ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》   作:グレイブブレイド

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お待たせしました。

オーズの映画を観に行ったり、買ったポケモンのゲームやFGOをプレイしてて、執筆をさぼってしまいました。申し訳ございません。

今回からキャリバー編になります


キャリバー編
第1話 伝説の聖剣を求めて


025年12月28日午前9時42分

 

今年も残すところあと3日。俺が通っているSAO生還者の学校も数日前から冬休みに入り、ゆっくりと朝の時間を過ごしていた。ちょうど朝食を食べ終え、リビングで朝の情報番組を見ていたら、テーブルに置いていたケータイが着信音を鳴らした。

 

画面には『桐ヶ谷 直葉』と表示され、俺は手に取って電話に出た。

 

「スグか。おはよう」

 

『リュウ君。おはよう』

 

「こんな朝早くから電話してきて何かあったのか?」

 

『実はね、お兄ちゃんが今日エクスキャリバーを取りに行こうって皆に声をかけているの』

 

「エクスキャリバーって、まさか《聖剣エクスキャリバー》か!?随分と急な話だけど、何かあったのか?」

 

『実は、今朝MMOトゥモローを見たら《聖剣エクスキャリバー》が発見されたという記事があったの。そのことをお兄ちゃんに話したら、皆でゲットしに行こうってことになって」

 

「なるほど……」

 

《聖剣エクスキャリバー》。

 

それは、ALOに於いて、ユージーン将軍が持つ《魔剣グラム》を超えるとも言われ、《聖剣ジュワユーズ》と1,2位を争う伝説の武器と言われている。しかし、この2本の剣は公式サイトに少し紹介されているだけで、入手方法等の詳しいことは一切知られていなかった。

 

いや、正確には《聖剣エクスキャリバー》の在処を知っている者が4人……いや5人いる。俺とキリさん、リーファ、アスナさん、ユイちゃんだ。

 

俺たちが《聖剣エクスキャリバー》を見つけたのは、今から1年くらい前になる。俺とキリさんとリーファとユイちゃんは、世界樹があるアルンを目指して旅をしている最中、アルン高原で巨大ミミズ型モンスターのトラップに引っかかり、地下世界ヨツンヘイムに落とされた。

 

そこで、四本腕の人型邪神級モンスターが、象とクラゲが合体した邪神モンスターを攻撃している現場に遭遇する。リーファに「いじめられてるほうを助けて!」とお願いされた俺とキリさんは、人型邪神を誘導して湖に落とし、象クラゲ型邪神を勝利させた。

 

助けた象クラゲ型邪神はリーファによって《トンキー》と名付けられ、八枚の羽根を生やした姿へと羽化し、俺たちを背中に乗せて地上へと繋がる通路へと運んでくれた。

 

その途中で俺たちは見た。世界樹の根に包まれてぶら下がる逆ピラミッド状の巨大ダンジョンと、最下部で輝く黄金の長剣……《聖剣エクスキャリバー》を。

 

更にスグから詳しく話を聞いたら、発見されただけでまだ入手まではしてないらしい。

 

しかし、アップデートでソードスキルが導入され、あのダンジョンの難易度が下がっているはずだ。誰かがあのダンジョンを突破して剣を入手するのも時間の問題だろう。

 

「そういうことなら、俺はもちろん行くよ」

 

『ありがとうリュウ君。お兄ちゃんにもそう伝えておくよ』

 

「ああ。けど、一体どうやって発見したんだ?ヨツンヘイムだと飛行不可で、暗中飛行ができるインプでも見えるところまでは届かないだろ。やっぱり他のプレイヤーもトンキーの仲間を助けて、クエストフラグを立てるのに成功したのか?」

 

『あたしも気になって調べてみたけど、どの攻略サイトにもそういうのは一切なかったよ』

 

ならどうやって発見したんだと考えていると、スグが何か思い出して声を上げた。

 

『あ、ねえねえ、リュウ君聞いてよ!お兄ちゃんったらまたトンキーをキモいって言ったんだよ!あんなに可愛いのに酷いよね!』

 

「そ、それは、酷いな……」

 

『でしょ!』

 

電話越しにカズさんへの文句を言うスグに、苦笑いを浮かべながら答える。

 

――まあ、カズさんの気持ちはわからなくはないんだけどなぁ……。

 

トンキーは象とクラゲが合体したような姿をしており、大半の人はトンキーのことを気に入るのにはちょっと勇気がいるだろう。だが、スグ/リーファはトンキーのことを「可愛い」と言ってかなり気に入っており、時々ヨツンヘイムまで行って会っているほどだ。

 

俺は少なくともトンキーのことをキモいとは思ってないが、だからと言って「可愛いか?」と聞かれても素直に「可愛い」とは答えることはできないんだよな。それが密かに悩みの種となっており、なるべくトンキーの話題を出さないように気を付けている。

 

とりあえず今はトンキーのことは置いておき、再びエクスキャリバーについて話し合うことにした。

 

「ところで、行くメンバーはもう決まっているのか?確かトンキーは出会った頃より成長して、今は11人まで乗れるようになったハズだけど……」

 

『それなら決まっているよ。まずは前回行ったあたしとリュウ君、お兄ちゃん、アスナさんでしょ。今回は、カイトさん、ザックさん、オトヤ君、クラインさん、リズさん、シリカちゃん、シノンさんを加えて行こうってなったの』

 

「今回はメンバー総出で行くのか」

 

『前回は偵察のつもりで行っただけだからね……』

 

「あー、あの時か……」

 

実は半年ほど前にも一度だけ、俺とキリさん、リーファ、ユイちゃん、そしてユイちゃんを通じて知ったアスナさんの4人と1人で挑んだことがある。しかし、あの空中ダンジョンには強力な四本腕の人型邪神が多数いて俺たちは苦戦。最終的に、俺に至っては動けなくなくなるほどのダメージを受け、キリさんに担がれて撤退したほどだった。

 

「まあ、2人だけで皆に連絡するのは、大変だから何人かは俺の方から連絡しておくよ」

 

『助かるよ。あたしは、シリカちゃんとリズさんとシノンさんに連絡するから、リュウ君はオトヤ君とクラインさんをお願い。カイトさんとザックさんには、お兄ちゃんにアスナさんの後に連絡するよう言っておくから』

 

「わかった。じゃあ、あとでALOで」

 

『うん』

 

通話を終えて、俺は早速ALOへとログインした。

 

 

 

 

 

待ち合わせ場所となったのは、イグドラシル・シティ大通りにある《リズベット武具店》だった。大がかりなクエストの前には、装備の耐久度をMAXまで回復させておく必要があるため、待ち合わせ場所には持って来いの場所だ。

 

店内の奥にある工房では店主のリズさんが皆の武器を順に回転砥石に当てて、ザックさんが道具を準備したりと彼女の手伝いをしている。その間、リーファとアスナさんとユイちゃんはポーション類の買い出しに行き、残ったメンバーは店内の待合スペースで待っていた。

 

俺の右隣に座っているクラインさんは《景気づけ》という理由で朝から酒瓶を傾けている。朝からよく飲むなと思っている中、ピナを頭に乗せたシリカが向かい側に座っているクラインさんに訊ねた。

 

「クラインさんは、もうお正月休みですか?」

 

「おう、昨日っからな!働きたくてもこの時期は荷が入ってこねーからよ。社長のヤロー、年末年始に1週間も休みがあるんだからウチは超ホワイト企業だとか自慢しやがってさ」

 

「ま、まあでも、良い会社なのは本当なことだと思いますよ」

 

シリカの隣に座っているオトヤが苦笑いを浮かべながらそう答える。

 

オトヤの言う通り、良い会社なのは間違いないだろう。クラインさんは社長さんのいつも文句を言っているが、SAOに2年間囚われていた間もクビにせず面倒を見てくれて、生還後もすぐ仕事に復帰できるようにしたっていう話だからな。

 

「おうキリの字よ。もし今日ウマイこと《エクスキャリバー》が取れたら、オレ様のために《霊刀カグツチ》取りに行くの手伝えよ」

 

「えぇー……。あのダンジョンくそ暑いじゃん……」

 

「それを言うなら、今日行くヨツンヘイムはくそ寒いだろうが!」

 

子供みたいな言い合いをするキリさんとクラインさん。彼らを見て笑っていると、俺の斜め向かいの席に座るシノンさんがぼそっと一言。

 

「あ、じゃあ私もアレ欲しい。《光弓シェキナー》」

 

「キャラ作って2週間で伝説級武器(レジェンタリーウェポン)を御所望かよ。お前も随分と贅沢だな」

 

俺の左隣に座るカイトさんが、やや呆れながらシノンさんに向かって言った。

 

「リズの造ってくれた弓も素敵だけど、出来ればもう少し射程が……」

 

すると、弓の弦を張り替えていたリズさんが振り向き、苦笑いしながら言った。

 

「あのねぇ、この世界の弓ってのはせいぜい槍以上、魔法以下の距離で使う武器なの。100メートル離れた所から狙おうなんてシノンくらいだよ」

 

「欲を言えば、その倍の射程は欲しいとこね」

 

澄ました微笑を浮かべながらそう言うシノンさんに対し、リズさんはまたしても苦笑いを浮かべる。そして、リズさんの隣にいるザックさんが彼女に向かってこう言った。

 

「でもよ、リズ。シノンのご要望通りの弓を造ったら、話題になって店の宣伝にもなるんじゃないのか?」

 

「確かにそうかもしれないけど、限度って言うものがあるのよ。もしも、造ることになったら、ザックには素材集めを手伝ってもらうからね」

 

「ハイハイ、分かってるって」

 

まだ付き合ってないのが嘘だと思うくらい仲睦まじいザックさんとリズさん。この2人も早く付き合えばいいのにと思っていると、店の扉が開いた。

 

「たっだいまー!」「お待たせ!」

 

声の主は、ポーション類の買い出しに行っていたリーファとアスナさんだった。

 

「お帰り」

 

俺は2人にそう一言。アスナさんの肩から飛び立った小妖精のユイちゃんが、キリさんの頭の上にちょこんと座って言った。

 

「買い物ついでにちょっと情報収集してきたんですが、まだあの空中ダンジョンまで到達出来たプレイヤー、またはパーティーは存在しないようです。 パパ」

 

「へぇ……。 じゃあ、なんで《エクスキャリバー》のある場所がわかったんだろう?」

 

「それがどうやら、私たちが発見したトンキーさんのクエストとは別種のクエストが見つかったようなのです。 そのクエストの報酬としてNPCが提示したのがエクスキャリバーだった、ということらしいです」

 

ユイちゃんのその言葉に、買ってきたポーション類を並べていたアスナさんが小さく顔をしかめて頷いた。

 

「しかもソレ、あんまり平和なクエストじゃなさそうなのよ。お使い系や護衛系じゃなくて、モンスターを何匹以上倒せっていうスローター系。おかげで今、ヨツンヘイムはPOPの取り合いで殺伐としてるって」

 

「……そりゃ、確かに穏やかじゃないな……」

 

キリさんも唇を曲げる。

 

虐殺(スローター)系は、名前の通り、《○○というモンスターを○匹倒せ》とか《○○というモンスターが落とすアイテムを○個集めろ》とかいう類のクエストだ。つまり、指定されたモンスターを片端から狩りまくることになるため、狭いエリアならPOP……モンスターの取り合いになり、ギスギスしてしまうのは避けられない。

 

「でもよぉ、ヘンじゃねぇ?《聖剣エクスキャリバー》ってのは、おっそろしい邪神がうじゃうじゃいる空中ダンジョンのいっちゃん奥に封印されてンだろ?それをNPCがクエの報酬で、ってどういうこった?」

 

「言われてみれば、そうですね」

 

「うん、ダンジョンまで移動させてくれるだけって言うなら分かるよね……」

 

クラインさんの言葉に、オトヤとシリカがそうコメントする。この場にいた全員が考えていると、カイトさんが冷静に声を発した。

 

「ここでいくら考えていても、何も答えは出てこないだろ」

 

「そうね。行ってみれば解かるわよ、きっと」

 

カイトさんに賛同するかのようにシノンさんも冷静にコメントした。その直後、工房の奥でリズさんが声を上げた。

 

「よぉーしっ!全武器フル回復ぅっ!」

 

労いの言葉を全員で唱和。新品の輝きを取り戻した其々の愛剣、愛刀、愛弓を受け取り身に付けた。次に、アスナさんの作戦指揮能力によって分割したポーション類を貰い、腰のポーチに収納。持ちきれない分はアイテム欄に格納した。

 

準備が完了したところで、クラインさんがここにいるメンツを見て、ニヤニヤと笑いながらこう言った。

 

「しっかし、相変わらず脳筋ばっかりのパーティーだな」

 

確かにクラインさんの言うとおりだ。今ここにいるメンバーは、リーファとシノンさんを除く全員が元SAOプレイヤーだから仕方がないだろう。

 

すると、リズさんがクラインさんにこんなことを言った。

 

「なら、アンタが魔法スキル上げなさいよ」

 

「はっ、やなこった。侍たるもの魔の文字が付くスキルは取れねぇ、取っちゃならねぇ!」

 

「だけど、クライン。大昔からRPGの侍は戦士プラス黒魔法クラスなんだぜ。そんな拘りを持ってていいのか?」

 

「けっ、魔法使う位なら刀折って侍辞めてやんぜ」

 

ザックさんの忠告を無視し、大口を叩くクラインさんだったが……。

 

「でも、この前クラインさん、炎属性のソードスキル使ってましたよね。あれって半分魔法だったと思いますよ」

 

「えっ!?マジ!?」

 

シリカの唐突なコメントに、クラインさんは焦りだす。そこへユイちゃんが更に追い打ちをかける。

 

「はい、シリカさんの言う通りです。5月のアップデートでALOにもソードスキルが実装されましたが、上級のソードスキルは物理属性の他に地・水・火・風・闇・聖の魔法属性も備えています」

 

「そ、そーだっけ……?」

 

「そうですよ。現実を見て下さい」

 

現実逃避しようとしているクラインさんに、俺が彼の肩に左手をポンと置いてそう一言。そして、リズさんはニヤニヤと笑みを浮かべてクラインさんにトドメを刺そうとする。

 

「魔法使う位なら何だっけ?」

 

「確か、()()()()()()()()()()って言ってたな~」

 

リズさんに便乗するかのようにザックさんもニヤニヤしながら揶揄う。

 

2人に追い詰められて、クラインさんは冷や汗をかきながら愛刀をしっかりと握り締める。

 

「リュウ公~、キリの字~」

 

そして、情けない声を出しながら近くにいた俺とキリさんに助けを求めてきた。

 

「まあまあ。本人も反省しているみたいだから、許してあげましょうよ」

 

「それに、ソードスキルは呪文を唱えないんだし、ノーカンにしてやったらどうだ?」

 

「しょうがないな~」

 

「リュウとキリトに免じて許してやるか」

 

リズさんとザックさんが下がり、クラインさんは安堵した様にため息を漏らす。

 

「みんな、今日は急な呼び出しに応じてくれてありがとう。このお礼はいつか必ず、精神的に。それじゃあ、いっちょ頑張ろう!」

 

カイトさんとシノンさんは軽く笑みを浮かべ軽く拳を上げ、俺を含めた他のメンバーはおー!と唱和する。

 

そして、リズさんの店を出て、イグシティの真下のアルン市街から地下世界ヨツンヘイムに繋がる秘密のトンネルを目指した。

 

 

 

 

 

 

 

オマケ

 

《聖剣エクスキャリバー》ゲットに挑むため、俺とスグは行くメンバーを考えていた。

 

「前回はあたしとお兄ちゃんとリュウ君とアスナさんだけで行って危うく全滅しかけたから、今回はトンキーに乗れる上限の11人で行った方がいいよね」

 

「ああ。となると、今回はあと7人決めないといけないな。カイトにザック、オトヤ、リズ、シリカ、クライン……あと1人か。エギルは店があるだろうし、クリスハイトは頼りないし、レコンは……」

 

「お兄ちゃん、レコンは止めた方がいいって!絶対いつもみたいにリュウ君に突っかかると思うよ!」

 

レコンもたまに俺たちのパーティーに参加するが、ちょっとした問題児でもある。恋敵であるリュウのことを敵視し、毎度のように某ゲーム会社の二代目社長やひょっとこのお面を被った37歳児の鍛冶師みたいに暴走している始末だ。いつもは皆で面白がったり、止めたりしているが、今回ばかりは本当にパーティーが全滅ということも十分あり得る。

 

「確かにレコンは止めておいた方がいいな。リュウの妨害になったら俺達も困るし」

 

「でしょ。なら、シノンさんはどう?ALOを始めてからまだ2週間だけだけど、もう弓の扱いには慣れている感じだったよ」

 

「おお、それだ!シノンなら、もう高難易度のダンジョンでも充分立ち回れるし、万が一何かあってもカイトがフォローしてくれるから大丈夫だろ」

 

そんな感じでメンバー決めをしたのだった。




旧版ではできなかったキャリバー編に突入することができました!

エクスキャリバーやトンキーのことはフェアリィ・ダンス編でも少しやりましたが、それらのことを書いたのがずっと前でしたので、懐かしいなと思いながら執筆してました。そういえば、リュウ君はトンキーのことをアンクと名付けようとしたんですよね(笑)

トンキーに乗れる定員は、二次創作だと1~2人増えるのが定番となってますが、本作は4人も増えるため、少し成長して乗れる定員を増やすという強引な設定となしました。やっぱり原作オリジナル双方のメインキャラを全員出したかったので。

レコンも参戦させる案もありましたが、檀黎斗や鋼鐵塚さんのように暴走してリュウ君の戦闘に支障を与える、読者の方からもレコンの参加を禁止する声が上がった等の理由により原作と同じく不参加にしました(笑)

次回は、皆さんが楽しみにしているあのシーンがあります(笑)

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