ソードアート・オンライン 狂戦士の求める物   作:幻在

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前回もそうですが、オリジナル回です。


死霊の城

シノンがSAOに迷い込んで一週間がたった。

「はああ!!」

シノンは右手に持った短剣をソラに突きたてる。

その刀身には青い光。

 

短剣スキル《アーマー・ピアーズ》

 

だが、ソラは持っている両手剣で防ぐ。言っておくが竜殺しの剣は背中だ。

今、ソラが持っている剣は《サンライトイエロー》。意味は『太陽の光』。

馴染みの、髪をピンクに染めた女鍛冶屋に頼んで作らせた黄色い刀身と、白銀の柄を持つ、彼女の最高傑作の一つだ。

「やああ!」

硬直が解けた瞬間、今度は短剣を逆手に持ち、連続で斬りかかってくる。

「甘い」

「きゃ!?」

四度目の攻撃をかわし、足をかけ転ばせる。

「いたた・・・もう、手加減しなさいよソラ!」

「仕方ないだろ?この世界で生きるには、レベルもそうだが、それなりの技術も必要なんだ」

「むー」

ここは五十層の圏内の草原。

ソラとシノンは決着などのモードの設定はしないで、擬似デュエルというものをやっていた。

「まあいいわ。そろそろ迷宮区にいきましょう」

「お前・・・出会った当初は色々と怖がってたクセになんでそんなに偉そうなんだ?」

「あ、いや、そういう訳じゃ・・・」

いきなりしゅんとするシノン。

シノンはまだ記憶を取り戻した訳じゃない。

だが、心は覚えているのか、性格は詩乃のものだ。

それだけで、何か安心してしまう。

「まあ、行くのは構わないが・・・」

「でもやっぱ・・・六十九層の方がいいかな?」

「え!?」

シノンのレベルもかなり上がった。

 

ソラは早くシノンのレベルを上げる為に、二十五層の迷宮区に一緒に潜り、ターゲットは主にソラが受け持ち、シノンはたまに攻撃してもらうだけなのだが、それでも経験値はまだレベル一だったシノンにとっては大きな経験値だった。

それのお陰で、まだソラには届かないものの六十層までの敵なら一人で倒せる程度になった。

 

「俺がいくらレベルを二十ぐらい水増しする装備をやっているからって・・・」

「あんたは、私を守ってくれるんでしょ?」

「ぐ・・・・」

そう、あのマイホームで、眠りから目覚めたシノンにこれからの事を伝え、ソラは、最後にこういったのだ。

「大丈夫、俺が守ってやる」

その時のシノンの顔は大いに可愛らしかったが、今となっては上の()だ。()()だけに。

「わかった。わかったから上目遣い(そんな)目で俺を見るなぁ!!」

ソラは観念した。

 

 

六十九層、迷宮区・・・・ではなく・・・

「その限定ダンジョン・・・」

「こんな所あったか?」

まるで城塞のようなダンジョンだった。

迷宮区にいく途中が、まさかの時間で発生するダンジョンになってしまっていたのだ。

その中にはガーゴイルや巨大ムカデなど。

巨大G()に至っては詩乃は叫んで逃げた。即刻、ソラが排除したが。

「ひぃぃ・・・」

「おいおい・・・」

涙目で抱き着いてくるシノン。流石にGは予想外だった。

どうやら、その辺りの知識だけは残っているようだ。

「あ、またでた」

「やあああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

グルルルル・・・・

「・・・・/////」

「そろそろ昼にするか」

「べ、別にお腹が空いたとかじゃないんだからね」

「はいはい。まったく、シノンは可愛いなぁ」

「は、はあ!?」

何気にからかってみる。それを聞いて顔を赤くするシノン。

色々と抗議してくるシノンを他所に、ウィンドウを操作し、出発する前に作っていた弁当をオブジェクト化した。

その中にはサンドイッチが四つ。

「ほら」

「ふ、ふん!」

そっぽを向きながらも正直にサンドイッチを受け取るシノン。

そして、大きく口を開けて、サンドイッチにかぶりつく。

「ん!」

その口内に広がった肉の旨みに思わず感嘆するシノン。

そのままあっという間にサンドイッチを食べ終えるシノン。

「はー・・・」

満足そうな顔を浮かべ、とても幸せそうな笑みを浮かべるシノン。

「おいしいか?」

「!?!?!?」

ハッと我に返り、一気に頭が熱くなるのを感じる。

「~~~~!!!」

「痛い痛い痛い痛い!?ポカポカ叩くな!」

「痛い訳ないでしょ!?どうせゲームなんだから!」

「ぐ・・・」

ソラの狂戦士というスキルはペインアブソーバをカットされて、実際に受けたダメージが本当の痛みになって精神的にダメージを追ってしまうのだ。

「と、とにかく悪かったって!」

「ふん!」

腕組みしてそっぽを向くシノン。

「さて、そろそろ行くか」

「わかった」

そしてしばらく歩いている内に、教会のような場所に出た。

「ここは・・・」

「ん?」

いきなり前にクエストメニューが現れる。

 

『クエスト

魔女を討伐せよ

人数一人(エクストラスキルを持たないプレイヤーのみ)』

 

「・・・」

「えーっと、エクストラスキルって?」

「ある一定の数値に達すると習得できるそのスキルカテゴリの派生形みたいなスキルの事だ」

「そ、それじゃあ・・・」

「お前一人だけで受けろって事だよな?」

「・・・・」

「どうする?嫌なら、このまま戻るけど・・・」

「いえ、やるわ」

「お、おい、大丈夫か?」

「心配しないで、これでも貴方に鍛えられていたのよ。ちょっとやそっとじゃ死なないわよ」

「ならいいんだが・・・」

シノンは受けるという合図のYESを押す。

その瞬間・・・

 

ガタ・・・

 

「「!?」」

音がした方向を急いで見る二人。

そこには・・・・

「きゃあむぐ!?」

「静かに!どうやらNPC(ノンプレイヤーキャラ)のようだ」

「だだだだからって心臓に悪いわよ!」

そこには、薄汚いボロボロのローブを羽織った骸骨がいた。

「とにかく話しかけてみるんだ!」

「わ、わかった」

そして、シノンは話しかける。

「えー、貴方は誰ですか?」

「私は、この城の管理者だった者です」

「管理者?」

「左様です。この城は、数年前に、《死霊の魔女》に支配され、今や、化け物たちが巣くう廃墟と化してしまいました。私は、魔女の呪いで、死してなお、この城にとどまり続けています」

「ま、魔女を倒すには、どうすれば・・・」

「魔女は、剣や槍、それを率いた剣技をもってしても倒せません。ですが、唯一、倒す方法があります」

「そ、それは?」

「この城の最上階にある、弓、《浄化の弓》を使えば、魔女をきっと倒せます。お願いします、旅の者よ」

シノンがソラを見る。

ソラは、OKと言え、とサインを送る。

「わかったわ」

「ありがとうございます。魔女を倒した暁には、その弓を差し上げましょう。どうか、開放の時を」

そう言って、骸骨管理者はすうっと消えていった。

しばらく沈黙していたシノンだったが、やがて、ドッと疲れが押し寄せ、大きく息を吐く。

「お、終わった・・・」

「お疲れ」

「でも、これで終わりじゃないのよね?」

「ああ、ここからは一人で行ってくれ。悪い。これじゃあ力になれそうにもない」

「ううん。貴方からもらった《アストラル・ダガー(星の短剣符)》があるもの。そこらの敵なんてチャチャっと片づけてやるわ」

「だといいんだが・・・」

「それじゃあ、いってくる」

「ああ・・・」

そして、シノンが奥へ進んでいった後、ソラは後ろを振り返る。

「そこにいるんだろ?bayonet(ベヨネッタ)

「あら、気付いていたの?」

教会の扉の影から出てきたのは、黒装束を見に纏った、カーソルが赤い、女性だった。

「何しに来た?」

「ふふ、貴方の様子を見に来たのよ?」

「レッドプレイヤーが・・・シノンの方に何かしてないな?」

「あら、私はそこまで非道じゃないわ。まあ、それでも、貴方には会いたいけどね」

「お前も命狙われてんのによくそんな能天気でいられるな」

「あら、貴方に比べたら、私の方がまだ()()な方よ」

「だろうな・・・もう()()ぐらいは殺したか・・・・」

「犯罪プレイヤーの中には、貴方に恨みを持つプレイヤーもいるのよ?丁度、貴方を()()()()みたいだけど」

「おい、それってどういう・・・」

「すぐにわかるわ。じゃあ」

ベヨネッタの体が消える。

隠蔽(ハイディング)をしたのだ。

「直ぐにって・・・シノン・・・」

ソラは、シノンの向かった方向を見る。

 

 

 

一方シノンは・・・・

「・・・ァァァァァァァアアアアア!!!」

「カサカサカサカサカサ」

Gに追いかけられていた。

「嫌ァァァ!来ないでぇぇぇ!!」

実はGの駆除はリアルでも同じだが、全てソラがやっていたのだ。

だから、シノンはGがこれでもかっていうほど嫌いなのだ。

記憶は無いはずなのだが、それでも体は覚えているようだ。

「いい加減にしなさい!!」

もうヤケなのか振り返ってソードスキルを叩き込む。

Gは爆散し、消滅する。

「はあ、はあ、はあ・・・・どうやったらあんな風に成長するのよ!」

と愚痴を吐きながら叫ぶ。

とにかく上に向かって歩く。

このダンジョンは、普通のRPGと同じ用に、別々の場所に階段がある。

それをいちいち探さなくてはならないのだが・・・・

「モンスター多すぎでしょ!!」

それも全部幽霊、アストラル系のモンスターばっかりだ。

「ソラ・・・」

不意に、コンビを組んだ少年の名を呟く。

そして、一人、扉の前に立つ。

「ここのフロアは、この扉で最後ね・・・よし」

短剣を装備し、扉をゆっくりと開ける。

そして、数歩進んだ瞬間・・・

 

「・・・・ケケケケケ!」

 

「!?」

しわがれた女性の声が響いた。

「愚かな人間風情が、さしずめ、あの骸骨にそそのかされて私を倒そうとやってきた、愚かな子犬かねぇ?」

その言葉にカチンとくるシノン。

「何よ?姿見せないから私はてっきり臆病なのかと思ったわよ」

「ケケケ、威勢のいい子犬だこと。なら、私を見つけてみなさいな。まあ、見つけたとしても倒せる訳ないがね」

「いったわね!?いいわよやってやるわよ!首を洗って待ってなさい!」

そう言うと、声はケケケ・・・とだんだん小さくなって、完全に聞こえなくなってしまった。

「・・・やってやろうじゃない」

そして前に進んだ。

 

 

 

一方、ソラは・・・

「・・・遅いな。まあ、早く戻ってくるとは思っていないが・・・」

と、いいながら、武器の整理をしている。

この間、アスナに攻略の資金と、三百万コルを渡したが、それでもまだ二百万コル残っている。

ポーションはまだありったけ残っている。

武器も、いくつかマイホームのチェストの中に入れたが、念の為にと、色々と武器が入っている。

「ん?」

索敵スキルが反応し、背中の剣の柄に手をかけ立ち上がる。

そして、扉から現れたのは・・・

「お前は・・・!?」

さっきの黒装束の女とは違う、別の女だった。

それは、かつて、()()()レッドプレイヤーの妻だった。

「ようやく、ようやく見つけたぞ、狂戦士。いや、()()()!」

「よお、久しぶりだな。()()()

 

 

 

「ここは・・・」

城の最上階。

そこに存在する部屋の奥に、木製の弓が飾られていた。

「あれが・・《浄化の弓》・・・」

「渡さないよ」

「!?」

目の前に、巨大なゴーレムが現れる。

さらに左右から三体。計四体。

「嘘・・・!?」

その上には浮遊する何か、否、()()

「あんたが、死霊の魔女」

「ふふ、あの弓は渡さない。でなきゃ、私は死んじゃうからねぇ」

「そう、じゃあ、あの弓さえあれば、あんたを倒せるって訳ね。いいわ、倒してあげるわ、死霊の魔女。いえ」

魔女に、ボス専用のHPバーが出現する。

その頭上には、その名《Specter of the witch》が。

「スペクター・オブ・ザ・ウィッチ!」

 

 

二つの場所で、生死をかけた戦いが始まる。


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