ついにここまでキタァァァァァァァァアアア!!!
ここまで読んで頂き、感謝感激です!
それでは最終回をどうぞ!
五月・・・・
授業の終わりを告げるベルが鳴り響き、授業が終わる。
「今回の授業はここまで。この課題を明日までに提出すること」
えーっと・・・うん、これなら簡単だ。これをこうして・・・
「もうやってんのか蒼穹~」
「ん?」
課題をやっている途中で後ろから声をかけられる。
クラスのバカどもだ。
「なんだ、三バカの一角」
「そうそう俺は三バカの・・・ってだれが三バカか!?」
「それでなんの用だ?」
「いや、お前いつも課題を受け取った直にやるよな、思ってさ」
「そうか。ま、早めにやって損する事ないからな」
と、俺はたった
すると、後ろから声を掛けられた。
「ようソラ」
「ん?ああ、頼光」
その正体は、かの抜刀斎と名を馳せたライコウこと、
「今から詩乃ちゃんとお昼か~?」
「ああ。といっても、他にも二人いるんだがな。お前も一緒にくるか?」
「いんや、伯野ちゃんがいるから無理だ」
「そうか」
伯野とは、あの女拳闘士のハクヤで、本名は
俺は頼光と別れた後、カフェテリアに向かった。
いつもは屋上で済ませるのだが、今日は先ほど言った通り、詩乃の他に二人いるのだ。
カフェテリアに着いた俺は、窓側の席を見ると、そこに二人の少女の姿があることを確認した。
「よお、里香に珪子。待たせたか?」
「あ、こんにちはソラさん」
「おっそ~い」
「悪い悪い。ほら」
俺は向かい合って座る二人の前に持っていたバスケットを下ろす。
「おお、大きいわね」
「まあな。いつもは一回り小さい奴を持ってくるんだけど、今日はお前らがねだるからな」
この二人は(まあ発端は里香だが)、俺が作る料理のうまさを詩乃から聞いたらしく、どうにもアスナだと作ってくれそうにないので俺のを食いたいと言い出してきたのだ。
まあ、まんざら嫌でもないので(寧ろなまっていた腕を戻すのに絶好の機会)作ってやったのだが。
「そういえばシノンはどうしたの?」
「詩乃?そろそろの筈だが・・・」
と、俺は里香の隣に座りながら答えると、右斜め前方から聞き慣れた声が聞こえた。
「おまたせ」
「お、来たか」
「やっほー、シノン」
「こんにちは、シノンさん」
俺の恋人の朝田 詩乃だ。
その首には、俺が詩乃との初デートの時に買ってやったドッグタグネックレス。
そしてもう一つ、その左頬に付けられた、深い切り傷・・・
「待たせてごめん。さて、食べようか」
「そうだな」
俺はバスケットの蓋を開け、中身を披露する。
「「おお」」
珪子と里香の口から感嘆の声が漏れる。
今日は、得意なフランスパンのサンドイッチなのだが、具材に結構力を入れたので、いつもよりおいしい筈だ。
「おいしそうです!」
「ほんと、料理スキルを
二人からの称賛の後、一人ずつサンドイッチを受け取り、口に頬張る。
「う、うまいッ!?なにこれ!?」
「おいしいですッ!?」
と、二人が目をカッと見開き、サンドイッチを物凄いスピードで平らげた。
「そ、そんなにおいしかったのか?」
「おいしいも何もこんなこの世の物とは思えない食べ物(いい意味で)を残さないっていう方が可笑しいわよ!」
「そうです!こんな天国でしか食べられないような物を食べて興奮せずにはいられません!!」
と、物凄い形相で詰め寄ってくるダガー使いと鍛冶屋。
そこまでおいしいのか・・・料理人でも始めようかな?
「あ、あそこでキリトとアスナがいちゃいちゃしてるわよ」
ナニィ!?それは今すぐにでも写メして友達に送りつけて笑いのネタにせねば!!
と、俺は詩乃の言葉でそんな不届きな事を考えながら窓を見る。
そこにはベンチで一緒に弁当を食べているキリトこと桐ヶ谷和人とアスナこと結城明日奈が見えた。
「うっわ、何ピンク色のオーラ醸し出してんだあの二人は・・・・」
「ほんと・・・くうっ、一ヶ月休戦協定なんて結ばなきゃよかったかも」
「それはお前が悪い」
どうやら、目覚めたばかりのアスナを妹みたいに思ったらしく、五月まで見守ろうと彼女の目の前にいる同じくキリトに惚れている後輩と結んだらしい。
確かにそれをやったお前らが悪い。
「何スマホで写メとってんのよ」
「む」
バレたか。まあいい。
「そういえば、あいつはどうなったの?」
「あいつ?」
「ほら、茅場晶彦の事よ」
ああ、あいつの事か・・・・
「死んでたよ、もうとっくに」
茅場晶彦は、SAOがクリアされたのと同時に、死んでいた。
どうやら、脳に大出力のスキャニングを行い、脳を焼き切って死んだらしい。
成功する確率は千分の一しかなかったらしい。
まあ、あそこにいたという事は無事成功したみたいだが。
それと、須郷と綾香の事だが、須郷は最後まで醜く足掻いた。
黙秘に次ぐ黙秘、否定に次ぐ否定、最終的には茅場や綾香の所為にしようとしたほどだ。
綾香については、自ら全てを吐き出した。
三百人のSAOの未帰還者を仮想世界に監禁した事、それで思考や魂を操作するという悪魔的な実験をした事全て吐き出した。もちろん、それには須郷を中心に行われたといい、自分はその大部分を請け負ったといい、決して俺の為とは言わなかった。
そして、自ら終身刑になる事を選んだ。
主な罪状は傷害、だが略取監禁罪を自分から立証させ、須郷を巻き込んで刑務所へ入った。
そしてもう一つ、VRMMORPGというジャンルの事だ。
須郷の実験により、レクトとアルヴヘイム・オンラインと他全てのMMORPGジャンルのゲームは回復不可能なまでにダメージを負った。
もともとSAOだけで社会的不安を醸成したのだ。これで市民の不満が爆発してもおかしくないだろう。
ALOは即座に運営中止に追い込まれ、他のVRMMOもユーザーの減少こそ微々たるものの社会的批判は
茅場が俺とキリトに託した、『世界の種子』なのだ。
開いてみるとこれまた凄いものなのだが、それは後にしよう。
「そういや、お前らオフ会はいくのか?」
俺は、ある事を思い出し、三人に問いかける。
「ええ、いくわよ」
「はい、そういえば、リーファさんもくるんですよね?」
「ああ、ついでに彼氏も連れてくるぞ」
「大和たちには当然連絡したのよね?」
詩乃の問いに、俺は答える。
「ああ、エギルだけじゃ人手不足だと思うから、俺も手伝うよ」
ダイシー・カフェ。
ここに来るのは、俺が一足先にアスナより退院した後に詩乃に連れてこられたエギルが経営する店だ。
そこで、俺は詩乃と共に買い出しをして集合時間より早めに来たのだが・・・
「お前・・・そんだけ料理できたのか・・・?」
エギルが凄いような眼差しで俺を見てくる。
更にその周りには今はいない筈の風林火山の面子やその他のメンバー、俺が呼んだかつてのクラスメートたちが・・・・
「おいリズ。お前まさか時間間違えて教えたな」
「主役は遅れてくるもんでしょ~?なんで台無しにしちゃうのかな?」
「どうせキリトがいるだろ?ほら、次出来たぞ」
俺はカウンターに出来上がった料理を置き、次の料理に取り掛かる。
そしてみんなの視線が痛い。
まあ、確かに
「蒼穹の料理の腕は私が一番よく知ってるからね~」
「あんたいつか一人で店経営出来るんじゃないの?」
「そこまでいったら俺の体力が持たねぇよ」
と、俺は料理に取り掛かろうとした所で、扉が開く。
「お、来たか」
入ってきたのはキリトとアスナ、そして直葉と恋次だ。
「俺たち・・・時間間違えてない筈だよな?」
「主役は遅れてくるもんでしょ?ほらほら!」
「うお!?」
「ソラさんも」
「はいはい」
と俺はシリカに、キリトはリズに木箱の上に立たされ、スポットライトが俺たちに向けられる。
「それでは皆さん、ご唱和下さい。せーのぉ!」
『キリト、ソラ、SAOクリアおめでとう!!』
「ああ、疲れた」
「まあ、あれだけの料理を一人で作ったもんな・・・」
俺はキリトの隣に座り、頭をカウンターに突っ伏す。
疲れた・・・・
「エギル、バーボン。ロックで」
と、キリトのいい加減のオーダーを受けたエギルがキリトの前に茶色の飲み物を出す。
キリトが恐る恐る舌をチビチビとつけると、どうやらウーロン茶だったらしく、グイっと飲む。
「俺には本物くれ!」
「クライン・・・いや、何も言わないでおくか」
「お気遣い痛み入るぜ」
と、頭にバンダナ巻いた社会人のクラインがキリトの隣に座る。
「それにしても、いいねぇ・・・」
と、鼻の下を伸ばすクラインの眼が詩乃を捉えた瞬間、その人差し指と中指の間にフォークをぶっ指す。
「ひぃぃ!?」
「次そんな変態な眼で詩乃を見たらその
脅迫した後、俺の隣に誰かが座る。
こっちも社会人だが、クラインと違うのはそのスーツをビシッと着こなしている事だ。
あの『軍』の最高責任者、シンカーだ。
「ようシンカー。ユリエールと入籍したんだって?おめでとう」
シンカーは照れた様に笑う。
「いやまあ、まだまだ現実に慣れるのに精一杯って感じなんですけどね。ようやく仕事も軌道に乗ってきたしましたし・・・」
まあ、順調の様で何よりだ。
新生MMOトゥデイも結構繁盛しているみたいだし、大丈夫だろう。
「そういえば、エギル、種の方はどうなってる?」
キリトがエギルのあの事を聞く。
「ああ、すげぇもんさ。今、ミラーサーバーがおよそ五十・・・ダウンロード総数は十万、実際に稼働している大規模サーバーが三百ってとこかな・・・」
世界の種子。
それはキリトが自分のナーヴギアのローカルメモリからユイがメモリチップに落としたその巨大なデータをエギルの店に持ち込んだ。種子の発芽に手助けできるのは彼しかいなかったらしい。
あの世界で、憎しみがないといえば嘘になる。
あの世界は何千人もの人を死なせ、俺が心を通わせた人々が知らぬ間に消えていった。
その事に怒りを持たない訳が無い。だけど、それ以外の感情がないとは言わない。否定もしない。
あの世界で見て、感じた事は紛れもない事実だ。
かつて出来た親友を自ら手にかけ、沢山の犯罪者プレイヤーを殺した。
それは、俺の罪であり、決して許されない事だ。
だけど、その罪を、今あるこの現実を守る事で償っていきたい。
そして、俺の大切な者たちを守る事にも・・・俺が繋いだ人たちの為にも。
話を戻すが、種子の正体は茅場が開発した、フルダイブ・システムによる全感覚VR環境を動かす為の、その名も《ザ・シード》と冠せられた一連のプログラム・パッケージなのだ。
奴はカーディナル・システムを整理し、小さなサーバーでも展開出来るようにダウンサイジングしただけに加え、その上で走るゲームコンポーネントの開発支援環境をもパッケージングしたものだ。
つまり、このパッケージをダウンロードすれば、誰でもVRMMOを手軽に作り出せる事が出来るのだ。
五感のインプット・アウトプットを制御するプログラムの開発は困難を極める。
現実的には今稼働している全世界の全てのVRゲームは茅場が作ったカーディナルシステムを元にしており、そのライセンス料は恐ろしいほど巨額だった。
更にカーディナルシステムを古いバージョンでALOを運営していたレクトプログレスは解散、レクト本社も大打撃を喰らい、ALOの新しい引き受け先が求められていたが、巨額の金額、VRゲームに対しての社会的批判もあり、どの会社もなかなか手が出せなかったのだが、そこに登場したのが《ザ・シード》という訳だ。
キリトがエギルに頼み、コネクションを駆使してまで徹底的に調べ上げ、危険が無い事を確かめたらしい。
そもそも、詩乃の記憶の一部から誕生した、この世のほとんどのネットワークに手を出せる程のハッキング技術を持つ、詩乃の分身ともいえる『シエス』がいて、彼女がそのザ・シードの事を調べない訳が無いので、茅場がキリトにそれを渡したときにシエスが止めなかった事を考えると、茅場がもう何もしてこないというのは俺にとっては明白だ。
そしてそれを受け取ったエギルは、あらゆるサーバーにそのパッケージを自由にダウンロード出来るようにしたのだ。
そのお陰で、数々のVRゲームが次々に誕生したのだ。
次に、アルヴヘイム・オンラインがどうなったかだ。
それを救ったのは、ALOのプレイヤーでもあったいくつかのベンチャー企業関係者だ。
彼らは共同出資で新たな会社を立ち上げ、レクトからALOの全データを無料に近い低額で譲り受けた。
アルヴヘイム・の広大な大地はあらたなゆりかごの上で再生され、プレイヤーデータも完全に引き継がれた。
ついでにいろいろと他のゲームを次々と誕生した。
あらゆる会社やら企業やら個人やらで運営者として名乗りを上げ、あるものは有料だったりあるものは無料だったりともう色々。
更には、一つのゲームで育てたプレイヤーデータを別のゲームにコンバートさせるシステムも整いつつあるのだという。
「ほんと、あの世界があってよかったな・・・」
「そうか?」
と、後ろから声をかけられ、振り向くと、そこにはかつての俺の友人、大和がいた。
「まあな。あの世界があったお陰で、今のこの現実があるんだって、そう思えるんだ」
「そうか・・・俺には想像も出来ねぇな」
と、大和は、言葉を切り、席を外したシンカーの座っていた椅子に座る。
「? どったの?」
「いや・・・・・なんだかお前が遠い気がしてな・・・・」
大和は、会場を見る。
その視線の先には、女性陣が楽しく会話している光景が見えた。
アスナ、リズベット、シリカ、ハクヤ、ユリエール、サーシャ、遥、心愛、夕子、そして詩乃。
「お前があの世界で過ごした日々が、お前をここまで強くして、こんなにも沢山の人たちを笑顔にして、繋いだ・・・・キリトがいった通り、お前は『繋ぎの英雄』の名に相応しいよ」
「つ、繋ぎの英雄・・?」
知らないぞそんな言葉!?
「なんでもSAO帰還者の中でお前の事をそんな風に呼ぶ奴が多い、って聞いたが・・・」
「な、なんて厨二臭い名前なんだ・・・・」
いや、考えるのはやめよう。うん。やめよう。
「そういや、二次会は来るんだよな?」
「当然だ。なんてったって、あの『伝説の浮遊城』だぞ?乗り遅れたらたまったもんじゃない」
「そうだな」
なんでもサーバー一個分使ったらしいが・・・・楽しみだ。
ALO・・・・
ハサンは、夜闇を突っ切りながら飛び回っていた。
既にニ十分以上は飛び回っているのに、全然止まる気配が無い。
ALOは、あらたな会社に渡されたときに、飛行にかけられた、飛行時間という戒めを解除し、いまじゃ自由に、永遠に飛び回ることが出来るようになっている。
先週開かれた《アルヴヘイム横断レース》が行われたのだが、リーファとキリトが大接戦を繰り広げていたのだが、まさかソラが余裕顔で二人を追い抜き、更に二人の心を折るべくありえないスピードで加速、ぶっちぎり一位でゴールしたのだ。
二人は『ありえない』とでもいうかの様な表情でゴールした瞬間からずっと茫然としていた。
「ふふ・・・」
その事を思い出し、少し口角を吊り上がらせる。
ハサンはスピードを上げる。
だが、今、何も考えずに飛び回る事の方が、ハサンは楽しいのだ。
ハサンの名前の由来は『静謐のハサン』という都市伝説のメリーさんのもとと言われる女性の事だ。
その事を、人理修復という事を目的としたゲームから知ったのだが、ただ単純に良いなと思い、このアバターにつけたのだ。
もっと高く、天まで・・・
そう思い、雲を突き抜け、夜空に突っ込む。だが、そこでこの世界の限界に来てしまった。
絶対的な高度。この世界が作り出せる場所の最果て。それ以上先には進めず、ハサンは、落下していく。
そのまま落下に身を委ね、雲を抜けたあたりから態勢を整えよう。
そう思った瞬間に、背中に予想もしなかった感触がしたのだ。
「え・・・!?」
「ったく、どこにいくかと思ったら。また限界までいってたのか」
それは、ウンディーネの男性だった。
両腕には白銀のガントレット。ノースリーブの蒼いシャツに足にはこちらも白銀の脛当て。
顔は、なかなかに男前で、少し目付きが悪いその眼や、その顔だちは、確かに『彼』のものだった。
「ソラ・・・ありがと」
「おう」
ソラはハサンを下ろすと、ハサンは自分で空中に浮かぶ。
そして、ハサンは彼の顔を真っ直ぐ見る。
蒼穹への気持ちが、終わった訳ではない。
行きたい。彼が生きた、あの世界へ。
だけど、絶対に届かない。
あの世界は、自分では遠く及ばない。
常に死と隣り合わせの世界で、戦ってきた彼の隣に、立つ事はおろか、既に埋まっている。
それに、ハサンには、あの世界の記憶が無い。
だけど、諦める事が出来ない。
振り向いて貰えなくてもいいから、ただ、心の片隅に置いていてほしい。
ただそれだけ。それだけの筈なのに、いつも、彼が詩乃と仲良くしているのを見ると、胸がいつも、ズキンと痛む。
きっと、嫉妬だと、彼女は理解している。だけど、嫉妬せずにはいられない。
だって、彼女は・・・
「ソラ・・・・」
「ん?」
集合場所に行く途中、ソラについて行っていたハサンはソラに話しかける。
「どうした?」
「ソラ・・・私、貴方が好き」
いきなり告白。その言葉に、少し目を見開くソラ。
「いつも、ずっと思ってた。だけど、貴方は、詩乃の事をいつも見ていたから、言えなかった。だから、今言いたかった」
言葉にしていく度に、涙が溢れ出る。
「貴方に出会えた事が、私にはうれしかった・・・・貴方がいる日常は、私には虹色の光の様に見えた。だけど、貴方は、あの世界に囚われた時は、悲しかった。どうして知らなかったのか、どうして知らせてくれなかったのか。沢山の感情が頭の中でごちゃごちゃになって、訳が分からなかった・・・」
大粒の涙が止めどなく頬から流れ落ちる。
「貴方が帰ってきた時に、告白しようと思った。だけど、貴方には既に詩乃がいた。だから、この想いをずっと胸にしまっていたかった。だけど、ここで言わなかったら、この苦しい思いを続けるのかと思うと、とても胸が痛くて・・・・だから・・・」
言葉が途切れる。
ソラがハサンを抱きしめたからだ。
「そら・・・?」
「あのさ、遥。俺は、確かに詩乃が好きだし、俺の一番を変える気は無いし、あいつの一番を譲る気も無い。だけど、お前の事を見てなかったいえば嘘になる」
「え・・・?」
「詩乃とお前。本当は、どっちを好きになるべきか迷ってたんだ。一人で放っておけない詩乃か、いつも話し相手になってくれるお前か。だけど、考えてみたら、すぐに答えは出ちまったんだ。俺は詩乃が好きだって」
「!?」
その言葉で体を強張らせる。
「だけど、この気持ちをどうお前に隠しながら過ごしていくかというのも考えた。この気持ちが、お前を傷付ける事になったら、俺はどうしたらいいのか分からなかった。だけどさ、結局は、お前を傷付けてたことには変わりなかった。だから、ずっとあやまろうと思ってた。
黙っててごめんな、て」
ハサンは、ソラの胸に顔を埋める。
そこから嗚咽を漏らす。
「ばかぁ・・・ばかぁ・・・」
そして罵倒。感情の赴くままに吐き捨てるハサン。
「ああ、悪かったよ。遥」
ソラは、ハサンが泣き止むまで抱きしめ続けた。
そして、ハサンが泣き終わると、離れ、不意に月を見上げた。
「見てみろ」
「え・・・・?」
月を見た瞬間、ごーん、ごーんと、大きな音が鳴り響いた。
すると、月の光によりシルエット化しら何かが現れた。
「そういえばさ」
不意にソラが口を開く。
「俺が、どうしてSAOのソラをそのまま引き継いだというのはさ」
そして、浮遊する何かが、その全体像が移した瞬間、それ自体がいきなり発光する。
「あれは・・・!?」
ハサンが息を呑む。
それは、あの浮遊城『アインクラッド』だったのだ。
そして、ソラが言う。
「あの世界のソラは・・・・・繋ぎの英雄として、まだ誰かの為に戦わないといけないんだ。沢山の人の心を繋いで、笑顔にして、幸せにして、そして生きていくんだ。その存在が忘れられるまで・・・」
そして、ソラは白銀のガントレットに包まれた右手をアインクラッドに伸ばす。
「四分の三でクリアしちまったからさ、ハサン」
ソラがハサンの方を見る。
「手伝ってくれないか?モードレッドやバッハやヘラクレス、俺の友人として、あの城を攻略する為にさ」
そして、真っ直ぐに見る。
また、涙が溢れ出す。
「ええ、きっと。どこまでも、どこまでも、一緒に、着いていくから・・・・」
どこからか声が聞こえた。
「おーいソラ!浮気とかすんじゃねぇぞー!」
「うっせぇライコウ!するか!」
その正体は、ノームの少年だった。
その傍にはサラマンダーの燃える様な長い髪をなびかせる少女。
ライコウとハクヤだ。
気が付くと、数々のプレイヤーが集まってきていた。
その中には、SAOプレイヤーにも限らず、このALOに生きる全てのプレイヤーが集っていた。
肩に青い小さな竜を乗せたシリカ。
ピンクのショートカットの髪をなびかせ飛ぶリズベット。
手を繋ぎ合う、ユリエールとシンカー。
まだ飛行に慣れていないのか、スティックを使うサーシャ。
シルフ領主のサクヤとケットシー領主のアリシャや数人のシルフやケットシーのプレイヤーたち。
手を振ってくるレコン。
ユージーン将軍とその部下。
更に、ソラとハサンのクラスメートたち。
「置いてくぞ!」
ライコウの叫び声が届いた次に、目の前に、ペールブルーの髪の短い髪に頭に生えた三角耳に腰から生えた尻尾をゆらゆらと揺らしながら現れる一人の少女。
シノンだ。
「浮気って何かしら?」
「ご、誤解だシノン!ライコウのでたらめだ!」
「じゃあなんでハサンがいるのかなぁ?」
「な、なんかすみませんシノンさん!」
黒い笑みを見せながらソラに詰め寄るシノン。
その光景にくすりと笑うハサン。
「そんな事より、行こうぜ」
「そうね。さ、いこ、ハサン」
シノンが手を差し出す。
ハサンはそれを迷いなく手に取る。
ソラは、遠くにいるキリトとリーファとアスナを見る。
キリトもこちらに気付き、大きく手を振ってくる。
そして、先に飛び立つ。
「シノン」
「ん?何?」
ソラはアインクラッドを見ながら、シノンに言う。
「俺は、剣士であることをやめない。それでも、隣にいてくれるか?」
その言葉に少し目を見開き、すぐに表情を崩し、笑いかける。
「ええ、いつまでも、傍にいるわよ。だって、私は、『狂戦士』であり『英雄』の恋人だもん」
その答えに安心したソラ。
「ああ、そうだな」
あの世界のキリトの、『解放の英雄』の役目は終わった。
だけど、この先、どんな事があっても、どんなに心が折れる様な事があっても、俺は立ち上がり続ける。
誰かの手と手、心と心を繋いで見せる。
「行こう!!」
それが、ソラの、『繋ぎの英雄』の役目なのだから。
『フェアリィダンス編』完結!
次回『ファントムバレット編』始動!!
とあるVRゲームのある店。
そこで流れているのは、この『ガンゲイル・オンライン』で行われた大会、『バレット・オブ・バレッツ』で優勝したプレイヤーに生中継でインタビューをしているところだった。
その映像の中いる男に、その店にいた一人の男が、その男に、一発の銃弾を撃ち込む。
その瞬間、男は、悶え苦しみ、音もなく消滅した・・・
ところ変わって、このゲームにある街である男が一人の男性に弾丸を打ち込んだ。
圏内なのでダメージは減らなかったが、男性は激怒し、その男に掴みかかろうとした瞬間、その男性も悶え苦しみ消滅した。
二人は、これが本当の強さと言い、そして名乗った。
『
次回『プロローグ:死の弾丸』