ソードアート・オンライン 狂戦士の求める物   作:幻在

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この回を書く為に俺はやってきたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


ボス撃破、繋がる思い

「おおおおお!」

前方の小柄な敵が突っ込んでくる。

だが、その小柄な敵はシノンの矢によって弾かれる。

 

―ナイス!

 

 ―どういたしまして。

 

目を合わせ、心の中で会話するソラとシノン。

そして、目の前に立ちはだかる医者服の天使。

だが、横へ薙ぐソードスキル《スラッシュバン》で吹き飛ばす。

そこへ盾の天使が突撃してくるが、こんどは真っ赤な深紅の光が盾を吹き飛ばす。

 

弓兵スキル《剛弓(インパクトアロー)

 

強力な重攻撃ソードスキルだ。

そのお陰で硬直が解け、飛んできた鉄球をかわす。

そして、鉄球を投げてきたボスに突進、ソードスキルを叩き込む。

 

狂戦士スキル《ラインナイブス》

 

連続九回の攻撃を超高速で放つ狂戦士スキル上位攻撃。

それをもろに喰らった鉄球はHPを大幅に減らし、バーを一本失う。

その後ろから小柄な天使が襲うがシノンの矢によって吹き飛ばされる。

そこへ医者服が襲い掛かる。

まだ硬直を解けておらず、背後から攻撃を受ける。

「ガァ!?」

 

―ソラ!

 

―大丈夫だ!かすり傷さ、こんなの。

 

「こいつ!」

シノンがアトラススターを放つ。

それが医者服に炸裂し、さらにソラが大剣を振り向きざまに振り回す事で吹き飛ばす。

そこへ盾の天使が襲い掛かる。

それをギリギリでかわすと、足に一発叩き込む。

盾の天使がよろけた瞬間、シノンの矢が叩き込まれる。

さらにソラがキャノンブレードを使い、盾の天使を串刺しにする。

HPが急激に減少する。

そのままバー一本分持っていき、更に半分まで減らす。

背後から小柄の天使が再度攻撃してくる。

「いい加減にして!」

シノンが矢を放つ。

それにより、小柄は吹き飛ぶが、再度、攻撃に転じる。

「まず!?」

「ソラ!」

だが、その攻撃は届く事は無かった。

「おおおおお!」

キリトのバーチカル・スクエアがその小柄に叩き込まれる。

そこへスイッチするかの様にアスナがリニア―を食らわせる。

「悪い待たせた!」

「遅いぞ」

「ごめん、でもこの借りは返すわ!」

HPが危険領域に入っていたプレイヤーのほとんどが戻ってきていた。

「犠牲者はゼロだ!お前のお陰だな」

「そうか・・良かった」

「俺たちであの巨漢をやるぞ!」

「おう!」

「ええ!」

そして、三人は巨漢の所へ向かう。

だけどちょっと待て。今まで巨漢は先ほどの戦いに参加していなかった。

何故だ。

その答えは直ぐに出た。

 

片手直剣スキル『ヴォーパル・ストライク』

狂戦士スキル『キャノンブレード』

 

それが、()に移る影に向かって突き進む。

だが、本来なら聞こえない筈の()()()が帰ってきて、剣が弾かれる。

「「な!?」」

これには驚きを隠せない三人。

そこには・・・

「こ、こいつ・・!?」

くすんだ銀色の鎧を纏った天使だった。

それも、体だけじゃなく、翼や羽、本当の意味で全身に鎧を纏っていた。

「こいつは・・・骨がいりそうだぞ?」

「そうね。流石にきついかも」

「でも、やるしかねぇな・・・」

そして全員が警戒しながら武器を構える。

そして、敵が動いた。

突然、体を反らしたのだ。

「!?」

そして、勢いよく前へ突き出すと、口から炎が吐かれた。

「なァ!?」

「避けて!」

キリトとアスナがそれぞれ右と左に飛び退くも、ソラだけは突っ込んでいった。

「ソラ!?」

「おおおおお!!」

そして、大剣を口の中に無理矢理突っ込む。

炎が拡散し、ソラに直撃はしていないが・・・

 

―アッツ!?熱い!?

 

―大丈夫!?

 

やはり熱は鎧に包まれていては中が高温のサウナ状態になってしまうのだ。

そして、熱は初めて受けるので、耐えるのも難しい。

そして、HPは全然減っていない。

「こいつ!?口の中まで鎧で包んでんのか!?」

いきなりボスの顔が横に大きくはじかれる。

キリトが攻撃したのだ。

それのお陰で、無事窮地を脱したソラ。

「すまねえキリト」

「お互いさまだろ?」

さらに赤い光を纏った矢がボスの腹部に直撃する。

「シノン!」

「大丈夫!?」

シノンがソラの元へ駆けつける。

「バカ、無茶して」

「わりぃ」

後ろから歓声があがる。

見ると、ボスが二体倒されていた。

残っているのは、盾の天使と医者服だけだった。

「よし、こっちはこっちで叩くぞ!」

「おう!」

「「ええ!」」

そして、鎧の天使と対峙するソラ、シノン、キリト、アスナの四人。

「腹に攻撃を集中させましょう。もしかしたら、部位破壊出来るかもしれない」

アスナが提案する。

「よし、なら俺が殿(しんがり)をやる。バックアップ頼んだぞシノン」

「わかったわ」

「キリト!」

「ああ!」

ソラとキリトが同時に走り出す。

そこで鎧の羽が形を変えている事に気付く。

「!?止まれキリト!」

「え!?」

と、言われるがままに止まるキリト。

その前に立ってソラが剣を盾にする。

そこへ、鎧の攻撃が叩き込まれる。

それは、硬い鎧に纏われた羽によって繰り出されるラッシュ。

それを真正面から防ぐソラ。

「ソラ!」

「このぉ!」

シノンが頭部に『シュート』を叩き込む。

だが、鎧はそれをお構いなしに攻撃を続ける。

ソラのHPが徐々に減っていく。

「ソラぁ!」

シノンの叫び声が聞こえた。

なら・・・!

 

狂戦士スキル『ベルセルク』

 

怒涛の十五連撃で迎撃に出る。

ラッシュに対して強力な攻撃を繰り出す。

全ての攻撃を繰り出すと、鎧はとうとう、ラッシュを終了する。

その隙を逃さず、キリトがホリゾンタルを腹にぶつける。

そこへ、アスナのスタースプラッシュがぶつかる。

さらにシノンのインパクトアローが直撃。

そして、硬直の解けたソラが狂戦士スキル最強の攻撃を繰り出す。

 

狂戦士スキル『ザ・ラグナロク』

 

連続二十連撃を叩き込む、最強の大技。

それが十八撃目の突きが入った瞬間、鎧が砕け、炎が噴き出す。

熱が体を焼くが関係ない。

そのまま切り上げ、更に鎧を砕く。

そして、そのまま斬り下ろす。

そこへ、三つの光。

アスナのリニア―。

キリトのヴォーパルストライク。

シノンのシュートがソラの最後の攻撃とほぼ同時に叩き込まれる。

そして、鎧は大量のポリゴンとなって爆散した。

そして、目の前にファンファーレと、共に、クリアの文字列と報酬が出てくる。

「か、勝った・・・?」

「みたい・・・だな・・」

武器を収めるアスナとキリト。

と、その時、ガシャン!っという音がした。

「え?」

「ソラ君」

前にもあったが、おそらく・・・

「ソラぁ!」

ソラが、余りの痛みで倒れたのだ。

「あ~。痛ぇ・・」

「バカ!無茶して!」

「悪い」

鎧を解除するソラ。

今回は、気絶するには至らなかったようだ。

「おーおーお熱い事で」

「エギル。おまえ後で殺す」

「じょ、冗談だって」

倒れていながらも無駄口をたたくソラ。

「ソラ君。少し休んだ方が・・・」

「そういう訳にもいかない。いってて」

無理しながら起きようとするソラ。だが、いきなり何者かに頭を掴まれ、また倒される。

硬い衝撃がくると思ったが、そんな事は無く、後頭部に柔らかい何かが押し付けられる。

「休みましょ」

「シノン・・・」

「そのスキルって結構痛いんでしょ?さっきボスの炎で体焼かれてたんだから、これぐらいはさせなさいよ」

「ははは・・・」

これはダメだ。譲る気が感じられない。

ソラは諦めてシノンの膝枕を受け入れ、やがて静かないびきをかいて寝始めた。

「そうとう、疲れてたみたいだな」

「キリト・・・」

横にキリトがしゃがんでくる。

ソラの顔は、格好良いし、それなりに人気のある顔だが、こうして見ると子供っぽい印象を浮き出てくる。

キリトぐらい黒い髪を整え、その顔を眺める。

不意に、シノンの頭の中に、謎の情景がフラッシュバックする。

 

ーああ、まただ。

 

それは川の情景。そこで居眠りをしている一人の少年。そこへもう一人、シノンと似た少女がその顔を覗き込み、自分も眠たくなったのか、すぐ側で寝てしまった。

 

ーあの時も、いつも貴方は私を守ってくれてた。

 

気付くと夕方で、側にはあの少年が起きていた。寝顔を見られていた事に、羞恥心と怒りが入り混じった感情がこみ上げてくるが、不意に彼の腕の痣に気付いた。聞いても簡単には話してくれず、粘った結果、私のクラスメイトの兄の中学生率いる四人組と喧嘩をしていたらしい。

 

ーどんなに傷付いても。

 

少年は、以前から、少女を守る為に鍛えていて、そのお陰で腕の痣だけで済んだらしい。当然、その中学生の内、一人をボコボコにする事で追い払ったみたいだが。

 

ー私を守ってくれる・・・

 

少女は、持っていたハンカチをその腕に巻いた。少年は躊躇ったが、少女が頑固なのか、ほぼ強制的に巻かれた。守ってくれた事でお礼を言うと、こんな恥ずかしい事を言ってきた。

『お前を守るのは、俺の役目だから・・・』

 

ー私の『英雄(ヒーロー)

 

 

「・・・ン。・・ノン。シノン!」

「わ!?」

「どうしたんだ?ボーッとしてたけど・・・」

「な、何でも無いわよ!」

「大丈夫? シのノン?」

「シ、シのノン?」

「あ、やっぱりダメかな?」

「いや、別に良いわよ、嫌じゃないし・・・ん?」

気付くと、周りにはニヤニヤしているプレイヤーと嫉妬の眼差しで見ているプレイヤーが何人か・・・・

(ここ人前だった!?)

その事に気付き、急激に顔を赤くするシノン。

一方で呑気にいびきをかくソラ。

その様子を楽しそうに見るキリトとアスナ。

 

 

しばらくして、他のメンバーは転移門のアクティベートに向かい、シノンはソラと残り、キリトとアスナは先に行ってしまった。

そして、ようやくソラが起きた。

「ん・・・」

「おはよ、ソラ」

「ああ、おはようシノン。みんなは行ったか」

「ええ、転移門のアクティベートに向かったわ」

「そっか。じゃ、俺達も行くか」

「体は大丈夫?」

「大丈夫。眠ると治るんだ」

「そっか、じゃあ歩けるわね」

「まあな・・・」

立ち上がるソラ。シノンはそれを名残惜しそうに見るが、一つ、提案を出した。

「ねえ、ソラ」

「ん?何?」

「次の層がクリアされるまで、少し、前線離れない?」

シノンの提案に、少しばかり間を置くソラ。

そして・・・

「・・・そうだな。流石に疲れたよ」

と、素直に答えた。

「寝ない日が一週間も続いた日があった。人を殺しすぎた」

その声は、どこか、救いを求めているかの様に、震えていた。

「痛い目を何度も見た、人が死ぬ所を何度も見た」

いつの間にか、体が震えている。

「立ち止まっちゃいけないと思った。止まったら、それほど帰りが遅くなると思ってた」

また、記憶がフラッシュバックする。

か弱い少女の様な母。

少年に近付けようとしない少年の妹。

少女を虐げ、辱め、周りに少女に不利な噂をばら撒く少年の母親。

少年に近付く事が気に入らない学校の自分のクラスだけで無く、少年のクラスメイトでもある女子たち。

わざとボールをぶつけたり上靴を隠し、少女にゴミを被せるクラスの男子たち。

少女を恐れるような目で見る学校の教師。

全てが敵に見えた。全てが信用出来なかった。だけど、彼だけは違った。

少女の代わりに傷を受け、時には先生にも立ち向かう。

飛んできたボールをわざと受けたり、上靴を隠された時にも、例え女子トイレに入れられても問答無用で取りに行くバカな少年。

時には、殴り合いの喧嘩で無傷で完勝したりと、少女を助け続けた。少女に手を差し伸べ続けた。

「守りたい奴が・・・どんどん・・・傷付いてもいくと思った・・・もしかしたら、自殺しているかもしれない・・・って思った・・」

その顔は、涙で濡れていた。

「・・・詩乃が・・・いなくなるって・・・思うと・・・胸が・・・張り裂けそうだ・・・」

シノンは立ち上がる。

そして、ソラを抱き締める。

「そっか・・・そうなんだ・・・」

全部って訳じゃない。だけど思い出した。

シノン・・・朝田 詩乃という少女は、きっと・・・

「辛かったよね、苦しかったよね?」

「うん・・・・」

「貴方の苦労を分かるなんて言わない。とても、苦しくて、痛くて、辛くて、それでも貴方は戦い続けた。守り続けて来た。誰かがしなくちゃいけない事を、貴方はやってのけてきた。例え法律や規則があって、周りの意見が正しくても、貴方は御構い無しにやってしまう。誰かを助けたい。それは、それだけは分かるよ。ソラ、私は・・・」

そこで一旦、言葉を切り、そして・・・

 

「私は、朝田 詩乃は、ソラが、地条 蒼穹が、好きです」

 

その言葉に、ソラが目を見開く。

「お前・・・記憶が・・」

「全部って訳じゃない。っというか、突っ込むところそこ?」

「そうだな・・・悪い・・・突然の事で・・・混乱してるみたいだ・・・」

そして、ソラは、涙を拭うと、改めてシノンに向き直る。

「詩乃、俺は、お前があの事件を起こしてから、絶対にお前を守るって誓った。だけど、それ以前から、いや、初めてお前を見た時から、きっと、この気持ちが芽生えたのかもしれない」

そして、ソラはシノンを真っ直ぐ見据え、言い放つ。

 

「俺、地条 蒼穹は、朝田 詩乃が、()()()()

 

しっかりと、はっきりと、聞こえるように、聞き間違いのない様に、一語一語を言い放つ。

シノンは、その言葉が頭の中で何度も繰り返し聞こえた。

それが幻聴でない事を何度も何度も繰り返し聞いた。

そして・・・

「ずるいわよ・・・『大』をつけるなんて・・・」

と、涙を流してそう言った。

目が合う。

ああ、もう戻れない。

ここから先に進めば、確実なものになってしまう。

そうなれば、もう誰にも口出し出来ない。

永遠のものになってしまう。

それでも・・・戻りたくない。

二人の距離が、零になる。

一体どれくらい接吻(キス)をしていたのかわからないぐらい長い時間が経った気がする。

二人が離れ、ソラがいきなりこういった。

「突然なんだけどさ、シノン」

「何?ソラ」

「結婚システムって知ってるか?」

「何それ?」

「まあ、いわば、自分の全てを相手に預ける行為だな」

「それって危険なんじゃ・・・」

「そう、このゲームでもっとも信頼している相手としか出来ない絶対権。相手が自分の全てを預けるのと同時に、自分も己の財産を預ける事なんだ。ついでに、ステータスさえも共有される」

「そこまで・・・」

「それでだな・・シノン」

ソラは、顔を赤くさせるが、直ぐに覚悟を決めたようにシノンを見てこう言う。

 

「俺と、結婚してくれ!」

 

対してシノンは・・

「そんなの、決まってるじゃない」

予想していた筈なのに、いざ言われると、とても恥ずかしく、嬉しくて、泣けてしまう。

 

「はい、よろこんで。不束者ですが、よろしくお願いします」

 

 


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