ヒロイン出ます!
まあ誰かは解ってると思いますが。
ではどうぞ。
六十九層。
六十八層のボスは、ソラの活躍により、難なくクリア。
今はその主街区に来ている。
「おい、あいつ」「狂戦士だ」「あれが・・・」「あんな剣を振り回せるなんて」「どんな筋力パラメータ持ってんだ?」
「・・・」
心底うんざりしていた。
実は六十七層で気絶した時、顔装備を外されていたので、顔バレしてしまったのだ。
まわりからは奇異なのか尊敬なのか分からない視線を送られ、とても堂々と街を歩けなくなった(以前もそうだったが)。
「よ」
「ん?ああ、キリトか」
後ろから声をかけられ振り向くと、そこには友人のキリトがいた。通称『黒の剣士』。
「買い出しか?」
「まあ、そんな所だ。『狂化』はいつでも発動する訳じゃないからな」
『狂化』とは、ソラがボス攻略の時に着ている『狂戦士の鎧』の特殊スキルの事だ。
ソラは『狂戦士』と呼ばれるユニークスキルを保有している。
攻撃特化のそのスキルは、防御を必要としない訳ではないが、攻撃力がとてつもなく強化されるスキルであり、代償がとても過酷なスキルなのだ。
そして、そのスキル専用の防具、『狂戦士の鎧』は、特殊スキル『狂化』によってその力をさらに増加させるが、逆に普通の人間が使えば発狂するほどの痛みを全身に伴う。その上、自動回復機能も発動するのだが、それでも全身に走る激痛はとても耐えられるものではない。
「まあ、もう終わったが」
「そうなのか、じゃあ迷宮区いかねぇか?マッピングも兼ねて」
「わかった」
迷宮区。
その中盤。
「おおおおお!!!」
ソラが『竜殺しの剣』を振り回し、敵を一掃する。
「俺の出番無いんじゃ・・・」
キリトが自分の剣を杖代わりにしてソラの戦い方を見ていた。
「ははは・・・まあ、これぐらい強くなければ生き残れないからな」
「聞く処じゃ、麻痺も効かないんだろ?ソロ向けのスキルじゃねぇか」
「まあ、ソロだけどな」
そしてしばらく歩く事三十分。
「ここ、ボス部屋だよな?」
「ああ・・・」
と、ボス部屋の扉を二人で見上げていた。
「一応・・・偵察と言う事で入ってみるか?」
「なら少し待ってくれ」
ソラがウィンドウを操作し、真っ黒な全身を覆う鎧を見に纏う。
「いいぞ」
「よし、開けるぞ・・・」
キリトが大きな扉を開ける。
中に警戒しながら入っていく二人。
まだ暗い部屋に、いきなり灯りがともる。
その先には、天使の様な羽を持った、というか
「・・・」
玉座に座るその天使は、巨漢の男で、まるで修道僧のような白い服と帽子を身に着けていた。
ソラが大剣を構える。
すると、玉座の天使の他に、四体の天使が現れた。
「おいおいおい・・・」
「五体なんて聞いてないぞ・・・」
「いやそれは当然だろ」
天使の一人は中世の医者の様な恰好をしており、その手にはフックショットの様な物。
もう一人は拷問官のような仮面を被り、その手には巨大な
残りの二人は裁判官のような格好に、一人は巨大な盾。もう一人の小柄な男は両手にナイフを持っている。
「・・・どうする?」
キリトが尋ねる。
「そこで見てろ」
「え?おい!?」
ソラが走り出す。
「おおおおおお!!!」
ソラが玉座に向かって走り出す。
他の天使が攻撃してくるが、それを掻い潜り、玉座に到達。
そして、斬る。
だが、ボスはありえない事に、
「な!?」
そして、そのまま旋回。
長い刀身を持つソラの大剣でも届かない。
「ソラ!避けろ!」
「!?」
よこから鉄球が飛んでくる。
それを緊急回避でかわすが、まるでスイッチするかのように、医者服の天使がその手に持った鉄棍を突いてくる。
「ぐ!」
それを剣を盾にして防ぐ。
その後ろから小柄な天使が襲い掛かる。
「おおおおお!!!」
キリトがヴォーパルストライクで追い払うが当たった訳ではない。
「く、こいつら。モブの癖に連携がしっかりしてんじゃねぇか!?」
「これは骨が入りそうだな!」
「!?あぶねぇ!」
「うお!?」
ソラがキリトを引っ張り、キリトが立っていた場所に弾丸のように羽が降り注ぐ。
「んなぁ!?」
「あいつ!高見の見物と思いきや安全な場所から攻撃してきやがった!」
上空にいる巨漢の天使はその羽から再度、羽の弾丸を放ってくる。
それをかわすキリトとソラ。
キリトがベルトから一本ピックを引き抜くと、それを上空の天使に向かって投げる。
投擲スキル『シングルシュート』
青い光を纏うそのピックは巨漢の羽に突き刺さる。だが、ゲージは一ミリも減らない。
「これじゃあダメか・・・」
「仕方ない、ここは逃げるぞ!」
「おう!ってお前逃げるのに『狂化』使う必要あるか!?」
「俺が活路を開く、お前はそれに続け!」
ソラが『狂化』を発動させ、出口に向かって走り出した。
キリトがそれに続く。
すると、敵の一人が出口を塞ぐように立ちはだかる。
盾の天使だ。
「どけぇぇぇぇぇえ!!」
狂戦士スキル『ストライク』
剣を前に突き出してそのまま走り、立ちはだかる敵の全てを薙ぎ払う突進型のソードスキル。
その威力をもろに受けて、弾き飛ばされる男。
そのまま外に出て行った二人。
「ぜえ・・・ぜえ・・・ぜえ・・・」
「大丈夫かキリト?」
「そういうお前こそ、体は大丈夫なのか?」
「ああ、短時間だったし、そこまで来てない」
大丈夫だと言うように軽く肩を回す。
「ならいいんだが・・・」
街に向かって歩く二人。ソラは鎧を外している。
「一体が、パーティ一個分の戦力がある、あの連携を崩すには、上にいる奴を叩かなきゃな・・・」
「だが、この
「下にいる奴ら全員を倒せば降りてくるかもしれないけど・・・さすがにそんな余裕はあるか?」
「あの羽は一個一個はそこまで無いと思うが、問題はあの数と範囲だ。まとまって喰らえば一たまりもない」
・・・と、そこでふとソラは、上空を見上げた。
本当に、ただ、気まぐれに。
その視線の先には・・・
「あれは・・・」
「どうした?ソラ」
「いや、あれ」
ソラが指す方角に、なにやら亀裂の様なものが空中に出来ていた。
「なんだあれ?」
「とにかく行ってみよう」
そこに向かって歩き出す二人。
それは、まるでデータにほころびが出来たような亀裂だった。
「なんなんだ・・あれは・・ん?」
ソラの目が、亀裂から出てきた何かを捉える。
「!?」
「え?ソラ!?」
いきなりソラが全力で走り出す。
その圧倒的スピードに追いつけないキリト。
だがキリトも見た。亀裂から落ちてくる何かを。
「あれは、人!?」
そう、人が亀裂から落ちてきたのだ。装備から見るに、女性。
だがあの高さから落ちれば、そのダメージで死んでしまうかもしれない。
「間に合え!」
ソラが更に加速する。
そして、地面に落ちる瞬間、ソラが女性をキャッチした。
「ソラ!無事か!?」
「ああ、なんとかな・・・!?」
キリトが何とか追いつく。
だが、ソラの顔は驚愕に包まれていた。
その女性の顔を見ると、女性は同年代、十五か六ぐらいの女の子で、装備は緑が主な、まるでモン○ンのガンナー装備に似た服装だった。
だが、武器は何も着けていない。
「お、おいソラ?どうしたんだ?」
「・・・・」
黙り続けていたソラが、ようやく口を開いた。
「・・・・詩乃?」
本来の
少女が目覚める。
「し・・・」
「・・・・誰?」
虚ろな目で、そう答えた。
はい、詩乃あらためシノンでました!
さらに記憶喪失です!
状況はインフィニティ・モーメントと同じです。装備も同じです。
弓スキルはこれから習得します。
では次回もお楽しみに。
To be Continue!