ソードアート・オンライン 狂戦士の求める物   作:幻在

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ついに来たぜファントムバレットォ!!!

この第三部では遂にソラの妹、円華が出ます!
そして、新川(変態)だとか遠藤(いじめっこ)だとかはどうなっているのか・・・
ではファントムバレット編、スタートです!!


「この回ではシノンがキャラ崩壊してます」

ネタバラすな!?


ファントムバレット編
プロローグ:死の弾丸


その空、決して青くは無い。

その大地、砂漠が大陸を占める。

その海、すでに枯れはて。

そこに生きるは、殺し合いを望む者たち。

生物は人を襲い、人は生物を殺す。

故に弱肉強食。

 

その世界の名は、『ガンゲイル・オンライン』・・・・

 

 

 

 

 

 

とある街に、一人のフードを纏った男がいた。

その雰囲気は如何にも不気味であり、おぞましい気配を漂わせる。

だが、誰もその存在を見向きもしない。

 

――今は楽観に浸っているがいい。いずれ恐怖に陥れてやる。

 

目の前に歩くは、標的の男。

名を、『ガトム』。

なんともいえない名前だ。ネーミングセンスを疑う。

アトムをあれこれしたようだ。

ガトムがこちらに背を向け悠々と歩く。

あれでもかなり名の通ったプレイヤーの様だが、所詮は偽物、幻想の力だ。

あちらの準備も出来ているころだ。

さあ、()()()()()()だ。

脇から一丁の拳銃を取り出す。

そして・・・・

「聞け!愚かな弱者共よ!」

突然叫び、群衆(ギャラリー)の眼を引く。

ほとんどが奇異な眼で見てくる。

「ガトム!偽りの勝利者の処刑を今、ここに宣言しよう!」

あたりから笑い声が漏れる。

何を言ってるんだか、とでもいう様に。

だがそんなものお構いなしに右手に持った拳銃をガトムに向け、引金を引く。

「ぐお!?」

突然の発砲に驚くガトム。

その弾丸が胸に直撃する。

「な、何しやがる!?」

ガトムは怒り、フードの男に襲い掛かる。

だが・・・

「ぐ・・・かあ・・!?」

いきなり動きを止めたと思ったら、胸を押さえて苦しみだす。

そして、そのまま消えてしまった・・・・

あたりがどよめく。

 

――そう、それでいい。

 

「見たか!これが本当の力!真の強さだ!この名を恐怖と共に刻め!」

そして男は名乗りを上げる。

 

「俺とこの銃の名は・・・『死弾』・・・『デス・ブレット』だ!」

 

男はウィンドウを出し、ログアウトボタンを押す。

その心には、圧倒的勝利感と、まだまだ足りないという、渇望があった・・・・

 

 

過去の出来事を後悔する少女、過去の出来事に苦しむ少年、過去を克服した少女、過去を振り返り大剣をしまい銃を手に取る少年が交わる時、物語は始まる。

 

 

ソードアート・オンライン 狂戦士が求める物

第三部『ファントムバレット編 銃の世界と最弱の過去を持つ者達』

 

 

 

 

 

朝田詩乃ことシノンは、かのSAOに、途中参加ではあるが、閉じ込められた少女だ。

シノンは、過去に人を殺した過去を持つ。

それがトラウマで、銃器を見るだけで気分が悪くなったり、吐いたりしていたのだが・・・・・

 

 

 

 

 

 

「アハハハハハハハハハハ!!!!」

絶賛アサルトライフル、『M4カービン』を連射中ッ!!

あの銃嫌いだったシノンがまさかの銃を主体としたゲーム、『ガンゲイル・オンライン』通称『GGO』でキャラ崩壊を起こしていた!

「なんだあの女!?狙撃手なのにどうしてアサルトライフルを連ギャア!?」

「うおお!?実弾がぁ!」

「くそぉ!逃げろ!逃げろ!」

と、標的にされているスコードロンの生き残ったプレイヤーたちが逃げ始める。

『シノン!逃げられるぞ!』

左耳に装着した無線機から聞きなれた声が聞こえた。

「分かってるっつうの!!」

シノンは持っていたM1ガーランドライフルを投げ捨て、すぐそばに置いてあった巨大な狙撃銃を持ち、スコープを覗き込む。

このGGOでは、スナイパーが少ない。

その理由はこのゲームのシステムだ。

着弾予測円(バレットサークル)》と呼ばれる円は、アミュスフィアが検知した心拍によって縮小したり拡大したりする。

一番縮小するのが次の鼓動の寸前で、中々当てる事が難しい。

だが、今まさにテンションマックスのシノンの鼓動は最高潮!

バレットサークルが激しく変動している。

のこのこ狙いなんて定めていられない。

 

 

―――笑止!!!

 

 

敵はジグザグに逃げて狙撃をかわそうとしているが、そもそも()()()()()()()()()()シノンにとっては・・・・

「無駄ァァ!!!」

引金をひく。

スコープのバレットサークルなんぞ知ったことかという様に引金を引き、彼女の相棒、《ウルティマラティオ・ヘカートⅡ》、冥界の女神の名を持つ銃のあぎとから全てを貫き吹き飛ばす弾丸が発射される。

マズルフラッシュと共に打ち出された12.7mmの弾丸が発射!

偶然にも、いや予測した通り重なったプレイヤー二人の上半身と下半身を吹き飛ばす!

「ハッハー!!ヒットォ!!」

本当にあのシノンなのか疑いたくなるほどの発狂ぶりに若干冷や汗をかく、同じくこのゲームをやっている少年、地条蒼穹ことソラ。

「あいつ・・・」

自分の右手に収まるはリボルバー式のマグナム、『S&W M29』の弾丸を込める。

「全く、銃を克服してからというものの・・・・連射式(フルオート)を持つとああなるんだよなぁ・・・・・・」

と、装填しおわり、シノンが撃ち落としたプレイヤーのいる方向を見る。

『ソラ!後は任せたわよ!』

「わかった。その代わり、お前はそのテンションをなんとかしろ」

『はーい!』

なんだか、無邪気な子供の様な返事をした後、ソラは一度黙祷(もくとう)をする。

 

 

 

―――あれから一年経つんだな・・・・

 

 

 

あの事件から、一年がたち、ソラとシノンは同棲を始めた。

その理由は、二つある。

一つはソラの兄である地条海利の家にいつまでも住んでいるのは申し訳ないから。

もう一つはいつか始まる結婚生活の為だという。

ただ、その時驚いたのは・・・

『私・・・ガンゲイル・オンラインをやってみたい』

『・・・・・・・・・・・は?』

どうしてかと聞いてみたら。

『興味本意です・・・』

その時、大きなため息が出たのは忘れない。

『分かった』

『本当!?』

『ただし、俺もやる』

と、ゲームを二つ買ったのだ。

そして、今、シノンは文字通りゲームにはまり、ソラはそんな彼女のストッパーになっているのだ。

 

 

 

 

「よし」

眼を見開き、地面を蹴り、()()()()

かなり高位の軽業(アクロバット)スキルを保有しているため、木から木へ器用に飛び移り、敵を追いかける。

「見つけた」

視界に敵二人の姿が映る。

更に加速し、彼らを追い抜き、そして目の前に降り立つ。

「ひぃ!?」

「で、即撃の魔眼(デッド・アイ)!?」

 

――まだその名前で呼ばれていたのか・・・・

 

と、心の中で呆れながらも、加速思考(アクセルブレーン)を発動。

周りの時間が急激に遅くなる、否、自分の思考が加速する。

あらゆる事象を把握。

敵が慌ててこちらにアサルトライフルとサブマシンガンを向ける。

だが、遅い。

敵の指が引金に触れる。瞬間!

 

ソラがゲームバランスをも超えた速度で右手のS&Mを構え、弾道予測戦(バレットライン)が出現する前に発砲!!

 

その弾丸は正確に敵二人の眉間に直撃。

一瞬でポリゴンと化し、消滅する。

 

 

弾道予測線(バレットライン)

それは、この世界におけるシステムの一つだ。

赤いラインが銃口から出てくるのだ。

それが弾丸の軌道を教え、避ける事が出来るのだが、それは距離にもよってタイムラグに差があるのだ。

そうとう近距離だと、弾道予測線が見えた所で避けるのは困難にも等しい。

ただ、狙撃銃の場合だと、姿が見られていない時だけ、一発だけ予測線を見えなくする事が出来るのだ。

が、一度外すとそこから先は予測線が出現するので、一発勝負という事になる。

 

 

ここで一つ問題がある。

ソラの持つマグナム『S&M M29』はただの回転式(リボルバー)拳銃。

普通に構えれば弾道予測線が出現し、普通に弾道を見切られてしまうハズなのだ。

 

その理由は、彼のキャラクターステータスと、加速思考(アクセルブレーン)だ。

ソラは、抜き撃ちで弾道予測線をショートカット出来る事に気付き、長い特訓のすえ、それに加速思考を乗せる事でほぼ百発百中の精度を持つ抜き撃ち技術を見出したのだ。

その速さはこのGGO最速といってもいい程で、一秒の内で、最大装填数の六発ほぼ同時に発射し、一度に六人の敵を打ち落とせる。

ついでに、敵を補足した瞬間に撃ち抜く事から、『即撃の魔眼(デッド・アイ)』とも呼ばれ、どうにも慣れない注目を浴びているのだ。

 

 

 

「おつかれ」

「おう」

シノンとハイタッチをし、首都《SBCグロッケン》に向かって歩き出す。

「流石の手際ね」

「まあ、会うたびにあの名前で呼ばれるのは嫌だがな」

「私は好きなんだけどなぁ」

「いってろ、《氷の狙撃手(スナイパー)》」

「ちょ!?それは・・・」

シノンが顔を赤くする。

何故《氷の狙撃手》と呼ばれているか。

実は発狂するのは俺とコンビを組む時だけで、それ以外では冷酷無慈悲な死の女神様になるのだ。

その氷の様な心で敵を容赦撃ち抜くことから、《氷の狙撃手》と呼ばれているのだ。

「言わせて貰うが、俺もその二つ名、俺も好きだぞ」

「むう・・・ずるい・・・」

あ、マフラーに顔を埋めた。

「そういえばソラ。明日、大和の所行くんだって?」

「ああ、やっと円華の情報を掴めたらしい。それと、あの《デス・ガン》と《デス・ブレット》の事もな」

円華とは、俺の妹の地条円華の事だ。

小学時代、詩乃を虐めた主犯であり、俺が自ら兄妹の縁を断ち切った相手だ。

だが、詩乃を虐めた実行犯である円華の認識が、一年前の雪の降ったあの日に変わった。

『円華を操ったのは、私よ』

俺の母、綾香が刑務所に入る前に言い残したあの言葉。

円華は自分が脅して詩乃を虐めさせた。

今思えば、妹の演技は確かに脅威的だった。

その役に本気でなって、完全な別人を演じる円華は、本物の役者だと思った。

そして、あの円華は、化けの皮であり、その下の隠れているのは、いつものあいつなのだろうか?

その疑問が頭の中に、考える度に呼ぎる。

「あれって、ただの噂じゃないの?」

シノンの声で現実に引き戻される。

「いや、そうでもないらしい」

「ふ~ん。帰ったら教えてよね」

「分かった」

俺たちは、歩を早めるとともに、現実に帰還する為に、街に向かった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある森の奥で、一人のフードを被った少女が、両手にサブマシンガン、『FAMAE SAF』を持ち、地面に這いつくばっている今まで自分を襲っていたスコードロンたちを見下ろす。

「・・・・他愛無い」

一つ呟き、マガジンを両方とも外し、新しい物に変える(リローディング)

「・・・お兄ちゃん・・・」

灰色の空を見上げ、一つ呟く。

サブマシンガンを両方とも腰のホルスターにしまい、また歩き出す。

 

 

―――まだ足りない。これではだめだ。

 

 

これでは、弱い自分を消す事なんて出来ない。

兄に嫌われた自分を消す事なんて出来ない。

 

 

もっと、強く。誰にも負けない様に・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弱い自分を・・・兄を騙した自分を・・・・殺せる様に・・・・




次回!

東京・・・・
そこにあるとある学校の校門から出た少女。その名は『地条円華』。
常に、他人との関わりを持たず、他人との接触を避けてきた彼女。

一方で、そんな彼女の兄、蒼穹は何故かキャバクラに来ていた。
その目的とは・・・

更に、キリトこと桐ヶ谷和人は総務省の菊岡誠二郎と会っていた。
その二人の間で語られるはGGOで噂されている例の二人・・・

そして詩乃は、買い物を出かけている時、かつての中学の知人に会う。



次回『四つの始まり』




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