ので、予告を先に見ていた人には申し訳ありませんが、入っていない場面がありますのでご注意を。
「ついてこないで」
「いやでも」
「ついてこないで」
「でも、ルールが・・・」
「ついてこないで」
「・・・今日は天気が」
「ついてこないで」
現在、キリトは右頬に赤い手痕を残し、目の前の少女の後を申し訳なさそうについて歩いていた。
しかも目の前の少女はかなりご立腹の様だ。
それもそうだろう。
だって、彼女の下着姿を見てしまったのだから。
右頬にある赤い手痕もその所為だ。
突如、少女がドームを半周あたりした所で止まった。
「・・・・・仕方ない」
「へ?」
「必要な事だけ教える。その後は敵同士だよ」
少女が振り向く。
キリトのアバターなんかよりも大人びた容姿のそのアバターは、不機嫌ながらも、真っ直ぐにこちらを見据えていた。
ドームの端にあるテーブルに座り、そこで鉄板の様なメニューから、何か選ぶと、テーブルの中央がいきなりガコンッ!という音と共に上に円状に突き出し、そこに何かドリンクの様なカップがあった。それを少女が手に取る。
キリトもメニューを受け取り、そこに書かれている『ジンジャーエール』の横にあるボタンを押すと、またしても、中央の円状の部分から、ドリンクが現れ、それを手に取るキリト。
そこから淡々と少女が説明を始める。
「フィールドは一キロ四方の
と、少女は持っていたドリンクのカップを飲む。
「大体分かったよ。ありがとう」
お礼を言うキリト。
一瞬、視線をキリトに向けた後、直ぐに横を向く。
そして、口から一つ、言葉を紡がれる。
「決勝まで、勝ち上がってよね。ここまでレクチャーしたんだから、最後の一つも教えたいし」
「最後?」
その意味を、初めは理解できなかったキリトだったが、少女の不敵な笑みと共に放たれた言葉で、否応なく理解される。
「敗北を告げる弾丸の味」
その表情につられ、キリトも笑う。
「いいね。そういうのは嫌いじゃない」
相手が強ければ強い程燃える、というのはこの事だ。
この少女は、ここにいる男性プレイヤーなんかよりはるかに強いだろう。
その鋭い眼光から放たれるは、正に、ここにいる全てのプレイヤーを撃ち抜く殺意。
ここにいる誰よりも強いであろう彼女にメンタル・・・・
ふと、少女が笑みを消し、ウィンドウを開くとそこから先ほど更衣室でキリトが差し出したネームカードと同一の物をオブジェクト化する。
「ここでこうして話すのも、最後だと思うから名乗っておくわ」
それを机の上をスライドさせ、それをキリトが止め、名前を覗き込む。
《Arca》――――そこにはそう書かれていた。性は当然、《
「《アルカ》、それが私の名前。予選で途中で落ちないでよ」
少女はそう言い、それに続く言葉は、かなり重くして言い放つ。
その言葉に、キリトは戦慄した・・・・・
「―――――貴方は私が
ただ、その言葉に怖気付いた訳ではない。ただ、その眼に込められた意志が、本物だという事に、否応なく気付かされたのだ・・・・
そんな思考を断ち切ったのは、ある足音だった。
向くと、そこには長身の男が一人、歩いてきていた。
銀灰色の髪をしており、服装はダークグレーにもう少し明るいグレーのパターンが入った、直線的な迷彩柄の上下を身に着けている。方にはやや大型の機関銃―――おそらくアサルトライフルの類であろうものをぶら下げていた。体格はスリムで、それに似合った鋭い顔立ちをしていた。アーマーも最低限で、まるで歴戦の兵士というものなどではなく、特殊部隊の隊員といった雰囲気を感じさせていた。
そして、暗がりに隠れるキリトなどに目もくれず、アルカに近付き、その雰囲気を裏切るような少年の様な口調でアルカに話しかける。
「やあアルカ。今日は随分遅かったね」
「こんにちはシュピーゲル。ちょっと、予想外の用ができちゃってね」
どうやら二人はフレンドかギルドメンバーの仲にあるようだ。
「でも、今日は参加しないんじゃなかったの?」
「ああ、迷惑かもしれないけど、応援に来たんだ。・・・・・それで、予想外の用って?」
アルカが横にずれて席を空け、そこに当然の様に座るシュピーゲルなる少年。
「うん、そこにいる人に色々とレクチャーしてたの」
「え?」
そこでやっとキリトの存在に気付いたようであるシュピーゲル。
「どーも、そこに人です」
「あ、ど、どうも・・・えっと、アルカのお友達さん?」
そうくるか、と内心思うキリト。
だが、そんなシュピーゲルの予想を裏切るようにアルカが口を開く。
「騙されないで、そいつ男よ」
「えッ!?」
驚愕に溢れる顔でキリトを見るシュピーゲル。
流石にこれは誤魔化せないと思い、キリトは観念するかの様に名乗る。
「キリトです。男です」
「そ、そうなんだ・・・・えっと、それじゃあ・・・・」
どうやら、アルカが男性と一緒にいる事がにわかに信じられないようだ。
これはいじくるチャンス。
そう思ったキリトは、彼の混乱に燃料を注ごうと思い口を開く。
「いやあ、アルカさんには色々と・・・」
ビュオッ!
・・・・と思った瞬間、黒光りする銃口を眼前に突き付けられていた。
「・・・・・」
「私が女と勘違いしただけであって、貴方は仕方なくそのまま演技した。そのお陰で私はこのゲームの殆どをレクチャーする事になった。OK?」
「お、おーけー・・・」
アルカの殺意に半ば怯えたキリト。
それと、よく見ると、彼女が持っているのは拳銃などではなくサブマシンガン。
更に、もの凄いスピードでの
(強いな・・・・冗談抜きで)
怯えながらも関心するキリト。だが、ここでキリトは銃口から目を離し、アルカの顔を見た。
そして、
アルカの瞳孔が極限まで小さくなっている。
まるで裁縫用の針で開けられた穴の様に小さい瞳孔。
この様な事は、
以前、海利から聞いたことだが、
その時、瞳孔が極限まで縮まるのだ。
これは、より多くの光を欲しているからなのか、あるいはより詳しい情報が欲しいのかわ、医師である海利でもわからないのだ。
ただ、極限状態に陥った加速思考は、二千分の一秒の速さまで思考が加速する事まである。
それが
短い時間であらゆる可能性を追求する加速思考は、短い時間を、何十秒何十分何十時間と体験するのだ。
そのお陰で、本来人間が記憶できる容量である百五十年分の記憶を更に引き延ばしにされて、最長で三十万年分の記憶が出来るらしいのだ。
最も、その前に寿命は尽きてしまうが。
話を戻すが、この
これは遺伝なのかもしれないが、とにかくこの三人しか使えないのだ。
もし、ここでキリトの予想が当たっているなら・・・・
「なによ?」
「え?」
いつの間にかぼーっとしていたのか、アルカによって現実に引き戻されるキリト。
「ああ、いや」
そこでキリトは試しにわざと口を滑らす。
「その眼、知り合いがよく本気で何かを考えている時に似ていてさ」
「ッ!?」
それを聞いたアルカが表情を強張らせ、キリトを睨み付ける。
「貴方・・・何故それを・・・・」
「え?」
少女が何かを訪ねようとするが、すぐに平静を取り戻し、右手に持っていたサブマシンガンをホルスターに戻す。
「いえ、なんでもない」
しかし、未だに手の震えは収まっていない。
「そ、そうか・・・・」
キリトは手を上げたまま、アルカの表情を伺おうとするが、俯いているのだ分からない。
シュピーゲルは、キリトを睨み付けている。
(こいつも知っているのか?)
内心でそう予想しつつも、不意に、アナウンスが入る。
『大変長らくお待たせしました。ただ今より、第三回バレット・オブ・バレッツ予選トーナメントを開始いたします。エントリーされたプレイヤーの皆様は、カウントダウン終了後に、予選第一回戦のフィールドマップに自動転送されます。幸運をお祈りします』
と、言い終えた時にうるさい歓声がドームの中に響き渡り、マシンガンだかレーザーの発射音が鳴り響く。
「そ、そろそろ始まるみたいだぞ」
と、キリトはなんとか話題を反らしつつ、立ち上がる。
「そうね」
一言呟いて、キリトに続いて立ち上がるアルカ。
「決勝まで上がってきなさいよ。じゃないと、こっちが馬鹿らしくなる」
「オーライ。こっちも予選で負ける気は無い」
にやりと笑うキリト。
だが、アルカは、何かに怯える様で、それでいて絶対的な殺意を向けてきている。
とにかく、先ほどの事は忘れて、戦いに集中しよう。
そう、心の中に決めたキリトだった。
「そろそろか・・・・」
「ええ」
アナウンスを聞いて、立ち上がるソラとシノン。
「一応、ヘカートの方は大丈夫なんだよな?」
「ええ。そっちこそ、イーグルとM29の調子はどうなの?」
「来る途中メンテナンスしておいた、問題ない。それに、今回は『秘密兵器』があるからな」
ふっふっふとまるで悪役の笑みを浮かべるソラ。
「へえ?どんなの?」
それにシノンは興味深々に尋ねる。
「それは始まってからのお楽しみだ」
「ちぇー、ケチ」
拗ねた様な顔になるシノンを他所に、カウントを見る。
「あと三十秒・・・それじゃ、武運祈ってるよ」
「ええ、必ず決勝に上がってきなさいよ」
互いに拳をぶつけ合わせ、一時別れるソラとシノン。
そして、カウントが五秒に差し掛かる。
四・・・・・三・・・・・二・・・・・一・・・・・
一斉に全員が白い光に包まれ、第一回戦が始まった。
アルカの心は荒れていた。
その理由は、先ほどのキリトとかいう女性に似たアバターの男の事だ。
いままで初心者の女性だと思っていたのが、本当は男だったというのは最もだったが、荒れている理由は別にある。
何故、彼が加速思考を知っていたのか。
まだ確信がある訳じゃ無い。彼は、ただ目が知り合いの時と似ているといっていた。
その相手が、兄である海利か蒼穹のどちらか分からない。
ただ、もし、その知り合いが蒼穹だったなら・・・・
(考えるな、考えるな!)
最悪の未来を切り捨て、今始まろうとしている戦いに集中する。
愛銃の『FAMAE SAF』を両腰に装備し、黒のボロマントを装備する。
本当なら白が好きなのだが、この世界じゃそんな色は隠れるのにマイナス補正がかかってしまうので、やめているのだが、根本的な理由としては見るのが辛くなってしまったというのが一番正しい。
自分の好きな色を見るのが、何故こんなにも辛くなってしまったのか・・・・・
そういう思考を断ち切ったのは、次に来た白い光だった。
気が付くと、私は古ぼけた街の道路のど真ん中に立っていた。
ここは確か・・・・主街区Aだったか。
一般的な主街区戦に使われる町で、沢山のビルが立ち上る、いわば、都会が廃墟化した様な場所なのだ。
ココでの相手は、『グレン』だとかなんだか厨二っぽい名前をつけた相手だったか・・・
武器はグレネードランチャーの『ダネルMGL-104』。
更に消耗品のプラズマグレネードや逃走や不意打ちの為にスモークグレネードやスタングレネードなどを大量に持っているのだ。
中々にチキンな奴だ。
私はすぐさまFAMAEを抜き、真っすぐ、ゆっくりと歩き出す。
「・・・・Mission Start」
いつものクセで呟いてしまった口癖。
なるべく兵士の様な人間になろうとして、こんな口癖がついてしまったが、まあいい。
こんな時ぐらい、帰国子女もどきになってもいいだろう。
そして、足元に、何かが落ちた。
来たか・・・・
そう感じた瞬間、私はそれから離れた。
すると落ちてきたそれは煙を撒き散らして煙幕をばらまく。
スモークグレネードの様だ。
それを見た私は自分から煙幕の中に突っ込む。
敵が何かしらの方法で私の位置を見破らない限り、しばらくは煙幕の中で隠れる事が出来る。
そして、敵の姿をなんとか視認しようとしたら、いきなり横に曲状の弾道予測線が現れる。
「
短くそう呟き、私は慌てて転がる。
次の瞬間、背後から爆発が起き、煙が晴らされる。そのお陰で私の姿が露わになる。
どうやら、これが狙いだったらしい。
「Shit」
また悪態を吐き、伏せの状態から急いで立ち上がりながら走り出す。
立て続けに弾道予測線が真横から私を追いかけるように曲状にやってくる。
だが、追いついていない。
炸裂弾であろうグレネードが何度も射出され、それらは全て背後で爆発した。
走りながら顔を左に向かせ、敵を視認する。
「
左のFAMAEをグレンに向ける。
そこから構えるのが見えたのか、グレンは慌てて後ろに転がる。
だが、私は引き金を引かず、そのまま真っすぐに走り抜ける。
敵は見つけた。後は殺すだけだ。
建物の中に入り、グレンの背後を取るべく走る。
窓を突き破り、建物の向こう側に出て、逃走しているグレンを発見する。
「ゲェ!?」
どうやら先回りされるとは思ってもみなかったようだ。
「
両手のサブマシンガンをグレンに向け、フルオートで発砲。
だが敵もそのまま黙っているわけが無く、足元に向かってグレネードを乱射。
仕方なく、引き絞っていた引き金を離し、すぐさまそこから離れる。直撃したら即死だろう。
私の弾丸は全弾命中したが、HPは削り切れていない。
一方で、奴が放った五個のグレネードは直撃はしないまでも、その余波に当てられ、吹き飛んでしまう。
「チィッ!」
しかし、それで諦める事など無い。
地面を転がり、そのまま発砲。
殆どがグレンに直撃。
「このやろ・・・ッ!?」
どうやら弾切れの様だ。
あれほど連射すればそれぐらいの事、起こってもおかしくない。
そのまま立ち上がり、私はグレンに突っ込む。
このまま引き金を引けば、私の勝ちだ。
だが、グレンの左腕が腰に移動したかと思ったら、そのままピンを抜いてグレネードを投げ飛ばす。
しかし、私は構わず突っ込む。
「ッ!?」
それに驚いた様子のグレン。
だってそうだろう?
それは・・・・・
瞬間、私の目の前が光に包まれる。
「光と音だけを撒き散らす、スタングレネードなのだから」
視界が潰され、耳も聞こえないが、目の前にグレンがいる事ぐらいは分かる。
そのまま引き金を引き絞り、衝撃が無くなるまで引き続けた。
そして、おそらくぶつかるであろう衝撃、それが来た。
まだ死なないのか・・・・
「Shit」
また英語で悪態を吐き、両手のサブマシンガンを投げ捨てる。
そして、私の最後の武装であるコンバットナイフを左手で抜き、右手でグレンの首と思われる場所を掴む。
手首を掴まれる感触。どうやら最後まで抵抗するらしい。
だが、遅い。
そのままナイフを抜き、私は手よりも上の位置に、左手のナイフを突き立てた。
少しして、のしかかっていた何かが消え、右手の中にあったものも同時に消えた。
「congratulation」
口癖である英語を呟き、立ち上がる。
余裕だったな。
そう思い、私は見えない視界の中で、転送されるのを静かにまった・・・・・
次回
新川恭二。
それは、朝田詩乃が東京に引っ越した(強制的に)時に出来た最初の友達だった。
「どういう意味・・・なの?」
だが、詩乃に近付いた理由を聞いたシノンは、驚愕した。
「だって、人を殺せる小学生なんて、朝田さん以外いないじゃないか」
そして、その間に始まる、
次回『即撃の魔眼の剣技』
次回お楽しみに。
あとがき
戦闘シーンが物凄く地味だぁぁぁあ!!
なんで自分はこうも戦闘シーンが苦手なんだちくしょぉぉぉぉぉ!!!
初っ端から変なテンションでごめんなさい幻在です。
最近、今頃って感じしますが『艦隊これくしょん』始めました。
何故始めたのかって?
以前からやりたいと思っていたのですが、PCに落とすダウンロードゲームだとずっと思い込んでたんですハイ。
そのお陰で、まだ新米提督でして・・・
まだ艦隊が二個しかありません。
近頃、艦これの二次創作も考えています。
では次回、またお会いしましょう。