ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

102 / 106
大変長くお待たせしました。

言い訳です…。ここ最近の休日はSAOの映画を観に行ったり、SAOのフルダイブイベントやSAOのコラボ湯に行ったりなどSAO尽くしの日々を過ごす。そして、戦闘シーンの執筆に苦戦したり、執筆意欲が沸いてきた中で本作に低評価付けられてボロクソに言われてショックを受けて執筆意欲が失せてしまった、他にも様々な理由で遅くなってしまいました。

でも、多くのSAOイベントのお陰で執筆意欲が沸いてきたので、何とかして何とかして年内にキャリバー編を終えるよう頑張りたいと思います。

それでは最新話どうぞ!


第3話 11人のパーティーと双牛と新たな技

トンキーが氷の巨大ピラミッドへ続く巨大な扉の前にある足場に止まり、俺達はそこへ降り立った。

 

扉に近づき、ピラミッドの中へと入ろうとした時、キリさんは自身の左肩に座っているユイちゃんの様子が何かおかしいことに気が付き、声をかけた。

 

「ユイ、どうした?」

 

すると、ユイちゃんが飛び立って中央でホバリングしながら、皆に聞こえるボリュームで言い始めた。

 

「あの、これは推測なんですが……。この《アルヴヘイム・オンライン》は、他の《ザ・シード》規格VRMMOとは大きく異なる点が一つあります。 それは、ゲームを動かしている《カーディナル・システム》が機能縮小版ではなく、旧《ソードアート・オンライン》に使われていたフルスペック版の複製ということです」

 

確かにユイちゃんの言うとおりだ。

 

元々ALOは、蛮野と須郷が自身の野望のために、SAOのサーバーをコピーして作り上げたものだ。だから、システムもSAOと同等の性能を持っていることになる。

 

ユイちゃんの説明は更に続いた。

 

「本来のカーディナル・システムには、《クエスト自動生成機能》があります。ネットワークを介して、世界各地の伝説や伝承を収集し、それらの固有名詞やストーリー・パターンを利用・翻案してクエストを無限にジェネレートし続けるのです」

 

それを聞いたここにいる元SAOプレイヤー達は、俺を含めて全員が揃って何か思い当たるような反応を見せた。

 

俺はあることに気が付き、ユイちゃんに尋ねた。

 

「ユイちゃん、1つ聞いていいか?」

 

「はい」

 

「このクエストの告知が運営から特になかったのって、運営が用意したやつじゃなくて、カーディナルが自動生成したからってことになるのかな?」

 

「先程のNPCの挙動からして、その可能性が高いです。だとすれば、ストーリーの展開次第では、行き着くところまで行ってしまうことが有り得ます」

 

「い、行き着くところって一体……。まさか、アルヴヘイムに霜の巨人族達が攻めてくるだけでは済まないなんてことは……」

 

声を震わせ、聞こえるか分からないボリュームで呟いたことにも、ユイちゃんは険しい顔をしながら、丁寧に答えてくれた。

 

「残念ですが、その可能性は充分あり得ます。私が、アーカイブしているデータによれば、今のクエスト及び、ALOそのものの原形となっている北欧神話には、《最終戦争》も含まれているのです。ヨツンヘイムやニブルヘイムから霜の巨人族が侵攻してくるだけでなく、更にその下層にある《ムスペルヘイム》と言う灼熱の世界から炎の巨人族までもが現れ、世界樹を全て焼き尽くす……と言う……」

 

すると、神話や昔話に詳しいリーファの口が開いた。

 

「神々の黄昏……ラグナロク……。まさか、いくらなんでも、ゲームシステムがマップを丸ごと崩壊させるようなことできるはずが……」

 

確かにそれは大いに最もな話だ。だが、ユイちゃんは左右に軽く首を振る。

 

「オリジナルのカーディナル・システムには、ワールドマップを全て破壊し尽くす権限があるのです。何故なら、旧カーディナルの最後の任務は、浮遊城アインクラッドの崩壊させることだったのですから」

 

それを聞いた俺達は黙り込んでしまう。

 

「あたしの店……」

 

「まだ運命の人とも会えてねぇのに……」

 

リズさんとクラインさんがそう呟く。その2人に対し、カイトさんが冷静に「落ち着け」と言い、話始めた。

 

「仮にその《ラグナロク》が本当に起きても、バックアップ・データからサーバーを巻き戻すことは可能じゃないのか?」

 

「確かに。こんなこと運営側にとっても都合が悪いから、絶対それくらいの対応はするハズよね」

 

カイトさんの話を聞いて、シノンさんはそう述べる。俺達も納得がいき、頷くなりして反応する。だが、ユイちゃんだけは頷こうとはしなかった。

 

「カーディナルの自動バックアップ機能利用していた場合、巻き戻されるのはプレイヤーデータだけで、フィールドは含まれません」

 

打つ手なしかよと全員が黙り込んでいる中、クラインさんが「そうじゃん!」と叫び、ウインドウを開いた。しかし、すぐに「だめじゃん!」と頭を抱える。

 

「こんな時に、何バカやってるんだよ……」

 

呆れながらザックさんが毒づくと、クラインさんは情けない顔で振り向いた。

 

「いやぁ、GMを呼んで この状況を知ってんのかを確認しようと思ったんだけどよォ。人力サポート時間外でやんの……」

 

「年末の、日曜の、午前中だからなぁ……」

 

「何で、このタイミングで、こんな非常事態が起きるんだよ……。最悪だ……」

 

キリさんが呟き、俺も何処かの物理学者みたいなことを思わず口にしてしまう。

 

「リュウ君、お兄ちゃん。時間が……」

 

リーファが先ほどウルズから渡されたメダリオンを俺に見せてきた。

 

金色のペンダントにはめ込まれている緑色の宝石は、6割以上が黒ずんでいる。

 

「これは思っていた以上に、動物型の邪神が狩られるスピードが早いな……」

 

「ああ。俺達に時間はあまり残されてなさそうだな。とにかく今は最下層に急ごう!」

 

俺達はもう一度『おお――!』と叫ぶ。

 

前衛に俺、リーファ、キリさん、カイトさん、クラインさん。中衛にサックさん、リズさん、オトヤ、シリカ。後衛にアスナさん、シノンさん。こういうフォーメーションを組み、俺達は巨城《スリュムヘイム》へと突入した。

 

 

 

 

ゲーム内での1パーティーの上限人数は6人か8人が定番となっている。しかし、ALOでは上限人数は7人とやや変則的である。そして、レイドパーティーの上限は、7人×7パーティーとなっている。

 

ちなみに、俺達がパーティーを組む時は大体メンバーが固定している。俺、リーファ、キリさん、アスナさん、カイトさん、ザックさん、オトヤ、シノンさん、リズさん、シリカだ。

 

全員が中高生で、リーファとシノンさん以外は同じ学校に通っている。リーファはキリさんと兄妹で同居していて、シノンさんはカイトさんとザックさんの家の近所に住んでいるので、タイミングを合わせやすい。そして、固定メンバーが10人もいるため、全員の都合が付かない時でも1パーティー分の人数は比較的集まりやすく、今回みたいに8人以上の時は2つのパーティーにしてレイドを組んでいる。

 

この10人に加わるように参加してくるのが、クラインさん、エギルさん、クリスハイトさん、レコンである。

 

今回は常駐メンバー全員に、クラインさんを加えた計11人でレイドパーティーを組んだ。だが、このレイドパーティーにはメイジが非常に少ないという問題点が見られる。

 

常駐メンバーでは、ウンディーネのアスナさんが回復と支援魔法をマスターしているが、それ以外は細剣スキルに振っている。

 

リーファは魔法剣士だが、使えるのは戦闘用の阻害系呪文と軽いヒールだけである。

 

オトヤとシリカも多少魔法を使うが、使えるのは回復と支援系だけだ。

 

リズさんは鍛冶師なのでスキルの半分以上が鍛冶系で、エギルさんも職業柄スキルの3割が商人系となっている。

 

キリさんとザックさんとクラインさんは、スキルを近接物理戦闘系に全振りしている脳筋タイプである。

 

俺とカイトさんは、戦闘の補助用に魔法スキルを少し上げているが、リーファの魔法剣士タイプというよりは、キリさん達の脳筋タイプに近い。

 

たまに参加するクリスハイト……クリスさんは強力な氷結系の攻撃魔法の使い手で、レコンもシルフが得意な風魔法だけでなく闇魔法もそれなりにマスターしているので、戦術の幅が圧倒的に広がる。

 

ただ、レコンに至ってはちょっとしたトラブルメーカーでもある。レコンは俺とリーファが付き合っていることが許せないようで、俺への当たりがかなりキツい。レコンが参加することで、メイジ不足の問題は多少解決されるが、その代わりに俺への負担が増え、毎回必ずと言ってもいいほどトラブルも起きている。そして、過去にはリーファの逆鱗に触れてしまい、暫くの間、俺への接触禁止令が出た……即ち俺達のパーティーへの参加が禁止になったこともあるほどだ。今回、不参加なのは普段の行いが原因だろう。

 

今回に限らず、普段からメイジ不足には悩まされているが、物理攻撃メインの戦闘においては俺達は非常に強いパーティーだと言ってもいいだろう。

 

それでも、たまにヤバい状況に陥ってしまうことはあるが……。

 

 

 

 

氷の居城《スリィムヘイム》に突入してから、既に20分以上経過している。

 

ウルズが言っていた通り、本来ダンジョン内にいる敵は地上に降り、前回挑んだ時より圧倒的に少ない。通路を徘徊している雑魚モンスターとの遭遇はほぼゼロに等しく、中ボスモンスターも半分が不在だ。だが、流石に下の階に降りる階段を守護しているフロアボスのモンスターはいた。

 

第1層のフロアボスは、サイクロプス型の大型邪神モンスターで、かつて俺とリーファとキリさんとアスナさんが撤退を余儀なくされる程の強さを持っている。しかし、今回は11人と前回より3倍近くの人数だというのに加えて、ソードスキルも実装されているため、倒すことができた。

 

その後、第2層を駆け抜けて、再びフロアボスがいるところまで辿り着いた。そこで俺達を待ち構えていたのは、巨大なバトルアックスを持った、金と黒のミノタウロス型の大型邪神モンスター2体だった。

 

この人数だから、相手が2体に増えても何の問題もない。しかも、魔法攻撃は一切してこないので、さっきのサイクロプスよりは簡単に倒せるだろうと誰もが思っていただろう。

 

しかし、その期待はすぐに裏切られたのだった。

 

「コイツ全然体力が減ってない!」

 

「ヤバイよお兄ちゃん!金色の方、物理耐性が高すぎる!!」

 

俺に続くように、隣にいるリーファは少し離れているところにいるキリさんに叫んだ。

 

「ああ!」

 

軽く頷いて反応するキリさん。

 

「キリト、黒い方はもう体力を全部回復させたぞ!」

 

「クソォ!せっかく俺達が頑張ってダメージを与えたっていうのによぉっ!!」

 

カイトさんは状況を報告し、クラインさんは悔しそうに叫ぶ。

 

見ての通り、俺達は最初は楽だと思っていた2体のミノタウロス達に、苦戦を強いられている。

 

2体のミノタウロスの内、黒い方は魔法耐性が、そして金の方は物理耐性が非常に高く設定されていたのだ。

 

黒いミノタウロスは物理耐性が高くないようで、まずは全員で一気に攻撃してソイツから倒そうとした。しかし、金のミノタウロスが黒い方を守るように割って入り、俺達を攻撃。そして、その隙に黒い方は後退して一気に体力を回復させたのだ。

 

ならば、人数が多いのを活かして二手に分かれ、片方は金のミノタウロスを足止めし、その間にもう片方で黒いミノタウロスを倒す戦法をとった。だが、その戦法も金のミノタウロスに簡単に振り切られてしまい、失敗に終わった。

 

リーファが風属性の攻撃魔法で、金のミノタウロスに攻撃をしてみるも、今度は逆に黒いミノタウロスが割って入り、バトルアックスを使って攻撃を防いだのだった。

 

それぞれが誇る圧倒的な防御力に、高すぎるコンビネーション。俺達のパーティーには、最悪過ぎると言ってもいいほど相性が悪い奴らだと言ってもいいくらいだ。

 

「衝撃波攻撃二秒前! 一、ゼロ!」

 

ユイちゃんの声がし、カウントに合わせて前衛と中衛にいるメンバーが左右に大きく飛ぶ。

 

その直後、金色のミノタウロスが振り下ろしたバトルアックスが、巨大な衝撃波を生み、俺達に襲い掛かる。

 

ユイちゃんのナビゲートのお陰で直撃は避けられても、範囲攻撃だけは避けられず、前衛と中衛にいたメンバーは全員ダメージを受けてしまう。

 

すぐに後衛に控えていたアスナさんが俺たちの魔法で体力を回復させる。更に、オトヤとシリカも回復魔法を使用する。

 

「キリト君、今のペースだと、あと150秒でMPが切れる!」

 

後ろの方からアスナさんの叫び声がする。

 

「マジかよ。オトヤとシリカの方はどうだ!?」

 

「僕とシリカの方はもう限界です!」

 

今回のように人数が多い時は、オトヤとシリカには、アスナさんの負担を少しでも減らすため、状況次第で彼女のサポートをしてもらっている。だけど、2人のサポートが加わっても、既に限界の一歩手前まで来ているようだ。

 

こういう耐久戦で、ヒーラーのMPが尽きてしまえば、待っているのはパーティーの全滅だ。そして、全滅したらアルンにあるセーブポイントからのやり直しとなる。

 

「リーファ、《死に戻り》している時間は残っているか?」

 

「ううん。メダリオンがもう7割以上黒くなってるから、そんなに時間は残ってないと思う」

 

リーファの言葉に俺は「そうか」と呟く。

 

――せめて攻撃魔法が得意なメイジが1人でも居れば。そう思ったが、仮にいたとしても連携に優れたアイツらを倒すのは困難なのは変わりないだろう。でも、あの人なら……。

 

俺は、数日前に出会った水色がかった銀髪をしたウンディーネの魔法使いを思い浮かべた。

 

でも、今ここにあの人はいない。ここに居る者たちだけで何とかしなければならない。

 

何かいい策はないかと考えている中、キリさんが何か叫んだ。

 

「みんな!こうなったら、もうできる事は1つだ!いちかばちか、金色をソードスキルの集中攻撃で、倒しきるしかない!!」

 

上級のソードスキルには、物理属性だけでなく魔法属性もある。これなら物理耐性の高い金色のミノタウロスにもある程度ダメージを与えられる筈だ。

 

しかし、連撃数が多いソードスキルは、技後の硬直時間が長い問題点もある。この隙に、巨大バトルアックスが直撃すれば、前衛と中衛の全滅はほぼ確定する。

 

いくらこの人数でも、これは危険な賭けであることには変わりない。

 

だが、この場にいた全員の中では既に答えが出ていた。

 

「ウッシャあ!その一言を待っていたぜぇ!キリの字!!」

 

クラインさんはそう叫び、愛刀を上段に据えた。俺たちも自身の武器を持って構える。

 

――どうやら、ここで()()を使わないといけないみたいだな。

 

キリさんはシリカに指示を出した。

 

「シリカ、カウントで《泡》を頼む!」

 

「はい!」

 

金色のミノタウロスの挙動を読み、カウントを始める。

 

「――二、一、今!!」

 

「ピナ、《バブルブレス》!!」

 

「きゅる!!」

 

シリカが叫ぶと、ピナは大きく口を開けて、無数の泡を放出した。

 

宙を滑った泡が、金のミノタウロスの顔面辺りでパンっ!と音を立てて割れる。すると、魔法耐性の低い金のミノタウロスは、1秒だけ幻惑効果にとらわれて動きが止まった。

 

「ゴーーッ!」

 

キリさんの合図と同時に、アスナさんを除く全員の武器が、色とりどりのライト・エフェクトを迸らせ、動き出す。

 

「うおりゃあああ!!」

 

クラインさんは飛び上がり、上空から一気に炎に包まれた刀を振り下ろす。

 

「ハァァァァ!!」

 

カイトさんもクラインさんと同じく刀に炎を纏わせ、刀を下から上に向けて円を描くように振るい、炎の刃で斬りつける。

 

「せぇぇい!!」

 

リーファは上空から舞うように、疾風を纏った長刀で斬撃を与える。

 

「うおおおおおっ!!」

 

ザックさんは矛先に紫色の光を纏わせた槍で、すれ違いざまに敵の左足を薙ぎ払う。

 

「うああああっ!!」

 

リズさんは強烈な雷光を放っているメイスを敵の右足に叩き込む。

 

「はああああっ!!」

 

オトヤは白い光を放っている錫杖を敵の胴体に突く。

 

「でりゃああああっ!!」

 

シリカは短剣で水飛沫を散らしながら、敵の背中に突き刺す。

 

「ハァっ!!」

 

後衛に控えていたシノンさんは的確な狙撃術で、氷の矢を敵の顎下に打ち込む。

 

直後、俺は突進し、氷属性を纏った刃を、龍が鋭い牙で相手を串刺しにするかのように7回突き刺していく。オリジナルソードスキル 7連撃《バイティング・ドラゴン》。物理6割、氷4割。

 

キリさんは俺が使った技に少々驚きつつも、俺に続くようにオレンジ色の輝きを纏った右手の剣で技を繰り出した。5連続の突きから斬り落とし、斬り上げ、最後にもう一度斬り落とす。片手剣8連撃《ハウリング・オクターブ》。物理4割、炎6割。

 

だが、キリさんの攻撃はここで終わらなかった。

 

右手の剣の炎が消えた直後、「ここだ」と呟き、今度は左手に持つ剣に水色の光が纏い、敵の腹を大きく斬りつける。そして、上向きへの垂直斬りと下向きへの垂直斬りを続けて繰り出す。3連重撃《サベージ・フルクラム》。物理5割、氷5割。

 

俺とキリさんが披露した技にこの場にいた全員が驚きを隠せないでいた。

 

 

 

キリさんは、左手の剣の光が消えると、再び右手の剣を光らせる。そして、バックモーションの少ない垂直斬りから、上下のコンビネーション、全力の上段斬りを繰り出した。片手剣4連撃《バーチカル・スクエア》。

 

この間にも、皆の技後の硬直……スキルディレイも次々と解けていき、2回目の攻撃が始まった。

 

カイトさんとクラインさんのサラマンダーコンビが、同時に抜刀して斬りつける。すると、2ヶ所で爆炎が発生する。

 

リーファは剣道のように中段の構えをしてから、緑色の風を纏った長刀で連続で斬りつけた。

 

俺もリーファに続くように、龍が鍵爪でクリスタルを粉々に破壊するかのように斬撃を4連続繰り出す。オリジナルソードスキル 4連撃《クリスタル・ブレイク》。物理5割、聖5割。

 

シリカは駆け上がるように短剣で敵を斬りつけていき、オトヤは錫杖を顔面に叩き込む。更に、ザックさんが槍で両足を薙ぎ払ってバランスを崩させ、そこにリズさんがメイスを頭に勢いよく振り落とす。敵が怯んだ隙に、シノンさんが後ろに回り込んで真後ろから氷の矢を撃ちこむ。

 

水、風、闇、雷、氷の属性を攻撃を立て続けに受けた金色のミノタウロスは、悲痛な叫びを上げる。

 

全員の攻撃が止むと、キリさんが駆け出し、左手の剣に深紅のライトエフェクトを纏う。ジェットエンジンのような音を上げて、強力な突きを放つ。《ヴォーパル・ストライク》物理3割、炎3割、闇4割。

 

あれだけの攻撃を受けたなら、これで倒せただろうと誰もが思っているだろう。しかし、邪神級モンスターの中ボスということもあって簡単には倒せてはくれず、HPはまだ5%近く残っていた。

 

金色のミノタウロスは、ニヤリと獰猛に笑い、バトルアックスを振り下ろそうとする。しかし、俺達はスキルディレイのせいで動くことができない。

 

――もう少しで硬直が解けて、あの技を使えば完全にトドメを刺せるっていうのに……。ここまでか……!

 

悔しそうに心の中で叫んだ時だった。

 

「やあァァァァッ!!」

 

アスナさんが後衛から一気に飛び出し、金色のミノタウロスに5連撃の細剣スキル《ニュートロン》を放つ。だが、アスナさんでも何とか攻撃を相殺するので精一杯だったようで、完全にトドメを刺すまでには至らなかった。

 

「誰か今のうちにトドメを刺してっ!!」

 

アスナさんが時間を稼いでくれたおかげで、俺のスキルディレイが解ける。

 

――チャンスは今しかない。

 

俺は地面を蹴り、愛剣を構える。

 

「フィニッシュは決まりだ!!」

 

そう叫ぶと、俺の左手に握られた剣に蒼炎が纏う。10体の蒼い龍が牙を剥いて凄まじい速度で駆け抜けていくように、次々と斬撃を繰り出していく。そして、最後に11体目の蒼い龍が鍵爪を振り下ろすように全力の上段斬りを決め、新星のようなライトエフェクトが炸裂する。オリジナルソードスキル11連撃《ドラゴニック・ノヴァ》。物理4割、闇3割、炎3割。

 

最後の11連撃目が炸裂した直後、金色のミノタウロスはHPを全て失い、ポリゴン片となって爆散した。

 

直後、俺も倒れそうになったところ、リーファが支えてくれた。

 

「リュウ君、大丈夫?」

 

「ああ。何とか最後の技が決まって安心したよ」

 

俺とリーファは軽く笑みを浮かべる。

 

その間にも、瞑想で体力を完全に回復させた黒いミノタウロスが、勝ち誇ったようにバトルアックスを構える。だが、相方が倒されたところを見た瞬間、唖然となって動きを止める。

 

そこに硬直が解けた全員が、黒いミノタウロスが一斉に視線を向ける。

 

「……おーし。テメェ、そこで正座」

 

クラインさんがそう告げた直後、俺達はそれまでの鬱憤を晴らすかのように黒いミノタウロスを攻撃。11人のプレイヤーによる容赦ない攻撃で、黒いミノタウロスをあっという間に倒したのだった。




前々回の影響で、なんか書いててレコンへのヘイトがより一層集まりそうな気がしました…。改心させた方がいいのか、それともこのままでいいのか悩みますね…。

リュウ君が後半で披露した必殺技は、今回作中で解説する予定でしたが、予定より文量が多くなってしまい、次回にやらせていただきます。

映画やフルダイブイベントの影響で、本作にもミトを登場させたいという気持ちがより一層強くなりました。そして、イーディスもアリブレは終了しますが予定通り登場させたいと思ってます。

Twitterの方で何度か話してますが、本作のアンダーワールド大戦では、エボルとブラッドとゴーダをモチーフにしたオリ敵に、セイバーのロード・オブ・ワイズ達を登場させる予定ですからね(笑)

次回もよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。