョで身を隠して、両手剣を持ったプレイヤーだったよ……。襲う前に私たちに向かってこう言ったの。『さあ、地獄を楽しみな』って……」

 

その瞬間、俺の頭の中にある人物が思い浮かんだ。殺人ギルド《ラフィン・コフィン》、通称……ラフコフでサブリーダーを務めていた《深淵の殺戮者》として恐れられていた男……アビスを。

 

ラフコフは数ヶ月前の討伐戦で多大の犠牲を払って壊滅させた。その後もジョニー・ブラックや《ブラックバロン》といったラフコフの残党と奴らの傘下ギルドも捕まって牢獄へと送った。事実上ラフコフは壊滅したと言ってもいい。しかし、ラフコフのリーダーのPoHとサブリーダーのアビスは討伐戦の時から一切姿を現していない。

 

「何処でそのオレンジプレイヤーに襲われたんですかっ!?」

 

「第45層にある《巨大樹の森》付近のフィールドで……」

 

「《巨大樹の森》……」

 

《巨大樹の森》は巨大な樹木によって形成され、多数の巨人型モンスターが徘徊している森だ。

 

そこは俺にとって忘れられないところでもある。何故かというと、デスゲームが開始されてちょうど1年が経った日、そこでファーランさんとミラ、フラゴンさんが率いる攻略ギルドに6人の中層プレイヤーの計14人の死者を出したところだからだ。更に1ヶ月前には、巨大樹の森に訪れたプレイヤーが何人かが行方不明になって後にそこで死亡したということもあった。そのため、入ると生きて帰って来れない森として多くのプレイヤーに恐れられ、今では誰もがその付近のフィールドまでしか訪れなくなった。

 

居ても立っても居られなくなった俺はアルゴさんの静止を無視し、すぐに《巨大樹の森》へと向かう。

 

 

 

 

 

転移門をくぐり、第45層の主街区へと着くと急いで《巨大樹の森》がある方の出入り口に急ぐ。《巨大樹の森》に向かう途中にある高さ20メートル近くにもなる石造りの壁が設けられたところにある関所を通る必要がある。

 

関所にある開閉トビラが開くと俺は迷わずに潜り抜ける。その直後、開閉トビラは音を立ててゆっくりと閉ざされる。本来は巨人が入って来ないように作られたところだという設定らしいが、誰も寄り付かないところへ向かう関所は、地獄への入口みたいなものだった。

 

関所を通った俺の目の前には、高さが15~20メートル近くもある巨大な木によって形成されている森……《巨大樹の森》がある。

 

「ここに来るのも10ヶ月ぶりか……」

 

しかし、以前と違って何か不穏な空気が漂っていた。アビスがいるかもしれない以上、来ここで引き返すわけにはいかない。俺は迷わずに《巨大樹の森》に足を踏み入れた。

 

森に入って1時間ほどが経過した。

 

初めて来た時にはなかったが、第45層のフロアボスを倒した後から、第35層の《迷いの森》と同様に、街の道具屋で《巨大樹の森》のことが書かれている高価な地図アイテムが販売されるようになった。本来は第45層のフロアボスを倒してから《巨大樹の森》を攻略するのが正しい流れだったのだろう。俺もそれは前に購入しており、迷わずに進むことができている。

 

途中で巨大な木はなくなり、遺跡みたいなところへと出た。

 

「何なんだ、ここは?こんなところがあるなんて聞いたことないぞ……っ!?」

 

辺りを見渡していると遺跡に入っていく人影が見えた。

 

「おい、待て!」

 

急いで俺も遺跡の中へと入っていく。遺跡の中は1本の通路があるだけで、そこを通り抜けると奥に祭壇みたいなものがある部屋へと出た。そして部屋の中央には黒いポンチョで身を隠したプレイヤーがいた。

 

「誰かやって来るなと思っていたが、まさかお前がやって来るとは。今日の俺は随分とついているな」

 

「運がついているのは俺の方もだ、アビス」

 

そう言い、左手で右腰にある鞘から《ドラゴナイト・レガシー》を抜き取る。

 

「何だ、この前のリベンジでもやるつもりか?俺は別に構わないぜ」

 

この前と同様にアビスは余裕そうな態度をとる。そして奴も愛用している赤黒い刃の両手剣を取り出す。

 

お互いに武器を持って相手にゆっくり歩いていき、距離が1メートルを切ったところで同時に武器を振り下ろし、鍔迫り合いの状態となる。

 

「この前戦ったときより少しは強くなっているみたいだな。だが、お前の力はそんなものじゃないだろ」

 

「コイツっ!」

 

一旦バックジャンプし、アビスと距離を取る。俺とアビスは一度、武器を持って構える。そしてアビスに向けて《ドラゴナイト・レガシー》を振り下ろすが、アビスは剣で受け止める。すぐに振り払い、片手剣スキル3連撃《シャープネイル》を発動させて攻撃を仕掛けるが、アビスは両手剣スキル2連撃《ブラスト》を発動させて威力を打ち消す。

 

「くっ!」

 

「おいおい、こんなものかよ?お前は攻略組、中層プレイヤー合わせて14人死んだ中、唯一生き残った奴だろ」

 

「っ!?」

 

「でも、お前が生き残ったのは、赤い目の巨人に捕まって食われそうになったところを2人の仲間に助けられたおかげだよな。仲間のために自分の命捨てるなんて泣ける話じゃねえか。まあ、死んだのはソイツらが弱かったってことだろ」

 

明らかに俺だけじゃなく死んだファーランさんやミラ、フラゴンさん達のことを馬鹿にしているようだ。怒りで我を失いそうになるが、それ以上にアビスの言ったことが引っ掛かる。

 

この事件は死者がたくさん出たことから大きく取り上げられたため、多くのプレイヤーが知っている。

 

だけど、公開されたのは《巨大樹の森》にいた赤い目の巨人に、攻略組と中層プレイヤー合わせて14人が殺され、1人だけ生き残ってその巨人を倒したというものだ。その生き残りが俺だというのは一部のプレイヤーしか知らないし、それ以上に気がかりなことがある。

 

「俺が赤い目の巨人に捕まって食われそうになったところを仲間に助けられて、そのせいで仲間が死んだということをどうしてお前が知っている。これはアルゴさんたち情報屋も知らないことだ」

 

このことを知っているのはキリさん1人だけだ。あの人がそう簡単に他の人、ましてやアビスに話すわけがない。なのにこいつはあの時のことを詳しく知っている。まるであの場にいて直接見ていたかのように…

 

「フッ。俺としたことがうっかり口を滑ってしまうとはな。まあ、いずれ話そうと思っていたからちょうどいいや」

 

この男は何を言っているんだと思っている中、アビスは話を続ける。

 

「あの時、お前たちに《巨大樹の森》から戻って来ない仲間の救援を依頼したのは()なんだぜ」

 

「何っ!?」

 

ファーランさんとミラ、フラゴンさんたちが死んだときのことをアビスは話し始める。

 

「最初はMPKを仕掛けてあの中層プレイヤーたちをあの森に誘い込んで殺して、攻略組のフラゴンとかいう奴らに『仲間を助けて欲しい』って嘘を言って誘い込んで、同じように殺す予定だったんだよ。そこにお前たちもやって来て一緒に行くことになった」

 

このとき、あの時のフードで顔を隠したプレイヤーはアビスだったとわかった。だから、数ヶ月前に戦ったときより前に奴と会ったことがあるって思ったのか……。

 

「予定通り、トラップでメンバーはバラバラになって、そこに赤い目の巨人が襲い掛かって次々と攻略組プレイヤーたちを殺していった。ついに最後の1人になってこれで終わりだなってなった時に、予想外のことが起こった」

 

アビスは楽しそうにして話を続ける。

 

「あの時、お前はずっと共にしてきた仲間を殺したあの赤い目の巨人にブチギレて、鬼神……いや、逆鱗に触れられた龍のようになってあの巨人をズタボロにしてぶっ殺した。あの時のお前の姿はゾクゾクするようなくらい凄いものだったぜ。俺も思わず震えたよ…14人ものプレイヤーを殺した()()()()()()()()が現れたからなぁっ!!」

 

ファーランさんとミラ、フラゴンさんたちが死んだ元凶を作ったのはアビスだった。しかも、コイツは自分のせいで皆が死んだことに何の罪を感じていない。それどころか楽しそうにしてその時のことを語っている。恐らく、討伐戦の時に戦ったアビスを信仰していたラフコフのプレイヤーにも楽しそうに話したのだろう。

 

俺は怒りを抑えられなくなり、アビスに対して殺意を向ける。ーすいません、キリさん。今だけは約束を破ります

 

《ドラゴナイト・レガシー》を持つ左手に力が入る。そして地面を蹴り、一陣の風となって駆け出した。

 

眼にもとまらない速さでアビスに《ドラゴナイト・レガシー》を振り下ろす。

 

アビスは当たる直前で両手剣を使ってガードする。

 

「そうだ、その意気だ。あの時……赤い目の巨人を殺したときみたいだぜ。お前が怒りに飲み込まれたときの眼は俺たちと同じ目をしている。獲物を殺すという感じでなぁ……ぐはっ!」

 

空いている右手でアビスの顔を殴り飛ばす。そして、《ドラゴナイト・レガシー》を逆手に持って目にも止まらない速度で斬撃を与える。俺は順手に持ち直して更に斬撃を与えようとする。アビスも負けじと応戦し、両手剣で全て防ぐ。

 

「絶対許さない…!貴様だけは俺の手で終わらせてやる!!」

 

「ぐっ!やっぱりこの状態のお前と戦った方が楽しいなぁっ!ずっと待ち望んでいたことだぜっ!」

 

アビスは両手剣スキル6連撃《カラミティ・ディザスター》を、俺は片手剣スキル6連撃《ファントム・レイブ》を発動。お互いのソードスキルがぶつかり合い、俺たちは後ろへとふっ飛ばされる。

 

「やるなぁ。本当はもっとお前と戦いたいが、今回はお前が()()()を使った俺と戦えるだけの器があるかどうか試させてくれよ」

 

すると、アビスは壁にあるトラップみたいなものを発動させる。突如、地面に魔法陣みたいなものが浮かび上がって光り出す。

 

「何だ!?」

 

アビスはすぐに安全地帯に回避し、無事でいた。

 

「この前、ここに来た奴らにも試してみたが、全員生きて帰って来なかったぜ。お前は頑張って生き延びるんだな。さあ、地獄を楽しみな」

 

アビスがそう言い残すと俺の体は光に包まれ、何処かへと強制的に転移される。

 

光りが消え、目の前に広がるのは先ほどとは違う部屋だった。どうやらあれは転移トラップだったようだ。部屋は石造りの壁と床で、フロアボスの部屋みたいに広い。部屋の中には火が付いた松明があるが、薄暗い。

 

「ここは何処なんだ……?」

 

マップを確認してみるが、今俺がいるのは第45層と変わりない。

 

辺りを見渡していると、前の方からドシンッ、ドシンッと巨大な何かが歩いてくる音がする。これは巨人の足音。

 

暗闇の中から姿を現したのは1体の巨人。肩までかかる白髪に全身を白い岩のような皮膚で覆われ、目は白目となっている。大きさも赤い目の巨人と同様に他の巨人より大きい。全体的に白いという外見から白い巨人と言ってもいいだろう。

 

雄叫びと共に3本のHPゲージが出現する。

 

(ここには出口らしいものはない。戦って倒さないと出られないって仕組みのトラップだろう。だったらすぐにコイツを倒して、アビスを倒しに行ってやる。)

 

《ドラゴナイト・レガシー》を手に取り、白い巨人に立ち向かう。

 

白い巨人が振り下ろしてきた拳をかわし、地面を蹴って奴に急接近する。

 

あの赤い目の巨人も足を攻撃されて態勢を崩すことに成功した。この白い巨人にもこの手は通じるだろう。

 

そして、片手剣スキル《スラント》を足に放つ。全身を覆う白い岩のような皮膚に強烈な一撃が叩き込まれる。だが……。

 

「何っ!?」

 

白い巨人は体勢を崩すどころか、HPもまともに減っていない。その間にも白い巨人は再び拳を振り下ろしてくる。回避するが、すぐに次の攻撃が襲い掛かってくる。

 

「ぐっ!」

 

2回目の攻撃は回避できず、攻撃を受けてしまう。HPは一気に2割近く削られた。

 

「何なんだ、あの白い巨人は……」

 

コイツは下手したら最前線のボスと同じくらい強い。もしかして、《巨大樹の森》の奥深くにあるこの遺跡は上の階層が攻略されることで解放される仕組みになっているのか。

 

それでもまだ戦意を喪失していなかった俺は地面を蹴り、白い巨人に向かっていく。

 

白い巨人の攻撃をかわし、反動が少ない片手剣ソードスキル3連撃《シャープネイル》を叩き込み、更に大型モンスター有効な片手剣ソードスキル3連撃《サベージ・フルクラム》を発動させ、斬撃を与える。

 

白い巨人も俺に右手で振り払うかのように攻撃してくる。避けようとしたが、ソードスキルを発動させた後に起こる硬直時間のせいで遅れてしまい、またしても攻撃を受けてしまう。

 

「まだだぁっ!!」

 

お返しにと片手剣スキル8連撃《ハウリング・オクターブ》を発動。5連続の突き、斬り下ろし、斬り上げ、最後に全力の上段斬りを与える。

 

「どうだ……っ!?」

 

白い巨人のHPを確認するが、まだ1本目で4分の1ほどしか減っていない。

 

「そんな、ソードスキルを連続で叩きこんであれくらいしかダメージを与えられないのか……」

 

硬直で動けなくなっているところ、白い巨人が左手で俺を吹き飛ばす。

 

「ぐわっ!!」

 

攻撃をまともに受け、俺は宙を舞う。そして勢いよく地面を転がっていく。その拍子に《ドラゴナイト・レガシー》は左手から離れてしまう。

 

なんとか身体を起こそうとするが、さっき受けた攻撃の衝撃があまりにも強かったせいなのか頭が少しふら付き、思うように起き上がれない。自分のHPを確認してみるがすでにレッドゾーンへと到達している。

 

倒れている中、脳裏に現実世界やSAOで出会ってきた人たちとの様々な思い出が蘇る。産まれたときからずっと家族でいる父さんと母さん、(あん)ちゃん。SAOで初めて出会って1年も苦楽を共にしてきたファーランさんとミラ。本当の兄のように慕っているキリさん。他にも多くの人と出会って色々なことがあった……。

 

『リュウ君……』

 

そして()()のことを思い出す。




第6話に出てきたリュウ君たちに仲間を助けて欲しいと頼んだプレイヤーは、アビスだったということになります。ファーランとミラ、フラゴンたちの死の元凶はアビスであると言ってもいいでしょう。

あの白い巨人は、実写版の進撃の巨人(後編)に出てきたあの鎧の巨人みたいな奴をイメージして下さい。本当は原作やアニメに出てくる鎧の巨人にしようと考えていたのですが、強すぎて倒せない感じがしたため、ボツとしました。実写版の鎧の巨人?は色々あって本当の鎧の巨人よりも弱いイメージが強かったので、倒せそうなこちらを採用しました。

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